とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

蟻鱒鳶ル

 久しぶりの、ほんとうに一年ぶりの東京出張の仕事を終え、16:30というちょっと中途半端な時間の後に自由な時間ができた。美術館に行くには閉館時間が迫るし、寄席はどうも夜席は自粛期間中のよう。晩ご飯に行くには少し早いし。そこで、仕事の現場である品川の近くに、かねてから訪れてみたい建築があったのを思い出して、行ってみることにした。

 場所は仕事現場から1.5kmほど離れた東京都港区三田の聖坂。駐日クウェート大使館を目印とする。大使館から聖坂の道路を挟んで斜め左に位置する建物が、これまで行ってみたかったものの果たせないままでいた蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)。

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公園の向こうに見えるのが丹下健三設計の駐日クウェート大使館

 2005年に着工された、地上4階、地下2階の予定で設計されている鉄筋コンクリートのビルである。すでに16年ほど経過しているものの完成には到っていない。なぜならば、ほとんど自力のみでビル一棟をまるごと建てようとしているからだ。しかもその姿がすこぶる異形。このビルを建てようとしている方が、バルセロナにあるアントニ・ガウディ設計の未完の大建築「サグラダ・ファミリア」になぞらえて「三田のガウディ」呼ばれるのも頷ける。

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ビルとビルの間に立つのが蟻鱒鳶ル(アリマストンビル)

 今回、品川の仕事現場から歩いて蟻鱒鳶ルに着いたのが16:56。玄関らしきところからのぞき込んだところ、ちょうど作業を終えて着替えに帰ろうとしていた制作者の岡氏にばったりと出会った。この稀代の建築現場を見学しに来た旨を伝えると、初対面ながら快く内部に招き入れてくれた。建築物を見学に行って、設計者、施工者、所有者と対面できることなどまずない。ましてや本人から内部を案内されることなど奇跡だ。大感激だった。

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建築現場について中をのぞき込んだところで制作者の岡氏にばったり会った

 岡氏に話を伺うと、高専で設計を学び、施工は文献を読み込んでいるとのこと。コンクリートの含水量は一般的には60%近くのものが使われているのに対して、蟻鱒鳶ルでは37%まで減らし、コンクリート打ち込み後にも布で覆って水を掛けて養生するなどして、徹底的に高品質のコンクリートを作っている。触らせて頂いたコンクリートの柱は特殊な塗装を施したかのようなツルツルの状態だった。このコンクリートの質にはプロもビックリしていたようで、現場を見に来た建築史家の藤森照信東京大学名誉教授も何を塗ったんだと尋ねたとか。

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内部の装飾には凝った意匠が連発

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 内部は建築資材や工具で溢れかえっていたが、気軽に1階から4階まで案内してくれた。純朴な良い方だった。完成は3年後とのこと。しかしながら、蟻鱒鳶ルは噂の通り再開発区域に入ってしまったとのこと。完成後はどうなるかと尋ねたら、日本に昔からある曳家の技術で移転する予定とのこと。意外と簡単にこのビルの移転ができそうだという。安心した。

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現在の4階の建築現場はこんな状態

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3階も思い切り施工中の雰囲気

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玄関も現代アート

 完成後にはまた訪れてみたい。聖坂を挟んで向かい側に建つ丹下健三の設計になる駐日クウェート大使館も立て替えの計画が浮かんでは消えているようだが、蟻鱒鳶ルと一緒に200年後のこの地に残っていてくれたら素晴らしいことだ。

 ただし、もし記録が失われたならば、200年後の人はこの2つの建築を見て、誰が、何のために建てたのか訝しがるのではないだろうか。そんなことを一人考えながら聖坂を下っていった。

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あと3年で完成予定の蟻鱒鳶ル

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斜め前の駐日クウェート大使館(蟻鱒鳶ルから撮影)

2021年4月18日 九州自然歩道 99日目 宮崎県日向市東郷町坪谷 牧水公園~宮崎県東臼杵郡美郷町田代 美郷町役場 珍神山に新緑燃ゆ

 今朝はあまりの寒さで目が覚めた。気温は3℃だった。想定外の冷え込み。宮崎には一年中アロハシャツで過ごせるようなイメージがあったが、そんなイメージはガラガラと崩れ去ってしまった。そういえば昨夜は星がきれいだった。5:20に寝袋から這い出し、6:25に行動を開始した。

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日の出は5:40 この日は快晴

 若山牧水記念文学館の前を通過して坪谷川を越える。たしか、中学校の教科書に載っていた若山牧水の歌がこれ。

「白鳥は哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよふ」

この歌は当時から自分に刺さっていた。しかし、それ以上に中学校時代の思い出で若山牧水といえば、愛知県豊橋市の古本屋。初めて入る古本屋に緊張して、ガラス越しに中を眺めると、気難しそうな眼鏡をかけたおじさんが奥の帳場に座って何か読んでいる。引き戸を開けて入った私にはチラッと一瞥しただけで、挨拶はない。おずおずと手前の方から棚を眺めて、奥の方にたどり着いた。帳場の上に掛けられた額を見たら、若山牧水の手紙だった。この瞬間から、若山牧水ときたら、古本屋の眼鏡のおじさん。いまでもこの古本屋はあるだろうか?たしか、松葉通りにあったのだが。

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文学館前の若山牧水像 旅の歌人だった

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今でも残る牧水の生家

 町中を走る国道446号線をわずかに東に歩き、すぐに標識に従って左折して、西ノ内川に沿って北に向かう道に入る。

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牧水の出身地は山深い静かな町 東郷

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西ノ内川に沿って北に進む

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 しばらくは舗装路を歩くが、人家が途絶えた7:10あたりで舗装路から砂利道に変わった。

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川沿いの道を北に進む

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人家を過ぎると砂利道に変わる

 砂利道はコンクリート舗装に変わり、急坂になった。7:35に庵登集落を通過したが、廃屋が数軒あるだけ。

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急坂になるとコンクリート舗装に変わった

 その後、ふたたびアスファルト舗装路に変わり、7:47に登山口への分岐に到着した。九州自然歩道ポータルサイトのコースとヤマトホの進んだ進路は直進だが、YAMAPの登山道と九州自然歩道の新しい白い小型標識は左を指している。迷ったが左折して進むと、また白い小型標識が出て右を指している。標識に従って進み、7:58に鉄塔の設置現場に出た。ここでポータルサイトの地図とYAMAPの登山道が合流した。

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この分岐が二択

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新しい表示を信じて進む

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開けたところでポータルサイトの地図のコースと合流

 ここには真新しい送電用鉄塔が建設されていて、そのために周囲が整地されている。資材を運ぶためだろうか。索道も設置されたままになっている。ここまでの山道も新しく整備して、法面補強をしており、九州自然歩道は新しくこちらに誘導しているよう。鉄塔にはまだ送電線は張られておらず、これからまだ一連の送電線設備が作られるのかもしれない。

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送電用鉄塔の建設地だった

 伐採されたスギの切り株が座るのにちょうどよい高さにあるため、ここで小休止とした。眼下に東郷の町が見える。荷物の軽量化のため、本日用意した朝食は大豆バー1本のみ。物足りない。

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切り株に腰掛けて休憩

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南郷の町が見える

 8:09から行動再開。ここからは、蛸鹿さんやヤマトホでも紹介されている珍神(うずがみ)山の直登階段。標高394mの登り口から823mの頂上近くまで、南尾根になんの迷いもようなひたすら真っ直ぐに設置された階段を上りはじめる。ところどころ勾配の緩やかなところに階段のないところもあるが、基本的には無限に続くかと思われるほど長い真っ直ぐの木製の階段を上る。よくもこんなに長い階段を整備したものだと感心する。

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登り口から直登の階段が続く

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 9:11に珍神山(823m)の頂上に到着した。ここでは牧水公園で購入したカルピスウォーターを飲んで小休止。北斜面のスギの植林が伐採されているため、北にある美郷町西郷の方向の眺望がよく見える。

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珍神山の山頂標識

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北に美郷町西郷が見える

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九州山地がどこまでも続く

 今日はバスの時間が14:27なので、気に掛かる。わずかな小休止の後、すぐに下りはじめた。整備状況の良好な南尾根の階段とはまったく異なり、下り道は踏み跡が不鮮明。珍神山の南斜面は広葉樹が拡がっていたのに対し、北斜面はスギの植林がなされているためか、シカ除けのネットが張り巡らされている。行きつ戻りつして、GPSで方向を確認しつつ藪の中を進んで林道まで下ることができた。林道に出るまでの最後の200mほどは、ノイバラの茂みを進んだため、露出した皮膚は傷だらけになってしまった。

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北斜面の登山道は荒れていた

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ノイバラの藪で傷だらけになってしまった

 ヤマトホのルートは林道を横断して、そのまま真っ直ぐ藪の中を下降するように突き進んでいるが、いくら探しても下り口も踏み跡もない。しばらく林道の東西を歩いて下り口を探すが、やむなく九州自然歩道の標識が指すように、林道を西に大斗の滝(おせりのたき)に向かって進むことにした。

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しばらくの藪漕ぎの後、林道に出た

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GPSで確認すると、ヤマトホはこっちに進んでいる

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標識に従って大斗の滝に向かって林道を歩くことにした

 林道歩きは快適だった。歩きやすい砂利道で、山の麓には美郷町の市街地が見える。正面には標高700mほどの九州山地の山々がどこまでも連なる。

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快適な林道を歩く

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九州山地の山々が続く

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西郷の町の西には日陰山

 10:08にヤマトホの選択したコースと合流した。ヤマトホコースも、藪を抜けた後は林道になっていたようだったようだ。さらに50mほど下には舗装された林道が見える。地図を見ると、これが九州自然歩道のよう。10:15に林道の間をつなぐ舗装された連絡路を下って、正式な九州自然歩道のコースに戻ることができた。林道から見える山の青葉は燃え立つよう。

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ヤマトホコースと合流

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下に見える舗装路が九州自然歩道

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舗装された連絡路で合流できた

 1kmほど林道を下り、11:08に溝の内川に沿ったところまで出た。右手に渓流を眺めながら、スギ木立の中を快調に進む。渓流と山の組み合わせは最高に美しい。

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緑が燃えるように美しい

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杉の木立の中を進む

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溝の内川の渓流に沿って進む

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ところどころに落石もあるが

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すばらしい春の山が目の前に拡がる

 11:37に国道388号線に出て、11:44に槇の鶴集落を通過した。11:53に通過した国道388号線上の小川集落には自販機があったため、飲料水を飲んで小休止とした。

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国道388号線に合流

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小川集落で小休止

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川を渡って小谷集落に

 小川集落からは国道に沿って左折し、12:02に小谷集落に到着。ここからは国道を離れて、左折して山道に入る。道端にミツバチの巣箱の置いてあるのんびりした道だと思っていたら、だんだん人気のない悪路に変わる。しばらくは藪をかき分けて進むが、ほんの少しの辛抱で、豊前坊神社からは状態のよい舗装路に変わってホッとした。

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小谷集落から山道に左折

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最初は心地よさげな山道

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養蜂箱もところどころに設置してある

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だんだん寂しい山道になる

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しばらくは藪と格闘

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豊前坊神社から先は快適な道

 しばらく舗装路を歩き、12:36に町道との分岐を左折して、正面に標高898mの日陰山を眺めながら西に進む。

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豊前坊神社からは舗装路

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町道との交差点を左に進む

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正面には日陰山

 12:48に横八集落で町道102号線に右折して北に向かう。500mほど歩いた神門原集落から、九州自然歩道は左折して日陰山の山中に向かう。美郷町役場前からのバスは、7時台、9時台、14時台、18時台の4便があるが、14:27に乗らないと宮崎からの帰りの飛行機に間に合わない。12:57に神門原の交差点で九州自然歩道を離脱して2kmほど北の美郷町田代の集落に向かう。

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横八集落で町道102号線に右折

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集落ののどかな道を進む

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今回は神門原の分岐点で九州自然歩道から離脱

 13:10に愛宕集落を左折してふたたび国道388号線に戻り、13:25に美郷町役場にて行動終了とした。

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町の中心地を目指して北に進む

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町の中心の美郷町役場

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本日はここからバスで福岡に帰宅

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2021年4月18日 九州自然歩道 99日目 宮崎県日向市東郷町 牧水公園~宮崎県東臼杵郡美郷町田代 美郷町役場 晴れ 17/3℃ 行動時間7:01 22.5km 40047歩

 

復路: 美郷町役場前14:27-日向市駅東口15:26/15:34日豊本線特急ひゅうが13号-宮崎16:21/18:43特急ひゅうが15号-宮崎空港18:53/20:40ANA4958-福岡空港21:20

2021年4月17日 九州自然歩道 98日目 宮崎県児湯郡都農町 尾鈴キャンプ場~宮崎県日向市東郷町 牧水公園 矢研谷から桃谷にかけては滝三昧の絶景

 今回の九州自然歩道トレッキングも、金曜の夜から宮崎に前泊。夕食には名物の釜揚げうどんと肉巻きを食べて早めにベッドに入った。

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福岡-宮崎はボンバルディア・エアロスペース社のDHC8-400

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宮崎名物の釜揚げうどん 今日は織田薪(おだまき)

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うどんだけでは足らずに、にくまき本舗の肉巻き

 本日土曜日の天候は雨。5:40にホテルを出て、宮崎駅に向かう。6:01の始発の列車で都農に6:40に到着。今回は、大変ズルいと思うのだが、都農駅から尾鈴キャンプ場まではタクシーを利用。前回は尾鈴山瀑布群から都農駅まで歩いたのだが、17kmほどある。現地までは公共交通機関利用か徒歩のみと決めており、本来はScheduled Public Transportation(時刻表のある公共交通機関)を意図していたのだが、今回だけは勘弁してほしい。当地の公共交通機関網はものすごく貧弱で、土日のみでは次の目的地にたどり着くことができなくなってしまうのだ。

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昨夜から続く雨

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始発の日豊本線で都農に向かう

 都農駅日豊本線の列車が到着したときには、予約をしていたタクシーがすでに待ってくれていた。気のよい男性の運転手さんで、かつて都農の町まで走っていたトロッコ列車の跡などを教えてくれた。先日は、リヤカーを曳いて日本一周をしている人を見かけたとか。話が弾み、目的地まで退屈しなかった。

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尾鈴山の山開きは4月29日だった

 尾鈴キャンプ場入り口までは30分ほど乗車し、7:15に到着した。あいにく強い雨が降っており、運転手さんは心配そうにこちらを見る。上下の雨具を装着し、靴にはゲーターを着けて、7:30に行動を開始した。

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雨具完全装備で歩き始める

 県道307号線から橋を渡り、トロッコ道のトンネルを抜けてしばらく進み、もう一つの橋を渡るとキャンプ場。設備の整った快適そうなキャンプ場だが、誰も宿泊していないようだ。いつか再来の時のために山小屋の位置を確認して先に進む。

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ロッコのトンネルに進む

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橋を渡るとキャンプ場

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広くて快適そう

 キャンプ場の裏手から階段を上り、高度を上げていく。右手に川が見えてきて、まずは若葉の滝が出てきた。これも十分に見事な滝。滝壺からの流れにあった置き石を伝い、対岸に徒渉する。徒渉地点から100mほど進むと矢研(やとぎ)の滝が現れた。落差73mの壮大な滝で、日本の滝100選に選ばれている。東遷前の神武天皇がここで矢を研いだことから矢研の滝と名付けられたとのこと。

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キャンプ場の裏手から山にとりつく

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最初に現れるのは若葉の滝 流れ出しを石伝いに徒渉

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100mほど進むと矢研の滝が現れる

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水量の多い迫力のある滝

 矢研の滝から若葉の滝にいったん引き返し、今度は山に向かう道を上っていく。谷川に架けられた梯子の片方が水中に降りている。そこから対岸の梯子まで5mほどは膝下の深さの川を徒渉しなければならない。やむなく、靴と靴下、ゲーターを脱いで、ズボンを膝上までたくし上げて徒渉した。水は冷たく、川の石が足に突き刺さる。

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再び山道を登る

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梯子は水中まで

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覚悟を決めてズボンをたくし上げる

 対岸にたどり着き、タオルで足を拭いていると、目の前の落ち葉の中から、3cmほどの長さの茶色のミミズのような生物が、尺取り虫のような運動をしながら近づいてきた。初めて見たが、これがヒルだとすぐに分かった。炭酸ガスに反応するようで、こちらにロックオンしてものすごい勢いで接近してくる。恐ろしい。すぐに撃退した。すでに素足にくっついた個体はいないか確認してから、靴下を履いた。

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ヒルがものすごい勢いで寄ってきた(閲覧注意!)

 さらに山道を進み、今度は矢研の滝を上から眺める。このあたりの山道もかつてはトロッコ列車が走っていたようだ。幅1.5mほどの切り通しが作られており、全体に勾配は緩やか。山道としては非常に歩きやすい。

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矢研の滝を上から眺める

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このあたりはトロッコ

 谷間の小さな流れのあるところには、幅の狭い橋が架かっている。これもトロッコ列車の橋を利用しているようだ。

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こんな谷間の流れは至る所にある

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そのたびにトロッコは小さな橋を渡っていたようだ

 矢研の滝の上流には、天の磐船(あまのいわぶね)というニギハヤヒコノミコトが高天原から乗り捨てた船だとされる石があるが、これは無理をしすぎ。どうみても浮かびそうには見えない。

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ロッコ道から川に下りると天の磐船

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これが置き去りにされた磐船

 ここから先もトロッコ道が続く。ところどころに枕木も残っている。よく見ると、レールを止める犬釘のようなものが残った枕木もある。このトロッコ道は渓流のすぐ横を走っていたようだ。今から70年ほど前は、この道の上の線路を、切り出した材木を積んだトロッコが走っていたと思うとワクワクしてくる。もし、現在もトロッコ列車が走っていたならば、週末ごとに日本中のその筋のマニアが大集合しているのではないだろうか。

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快適なトロッコ道が続く

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枕木らしきものに犬釘と思われる金属が残る

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ロッコ道の横に渓流が流れる

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線路はさらに続く

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 トロッコ道を抜け、9:33に自動車の轍の跡のある林道に合流した。林道には現在も伐採されたスギ材が並べられている。心地よい林道をしばらく歩く。9:45に九州自然歩道の分岐の標識が出てきたが、地図ではさらに200m先に分岐があるように見える。9:50に地図上の分岐点から川に向かって降りたところ、トロッコ列車の線路跡にたどり着いた。さきほど林道で終点だと思っていたトロッコ列車は、さらに上流まで線路が敷設してあったようだ。ただしこのコースはメインテナンスがあまりよくなく、倒木が多く、一部は藪になっている。もう少し進むと、橋長20mほどのやや長めの橋が出てきた。ここからは急斜面となり、この先には線路は敷設してなかったように見える。

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林道と合流

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500mほどの林道歩き

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再び山道に入るが、路盤はトロッコ道のよう

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倒木に塞がれる

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枕木が残っていた

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この橋の先でトロッコ道は消えていた

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ロッコ道は渓流に変わる

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美しい流れを眺めながら登る

 10:18にさらに川沿いに進んだところで、コースを示す赤テープが現れ、川向こうにも赤テープがはためいている。ここが渡渉地点のようだ。昨日からの雨のせいか、流れが速く見える。赤テープの少し上流に大きな石が並べておいてある。ふたたび靴を脱いで、ズボンを膝上までたくし上げた。水は冷たい。意外に流れが速く、油断すると水流に押されて転倒しそうになる。水面に頭を出した石を掴みながら、無事に渡渉することができた。

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川岸に赤いテープの徒渉点がここ

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石伝いには渡れなかった

 徒渉した後は山道をぐんぐん登っていく。10:33にも小さな渡渉地点があったが、今度は靴を脱がずに石伝いに渡渉することができた。

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徒渉後は急な山道

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さらに登る

 10:35には林道との交差が現れた。林道が歩けるかと期待したが、すぐ目の前に遊歩道の看板があり、スギの植林の山道に進む。ここまで山道と徒渉はずいぶん堪能したので、そろそろ歩きやすい林道を歩いても文句はない。さいわい、下草のしっかり刈ってある歩き易い山道でホッとした。今日は雨で下草は雨をたっぷり含んでいるので、藪漕ぎをしようものならばずぶ濡れになってしまう。

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林道との交差には反対側に小さな標識

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すぐに山道に入る

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ところどころ荒れている

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大規模な法面補修も何カ所かで行われている

 11:00にはふたたび林道と交差。ここも遊歩道の小さな看板が立てられており、すぐに山道に入る。しばらくスギの植林を縫うように進むが、11:23に藪の中に入っていった。GPSで方向を確認するが間違いはない。藪漕ぎでしばらく格闘したら抜けることができた。

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山道を下る

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こんな植物が密生していた イネ科の植物に寄生するナンバンギセルに似るが正確な名前は分からない

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スギの植林の中を進む

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荒れた道に突入

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藪を抜けて平地にたどり着く

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小川を越える

 この後、しばらくは谷間を進み、12:11に川べりに出た。ここからは川の上流に向かって進む。地図で石並川と確認できた。この川は絶景の連続だった。岩をくりぬいたような深い淵が現れたと思ったら、左からしぶきを立てて勢いよく流れ込こむ支流がある。その上流では本流も二つに分かれて左右から滝になって合流している。まだ行ったことはないが、写真でよく見る高千穂峡のようだ。

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しばらくは川の音を聞きながら山道を歩く

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高千穂峡のような光景が現れて息をのむ

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二つに分かれた川が滝となって合流している

 山道は左の滝に沿って登っていくが、7段ぐらいの滝となっている。右の川の部分もさらに落差のある滝になっているようだが、よく見えず、滝の音だけが聞こえてくる。

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左の滝に沿って登っていく

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まだまだ上まで数段の滝が続く

 左の滝の4段目ぐらいのところに赤いテープが現れ、徒渉地点とされているかと思われた。向こう岸の岩が削られており、道が続いているのが見える。しかし、本日は水量が多く、この滝を渡ることはできそうにない。

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ここが徒渉地点なのだが、今日は渡れない

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上の滝まで巻いて徒渉する

 そこで、一段上の滝まで巻き、靴を脱いで徒渉する。しばらく前に進んだ人がいるようで、うっすらと踏み跡がついている。こちらの滝の流れ出しの方は幅が狭いが、今日は水量が多く、足が取られそう。岩も滑りやすく、慎重に水につけた素足を進め、ようやく対岸の石にしがみついた。渡り終えたのは12:16だった。雨のためか滝の水は濁っているが、見事な滝だ。滝の名前を示す看板はない。落差こそそれほどないが、滝のコンビネーションと岩をくりぬいて流れる様がすばらしい。

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この地点でなんとか徒渉できたが流れは強い

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ようやく山道に復帰

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滝の全景をおさめようと思ったが無理。この上に数段、下にも数段の滝が続く。

 滝を渡り終えた後はスギの植林を抜けて、12:29に橋のたもとで林道と合流した。標識には林道西林神隠線と書いてあり、北の西林山と西の神隠山の裾野を流れる石並川に沿って敷設された林道のようだ。雨が弱くなってきたので、材木置き場で荷物を下ろし、昼食とした。林道沿いにはコース中の数少ない平地があり、先行された方たちはこのあたりで野営をすることが多いようだ。

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滝の徒渉の後はしばらくスギ植林の中を歩く

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林道西林神隠線に出る

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しばらくは快適な林道を歩く

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山の緑が目に沁みるよう

 12:50に行動再開。林道を400mほど西に上流に向かって歩いて、九州自然歩道の標識に従って河原に出た。ここにも赤テープが巻いてある。この川は、川幅があり、深く、流れが早い。赤テープの徒渉地点では膝上まで水に浸かりそうだ。しばらく上流まで遡行して、一番狭いところを探してズボンを一番上までたくし上げて徒渉を開始した。流れが強く、荷物を担いだ身体は安定しない。足を動かすと下流に持って行かれる。転倒しないようにすり足で慎重に進む。長く水に浸かっていたため、足が痺れてきた。水面はズボンギリギリで、少し濡れてしまった。ようやく対岸にたどり着き、靴を履き終えたのが13:53。この徒渉はなかなか難易度が高かった。

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林道を400mほど進むと、右手に川が見えてくる

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標識から川に向かって降下する

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このあたりが徒渉地点 深く流れも速い

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 ここから先は勾配の強いスギの植林を進む。地図を見てみると、標高差が400mを越える上りが続く。14:41にようやく稜線上に出た。稜線上には標識があらわれホッとした。稜線からはほぼ同程度の高度の山道を北に向かって進む。

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徒渉後は傾斜の強い山道を直登

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稜線に向かってさらに登る

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ようやく傾斜が緩やかになる

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稜線につくと九州自然歩道の標識がある

 15:00ごろに稜線上の眺望のある小ピークに出た。雨はようやく止んで、日が差してきた。山の緑が眩しい。

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稜線からは神隠山の北尾根の斜面を横切って進む

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北尾根には眺望のよいところが1箇所ある

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ようやく日が差してきた

 15:17に林道に出た。新しくできたばかりの林道で地図には載っていない。ここでは九州自然歩道が林道によって分断されているが、階段が自然歩道を連結するように設置されている。階段部分を日差しが照らしていたので、雨具を脱いで乾かしながらコーヒーブレイクとした。ホテルでサーモスに詰め込んだお湯がまだ熱い。インスタントのカフェオレの甘さが身体にしみる。

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地図に記載のない、できたばかりの林道に出た

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九州自然歩道を連結する階段が設置されている

 15:33に行動再開。雨は止んだが、藪を歩くと水しぶきを浴びるため、再度雨具を装着して歩き始める。今回もスギの植林を下り、16:04に林道と交差。ここでもコーヒーブレイク。砂防ダムから落ちてくる水で顔を洗う。冷たい水が心地よい。

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林道との交差が北尾根の峠あたり。ここからはスギ植林の中の下りが続く。

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再び林道に出る。この林道は地図に記載あり。

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自然遊歩道の看板から山道に入る

 林道には自然遊歩道の白い標識があり、16:21にそこから下って行動再開。スギの植林であるが、ところどころに倒木がある。地図の九州自然歩道を示す破線からは少し外れているが、ヤマトホの歩行コースをトレースして先に進む。16:40に林道と交差してさらに山道を下り、16:46に小さな谷川を渡渉した。

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再びスギの植林の中を下る

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ところどころ山道は崩壊し、法面の補強が行われているところもある

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道が消失したところもある

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林道に出る

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さらに下る

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そこそこ快適な山道が続く

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ところどころ踏み跡を探してコースを逸脱しないように注意する必要がある

 17:05に迫内川の上流の砂防ダムに出た。赤いリボンがぶら下がる渡渉地点は川幅が10m近くあり、最も深いところは膝を優に超す。ここはズボンをたくし上げても濡れてしまいそうだ。ここはまず、河原の石を徒渉地点に放り込んでおいてから、靴を脱いで渡った。すこしズボンが濡れてしまったが被害は軽微。対岸にたどり着いたら、ヒルが近づいてくる前に靴を履いて歩き始めた。

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砂防ダムの上流で徒渉

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山沿いの橋を渡る

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舗装路に続く

 17:20に徒渉を終えて舗装路に出た。あと2kmほどで目的地の牧水公園に着く。振り返ると西林山が西日に照らされて新緑が燃えている。

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砂防ダムの徒渉を終えると舗装路に続く

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西林山を西日が照らす

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広葉樹が薄い緑の葉を拡げている

 しばらく舗装路を歩いていると家並みが見えてきた。のんびりとした町のようだ。

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東郷町の町が見えてきた

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牧草地に囲まれた、のんびりしたところ

 17:56に牧水公園に到着した。満開のツツジが見事だ。残念ながら本日は牧水公園の食堂や施設はコロナ対策のために休館。キャンプ場も閉鎖されていた。今日はキャンプ場に宿泊するつもりだったので残念だ。暗くなる前に野営可能な平地を探さなければ。

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牧水公園に到着

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ツツジ園が満開

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ハチも蜜を集めるのに一生懸命

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2021年4月17日 九州自然歩道 98日目 宮崎県児湯郡都農町尾鈴キャンプ場~宮崎県日向市東郷町牧水公園 雨のち晴れ 21/6℃ 行動時間10:43 18.5km 38025歩

 往路交通:

福岡空港18:25ANA4671-宮崎空港19:10/19:18-宮崎19:28(前泊)

宮崎6:10日豊本線-都農6:40/6:45タクシー-尾鈴山キャンプ場7:15

羽衣素馨

 庭のハゴロモジャスミン(羽衣素馨)が満開となった。苗を植えてから3年目で、昨年はラティスの真ん中ほどまで伸びた枝から、わずかな花をつけただけだったが、今年は庭のラティスの上端まで達してなお余りある枝から、たくさんの赤い蕾をつけていたので、開花を楽しみにしていた。

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 ハゴロモジャスミンJasminum polyanthumは、モクセイ科ソケイ属のつる性の植物で、中国が原産。ソケイ属がJasmineであるので、茉莉花(マツリカ)茶などに使われるいわゆるジャスミン(アラビアジャスミンJasminum sambac)の兄弟ぐらいだろう。花から漂う香りはジャスミンそのもの。実際にジャスミンティーにも使えるようだ。

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 成長が早く、病害虫にも強いとされ、生け垣に使用されているのをよくみかける。福岡の自宅の近所でも、フェンスに繁茂したハゴロモジャスミンのうっすらと赤みを帯びた白い花がたくさん咲き誇っているのを目にしていた。一昨年に、ホームセンターに苗が置いてあるのを見つけて、3株購入して植えたものが、今年はここまで成長した。

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 手間がかからず、花と香りが楽しめることから、フェンスのカバーなどにはお勧め。

2021年4月11日 九州自然歩道 97日目 宮崎県児湯郡川南町白鬚~尾鈴山瀑布群~児湯郡都農町都農駅 尾鈴山瀑布群を見るのは一生に一度の機会だったかもしれない

 本日は川南町白髭の山中で、明け方近くの冷え込みのために5:00ごろに目が覚めた。7℃しかないので、夏用のシュラフでは少し寒い。寝る前に眺める空の星が多いときには、たいてい翌朝は寒さで目が覚めてしまう。

 日の出は5:55だが、すでに東の空は明るくなってきた。今日一日の行程を地図で確認し、Webで天気予報をチェックし、本日帰宅の途につく都農駅から出発する日豊本線の時刻を確認する。今日は九州自然歩道を10kmも歩けば都農駅への再近接地点を通過するので、そこで行程を中断してもよいし、尾鈴山の登山口まで歩を進めて引き返してもよいし、さらには支線の尾鈴山瀑布群まで見てから引き返すという方法もある。3パターンともに、途中の最大移動距離40kmの範囲には土日に運行しているバス停がないのがネック。鉄道の時間を考慮しながら、どこまで歩くことができるか、体力を勘案しながらルートを決定する必要がある。

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山の朝は寒い

 テントの撤収を終えて、6:12に行動開始。いつもながら、日の出前後の時間の山の光景は美しい。清少納言は「春はあけぼの」といったが、山もあけぼのだ。この光景を見たら納得するはず。などとどうでもいいことを一人考えながら歩いていたら、朝からいきなり道を500mほども間違えて20分以上浪費してしまった。

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この時間の山はいつも美しい

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日のながく差し込みたるもいとをかし

 野営地まで引き返し、仕切り直し。今度はGPSで正しい道を確認してから歩き始める。スギの植林を抜けて、谷川を橋で渡り、山の斜面の林道を歩いていたら、海の上の太陽が見えてきた。山が急に明るくなってきた。牧場の脇を通って牛に挨拶し、水田に反射する太陽を眺める。白髭の隣の大内集落には6:51に到着した。

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正しい道はこっちだった

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苔のむした橋を渡る

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海の上に太陽が現れた

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牛から不審者をとがめる目つきで睨まれた

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水田があらわれたら集落は近い

 ここからは少し回り道になるが、九州自然歩道の本線を外れて篠原集落の夫婦滝に立ち寄ることにした。九州自然歩道から右に折れて、川に向かって高度を下げていく。最初にあった滝まで700mという標識に従って進んだが、地図を確認しても滝に近づいていかない。GPSで位置を確認すると、橋を渡って滝までアプローチするためには1km以上迂回が必要そう。結局、直線距離で200mほどの位置まで近づくことができたが、滝への降り口が見つからず、7:08に夫婦滝への立ち寄りは断念して、先に進むことにした。ここからすみやかに九州自然歩道に復帰しようと思ったが、地図に見られる50mほどの連絡路はこれでもかというぐらいの藪の中であったため、さらに先の住吉集落まで迂回することにした。

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夫婦滝に寄り道

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標識に従って進むがなかなか出てこない

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諦めて九州自然歩道に戻ろうとしたが藪に阻まれる

 迂回路を進み、7:20に住吉集落にたどり着き、九州自然歩道のコースに復帰した。復帰地点には標識が立っていたのだが、標識の方向は地図と違っていた。標識は動くし、間違いもあるだろう。道路は新しく作られたり、付け替えられたり、藪に覆われたりすることもあるだろう。自分の責任において、知恵と五感を総動員してコースを確認することが大切。迂回して体力を消耗するのは自分であり、その責任は自分にある。

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標識は他人が好意で立てたものと思えば怒る必要もない

 ここからは巨大な材木の貯蔵地を通過する。これまで見たこともないほど大量の材木が積み重ねられている。林業が国土を守ってくれることは今回のトレッキングでよく分かってきた。

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大量の材木が集積してある

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ずーっと向こうまで並んでいる様は壮観

 7:42に椎原集落で左折し、高度を下げていく。林道は左に曲がりながら高度を下げていくのだが、地図で確認すると九州自然歩道のコースは林道のカーブ部分から真っ直ぐ破線に従って進んでいる。地図の破線は山道である。地図を仔細に眺めるが、該当する山道の入口は、どこが山道か判別不能なほどのひどい藪に覆われている。少し前までの私ならば、こんな場合はGPSを見ながらゴリゴリ進んでいただろうが、もう十分に学習した。藪漕ぎも堪能した。迂回路はほんの少し距離が長くなるだけだ。舗装された林道を心地よく歩く。手足に何の傷も負わないまま、木々の間から青鹿(せいろく)溜池が見えてきた。

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椎原集落から高度を下げていく

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地図ではこっちの方向に山道があるように書いてあるが、どこが入口?

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かしこく迂回する

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目標の溜池も見えてきた

 林道を快適に歩き、8:02に青鹿ダムに到着した。標識が途中にあらわれたことから、この迂回路はすでに九州自然歩道の本線として使われているのではないかという疑念も生じてきた。ダム体の山の上に伸びていく山道の入口があったが、こちらは先が見えないほどの藪の中に進んでいく。迂回路の選択が正解だったと思う。

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青鹿ダムに到着

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標識もある

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 青鹿ダムの堤の上を歩き、かなり急なコンクリート舗装路を歩いて、8:16に青鹿キャンプ場に到着した。ここはトイレと炊事施設のある無料のキャンプ場。金曜の夜からのキャンプ客だろうか、4張りほどのテントが芝生の上に張られている。居心地の良さそうなキャンプ場だ。

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堤の上を歩いて、急なコンクリート路を登ればキャンプ場

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 管理事務所と思われる小屋の外で、本日はじめてザックを下ろした。サーモスのお湯でコーヒーを淹れて休憩とした。ちょうどここではサバイバルゲームの参加者が集合して、カートリッジにBB弾を詰めたり、機材にガスを充填したり、忙しそうに準備をしている。面白そうだった。気のよさそうな方から、無料で機材レンタルしますよと誘われた。とてもそそられたが、丁寧に辞退して先に進んだ。

 8:38に行動再開し、眺めのよい丘の上の道を進む。集落の名前は旭ヶ丘。朝日のよく当たる丘そのものだった。日照が良いところだからか茶畑が拡がる。このあたりには曲がり角ごとに標識が建てられており、間違いなく先に進ませてくれる。

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旭ヶ丘からは海が見える

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まさに朝日の当たる丘

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茶畑が拡がる

 9:03に掛迫集落にあった自販機でコーラを購入して小休止。ピーナッツを食べて朝食とした。9:19に行動を再開して牧場の横を通過し、9:41に遊学の森入口に到着した。

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遊学の森入口を通過

 ここから先は、昨年通過したヤマトホがひどい藪の中を進み、最後はザイルまで取り出した難所が待ち受けているところ。GPSでYAMAPに記録されているヤマトホのコースを確認しながら慎重に進む。コースは民家の庭に続いており、通り抜けようとしたところで男性が家から出てきた。ここから先の九州自然歩道は10年ほど前から道が消えてしまって通れないという。東の山を下るコースを進めば県道に出られると教えてくれた。

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GPSに従って進んだら人家の庭先

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こちらの迂回路を進めと教えられた

 男性の家を離れ、9:48から東向きの迂回路に進む。舗装された林道で、快適に歩くことができる。しばらく進むと、9:57に迂回路上に九州自然歩道の標識が現れた。どうもこの迂回路はすでに九州自然歩道の本線として認定されているようだ。先ほどの民家の男性が白い軽トラックで後ろから近づき、窓を開けてあと300mぐらいで県道に出るからと、親切に教えてくれた。

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迂回路に九州自然歩道の標識が立つ

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いい道ではないか

 快適な林道を歩き終え、10:12に県道307号線に合流する込の口(こめのくち)集落に到着した。すぐ先には九州自然歩道の標識も立っていた。このあたりで、宮崎県九州自然歩道勝手にコース変更疑惑が確信に変わっていった。

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込の口で県道307号線に合流

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近くにも九州自然歩道の標識が立つ

 込の口から県道307号線を左折して、北の尾鈴山に向かって歩き始めた。片道1車線の道路で、ところどころに歩道がある。交通量は少なく、5分に1台ぐらい自動車が通過するのみ。

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尾鈴山に向かって県道を歩き始める

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田園風景の中を進む

 このあとも県道307号線上には何度も九州自然歩道の標識が現れた。ただし、片方には遊学の森と書いてあることから、さきほど山の上で入口を通過した遊学の森からも、県道307号線に通じる下山路があるのかもしれない。

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ひたすら県道を北に

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こんな標識があらわれた

 そろそろ小休止をとりたかったが、県道上には木陰や腰掛けられるような場所がない。ようやく10:33に轟地区の対岸あたりに味噌か醤油の樽の転がった原っぱを見つけた。ここでザックを下ろし、コーラの残りを飲んで小休止。本日の行程について再考した。

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県道沿いには休憩を取れるところがなかなかない

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味噌樽原っぱで休憩

 いま休憩している味噌樽原っぱから都農駅までは8km2時間。次の目標地の尾鈴山登山口までは7km2時間。都農駅から宮崎空港への列車の時刻は17:25と18:39。ということは先に進んだ場合、逆算すると味噌樽には15:00に戻れば17:25の列車に乗ることができる。さらにさかのぼり、尾鈴山登山口は13:00に通過すればよい。しかも、この味噌樽には再び戻ってくることから、荷物を置いて往復することができる。ということで、10:50に味噌樽に荷物をデポジットして、スマートフォンと財布だけ持って行動を再開した。

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手ブラで県道を北上するが、名貫川の渓谷が素晴らしい

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細神社の鳥居だけが立つ

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 県道307号線は、美しい名貫川の渓谷に沿って北上する。下切、細の集落を通過し、11:24に川南町から都農町の境界を越えて先に進んだ。都農町の境界を越えたあたりから道路は1車線になり、法面には落石防止ネットが張られるようになった。橋の標識を見てみると尾鈴川南停車場線と書いてある。ここにはかつてトロッコ列車が走っていたのだろう。

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川南町から都農町に入る

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渓谷はさらに鋭く

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道路はさらに狭く

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尾鈴川南停車場線の文字が

 行動再開してから79分後の12:09に尾鈴山登山口に到着した。2時間の予定よりもずいぶん早く着いた。そこで、せっかくだからと少し欲が出た。登山口から南西に尾鈴山に向かうと、尾鈴山瀑布群という素晴らしい滝の連続する光景が見られるという。このコースは九州自然歩道の支線だが、本線は登山口から北東に延びるため、南西の尾鈴山瀑布群には今回行かなかったら一生行けないかもしれない。そこで、少しだけでも瀑布群を見てみようと、南西方向の登山道を進んでみることにした。

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尾鈴山登山口に到着

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橋を渡ればキャンプ場

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橋の上流には名貫川の清流

 しばらく傾斜の強い登山道を登ると、急にゆったりとした傾斜の幅1.5mほどの山道が現れた。おそらくこれはトロッコ道。ところどころに切り通しや、橋の名残の残ったいい道だ。左には渓流が流れ、小さな滝がときどき見える。

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白滝方面への登山路にとりつく

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緩やかな傾斜で一定の幅のトロッコ

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切り通しも鉄路の特徴

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こんな橋の上をトロッコが通過していたと思うとワクワクする

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周囲の景色もよい

 トロッコ道の保存状態はよく、歩きやすい。途中で看板が設置してあったが、昭和33年まで残っていた総延長50kmの尾鈴トロッコ道の一部だ。うーん、ノスタルジック。

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 滝も次々出てきた。すだれの滝、さぎりの滝と続く。山道から滝が見えるように伐採しているわけではなく、滝は部分的にしか見えないがそれでも満足。

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すだれの滝

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さぎりの滝

 トロッコ道にはトンネルも残る。ひんやりして心地よい。

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トンネルも残る

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 トンネルを抜けると、さらさの滝。その先には小さな滝が現れ、ここではトロッコ道を離れて徒渉するように標識が立っている。ここですでに13:05。もう引き返さないと都農駅17:25の列車には間に合わなくなる。

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さらさの滝

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この滝が徒渉地点

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石を伝って渡ることができる

 標識を見ると、支線の最終地点の白滝までは1.8km。白滝がどんなに素晴らしい滝か知らないが、ここまで来たら一目でも見て帰りたい。それに18:39の列車に乗るという選択肢を選べば、引き返すのは13:30でもよい。

 ということで、ここから白滝まで走ることにした。転倒しないように慎重に徒渉して、急な斜面を走る。斜面が終わるとまたトロッコ道に出た。急斜面はトロッコ道のショートカットのようだ。このあたりのトロッコ道は、歩く人が少ないようでゴロゴロ石が多い。何人かの登山客に道を譲ってもらって、ひたすら走る。荷物がないから走るのもさほど苦にはならない。

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ここからは走ったので写真はあまりない

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景色は素晴らしい

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 少し息が切れたが、13:37に白滝に到着した。来てよかった。素晴らしい滝だった。高さ75mの迫力のある滝。ここまでのアプローチの難易度を考えると、生涯にはもう二度とここに来ることができないかもしれない。滝をしっかりと目に焼き付けて、折り返しの道を走り始めた。

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終点の白滝に到着

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 白滝からの帰り道は、4.5kmの登山道を1時間で走り、14:38に登山口に戻ることができた。

 そこからも休まず走る。10:50に荷物をデポジットしてから水を摂っていないため、喉が渇いてきた。行きの道で細の集落に自販機があるのを確認していたので、そこまで早く到着しようと我慢して走る。15:17に細集落の自販機に到着して、冷たい飲料水で喉を潤した。

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 15:47に荷物をデポジットした味噌樽に戻る。ここからは荷物を担いで歩き始める。もう本日の歩行距離は30kmを越えているので、12kgの荷物を担いだら走るのはつらい。ここから8kmは遠いなと思いながら田園の中を歩く。

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 16:08に高速道路の高架下をくぐり、さらに真っ直ぐの道を進んで都農駅に向かう。どこまでも農地が続く。時間を見るとまだ17:25の列車まで時間がある。ひょっとすると間に合うかもしれないなと思いながらひたすら歩き、17:20に都農駅に到着した。駅前のコンビニでシロクマ(アイスクリーム)とジンジャエールを買って、行動終了とした。

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 本日の歩行距離は44.2km。かなり長かったが、平地部分が多かったためか、疲労は今年2月6日の高隈山系の縦走の時の方が強い。17:25の列車に間に合ったのはできすぎ。それでも、白滝を見ることができたのは僥倖だった。公共交通機関のみを使って、福岡から尾鈴山の白滝を見に来るのは、これまでのどの場所に行くことよりもよりも難しいと思う。一生に一度のチャンスだったかもしれない。

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日豊本線ANAと公共交通機関で帰宅

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2021年4月11日 九州自然歩道 97日目 宮崎県児湯郡川南町白鬚~尾鈴山瀑布群~児湯郡都農町都農駅 曇りときどき晴れ 17/7℃ 行動時間11:05 44.2km 62659歩

復路交通:

都農17:25日豊本線-宮崎空港18:19/20:40ANA4958-福岡空港21:30

2021年4月10日 九州自然歩道 96日目 宮崎県西都市西都バスセンター~児湯郡川南町白鬚 たまには山中のカフェでのんびりとくつろぐ

 今回の九州自然歩道トレッキングは宮崎県西都市からの再開。交通を考えると前泊が必要だが、そうそう金曜日に休むわけにはいかないので、今回は金曜夜の最終便の飛行機で福岡空港から宮崎空港に行くことにした。たかだかトレッキングに贅沢なと思われるかもしれないが、早割料金ならばJRの正規料金よりも安い。

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飛行機は見るのも好き

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宮崎便の使用機材はボンバルディア DHC8-Q400

 福岡空港から宮崎空港までの飛行時間はたったの35分だった。九州山地の上を飛ぶ飛行機の上から今回のトレッキングルートが見えないかと目を凝らしてみたが、すでに日没を過ぎ、残念ながらコースは判別できなかった。19:10の到着予定時刻だったが、19:03に着陸したため、宮崎空港駅19:18の電車に楽々乗ることができた。夕食には郷土料理の冷汁、チキン南蛮、地鶏の三点盛りを頂き、早めにベッドに入った。

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宮崎の食べ物は美味しい

 土曜日の当日は、宮崎市の中心街からバスに乗り、8:35に西都バスセンターに到着。8:40に行動を開始したが、久しぶりの青空。気持ちがいい。週末に晴れるのは4週間ぶりだ。

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宮崎の中心街の橘通でバスに乗る

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西都市の中心地に到着

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西都は落ち着いたきれいな町

 まずは川沿いの道を北上し、8:54に都萬(つま)神社に到着して参拝。境内には日本酒の発祥の地との標識が掲げられている。神社の南からは豊富な水量の用水が流れている。

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都萬神社の鳥居をくぐる

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都萬神社の社殿

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境内には日本清酒発祥の地の標が

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境内を豊富な水量の用水が流れる

 神社からは、記紀(きき)の道と名付けられた、西都市内の歴史的なランドマークを繋いで古墳群に至るように設定された遊歩道を歩く。まずは9:20に稚児ヶ池に到着。ここは現在改修中のようで、重機が入れられており、水は抜かれている。

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記紀の道の出発点が都萬神社

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改修工事中の稚児ヶ池

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 記紀の道は標識が各所に設置してある整備状態の良好な遊歩道。ただし、御舟塚、日向国府跡、八尋殿、無戸室、といった興味をそそるランドマーク名が設定してあるが、どれどれと覗いてみると、かつてそこにあったとされるただの原っぱとか、ポツンと石が一つだけとか、こっちでよいのかうろうろしながら駐車車両の横をすり抜けていったら人家の庭、みたいな状態なので、そんなに期待せずに歩いた方が無難である。

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記紀の道はのんびりと古代の日本を思いながら歩く

 記紀の道の見所の一つが石貫(いしぬき)神社。朱色に塗られた社殿が特徴的。神社の由来を見てみると、息子が結婚の条件として一夜で建造した階段を、結婚が気にくわない父親が石を一つ抜き取って破談にしたということで石貫(石抜き)とか。神様の世界もかなり世俗的な行動をとる。

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石貫神社がハイライトの一つ

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存在感を放つ朱色の社殿

 西都の市街地から、9:39に石貫階段を登って古墳の並ぶ台地の上に向かう。階段の両側にはスギがすっくと伸びており、神々しい雰囲気が醸し出されている。登りながら観察したが、現在は石が抜かれたところはないようだ。

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石貫階段を登った先が西都原古墳群

 台地の上の大山祇(おおやまづみ)古墳には9:52に到着した。青空に古墳の緑が映える。しかし、古墳が築造された当初は、イネ科の植物に覆われたこんな緑の状態ではなく、大きな楠も生えていなくて、副葬品がずらりと並べてあったりして、今とは全然違う光景だったのではないかなとか考えながら、古墳群の中を北に向かって歩いた。先週から西都原古墳群に誰が埋葬されているのか知られていることがないか調べてみたが、誰なのか、どの一族なのか、さっぱり情報がない。わずか1500年ほど前のことなのに、不思議だ。

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大山祇古墳

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目の前には古墳だらけ

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 古墳群の北の外れまで歩き、10:04に古墳群のある台地から東に向かって下りはじめた。歩道のある舗装路を歩き、10:12に穂北で左折して農道を進んだ後、ふたたび2車線の舗装路に出る。

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古墳群から東の里に下りる

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のんびりした田園が拡がる

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しばらく舗装路を歩く

 地図では、しばらく進んだ島内地区で舗装路から右折して農道を北に進むようになっているのだが、該当するところには農道がなくなっていた。こんなことはよくあることなので慌てるほどではない。300mほど先に別の北向きの農道があったため、迂回して10:30に椿原集落に着くことができた。

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圃場には迂回路がたくさんある

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椿原を通過

 ここからは人家の間を抜けるように進み、10:42に穂北橋のたもとに出て、堤防に沿って一ツ瀬川を上流に向かって進んだ。しばらくは堤防の舗装路を快適に歩く。向かい側の川岸には公園が見える。

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住宅地を通って一ツ瀬川に向かう

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穂北橋を渡らずに上流に向かう

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川べりにはツクシやワラビがたくさん生えていた

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対岸にはキャンプ場のある公園

 500mほど川沿いの堤防の上を歩いたところで、堤防下の川べりにも歩道が設置してあることに気がついた。入口には倒木注意の看板があったが、せっかくなのでこちらを進んだら、九州自然歩道の標識が設置してあった。しばらくは川を見ながら歩道を進んだ。落ち葉が積もって、人が歩いた痕跡はほとんどなかったが、倒木もそれほどひどくはなく、十分に歩くことのできる状態だった。

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川べりの歩道を歩く

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木陰が気持ちよい

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対岸に渡る杉安橋が見えてきた

 11:14に杉安橋に到着し、一ツ瀬川を越えて杉安集落に入る。橋のたもとには旅館があったが、残念ながら営業はしていないようだった。

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杉安橋を渡る

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一ツ瀬川も美しい

 杉安集落からは2車線の道路をしばらく進み、11:31に古城林道の標識から左折して林道に進む。この林道は整備状態の良好な舗装路。両側を木々に囲まれ、快適に上り道を進む。

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杉安集落では白藤が満開

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古城林道に進む

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整備状況は良好

 11:44に九州自然歩道の地図に従って林道を右折する。舗装路から砂利道に変わり、少し嫌な予感がしたが、若干の倒木があるだけで、11:54には現王屋敷の集落に到着した。

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林道から山越えの砂利道に入る

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ときどき倒木がある程度

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すぐに次の集落が見えてきた

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絵に描いたような田園風景の集落

 現王屋敷とはすごい名前の集落だが、正式な読み方は分からない。うつつおうだろうか、それともストレートにげんおうか?王様の宮殿とかがあるわけではなく、牧歌的な風景が広がるのみ。家は数軒建っているが、人が住んでいそうな気配はない。

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現王屋敷には宮殿はなかった

 コンクリート舗装路を進み、竹尾集落で橋を渡り、山中へと進む舗装路を登り始める。坂の途中にお寺があり、木喰上人の解説が書かれていたので覗いてみた。せっかくなのでお参りしようと思って財布を出したが小銭がない。そうこうすると、社殿の隣の家の窓が開いて、女性から何かご用かと声をかけられた。大きなザックを担いで、サングラスをかけた人間が不審に映ったようだ。早々に退散した。

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竹尾集落から橋を渡る

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山中に進んでいく

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木喰上人が開山したような解説があったような

 小さな山を越え、12:20に県道22号線の2車線の道路に出て、左折してしばらく進んだ。12:37に平原(ひらばる)集落で、営業していない商店の前の自販機で飲料水を購入して小休止。行動食のビーナッツをコーラで流し込んで昼食とした。

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小さな山を越える

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県道22号線を進む

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自販機のあった平原集落で小休止

 13:00に行動再開。ふたたび県道22号線を歩き始める。交通量はそれほど多くないが、歩道のない部分が多く、大型車がときおり隣を通過する。途中でガードレールがひどく損傷したところがあったが、崖崩れの跡のようだった。

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このガードレールは交通事故ではなく土砂崩れのため

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道路の法面には満開のノイバラ(正確な種名は不明)が垂れ下がる

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そよ風が吹くとバラらしい香りが漂ってくる

 峠を越えて13:34に木城(きじょう)町に入る。南九州では、「きじょう」のように訓読み+音読みの地名のパターンがときどきあるが、なかなかなじめない。

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 舗装路をゆっくりとカーブを描くようにして下り、13:56に川原橋で一級河川の小丸川を越える。700mほど下流に川原自然公園キャンプ場がある。この川の水の色はうっとりとするほど美しい深い緑色をしている。橋の上からしばらく眺めるが、自動車は邪魔そうに大きく避けていく。

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川原橋を渡る

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小丸川のあまりの美しさに息を飲み込んだ

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下流にはキャンプ場が整備されている

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 14:00に川原集落で県道22号線から左折して山に向かう。道路は舗装路で状態は良好。坂の途中に陶然茶房なるカフェの看板が出てきた。今日はほとんど休憩を取っていないので、開いていたら休憩しようと先に進む。14:09に陶然茶房に到着。木々に囲まれたとんがり屋根のカフェ。予約のみの営業と張り紙があったが、電話をして都合が合えば開けるとも書いてあるので、その場で電話をしたら、あるもので食事も作ってくれるとのこと。奥の自宅から籠を持った女性が現れ、カフェを開けて準備してくれた。

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川原集落から左に折れて山に向かう

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カフェは閉まっているかと思ったら電話予約のみと

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素敵な外観

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調度も落ち着いている

 立ち寄って正解だった。杉を建材に使用して建てられた建物で、内装も木調で凝っている。聞けば、陶芸家のご夫婦が自分たちの作品のギャラリーのために建てたものだという。現在は陶芸のギャラリーやコンサート、本格的な台湾茶を提供するカフェとして使われている。武者小路実篤の美しき村の活動に賛同して当地に移住してきたとのこと。庭には珍しい植物をいろいろ植えていたが、全部シカに食べられてしまったと笑っていた。お茶と水餃子を頂いたが、いずれも心のこもった味がする。

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お客さんが少なかったらカウンターに座って一煎一煎楽しむのがお勧め

 女性は博多育ちの方で、話が弾んだ。台湾のお茶は6煎目まで味と香りの変化を楽しむらしいのだが、5煎目を頂いたところで荷物を担ぐことにした。

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すっきりとした味わいの台湾高山茶

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目の前で作ってくれたサラダと水餃子もシンプルで素材の味が活かされている

 カフェには2時間近く滞在してしまった。もう1時間ぐらい滞在してもよいぐらい快適だったがそうもいかない。ようやく15:54に行動を再開。景色のよい舗装路を進み、次第に高度を上げていく。

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再び山道を登る

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景色のよい山を縫うように進む

 16:30に白木八重トンネルを通過。その後は、小さな集落を過ぎるが、そのたびに右左折しながら先に進む。標識が比較的丁寧に出ているので道を間違える恐れはない。

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白木八重トンネルを越えて台地に出た

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しばらくいくつかの小集落を抜ける

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 長草集落を過ぎたら本日の目標に定めていた白髭神社はもうすぐのはず。ところが道中で出てきた標識の向きは90°異なる。地図の方を信じて進み、17:42に白髭神社に到着した。

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どう考えても間違った方向を向いた標識もある

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だんだん日が落ちてきた

 白髭神社はすこし注文の多い神社。鳥居をくぐって境内に入る前に、自分の邪な心を咎められたら嫌だなと思ったが、何事もなく参詣できたので、自分はやはり真正直な人間だったのかもしれない。

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正面に白鬚神社の赤い鳥居が見えてきた

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そう言われると心配になる

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境内の狛犬はウシとウマ

 参拝の後は、白鬚集落の田園の中を進む。野焼きの煙が周囲に漂っている。野営適地を探して、九州自然歩道のコースの舗装路を山中に向かって1kmほど進んだところで、道路脇の平らな草地を見つけて18:00に行動終了とした。

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白髭集落からさらに進む

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このあたりは自動車は通りそうにない

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海が見える草地を発見

 夕食には赤米と煮豚をアルコールバーナーで温めて食べた。煮豚はカフェで購入し、赤米はカフェで頂いたもの。フリーズドライの味噌汁といっしょに美味しく頂いた。

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美味しく晩ご飯を頂いた

 辺りが暗くなった頃から、シカがしきりに鳴いている。空には星がたくさん瞬いている。明日の朝は放射冷却で冷え込みそうだ。

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2021年4月10日 九州自然歩道 96日目 宮崎県西都市西都バスセンター 曇りときどき晴れ 17/10℃ 行動時間9:07 29.2km 41124歩

 

往路交通:

福岡空港18:25ANA4671-宮崎空港19:10/19:18-19:28宮崎(前泊)

ルートインホテル前橘通7:41-西都バスセンター8:35

2021年4月4日 九州自然歩道 95日目 宮崎県西都市上三財~西都市西都バスセンター 菜の花に彩られた古墳群を歩く

 本日は周囲が明るくなってきた5:30に、山中のテントの中で目を覚ました。まだ小雨が降っている。

 昨日は1日中ひどく雨に降られた。それに加えて、谷川を徒渉する際に転倒して膝上まで水に浸かってしまい、散々な目に遭っている。レインウェアはテントの中に一晩ぶら下げていたため、なんとか着ても良いかと思える状態まで回復した。今現在も着用している綿のズボンは本来は撥水性のものであるが、水に浸かったらその効果もないようで、冷たいまま。靴下はメリノウールでできており、まだビチョビチョ。ただし靴下は、前回の教訓から替えを持参している。靴は洗濯を終えて脱水前となったTシャツぐらいの濡れ具合。ウーム、これをもう一度履くのは勇気がいる。とりあえずコーヒーを淹れ、ビスケットをかじって朝食とした。

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とりあえず朝のコーヒー

 日の出時刻の6:00頃にテントの中で撤収作業を始め、雨が弱くなったところで外に出た。雨の中を、急いでテントを畳んで袋に詰め込んだ。テントを入れた袋からは水がしたたり落ちる。ザックの一番下に押し込んだが、ザックを担ぐと背中に水がしみてきた。ウーム、これは新感覚。例えるならば、10kgのエチゼンクラゲを背負ったような。やったことはないが。

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テントの布地がたっぷりと水を含んでいる

 6:52に行動を開始した。まだ小雨が降っているが、霧はなくなったため、南の方の宮崎平野に町が見えてきた。その向こうには海が見える。佐土原あたりだろうか。しばらく林道を歩いていると、海の方から雲が吹き寄せてきて、雲海のように町を覆い始めた。晴れても曇っても、朝の山間の光景は美しい。しかし、風景ばかりに気をとられて油断すると、水たまりに足を踏み入れてしまいそうだ。

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朝になってみると、野営地からの風景はきれいだった

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雲海に包まれる町もいい

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うっかりしていると水たまりに落ちる

 林道を歩き始めたら、シカがしきりに高い声の警戒音を発している。このあたりのシカの密度はかなり高そうだ。この山はシカの領土。彼らの縄張りに侵入する私に対して、いつまでも警戒音を止めることがない。

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シカ除けのネットに囲まれて歩くが、ネットの向こうはシカの王国

 渓流に沿った心地の良い林道を下り、7:28に清水兼(きよみずかね)集落に到着した。このあたりの水田もすでに田植えは終えている。

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心地よい山道を進む

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渓流を越える

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こんな風景も良い

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清水兼集落に到着

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ここも田植えを終えている

 先ほどの渓流は幅の広い川に顔を変えている。川に沿って歩いていると雨脚が強くなってきた。道路の脇の木の下で雨具を装着した。道路脇にはミツバチの巣箱が設置してある。このあたりではよく見かける風景だ。

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川沿いに進んでいく

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雨が強くなってきた

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道端にはハチの巣箱が設置してある

 川に沿って歩き、次の岩下集落には8:06に到着した。立派な民家の大きな庭にミツバチの巣箱が設置してあり、男性が手入れをしている。挨拶を交わして尋ねると、市役所を退職して、4年前から趣味で養蜂を始めたという。日本ミツバチの養蜂に取り組み、自力で女王バチを確保して繁殖に成功し、現在25箱の巣箱を管理しているという。西洋ミツバチよりも飼育が難しく、採蜜量も少ないとのこと。いろいろと奥深い話を聞かせてもらった。

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これが最新の25番巣箱

 さらに集落を先に進むと、道路脇に大きな黄色い花の着いた植物のハウスの手入れをしている女性がいる。カボチャの花のようだが、つる性ではないようだ。女性に尋ねるとズッキーニだという。カボチャの仲閒だとのこと。野菜としてはスーパーマーケットで見るが、植物自体を見るのは初めて。今日はいろいろ勉強になることがある。

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さらに集落を進む

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ズッキーニが咲いている

 8:17には九流水(くるす)の集落を通過。ここには商店があるが、営業はしていないようだ。8:24に吉田集落、8:31に麓集落と、順調に歩を進める。降ったり止んだりする雨だけが恨めしい。

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九流水集落を通過

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このあたりは曲がり角には標識が設置してある

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いろいろな獣害があるよう

 8:47に通過した長谷集落の先で、庭先に立つ男性に挨拶をしたら呼び止められた。仕事で森林の調査している方で、歩く格好に興味を感じたようだった。庭先ではスギ、ヒノキ、アスナロや、ナナカマドの苗を栽培している。自家焙煎をしたピーナッツを頂いた。

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長谷集落を通過

 ここからは少し勾配の強い舗装路を歩く。道路脇では、福岡ではゴールデンウィークあたりに盛りとなる藤の花が満開となっている。

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長谷から先は勾配が急になる

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峠に向かう

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すでに藤が満開

 9:40に長谷観音九州自然歩道支線)との分岐に到着した。ここには柑橘類の無人販売が設置してあった。安くて新鮮。欲しかったが持ち歩けないし、ゴミの処分にも困る。残念ながら、購入せずに後にした。

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長谷観音(支線)との分岐点

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ここの柑橘類は魅力的だった

 9:49に林道の笹々礼支線の分岐に到着した。ここは九州自然歩道の本線が2つに分かれるところ。真っ直ぐに木城町に向かって進むこともできるし、右に曲がって西都原の古墳群に寄り道をすることもできる。今回は分岐点を右折して、西都原に寄り道をすることにした。

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分岐から峠を下る

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林道の分岐点を右折して進む

 林道笹々礼支線は渓流沿いの、とても快適なコンクリート舗装路だった。雨のためコンクリート舗装が少し滑りやすいが、右手には清流が流れて気持ちが良い。途中には張り出した岩壁にシダが密生したところがあり、壁から滝のように水がしたたり落ちているのが風情があった。

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林道笹々礼支線はとても快適

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渓流に沿った心地よい道

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岩肌のシダから水が落ちてくる

 林道の上には枯れ葉が落ちていることから、交通量はあまり多くはないようで、途中で1台の自動車にも遭遇することはなかった。先に進むと道路沿いのスギの木の根元にグルリと皮を剥いだものが並んでいた。ひょっとするとこれらは近々伐採するマーキングかななどと考えながら歩いていた。

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ずーっと快適な道が続く

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自動車はほとんど通らない

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これは伐採予定の印か?

 植林部を抜けて空が見えてきたところで、急に雨が強くなってきた。10:26にちょうど農機具倉庫があったため、軒下を借りて雨宿りをした。朝沸かしたお湯がサーモスに残っている。これでカフェオレを淹れて小休止とした。

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植林を抜ける

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ひらけたところで雨が強くなってきた

 雨は依然として降り続いていたが、10:46に行動再開。ほどなく笹々礼支線は終点となり、レンゲの咲く圃場を通り、11:04に山路集落に着いた。ここからは2車線ある県道40号線を左折して進んだ。

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心地よい林道は終わった

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レンゲ畑を抜ける

 県道40号線は交通量が多い。この道を500mほど進み、トンネルの前で右に分かれる旧道を進んでトンネルの真上まで出る。

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県道40号線に左折して進む

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500mほどで脇道を右に上る

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旧道と思われる道を進む

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県道40号線のトンネルの真上に出た

 地図ではトンネルの直上で右に分岐して進むように見える。ここだと思った部分を進むと、木に赤のテープが巻きつけてある。九州自然歩道はこっちだと確信して先に進むが、すぐにひどい藪の中に突入し、その先は崩落地となり、苦労してここを乗り越えた。さらに進むが踏み跡はまったくなくなり、GPSで確認するとまったく見当違いな方向に進んでいる。15分ほどで藪漕ぎを諦めてもとの分岐点まで撤退した。

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トンネルの上で右折路を見つけて進む

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藪ではあったが赤いテープを見つけて安心

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崩落地も根性で乗り越えた

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これ以上は進めませんと感じて撤退を決意

 大幅な迂回を覚悟して、分岐点を直進して進み始めた。ところが5分ほど進んだところで、迂回していると思った山道が、GPSの上では正規の九州自然歩道であるように表示されている。狐につままれたような気分がしたが、しばらくGPSを信じて進んでいたら、ツツジが咲く野原に出て、目的地の西都原考古博物館前の駐車場に出ることができた。

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諦めて進み始めた迂回路が本当は正解だったよう

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ツツジの原に出た

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 雨にもかかわらず多くの人が満開のツツジを見に来ていた。せっかくなので、ツツジの咲く丘を登り、11:58に展望台に到着した。丘の麓には緑の草原が拡がり、古墳と思われる盛り土がいくつも観察された。

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ツツジの原は西都原考古博物館前の展望台の丘だった

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展望台まで登ってみた

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博物館と、その向こうに古墳群が見える

 12:07に展望台から行動を再開し、12:20に西都原考古博物館に到着した。とても美しい建物で、展示も豪華なのだが、どうしても興味が湧かない。なぜならば、展示には旧石器時代から古墳時代までの流れが詳しく説明してあるが、ここ西都原の古墳にはいつ頃の誰が埋葬されているのかという情報を欠いていたため。一般的な歴史ではなく、この古墳のことを知りたかったのだが、南九州の産の発掘品が並べてあっても感情が移入できない。

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博物館に向かう

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立派な構え

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3階からは古墳群が見える

 12:50には博物館3Fの食堂に行き、ランチとした。ちょうどお昼時で、混んでいるかと心配したが、すぐに座ることができた。赤米と団子汁のランチを頂いたが、団子汁には地鶏をふんだんに使ってあって、とても美味しかった。

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ランチは素朴で美味しかった

 13:17には博物館を出て、カウンターでもらった地図を頼りにメジャーな古墳を制覇しようと、西都原古墳群を歩き始めた。まずは一番北に位置する4号墳に向かう。古墳の上に登る階段が設置してあり、周囲の多数の古墳が一望できる。ものすごい数の古墳が並ぶ。

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古墳群に向かう

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4号墳の上に登ってみた

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周囲は古墳だらけ

 次は西に進み、日本最大の帆立貝型古墳とされる男狭穂塚(おさほづか)と、九州最大の前方後円墳の女狭穂塚(めさほづか)のエリアに向かう。すでに大半が散ってしまった桜並木の下を歩き、古墳の姿を見ようと周囲を見回すが、ここは宮内庁の管理地で森に囲まれた古墳の中には入れない。残念。

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桜並木の下を進む

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このあたりに巨大古墳が隠れている

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宮内庁管理地で立ち入れない

 ここからは雨にぬかるむ畦道を歩いて広い圃場を横切り、反対側の大山祇塚(おおやまづみつか)に向かう。ここは第2古墳群とされ、多数の大型の古墳が並ぶ。南の端まで歩くと、台地の上から、西都の街並みが見えた。

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反対側にも巨大古墳が多数

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古墳群は西都の北の台地の上に並んでいる

 最後は菜の花の中を抜けて鬼の窟(おにのいわや)に向かう。ここは周囲に土塁が巡らしてある珍しい形態の古墳。しかも横穴式の古墳の内部まで入ることができて大興奮。しばらくは時間を忘れてしまった。

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菜の花畑を抜けて進む

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鬼の窟が現れた

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土塁に囲まれた中はこんな具合

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横穴の中まで入ることができる

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突き当たりの石室まで入った

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 古墳を見終わった頃にようやく青空が見えてきた。古墳が築造されたとされる4世紀から7世紀頃にはこのあたりにはどんな生活があったのだろうと思いをはせながら、14:50に西都原古墳群を後にした。

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鬼の窟を後にする

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西都原に寄り道してよかった

 台地からのんびりと市街地に下り、15:16に西都バスセンターに到着。ここで本日の行動を終了することにした。

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台地から下っていく

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市内を歩き

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バスセンターに到着

 ここからは宮崎市内までバスで戻る。次の新八代までの高速バスまで1時間以上あったため、銭湯で汗を流した。バスの中で食べた宮崎名物の椎茸弁当が美味だった。

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西都から宮崎までバスで戻る

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宮崎から新八代まで高速バス

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椎茸弁当が美味しかった

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2021年4月4日 九州自然歩道 95日目 宮崎県西都市上三財~西都市西都バスセンター 雨のち曇り 24/13℃ 行動時間8:22 20.3km 31439歩

 

復路交通 西都バスセンター16:10宮崎交通バス-橘通4丁目17:05/18:23B&S-新八代20:43/20:58九州新幹線さくら408号-博多21:48