興味はあるけれどもなかなか行けない博物館や美術館がある。すこし距離があって物理的に行くのが困難であったり、テーマが少しマニアックで同行者がいるときには敬遠されてしまうような類のものだ。例えば目黒の寄生虫博物館。都心にあり、交通の便はそこそこいいものの、テーマの偏りは著しい。あるいは千葉の大網にあるホキ美術館。写実画のみを集めたことで有名な美術館だが、公共交通機関利用で都内から1時間半以上かかる立地のため、なかなか行くことがかなわない。
好きな人からは怒られてしまうかもしれないが、私にとってはこんな偏愛系博物館のひとつに位置していたのが、大宮にある鉄道博物館。鉄道ファンには有名な博物館なんだろうなとは思いながらも、鉄ちゃんマインドのない私がクリアしていなかった博物館の一つ。今回思い切って、半日の空き時間ができたので行ってきた。
場所は大宮駅からニューシャトルという新交通に乗り換えて一駅の便利な立地。駅名はそのまま鉄道博物館。まさか鉄ちゃん組合が博物館のために鉄道まで作ってしまったか、と思うほどの便利さだが、ニューシャトルの方が20年以上前に作られていて、少し安心した。
鉄道博物館駅の改札口を出ると、そこはもう鉄道博物館のエントランス。入場券売り場までのプロムナードにはすでに動輪などの展示物が並び、気分が盛り上がってくる。
大人1300円の入場料を払うと、SUICAと同じサイズ、質感の入場券を渡される。改札口を模した入場口にSUICA型入場券をタッチして改札口のゲートが開いたところで、博物館内に入場する。
最初のフロアは車両ステーションという、新旧の名車両が陳列してあるコーナー。大屋根に覆われた50m×100mはあろうかという巨大なスペースに、36台の車両が展示されている。
入り口近く、真ん中に陳列されているのが1号機関車という新橋~横浜間の日本最初の鉄道のためにイギリスから輸入された蒸気機関車。150年前の機関車がまだあるの!と素直に驚く。
その奥にはこれまた蒸気機関車のC57。これは非鉄ちゃんの私でも知っています。貴婦人ですよね。山口線の観光SLとして走っているの見たことあります。
車両ステーションの右奥には、新幹線コーナーが。懐かしのダンゴ鼻の0系がドーンとありました。新幹線計画を実現させたものの、東海道新幹線の出発式に招待されなかったといういきさつの書かれた当時の十河信二総裁と島秀雄技師長のパネルなんて、涙なしでは読めませんでしたよ。お越しの際は、ぜひお読みください。
ここまで見学したところでお腹が空いたので、あたりを見ると、なんと駅弁の販売所があるではないですか。全国各地の駅弁が、10種類以上も置いてある。ここでサケいくら弁当を購入し、ランチトレインとして設置してあるあずさの中で昼食としました。
昼食後は南館1Fの仕事ステーションに。ここには保線や、踏切などの管理系の展示や実際に動かすものがあるのですが、ここにありました。あれです。車掌シミュレーターです。京浜東北線の車掌体験ができるシミュレーターです。ここは鉄ちゃんオンリーの感が漂っています。JRの帽子をかぶり、指導役の女性の指示を受けながら、指差呼称をしてドアを閉め、車内アナウンスをして、信号確認をして、ドアを開ける。中には手順どころか、車内アナウンスを暗記している輩もいましたよ。失礼ながら重症です。すでに重症患者です。重症患者が、重症患者の車掌っぷりを動画撮影して、批評しあっているんです。ここがいちばんとんがったエリアでした。
2階に上がると、各種車両の運転シミュレーターがずらりと並んでいます。東北新幹線はやぶさのシミュレーターもありました。これは面白そうでした。時速300km越えの超高速シミュレーターです。やりたかったけど、整理券はとっくの昔に売り切れだそうです。
と、いろいろ楽しんで、4時間があっという間に過ぎました。でも一番印象に残ったのは、車両ステーションをマンツーマンで案内してくれたボランティアガイドさんですね。元国鉄マンです。しかも貨物専門。貨物のことなんてまったく知りませんでしたけど、いろいろ本当に細かなことまで教えてもらいました。鉄道への愛を感じました。
とても楽しく過ごせた半日でした。まあ、これで鉄道博物館は5年ぐらい行かなくてもいいけど。