いまから40年前のはなしをもう一つ。九州の大学に入学したばかりで、まだ大学横のラーメン屋の前を通るときは、換気扇から放出される異臭に耐えられず、歩道の端まで避けて歩いていたころの思い出。
下宿が決まり、町の中心街のダイエーで14型の赤いテレビを購入して、さっそく六畳間の畳の上に設置して見ていたときのこと。テレビに映ったのは、ギターを抱えたサングラスの男性。突然、怒鳴りだしたのがこんな台詞。
「博多ん者んな横道もん 青竹割ってへこにかく ばってん」
ラーメンのコマーシャルだが、さっぱり意味が分からない。翌日、大学で同級生に聞いてみた。
「それはね、博多の人は横着者で、青竹を割って、ふんどしに締めてみせるような意気があるんだぞ、ってこと。ちなみに、横着っていうのも、怠け者とか手を抜きたがるっていう意味ではなくて、図々しくて生意気とか、強情って感じの意味。」と解説してくれた。
これは分かるはずがない。このコマーシャルを見た非九州人は、みな大混乱に陥ったのではないかと思う。
後日、10個入りのうまかっちゃんラーメンを購入し、「九州には白いスープのラーメンがあるよ」と、名古屋の大学に進んだ高校の同級生に送ってあげた。名古屋の同級生が美味しいと感じたかどうか、返事が来たかどうかも憶えていないが。
1979年9月に九州限定の豚骨味インスタントラーメンとしてハウス食品から発売された「うまかっちゃん」は、2019年には40周年を迎えた。ご当地インスタントラーメンのパイオニア的存在だそうだ。1980年に九州の大学に進学することになった私は、まさにうまかっちゃんとともに青春を歩んできた。
大学を卒業した後には、東京のスーパーでも見かけたことがある。いまでは全国区となったうまかっちゃんだが、それにしても鮎川誠さんのコマーシャルは鮮烈だった。当時は意味が分からなかったものの、いまでも忘れられないメッセージだ。