とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2019年10月19日 九州自然歩道 6日目 英彦山~宇土浦越 

 今日は土曜日。昨日も11時過ぎまで仕事をしたが、4:20にセットした目覚ましが鳴ると瞬時に覚醒した。シャワーを浴び、機材の確認をしてから出発。

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福岡市営地下鉄 始発にも乗り慣れてきた

 5:36発の始発の地下鉄に乗り、博多駅から福北ゆたか線後藤寺線日田彦山線代行バスと乗り継いで9:12に彦山駅に到着する。新飯塚田川後藤寺とを結ぶ後藤寺線は、本数が少なく、接続も悪い。列車もディーゼルの古ーい機材。鉄ちゃんじゃないので詳しいことはわからないが、たぶんキハ147ぐらいの、さびの目立つ車体だ。JR九州は赤字路線には一銭も出しませんよという姿勢が如実にうかがわれる。日田彦山線も右に同じ。

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日田彦山線の列車 小倉~添田間の運行

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添田~日田をつなぐ日田彦山線代行バス 日田彦山線の不通区間の夜明けまでではなく、日田まで行ってくれるところが少し優しい

 彦山駅は平成29年の集中豪雨によって日田彦山線が不通になって以来、もう2年間も使われていない。現在、全線復旧するか、レールバスによる運転再開を目指すか、バス路線で代替するか、それらの費用負担をどうするかということで、JRと自治体が協議中だ。地域の住民にはかわいそうだが、JRは容易には費用は負担すまい。民営化した企業体には株主への説明責任がある。レールは赤く錆びつき、線路にはセイタカアワダチソウが茂っている。もう、この線路には列車は戻ってこないかのような荒れ方だ。名門修行地の宿坊のような駅舎が、雨の中で恨めしそうな表情をしているかに見える。

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無残に荒れた鉄路

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列車の来なくなった彦山駅 前に止まっているのは添田行きの代行バス

 雨が強く降っているため、レインコートを着て、ザックには防水カバーを装着して9:15に行動開始。まずは小石原の方面に向かう舗装道路を南に進む。前回の九州自然歩道ウォークの続きの道を目指すが、この道路は意外と交通量が多い。とくにダンプカーが多く、水しぶきを遠慮なく振りまいていく。1kmほど進んだところで、川沿いの細い道と分岐するため、迷わず川沿いを進む。交通量が少なくなってホッとする。

 1kmほど進んだところで九州自然歩道の看板が現れた。ここで彦山駅から南下してきた舗装路と九州自然歩道が直交する地点であるはずだ。看板の表示では、いままさに英彦山から進んだ九州自然歩道の上に立ち、ここから山中への入り口に折れるはずのところに立っているのだが、入り口がわからない。

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落合集落にある九州自然歩道の看板 ところが入り口がわからない

 しばらく行きつ戻りつしていると、男性が倉庫のあたりに立っている。九州自然歩道の入り口を尋ねてみると、その家の庭を通って山中に入るとのこと。どうぞと手招きされたが、まさに家の中に入っていく感じで、ためらってしまう。おそらく、ここは民家なので、九州自然歩道入り口の看板も立てられなかったのであろうが、みんな迷うはず。これまでで一番の難所だ。

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ここ!が九州自然歩道の一部

 男性に歩道の状況を聞くと、一昨年の豪雨で壊滅的とのこと。男性の家の庭を通り抜け、山中に入るが、たしかにどこが自然歩道なのかわからないほど倒木が谷を埋めている。 

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標識はあるが道はない

 倒木を踏み越え、高さ100mほどの山を越え、山の反対側に出ると、舗装道路が見える。さっき分岐したあの道路だ。再び舗装道路に入り、数戸の家が並ぶ長谷集落に入る。地図に載っていた彦岳食堂の横に出たが、残念ながらここは閉まっている。さらに1kmほど進んだところで鶏のもも肉を店先で焼いている店に到着。長谷の里食堂だ。もも肉を焼いているご主人と思われる店の方に聞くと、店内には団子汁やおにぎりもあるとのこと。

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長谷の里食堂で鶏のモモ肉を焼くご主人 気さくな方

 11:00と少し早いが、ここで昼食とすることとした。するとこれが正解。名物と書いてあった鶏もも肉は、炭火で時間をかけて焼いてあり、皮がクリスピーで香ばしい。肉もうまみを強く感じる。団子汁もざく切りの野菜がたっぷりで、テーブルのゆずごしょうがよく合う。そしておにぎり。これがうまい。聞くと、この地区の××おじいさんの田んぼで収穫されたばかりの夢つくしの新米とか。コシヒカリ系の食味で、香りがとても良い。粒がしっかりしており、甘みが強い。このおにぎりは美味しかった。1時間ほどゆっくり昼食をとった後、再び行動開始。

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モモ焼き、団子汁、白おにぎり 総額1050円

 4kmほど舗装路を進み、再び山中の道に入る。ほんの500mほどで行者杉の見物スポットに出る。ここは行者杉、王杉、境界石などの見所が集まったところ。たまたま観光できていたおばちゃんグループから、どこから来たのと声を掛けられる。にぎやかなグループだ。

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行者杉、大王杉などが立ち並ぶ

 そこから10分ほどで窯元が立ち並ぶ小石原の皿山地区。煙突から煙の出ているところもある。1軒2軒と、花器を見てみるが、わりと手軽な値段だった。小石原焼は生活雑器の作陶を基にしているからか、有田などと比べると格段にお値ごろな気がする。

 さらに進み、10km地点、小石原の中心地に位置する道の駅に12:50に到着。ここでも陶器をみて、アイスクリームを食べて、飲料水を補給した後に行動再開。

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小石原 道の駅 陶器の販売、レストランがある

 ここから嘉麻峠までの2kmほどは、ダンプカーの交通が非常に多く、歩行は危険。通行する車両の半分以上が石や砂利や土を積んだダンプカー。国交省の赤い旗をつけている。いずれも豪雨災害の復旧のための資材を運ぶためのよう。それにしても、ダンプカーが多い。

 嘉麻峠からは、舗装路を外れ山中の道に入る。山中の道にとりついたばかりのところで、高さ2mほどの白いプラスティックの棒が大量に山に立てられている。下草を刈られた山の斜面に、やり投げのやりが垂直に無数に刺さったような光景で、ひょっとしたら小石原芸術祭のインスタレーションかと思うばかりであった。近づいてみてみると、棒の中には杉の苗木が入っている。どうもこれは最近の林業の技術のよう。

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山中に銀色のオブジェが煌めくさまは、まるで現代美術のインスタレーション

 ここからは山中の道が続く。ところどころがけ崩れもあったが、1kmほど進んだ14km地点ぐらいからは、林道が並行して走り、整備状況も良好。木材の集積用か、平坦な整備地も点在している。尾根伝いの快適な山道を進むが、次第にガスが濃くなり、15:30ごろに通過した16km地点から先はひどいガスの中を歩く状況となる。歩道の状況が良いので、楽しむことができなくて残念だ。また、強い北風も吹き始めた。半袖では寒い。

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馬見山に向かう登山路 整備状態は良好だがガスで前がよく見えない

 ガスで道がよく見えなくなり、木にまかれた白テープを頼りに進むと、17km地点から山の南斜面に降りるように白テープが張られている。テープを頼りに進み、急な斜面を300mほど降りたところで地図を確認すると、南の栗河内に進む側道に入っているよう。もう一度尾根まで登りなおして、今度はテープに頼らずに、踏み跡を探しながら進む。16:55に馬見山の頂上に到着。嘉穂三山の中でもっとも標高は高く977m。一面ガスで何も見えない。ここは開けており、下草もきれいに伐採されているので、眺望がよいはずなので残念だ。

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馬見山の頂上からの眺望 ガスさえなければ!

 暗くなる前に野営地を探そうと先に進む。馬見山から先も尾根伝いの道で、北風が強く吹き付けるため、テントの設営は困難そうだ。馬見山から1.5kmの宇土浦越という峠まで来たところで、地図を確認する。ここから先も尾根伝いのため、あまりよさそうなところはなさそうなため、途中の少しでも風の弱いところにテントを設営することとした。200mほど戻ったところが、少しだけ南向きで風が弱い。若干傾斜しており、また下がゴツゴツの岩だがやむを得ない。真っ暗になる前の18:00に行動終了し、テント設営を開始した。

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翌朝撮影したテントの状況 設営時は強風のためさらに2mほど斜面側に設置している

 風が強くてテントが飛ばされそうだ。風に飛ばされそうになるのを抑えて、なんとかテントを設置。風が強くて、テントのシェルが風に押されるだけでなく、テントの下部から浮き上がるほど吹いている。風上側に横になって、テントを抑えながら携行食の夕食をとる。携行食ではお腹いっぱいにはならないが、1000kcalぐらいはとれているはず。これで夕食は良しとして、シュラフを取り出し就寝体制をとる。しかしもう一つの問題が。コースの前後は東西に走る尾根で、北風が強く吹きつけるために、コースを少し外れた尾根の南側にテントを設置したために、テントの設置場所が南に傾斜している。横になると南の谷に落ちそうだ。とくにシュラフに入ると滑りがよいため、テントと一緒に南側の谷に一直線に落ちそうにな気分がする。やむなく谷側の足を突っ張りながら就寝。たぶん、気が緩むと谷に落ちる。足がつりそうだ。

 本日最大の教訓。テントは傾斜地に設置するな。

 

2019年10月19日 九州自然歩道#4 1日目 英彦山宇土浦越 雨のち曇り 気温18/13 彦山駅9:15 宇土浦越18:00 距離21.83 行動時間7:08 平均速度3.06km/h