とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

五平餅 わがソウルフード

 死ぬ前に何が食べたいか10個選べと聞かれたら、必ず五平餅(ごへいもち)をその中に入れる。40歳から毎年、死ぬ前に食べたいものリストを更新してきているが、五平餅が10位以下に転落したことはない。それほど好きだ。

 五平餅は、中部地方の山間部に伝わる、我がふるさとの郷土料理。神社で神主さんが神事の際に捧げ持つ御幣に似ることから「御幣餅」とも表記する。

 粒が残る程度に半搗きにした米を平たい木の串に楕円形に練り付け、表面をじっくり炙って焦げ目を付けたものに、味噌と醤油をベースにした甘辛いタレを塗り、さらに炙って、タレから香ばしい匂いが漂うようになったところを横からがぶりとむしゃぶりつく野趣あふれる料理である。

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五平餅 道の駅 豊根グリーンポート宮嶋の売店で購入

 タレは店や地方によって、味噌と醤油をベースにしたものから、胡麻、胡桃、落花生、エゴマなどを含むもの、木の芽や蜂の子などを含んだものなどある。形態も、楕円形のほかに円形のもの、小さな円形のものを3つほどみたらし団子のように串に通したものを食べたこともある。

 庭の井戸の横の柿の木が切り倒される前で、葉を茂らせていたのが記憶に残っていることから、小学校4年の頃だったと思うが、父の知り合いが庭に縦1m×横50cmほどの金属の内張をした木製の四角いコンロのようなものを持ってきて、五平餅を作ってくれたことがある。コンロの中に大量の炭を入れ、新聞紙を切って着火していた。火が落ち着くのをじっくり待つ間、父たちは庭に椅子を持ち出して日本酒を飲んでいた。トロ箱のような木の箱から、あらかじめ木の棒にご飯を楕円状に練り付けたものを取り出し、コンロのワクに差し込んで、表面に軽く焦げ目がつくように焼き、タレを塗った。タレは味噌ベースの甘辛い、基本のタレであった。焦げ目のついた餅に塗ったタレが炭の上にポタリ、ポタリと落下して、焦げた匂いが鼻腔を刺激してたまらなかった。父の知り合いは、焼き上がった五平餅を、檜の葉を敷いたお皿の上にのせて渡してくれた。これまでの生涯のうちで、このとき食べた五平餅が最上の五平餅である。