とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

ハシブトガラスとハシボソガラス

 カラスは賢い。トレッキング中に昼食の食材をしてやられたことは、以前このブログにも書いているが、カラスは用心深く、思慮深く、執念深い(天山のカラス 油断大敵 2020年1月27日投稿、九州自然歩道#8 1日目 古湯温泉~ 厳木 2020年1月25日 2020年1月27日投稿 参照)

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天山山頂のハシブトガラス 虎視眈々というか鴉視眈々とラーメンを狙う

 2020年1月25日に、佐賀県の天山の山頂で、食べかけのラーメンを私から見事にせしめたのはハシブトガラス。日本で見ることのできるスズメ目カラス科カラス属としては、渡り鳥のワタリガラス(北海道・冬鳥)、ミヤマガラスコクマルガラス(いずれも九州・冬鳥)、ニシコクマルガラス、イエガラス(いずれも迷鳥)の観察記録があるが、日常的に見られるのは留鳥ハシブトガラスハシボソガラスの2種である。

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森で暮らすハシブトガラス カーカーと澄んだ声で鳴きながら飛翔する

 ハシブトガラスを漢字で書くと嘴太鴉となるが、ハシとはくちばし(嘴)のことで、ハシブトガラスは、ハシボソガラスに較べて、太く曲がったくちばしを持っている。

 ハシブトガラスの英名はJungle Crow。もともとは森林に住むカラスだったが、日本では都市部でも普通に見かける。これに対して、ハシボソガラスの英名はCarrion Crow。Carrionは腐肉という意味で、死肉を食うカラスの意で付けられたが、じつはハシブトガラスの方がどちらかというと肉食系のようだ。

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隣のマンションにときどき出没するハシボソガラス くちばしを使って燃えないゴミのドアを自力で開ける

 両者の色や形態はそっくりで、なかなか見分けがつかないが、ポイントを挙げると次のようになる。

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 非常に形態の似たハシブトガラスハシボソガラスであるが、日本では生息域がかなり重複しているが、交雑は生じていないようである。ハシブトガラスには大陸系のマンジュリカスという亜種がいるが、これが北海道の日本系のハシブトガラスの亜種であるジャポネンシスと交配をしているかを調べた研究もある。サハリンまで渡航して調査した立派な研究であるが、この2種の亜種の間にも交雑は発生しておらず、宗谷海峡に明確な境界があると結論している。

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トレッキング中に見かけたハシボソガラスの群れ

 我々の目には一見、カラスとしか見えないカラス属のハシブトガラスハシボソガラスであるが、中身は相当な年月を経て進化した大きく異なる集団のようだ。

 

 参考文献:

中村純夫:謎のカラスを追う 頭骨とDNAが語るカラス10万年史、築地書館、2018年.
松原始:カラス屋、カラスを食べる 動物行動学者の愛と大冒険、幻冬舎新書、2018年.