とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

東京建築散歩 その2 乃木坂~神宮外苑編

 今回の東京建築散歩は、地下鉄東京メトロ千代田線の乃木坂駅を出てからJR千駄ヶ谷までのおよそ5kmを歩き、12の建築物を見る旅。このあたりは巨匠の作品が林立しており、完成したばかりの国立競技場辺りをゴールにする5km、2時間程度のお散歩コースを考えてみた。

 まずは地下鉄東京メトロ千代田線に乗り、乃木坂駅で下車する。

1.国立新美術館

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 千代田線乃木坂駅の6番出口は国立新美術館に直結している。

 国立新美術館は所蔵品を持たない新しいタイプの巨大な美術館。東京大学生産技術研究所駒場に移転したのに伴って、その跡地に建てられたのがこの美術館。所蔵品なしでどうやって運営するんだよ、とさんざん新聞等で批判されていたのを思い出す。英語での表記はThe National Art Center-Tokyoで、MuseumやNational Galleryではないところが所蔵品を持たないという申し訳につながる。

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 設計は黒川紀章で、彼の最後の作品となっている。全面ガラス張りの、美しいカーブを描く建物。

2.政策研究大学院大学

  • 港区六本木7-22-1
  • 設計:山下設計・リチャードロジャース設計共同体
  • 施工:大林組・関電工・高砂熱学工業
  • 竣工:2005年2月

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 国立新美術館の正面に建つ、のこぎり屋根のユニークな形状が目を引く建物。後方の14階建てのビルも政策研究大学院大学国立新美術館のガラス張りのカーブとのこぎり屋根がよい対比となって映える。

3.東京ミッドタウン

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 国立新美術館の入り口から東を振り向けば100mほど先に高いビルが見える。それが東京ミッドタウン

 大きく5棟に分かれるが、最も大きな部分がミッドタウンタワーで、地上54階、地下5階、高さ248.1mと、2020年4月現在、東京都内で最高層のビルである。

4. 21_21 DESIGN SIGHT

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 東京ミッドタウン内の庭園に建てられたデザインのためのアートスペース。たったいま、施設名を入力する際に_(アンダーバー)がなかなか見つからなくて苦労した。読み方は、トゥーワン・トゥーワン・デザインサイト。設計は安藤忠雄

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 屋根は1枚の鉄板を折り曲げたもの。ガラスも14mの一枚のガラス。ものすごい技術が使われているよう。ちなみにこのプロジェクトの基本構想を担当している北山孝雄は安藤忠雄の双子の弟。

5.在日カナダ大使館

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 東京ミッドタウンから外苑東通りを北に1km進むと青山通りに突き当たる。ここを右に折れて100m進むと右手にプラース・カナダと称されたカナダ大使館の庁舎が見えてくる。大使館が入るのは上層の三角形部分で、1階から3階までは賃貸されている。

 設計は1929年にバンクーバーで生まれた日系カナダ人のレイモンド・モリヤマ。カナダ・トロント大学卒業の秀才で、2019年にはこの大使館で講演会を開催している。

6.草月会館

 カナダ大使館のすぐ先に見える、三角形を組み合わせたようなガラス張りのビルが草月会館。設計は丹下健三。1958年竣工の初代の草月会館丹下健三が設計を担当している。

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 草月はいけばなの流派で、現在私がお稽古に通うのも草月流。

7.伊藤忠商事東京本社ビル

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 草月会館の前の青山通り国道246号線)をカナダ大使館の方に戻り、さらに900mほど先に進むと、右手に堂々と聳える渋い色合いの22階建てのビルが見えてくる。これが伊藤忠商事東京本社ビル。

 外壁は天然石で仕上げられているため風合いがよい。サウスダコタ州産のマホガニー・レッドという天然石が使われているが、調達にはいろいろな困難があったよう。最後は自社社員を採石現場に派遣して労務管理を行ったとのことであるが、さすが伊藤忠である。

8.梅窓院

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 伊藤忠商事からさらに青山通りを200m進むと、左手に孟宗竹が植えられた参道が見える。これが梅窓院。1643年に創建された浄土宗の寺院である。現在の寺院は2003年に再建されたもので、設計は隈研吾。贅沢であるが、隈さんの事務所は同じ町内会である。

9.隈研吾建設都市設計事務所

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 梅窓院の参道の突き当たりで左を向くと、そこに見えるのが隈研吾建設都市設計事務所。ガラス張りのファサードとコンクリート打ち放しの筐体。

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 シックなデザインであるが、あの新国立競技場の設計を行い、数々の有名建築を生み出してきた事務所がこれか?と思えるほど小さい。意外と質素なのだ。

10.国立競技場

 さて、隈研吾の事務所を見たあとは、青山通りを300m引き返し、青山2丁目の信号で青山通りを横断し、神宮外苑のいちょう並木を北に進む。ここは秋の黄葉が美しい。

 200m進むと左手に東京ヤクルトスワローズフランチャイズである明治神宮野球場が見えるが、この脇を通り過ぎると国立競技場が見えてくる。デザインは隈研吾。杜のスタジアムのコンセプトを掲げ、鉄骨と木材のハイブリッド構造としている。使用する木材は47都道府県から調達している。

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 このデザインに落ち着くまでには紆余曲折があった。2012年に東京オリンピックのメイン会場としての全天候型ドーム型スタジアムの設計コンペティションが行われ、46作品が応募し、最優秀賞にはザハ・ハディドが選ばれている。その後、建築費の高騰やデザインの実現可能性等の問題が生じ、再度コンペティションが行われ、隈研吾のデザインが採用となっている。

11.三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア

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 国立競技場の脇に建つ13階建てのホテル。一見、木造かと見まがうようなデザイン。

12.東京体育館

 幕張メッセ福岡大学60周年記念館、南青山5丁目のスパイラルなどを設計した槇文彦の設計。宇宙船のような近代的なデザインで知られる。

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 東京体育館の目の前はJR千駄ヶ谷駅。これで5kmの散歩道のゴールとなる。

 

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1.国立新美術館 港区六本木7-22-2
2.政策研究大学院大学 港区六本木7-22-1
3.東京ミッドタウン 港区赤坂9-7-1
4.21_21 DESIGN SIGHT 港区赤坂9-7-6
5.在日カナダ大使館 港区赤坂7-2-38
6.草月会館 港区赤坂7-2-21
7.伊藤忠商事東京本社ビル 港区北青山2-5-1
8.梅窓院 港区南青山2-26-38
9.隈研吾建設都市設計事務所 港区南青山2-24-8
10.国立競技場 新宿区霞ヶ丘10-1
11.三井ガーデンホテル神宮外苑の杜プレミア 新宿区霞ヶ丘11-3
12.東京体育館 渋谷区千駄ヶ谷1-17-1