ヤマボウシ(山法師、Cornus kousa)はミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉高木。中国、朝鮮半島、日本の本州から琉球列島に分布する。福岡近郊でも、山中でときどき見かけるが、街路樹や公園にもしばしば植樹されている。
近縁種に北アメリカ原産のミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属のハナミズキ(花水木、アメリカヤマボウシ、Cornus florida)がある。1912年に当時の東京市長であった尾崎行雄がワシントンD.C.にソメイヨシノを贈った返礼として、日本にハナミズキが贈られ、始めて移植されたとされている。現在では、ハナミズキも街路樹としてよくみかける。
東アジア原産のヤマボウシは、江戸時代には欧米へ渡って観賞植物として栽培されている。米国の東海岸などでは街路樹や公園などで広く見られ、ヤマボウシとハナミズキを区別せずにDogwood(ドッグウッド)と呼んでいる。
ヤマボウシは6~7月に開花し、花の本体は球状の小さな黄緑色の花が多数集合したものである。しかし、花より目立ち、しばしば花弁と間違えられるのが、花の外側に4枚並ぶ白色の総包片である。たおやかなカーブを描いた大型の白い総苞片は、葉の緑とのコントラストが美しい。ヤマボウシの総包片が尖っているのに対し、ハナミズキの総苞片は丸みを帯び、先端がくぼむことを特徴とする。
雲仙市の市の花はヤマボウシ。2020年6月20日から6月21日にかけてトレッキングで踏破した雲仙一帯はヤマボウシの群生地として知られている。汗まみれではあったが、白い総苞片を具えたヤマボウシをたっぷり鑑賞することができた。
今回の雲仙市千々石から雲仙温泉街に至るコースでとくに多く群生がみられたのが、九千部岳の南側、田代原キャンプ場、吹越峠の周辺、妙見岳の北側であった。
これまで街路樹として眺めていたヤマボウシやハナミズキは、可もなく不可もなくという気持ちで眺めていたが、山に自生するヤマボウシには、楚々として自己主張はしないながらも、凜とした美しさを感じた。