とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

果物とフルーツ

 毎朝フルーツを食べているが、正確に表現すると必ずしも毎朝、果物を食べているわけではない。たとえば、今日の朝食はメロンのヨーグルトかけであるが、メロンは果物に分類されていない。

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 うっかりすると、というか日常的にはメロンは果物と呼び、お見舞いの際の果物籠の中央を占めるシンボル的な存在であるにもかかわらず、現在の農林水産省の定義ではメロンは野菜に分類されている。春の果物といえばイチゴをまず連想すると思うが、これも野菜に分類されている。農林水産省は、メロンやイチゴを野菜とするのはあんまりだと思ったかどうか分からないが、「果実的野菜」なる呼び名を与えてはいてくれるが、農林水産省の園芸作物(野菜・果樹・花き)のホームページ(https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/index.html)を見ても、農林水産省の関連団体の独立行政法人農畜産業振興機構が発行する野菜ブックを開いてみても、イチゴ、メロン、スイカは一貫して野菜として扱われている。なぜ、こんなことが起こってしまったのだろうか?

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 農林水産省の説明(https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/fruits/teigi.html)では、「園芸作物の生産振興を効果的に推進するため、概ね2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするものを「果樹」として取り扱っています。」としており、果樹の定義を定めてはいるものの、じつは果実や果物の定義は定めていない。

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 野菜の定義も難しい。農林水産省はその定義を明示していないが、「食料の百科事典」には、「野菜とは田畑で栽培され、副食物であること。加工を前提としないもの。草本性であること」と定義が書かれている。(五十嵐脩ら編集:食料の百科事典、丸善、2001年)この定義はかなりザックリとしているが、いずれもツル性の植物であるイチゴ、メロン、スイカが野菜に含まれることは間違いない。また、果樹ではないことも確かではあるが、果実かどうかは判断保留という状態である。農林水産省の生産や流通の統計について、これらが野菜として集計されているのはやむなしとしておこう。

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 果物に関して、こういった生活の実感と合わない分類が行われているのは、その語源に由来するかもしれない。語源辞典を見てみると(http://gogen-allguide.com/ku/kudamono.html)、「くだもの」の「く」は「木」の古形で、「木の物」、すなわち木の実を指したとしている。つまり、果物は語源としては「木に成る果実」というのが該当することになる。

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 「くだもの」は「菓子」と書かれたが、江戸時代には「菓子」の指すものが現在の菓子と同じsweetsの意味に転じてしまったため、果物のことを「水菓子」とも呼ぶようになった。これは現在でも使われており、ちょっと気取った和食の店では、お品書きの最後に墨痕鮮やかに水菓子と書いてあるのを見ることがある。

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 ここまで見てきたように、果物の定義はいささか難しいが、「果実」は比較的明快に定義ができる。生物学的には、果実とは被子植物の、その中に種子を含む構造のことである。つまり、花の咲く植物の雌しべの発達したものと考えれば良い。ただ、この定義によって果実とされるものには、ヒマワリの種や、あの綿毛を持ったタンポポの種のようなものまで含まれてしまう。そこでもう少し詳しく、果実とは花が咲いた後にできる、食用になるもので、種子を食用にするもの以外、という定義がよさそうである。

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 ここまで書いたところで、裸子植物はどうかと気になってきた。裸子植物といえば、スギ、マツのような針葉樹や、イチョウ、ソテツあたりを想起するが、松の実やソテツの実、銀杏などはどういう位置づけなのだろうかと気になってきた。調べてみたら、裸子植物の花には子房がなく、ふくらむ子房がないため実はできないとのこと。イチョウの場合は、胚珠の外皮が肉質化したものだとされている。でも、銀杏の周囲の肉質の部分はどう見ても果肉にしか見えないから、難しいものだ。

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 最後にフルーツfruitsについて。Oxford Languagesでは、fruitの記述はこうなっている。

The sweet and fleshy product of a tree or other plant that contains seed and can be eaten as food.
(樹木や他の植物の甘くて肉質の生産物で、種を含み、食物として食べられるもの)

これが簡単でいい。フルーツを採用することにした。