5:30に周囲が明るくなって目が覚めた。諏訪の池キャンプ場は快適だった。夜中に何度か雨がパラついていたが、木の下にテントを設営していたため気にならなかった。洗面所で顔を洗って歯を磨き、テントを撤収して6:33に行動を開始した。
諏訪の池にはすでに多くの釣り人が集まっていた。池にボートを浮かべて釣りをしている人もいる。目の前で30cmほどのブラックバスを釣り上げ、リリースしている。
しばらくは諏訪の池に沿った舗装路を歩く。交通量は少なく、快適。今のところは曇りで、気温は上がらず、歩きやすい。
2kmほど進んだところで、舗装路から山道に入る。両側が畑で、見通しが良い。植えられているのはジャガイモだろうか。ところどころ踏み跡のない道があるが、だいたい歩きやすい。山の向こうに有明海が見える峠を越したところで雨が降り出したので、ザックにカバーだけ付けた。何度かスイッチバックを繰り返して坂を下り、小谷集落に着いた。
この集落は車がほとんど通らないようなので、道路の脇に椅子を出して、シリアルの朝食を食べ始めた。すると手に清掃道具を持った5、6人の女性が山の上の方から下りてきた。また、草刈り機のエンジン音も聞こえ始めた。今日はこのあたりの草刈りのようだ。
朝食を終えて、行動を再開する。しばらくはよく整備された舗装路を歩いたが、ほどなく脇の山道に九州自然歩道が分かれた。整備状況の悪い暗い道で、いやな予感がしたが、すぐに日当たりの良い道に変わりホッとした。この辺りは、山間部の奥の方まで水田が開墾されていた。作業中のおじさんに挨拶して、植え付けた品種を聞くとヒノヒカリとのこと。とても田植え機の入ることのできないような、奥まった、変形の田んぼなので、手植えだろうと思って尋ねると、小型の機械で植え付けたとのこと。人手がないので、維持は大変そうだ。
川沿いの道をさらに進み、9:40に山口集落に着いた。このあたりでだいたい7kmと、本日の行程の半分ぐらいを歩いたことにある。この集落にはどぶろく工房という造り酒屋があった。清酒は生産せず、どぶろくだけのよう。まったくお酒は飲まないが、珍しいので、小さな瓶があったら1本だけ買おうかと覗いたが、誰もいないようなので諦めた。
山口から、しばらく舗装路を進むが、再び田んぼの中の道に分かれ、さらに山の中に入っていく。ちょうど口之津の北にある愛宕山の麓をなぞるようなコースを描いている。アップダウンはそれほどなく、周囲の景色を楽しみながら残りの数キロを進む。
残り2kmぐらいの地点で、口之津の港が見えてきた。道路の脇の民家で、大量のブラシのような物を洗っている人がいたので声をかけてみた。ブラシのような物は、メダカが卵を産み付ける支持体とのこと。見てみると、庭中にメダカの水槽が並べてある。大量に育てているのは、突然変異で色のついたメダカを掛け合わせて、新しい色のメダカを作るためとのこと。
ゆっくりとした坂を下り、町の中に入った。交通量は多い。港に着いたところで、停泊しているフェリーに近づいてみると、フェリー乗り場は新しい建物に移動したとの看板がある。
200mほど先に、新築になったばかりのターミナルが見える。ちょうど、天草からのフェリーが入港してきた。フェリーが接岸するのを眺め、ターミナルに入ったのが11:35。これで九州自然歩道トレッキングの長崎県は終わりとなった。
ターミナルの中の食堂でランチを済ませた。まだ時間がたっぷりあるので、ここからは付録で、まずは以前から行きたかった果樹試験場(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター 口之津カンキツ研究試験地)に行ってみることとした。ターミナルからはだいたい3kmほどの舗装路。ターミナル内には大型のコインロッカーがあるので、水と文庫本と財布だけサブザックに移し、バックパックはロッカーに入れて歩き始めた。果樹試験場についたのが13:02。古ぼけた建物だが、ここがデコポン発祥の地かと思うと感慨が深い。敷地の奥の方には、ビニールハウスが並び、山の上まで柑橘系などの緑が続いている。
ここからさらに海に向かい、海岸沿いのアコウ群落を見物した。アコウとは、ガジュマルのように気根を出すイチジクの一種。このあたりのアコウは巨大で、天然記念物に指定されている。
さらに、瀬詰崎、長崎鼻とめぐり、口之津の半島をぐるりと1周してしまった。瀬詰崎からは、次の目的地の天草がすぐ目の前に見える。頑張れば泳いで渡ることができそうなぐらい。次回の天草を楽しみにしている。
2020年7月5日 九州自然歩道#14 2日目 雲仙市小浜町 諏訪の池~南島原市口之津 曇りときどき雨 気温24/20 距離14.5km 行動時間5:02 平均速度4.0km/h 34516歩