トレッキングのコースはほとんどが山中で、だいたい自作の山メシを食べている。美味しいものを食べられる機会はほとんどない。
2020年7月11日はたまたま天草市の本渡の市街地を通過するコースで、しかもそこに大学の同級生が住んでいるため、自宅にお世話になることができ、トレッキング中に畳の上で寝ることができた。また、その日の夕食までご馳走になった。友人宅にお世話になったその日の晩ご飯に連れて行ってもらった店がここ。
商店街の路地にある小さな店で、カンターとテーブル席が3つほど。大将がカウンター越しに仕事をしているのが見えるような、ごくありふれた居酒屋のような佇まい。事前に友人が予約をして、美味しいものを注文してくれていたよう。
まずは先付け三種が出てきた。タコは天草の名物で、間違いなく美味い。白身魚を酢味噌で食べるが、これも美味い。
次にウニが出てきた。醤油が出てこないところを見ると、ウニそのものの味を楽しみなさいという意図だろう。めったに食べることのない赤ウニのよう。甘みが強く、濃厚なこってりとした味。たしかに醤油をつけたらもったいない味だ。
次の皿までにしばらく時間があるため小鉢が出た。ハモの卵だ。めずらしい。プチプチした食感が心地よい。出汁で軽く味付けしてある。
お造りがきた。白身はコチ。これも福岡ではめったに出てこないが、淡泊で上品な味。金目鯛は皮を軽く炙ってある。イサキも美味しい。タコ、赤イカは天草では間違いなく美味しい。マグロの希少部位であるノウテン、ホホ肉も出てきた。トロリとした食感で脂肪の甘みが強い。アジも美味しい。とどめがカンパチ。この弾力はすごかった。活きがいいというか、いまここで釣りましたというぐらいの食感だった。
このあとでハモの湯引きが出てきたが、カンパチのインパクトが強すぎて、写真を撮るのを忘れてしまうほどだった。ハモの湯引きは梅肉で頂いた。ハモは天草でもよく水揚げされるとのこと。骨切りなど調理に手間がかかるため、九州ではあまり食べる習慣がないため、多くは関西圏に出荷されているよう。
最後が岩牡蠣。これがあの夏に食べる岩牡蠣ですか?と聞き返してしまうほど巨大だった。味もクリーミー。これも他所ではなかなか食べられるものではないだろう。至福の一時だった。
さすが天草の海産物はレベルが高い。でも、天草ならどこでもこんなハイレベルのものが出てくるかどうかは分からない。なんとこの店はミシュランプレートに選定された店だったからだ。
福岡から33日を歩き継いで到達した天草だが、友人との十数年ぶりの再会もでき、最高の夜だった。