周囲が明るくなりはじめる5:00に目が覚めた。今日もやっぱり雨。幸い屋根があるので、濡れずに撤収作業ができる。これまで2日間も雨の中で過ごすと、濡れているのが当たり前ぐらいの気持ちになってきた。今日は天草の島内を歩く最終日になるので早めにスタートしたい。目標は松島の温泉。テキパキと撤収作業を終え、雨具をきっちり装着して、6:00に行動を開始した。
白嶽からは崖のエッジ部分をしばらく歩く。晴れていたら見事な眺めだろうなと思いながら、ときどき雲の切れるときに写真撮影を試みるが、カメラがずぶ濡れになる。濡れた指ではシャッターがなかなか下りない。ここは東の八代海に面した山の斜面が山崩れを起こしたかのように切り立っているため、稜線からの眺めが頗る良いだろう。
7:25に蕗岳(つわたけ)との分岐に到着した。蕗岳も眺望が良いらしいが、今日はダメだろう。片道10分以上の道のりで体力を消費したくなかったので今回はスキップ。少し進んだところに四阿(あずまや)があったため、荷物を下ろしてシリアルの朝食とした。最初は真っ白な風景だったが、ガスが晴れてくると美しい景色が広がる。このルートは晴れた日に歩きたかった。
さらに山道を1時間半ほど歩く。時折、これでもかというぐらい雨が降る。そんなときは無理をせずに木の下でじっと考え事をすることにした。たとえば、山中の標識で××まで0.6kmと書いてあったのに行けども行けども目標にたどり着けずヘトヘトになって地図を見ると確かに地図上の直線距離は0.6kmぐらいで実際には50回ぐらい小さなスイッチバックを繰り返しておまけに等高線が15本ぐらいあったりしたときに、標識に表示する目的地までの記載はどうしたら登山者に親切か?などということである。
そうこうしながらさらに1時間半ほど歩き、9:04に牟田峠に到着した。ひさしぶりにアスファルトの道路に出た。今日もイノシシには2回遭遇したが、アスファルトの道の上では遭遇する機会はかなり減る。そういえばこの48時間、ヒト科のヒトという動物に会っていない。まあ、まだ寂しくはないが。ほんの200mほどアスファルトの道路を歩き、ふたたび山道に入った。この山道は路盤が整備してあり、けものみちよりも数段歩きやすい。
30分ほど歩いて金毘羅山(260m)に到着した。さらに30分ほど歩くと金比羅神社が現れた。木々の間から町が見えてきた。人には会わなくても結構なので、水が欲しい。龍ヶ岳以降補給がまったくなかったので、水がなくなってしまっている。渇きはつらい。
金比羅神社から45分で茶屋峠に出た。舗装路と交わり、大きな浄水場があるが、残念ながら自販機は見当たらない。ここから天草最後の山となる高舞登山(たかぶとやま、116m)への登り口に入る。登山道は良好に整備してあり、30分ほどで頂上に着いた。頂上には展望台があり、天草五橋がすべて視界に入る。それにしても島々の浮かぶ天草の海はきれいだ。
この景色を楽しみながら、最後の水で天草最後の山コーヒーを淹れる。ついでに誰もいない展望台で雨具を乾かす。
ここから先は町に出るだけなので、雨具は要らないだろうと思ったら大間違い。高舞登山から国道までのわずか800mほどの山道だが、たぶんここしばらくは誰も歩いていないと思われる荒れようだった。蜘蛛の巣に藪漕ぎに泥道。雨具をつけておけばよかったと思ったが後の祭り。国道に出たときは上下とも蜘蛛の巣と泥まみれになってしまった。
上天草島最北端の合津(あいつ)の町は温泉と漁港の町。松島温泉の足湯があったため浸かってみようかと思ったが、ふやけ切った足が靴からなかなか抜けないため断念。とりあえずランチとすることとし、海鮮丼を頂いた。
ランチのお店で立ち寄り湯をしているホテルを聞いて、近くの松島観光ホテルの温泉に浸かりに行った。大浴場にただ一人。ゆっくりと手足を伸ばして極楽極楽。
2020年7月26日 九州自然歩道 36日目 熊本県上天草市白嶽~上天草市松島 雨ときどき曇り 気温27/24 距離11.3km 行動時間8:10 平均速度1.8km/h 25449歩