とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

さらば西日本シティ銀行本店

 博多駅の博多口を出ると正面左に見える赤いビルが1971年竣工の西日本シティ銀行本店。ビルといえばグレーや白といった無難な色使いが多いが、インド砂岩でできた赤い壁は博多駅の玄関口に並ぶビル群の中で今なお圧倒的な存在感を放っている。

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 設計は大分県大分市出身の磯崎新(1931~)。東京大学工学部建築学科を卒業し、大学院では丹下健三研究室に所属。研究室には天神の福岡銀行本店(1975年竣工)を設計した黒川紀章が同時期に在籍している。

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 1967年には設計を手がけた大分県立大分図書館が竣工し、すでに名を成しているが、当時の福岡相互銀行頭取であった四島司氏は、まだ30代だった若き磯崎氏に全幅の信頼をおいて自由に設計を任せたよう。残念ながら内部に入ったことはないが、細部まで意匠を凝らした美術館のようなフロアが展開しているとのこと。

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大分県立大分図書館 (磯崎新 設計)

 ところが現在、福岡市は再開発が進む。天神地区に引き続き、博多駅周辺でも容積率を緩和して再開発を推進しており、耐震にも問題のあった西日本シティ銀行本店の建て替えが決定してしまった。

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 現在のビルに使用されている象徴的なインド砂岩の壁を移築する案も出されているよう。しかし、すでに足場を組まれたビルを見ると、一つの時代が終わりを告げたような気がしてくる。

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1971年の施工も大林組だった