山を歩いていると、不法投棄されたゴミをよく目にする。人里からほど近いところが多い。幹線道から林道にすこし入った斜面で、木々や藪で隠れているところに廃棄されている傾向がある。
不法投棄には自治体も対応に苦慮しているのだろう。不法投棄を警告する立て看板はところどころで目にする。ゴミの内容から当事者を探し出して処理代を請求するぞ、と警告する看板も見たことがある。深刻な状態だ。
昭和四十六年政令第三百号の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」により、罰則(5年以上の懲役もしくは1千万円(法人は3億円)以下の罰金またはこれらの併科)を課せられることもあるのだが、いまだに新しい看板が建てられているのを見るということは、不法投棄が根絶してはいないことを示している。
話題が変わるが、最近は、たとえば公園や公共施設でも、ゴミを持ち帰るように求める案内を目にする。そもそも公園等の公共の場所のゴミ箱が撤去されていることも多いような気がする。
駅などでもそうだ。私の記憶では、911テロの後、所有者の分からない不審物に対する注意喚起がなされるようになったのと時を同じくして、駅のゴミ箱も使用できなくするような処置を施されるケースが増えてきた。いまでは構内に1カ所もゴミ箱がないという駅も珍しくなくなってきた。
ゴミ箱に関連するセキュリティの問題だけではなく、環境意識の高まりや、ゴミ処理に対するコストの問題や、人手の問題などもあるだろう。高速道路のサービスエリアでは、家庭ゴミの持ち込み厳禁と明記されている。キャンプ場などでも、ゴミは持ち帰りましょうと案内されていることも多い。駐車場に面した外部にゴミ箱を設置していたコンビニでも、最近は店舗の中にゴミ箱を移動していることが多い。
ところが長期間のトレッキングをしていると困るのが、ゴミの問題。食料のパッケージや果物の皮などのゴミが次第に増えてきて、バックパックの中で大きな容量を占めてきてしまう。
家でトレッキング中の食料を準備する際には、外装の袋から取り出して1食分ずつジップロックに詰めるなどしてゴミが出にくいように工夫しているのだが、数日にわたるトレッキングになると、ルート中にある店舗で食料を購入して、補給を行うこともある。トレッキングのコースをあらかじめ検討してみて、このあたりで食料が購入可能と思われる場合は、携行する食料を減らして、荷物の重量が軽くできるので、トレッキングが快適になるのだ。
店舗で購入したばかりの食料は、たいてい外装や個別包装があるため、ゴミの量も増えてくる。しかし、山の中はもちろん、市中でもゴミ箱がなくなってきている。街の中で暮らしているときにはまったく気にならなかったが、山の生活が長くなると、ゴミ箱がないということが気になり、困ったこともおきてきた。
ゴミ箱が町にないと、トレッキング中は食事のたびに発生するゴミをずっと持ち歩くことになってしまい、最終日にはかなりの量になる。数日分の食料の入った重いバックパックを背負うのはもちろん身体に応えるが、それらを消費した後のかなりの重さとかさのあるゴミをバックパックに入れたまま人通りのある町を歩くと、重さ以上に心に堪える。
これがトレッキングの際のもう一つのゴミの問題だ。
正直に言ってしまおう。トレッキング中に大きな荷物が気になった人から声をかけられ、「福岡から歩いているんだ、すごいねー」とか言って缶コーヒーを渡されたことがあるが、もらった瞬間に空き缶のことが気になって仕方がなかった。
「すごいねー」のあとに「ところでゴミがあったら持って行こうか?」と付け加えてくれると、神に見える。