とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2020年10月25日 九州自然歩道 60日目 鹿児島県伊佐市大口笹野久七峠~伊佐市大口里 大口盆地には稲わらロールが似合う

 鹿児島県境を越えた最初の朝は6:00に目が覚めた。人吉と大口を結ぶ久七(きゅうしち)峠は、2004年に久七トンネルができたため、おそらく地域の人しか使わないのだろう。昨日から1台の車しか通行していない。道路の状態は良好なため、頗る快適である。本日の天気も晴れ。気持ちよく撤収を進め、7:06に行動を開始した。

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峠の朝

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こんな素敵な道を独り占め

 1kmほど下った道路脇に滝があった。ここで顔を洗い、歯磨きをした。修行僧のようだなと思いながら。ここまで千キロ以上歩いたが、ときには修行のようだったなと振り返る。

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滝で顔を洗う

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 2kmほど歩いたところで7:36に国道267号線と合流した。ちょうどここは久七トンネルの出口になっている。4kmにもわたるトンネルを歩くのも一興かと思ったが、このトンネルは歩道が狭い。もし通過する機会があったら、早朝の車の少ない時間にすべきかと思う。トンネルの中はものすごくうるさいからだ。

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久七トンネル 3945mある

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 国道267号線をまっすぐ伊佐市に向かって進む。だんだん日が差し込んできた。交通量はそれほど多くなく、5分に1台程度の車で、気持ちよく歩くことができる。しだいに家が見えてきて、道路脇にも鹿児島到着を迎えてくれる看板が現れてきた。

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 伊佐市の中心は大口盆地にあり、穀倉地帯として知られる。また、盆地は霧が多発するところでもある。今日も快晴の夜に放射冷却で冷やされた盆地の空気が霧となって流れ出してきた。幻想的な風景だ。もったいない。誰かにも見せてあげたい。

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 国道267号線を3kmほど進んだ木の氏(きのじ)の集落で8:23に右折して、牛尾集落への山道に入る。1.5kmほど進むと工場が現れてきた。大口電子と書いてある。半導体関連の工場のようだ。もともとこの地域には金山があったようで、それを標した石碑も残されていた。そういえば大口盆地の反対側には高品位の金が産出することで有名な菱刈金山があったなと思い出す。

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牛尾集落に向かって右折する

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大口電子の工場

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大口金山の石碑

 牛尾の集落を進むと、配給所前というバス停があった。戦時中の名残なのだろうか。四角い無愛想な建物が今でも残っている。この後、集落の中を何度か右折するが、その都度、曲がり角ごとにていねいに標識が設置してあり、迷うことはない。鹿児島県内に入ってから、九州自然歩道の標識がずいぶん親切になったような気がする。牛尾集落では牛舎や田園風景を楽しみながら歩を進めることができた。

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 9:35に十曽(じっそ)池に到着した。十曽池には公園やキャンプ村が併設しており、のんびり過ごせそうだ。公園の水道を使って、昨夜の夕食で使った食器を洗ってさっぱりした。

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 十曽池の公園ではコーヒーを淹れて1時間ほど小休止。ビスケットの朝食を摂って、心地よい朝の時間を過ごした。

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 10:30に行動を再開し、大口盆地の北の縁に沿って歩き始めた。途中でキャンプ場とブルーベリー農園を見つけた。

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シャロームキャンプ場

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 十曽池からは南西に伸びる道をまっすぐに進み、山野という大口盆地の北の外れの集落に着いた。ここには1988年まで水俣から栗野まで運行されていた国鉄山野線の駅の跡がある。たまたまだが、山野線には1987年の10月頃に栗野から大口まで乗車したことがある。なんとなく懐かしいような、寂しいような気持ちがした。鉄道がなくなった町は、火が消されたように元気がなくなってしまう。

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 国道268号線を横切り、十曽川にかかる大代橋を渡って大口渕辺の集落に進む。大きな圃場の向こうには黒園山が見える。田んぼの中の道を歩いていると、市長選の選挙カーが向こうからやってきて、窓を開けて「国勢調査か?」と聞かれた。まさか、今の世に太閤検地のように租税を決めるための田んぼの調査はしていないだろう。ひょっとしたら地籍調査のことをいいたかったのかもしれない。選挙カー氏は、福岡から歩いている途中というとしきりに感心してなかなか話が止まらない。まあ、不審者と思われるよりは良いことだと思いながら話しに付き合う。選挙カー氏からは、この先の鳥巣集落に、旧式発動機の収集で有名な人がいるから訪れるように勧められた。

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 それにしても淵辺の集落はのんびりしたところだ。圃場の各所に置かれた稲わらロールがよく似合う。集落には穀倉地帯によく見られる用水路が整備されている。

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 12:50に鳥巣の集落に到着した。しばらく発動機氏の家を探し、15分ほど歩いたところでようやくみつけた。ここでは30分ほど各種の発動機を見学させてもらい、大口の歴史などについて教えてもらった。昨日越えてきた久七峠は冬は降雪の多いところで、スキー場建設の計画もあったほどだという。昨夜は寒かったはずだ。

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レストアを済ませて大会に出展した発動機とのこと

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 発動機氏の家を辞した後、14:00ごろに伊佐市の中心地となる大口里に到着した。市内を見学した後、14:25に昼食のために台湾料理店に入り、ここで本日の行動終了とした。

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羽月川を渡って大口の中心地に向かう

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大口歴史民俗鉄道記念資料館

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昼食にはたっぷりの台湾料理

 その後は、16:00の南国交通バスに乗って、新水俣駅から博多に帰る予定だったが、バスの終点は新幹線の新水俣駅ではなく、その先にある肥薩おれんじ鉄道水俣駅だと知って、終点まで乗ることにした。水俣の町は初見。水俣といえば、と言ったら地元の人は気を悪くするかもしれないが、チッソを見ておきたかったからだ。ここまで来たら、ミナマタという名を世界に広めることになってしまったチッソ株式会社を見ないで帰るわけにはいかない。水俣は、やっぱり悲しく寂しい海の町だった。

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2020年10月25日 九州自然歩道 60日目 鹿児島県伊佐市大口笹野久七峠~伊佐市大口里 晴れ 気温22/3 距離24.4km 行動時間7:23 35418歩

復路交通:

南国交通バス 大口八坂神社前15:57-水俣駅前16:52/肥薩おれんじ鉄道 水俣17:48-新水俣17:53/九州新幹線つばめ338号18:04-博多19:20