とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年2月27日 九州自然歩道 86日目 鹿児島県霧島市霧島神宮~宮崎県えびの市えびの高原 いたるところから噴気が出るこの地を歩いたら、ここが日本発祥の地だというのがまんざらでもなく思えてきた

 今日は2週間ぶりに九州自然歩道に復帰。残念ながら先週末は仕事のため、トレッキングができなかった。今回は鹿児島県の北の端の霧島市からのスタートだが、じつは霧島神宮あたりから九州自然歩道の本線は2つに分かれる。1つは霧島神宮から霧島連山の間を縫って北西に進んで大浪池(おおなみのいけ)まで至るコースで、この先は宮崎県に入る。ただし、九州自然歩道ポータルサイトの宮崎県の地図には大浪池以北のコースは記載されていない。また、先行する九州自然歩道イカーの方々の中で、霧島神宮からえびの高原にかけての本線について触れた記事を見たことはない。

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九州自然歩道の本線は霧島神宮の北で2つに分かれる

 もう一つの本線は、霧島神宮から高千穂河原に向かって北東に進み、高千穂峰を越えて宮崎県を北上していくコース。こちらのコースは多くの先行者が通過し、多数の記録があり、どうみてもメインのコースのようだ。しかし今回は、霧島連山の北部を歩いてみたい気持ちもあり、地図上では行き止まりとなる霧島神宮から大浪池に至るコースを歩き潰すことにした。

 博多から九州新幹線に乗り、鹿児島中央駅日豊本線の特急きりしまに乗り継ぎ、霧島神宮駅には9:36に到着した。今回はJR九州のみんなの九州きっぷ(全九州)を利用した。これは新幹線を含めたJR九州の列車に土日だけ乗り放題で1万2千円という破格の割引切符。博多-鹿児島中央の新幹線の片道料金だけでも1万円を超えるので、この切符がいかに割安か分かると思う。どういう経営戦略でJR九州はこんな割引切符を販売しているのか意図が分からないが、3月末までの期間限定で提供されるこの切符を、九州自然歩道トレッキングに活用させてもらおうと思う。

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今回はいつもより1本遅いさくらに乗車

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鹿児島中央からは特急きりしまに乗り換え

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桜島を眺めながら進む

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霧島神宮駅はなかなか魅力的

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JR九州には大感謝

 さて、JR霧島神宮駅からは9:51に鹿児島交通バスに乗車して、10:04に霧島神宮に到着し、行動を開始した。まずは表参道の階段を上り、10:19に霧島神宮に参拝した。参拝客はあまり多くない。気温は12℃とそれほど寒くはないが、風が強く、神社の周囲の木々の上の方が激しく揺れている。

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霧島神宮バス停前

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まずは霧島神宮に参拝

 参拝を終えた後は、そのまま霧島神宮の境内を西に抜けて九州自然歩道の標識に出て、10:23に高千穂嶽道を歩き始めた。ここは今回のルート上の唯一の1km足らずの非舗装路。先行者のレポートでは、標識がなくて迷ったとか、藪漕ぎでヘトヘトになったとか、散々なことが書かれていたので、覚悟を決めて進んだのだが、意外なことに整備状態は良好。ときどき踏み跡が怪しいところもあるが、そんなところには赤テープが丁寧に括り付けられており、まったく道に迷うことはなかった。30分ほど歩いて、10:47に湯の野に続く舗装路にあっけなく合流した。高千穂嶽道は最近整備がなされたか、あるいは草木が少ない時期だったからか、意外なほど楽に通過できた。

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霧島神宮境内脇から九州自然歩道に復帰

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高千穂嶽道(おたけみち)の石碑が建てられている

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整備状況は良好

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ほとんど迷うところはない

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ほどなく舗装路に合流

 ここからは舗装路を歩く。右手に別荘地と思われる霧島神宮台の看板が出てきた。その先に、多数の駐車車両がある駐車場があるなと思ったら星野リゾートだった。霧島の奥まったところに、攻めたホテルだ。

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交通量は多くない

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落ち着いた宿だと思ったら星野リゾート

 このあたりの交通量は少なく、舗装状態もよく、快適に歩くことができる。風が強いにもかかわらず、至るところで硫黄の臭いが漂ってくる。道路脇から噴気が出ているところがあり、高温のお湯が吹き出ていた。お湯の流路には湯の花が着いていた。どこを掘っても温泉が出てきそうだ。しかし、こんなところにテントを張ったら、寝ているうちに硫化ガスで天国行きになってしまうかもしれないと、チラリと頭をよぎったりもした。

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眺めも良好

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道路脇から高温のお湯が吹き出る

 汗もかかないまま舗装路を歩き、11:22に千里が滝への分岐に到着した。滝までは800m。予定時間よりも1時間早く進んでいるが、地図を見ると等高線が10本以上並んでいる。どうしようか迷ったが、左折して滝に立ち寄ってみることとした。500mほど細い舗装路を歩き、駐車場の先からはコンクリートの階段を進んだ。水力発電のためと思われる送水管が平行していることから、このコンクリートの階段は発電所のメインテナンスにも使われているようだ。落石が激しいのか、ところどころは覆道になっている。

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千里が滝にはまず狭い舗装路を進む

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橋の上から美しい水を眺め

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送水管に沿った階段を降りていく

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ところどころは覆道になっている

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明かりとりが開いているので心配は要らない

 11:50に千里が滝が一望できる階段に到着したが、思い切って行ってよかった。50mほどの落差のある滝で、緑色の滝壺に向かって白い筋を引いて落ちていく様が見事。さらに200mほど階段を下りると発電所と思われる施設が現れた。発電所下流の堰堤に堰き止められてできた淵は碧色の水にクリームを流したような色で、小さな滝から淵に落ち込むところが幻想的に見える。階段の上り下りにはたっぷり汗をかいたが、等高線を越えた価値は十分にあった。

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滝は素晴らしい

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滝からさらに300mほど進んで発電所の淵も見て欲しい

 12:06には千里が滝分岐に戻り、ふたたび舗装路を歩く。12:18に国民宿舎みやま荘に到着した。みやま荘は現在は閉鎖されているようだ。新燃岳から3kmの圏内に入っており、噴火による規制などの影響だろうか。国民宿舎の前に設置された避難壕を風よけにして、ここでおにぎりと味噌汁の昼食とした。目の前にはシカに餌を与えないでという看板が立てられている。それだけシカが多いのだろう。

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みやま荘に到着したが閉館していた

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入口脇には避難壕

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こんな看板も

 みやま荘の避難壕からは12:30に行動を再開し、12:34に湯の野の三叉路に到達した。この三叉路で霧島神宮からの道は県道104号にぶつかり、西に進めばえびの高原に、東に進めば高千穂河原に向かうことになる。次回歩く予定の東方向の高千穂河原線は新燃岳から半径2kmのギリギリなので、通行できるかどうか気になったが、現在は通行できそうだった。今回は湯の野から県道104号線を西に向かって、えびの高原に進む。

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湯の野で県道104号線に合流

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湯の野三叉路の案内標識

 湯の野の川向こうからは噴気がモクモク吹き出している。河原からも噴気がたなびいており、川自体もクリーム色がかったグリーン。谷全体に硫黄の匂いがする。道沿いに砂防ダムでできた滝があったが、これが見事な色合い。河原まで下りて水が温かいかどうか直に触れてみたかったが、残念ながら下り口がない。いつもならば殺風景なだけの山中の砂防ダムも、ここでは芸術的にすら見えてくる。

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川の向こう側では噴気がすごい勢いで流れている

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川の色もクリームがかっている

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砂防ダムですら芸術的に感じてしまう

 湯の野から先は傾斜が少し急になり、稜線に近づいてきた。風は強くなり、ときどき吹きつける風に身体が揺れる。正面には新燃岳の頂上が見えてきた。頂上近くの西の斜面からは噴煙が吹き上がっている。いかにも生きた火山だ。最近では2011年に爆発的噴火を起こして、被害を生じたのが記憶に新しい。

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正面に新燃岳が見えてきた

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山頂の西側から噴煙を吐き出している

 県道104号線をさらに進んで行くと、13:03に道路の右手から盛んに煙が出ている谷が見えてきた。ここだけ植物が生えていない。この谷は灰色の岩石で占められ、黄色の模様が地を這うようにうねっている。おそらく硫黄だろう。黄色の強い辺りから激しい噴煙が出ている。

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谷全体に噴気が満ちていた

 硫黄の谷間から3分ほど歩いたところに新湯温泉の看板があった。秘湯の西の大関とのこと。東の大関はどこだろう。立ち寄ってみたかったが、ここはぐっと我慢して先に進んだ。

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いつか立ち寄りたい新湯温泉

 13:09に県道1号線との三叉路に到着した。1号線を左に曲がれば丸尾温泉をはじめとした霧島温泉郷、右に進めばえびの高原。今日は県道1号線を右に、えびの高原に向かって進む。ここで霧島連山巡回バスとすれ違った。バス停で時刻表をのぞいたときに、天候によっては予告なしに運休することもある、という恐ろしい文言があったため、この強風で運行しているか心配であったが、現在のところは運行されているようで安心した。

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新湯の先で県道1号線に合流する

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ゆっくりと傾斜した舗装路を進む

 13:39には県道1号線上にある大浪池登山口に到着した。道沿いにある駐車場には数台の車が停めてある。登山口にあるシェルターに入って、風を避けながら考えた。今日の予定では、大浪池登山口から県道1号線を歩けば目的地のえびの高原まであと4kmでゴールだ。14:30ごろに到着するため、16:00のバスの時間まで1時間以上持て余してしまう。それでは大浪池に立ち寄るのはどうだろうか?大浪池登山口から大浪池まで50分の上りの行程だ。少し急げば往復も可能だが、このコースは明日歩く予定なので、往復するのは無駄な気がする。大浪池から戻らずにえびの高原に向かうコースもある。コースタイムの合計は4時間弱。今から走ればコースタイムを2時間に縮められるため、16:00えびの高原発のバスに間に合うはず。しかも今日は山頂に雲がかかっていないため大浪池も韓国岳もきれいに見られる。こんな考えが頭の中を駆け巡ったが、今日はあまりに風が強く、コース上の稜線部分はとても走れそうにない。素晴らしい思いつきだと思ったが、えびの高原から宿泊予定の丸尾温泉まで行くバスは16:00が最後。もし乗り遅れたら10km以上歩くという悲惨な目に遭う。今日のところは冒険はやめて、県道1号線を進むことにした。

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大浪池登山口に到着

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登山道は素晴らしく美しく整備されている

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駐車場もたっぷりある

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シェルターの中で今日の行動をしばし考えた

 木々の向こうに韓国岳の頂上が見えてきた。標高は1700m。森林限界を超えた頂上付近は風が強そうだ。14:29に大浪池からの分岐点を通過し、宮崎県境を越えた。道路の左にはえびの岳登山口が見え、その向こうには広い芝生のグラウンドがある。ここがえびの高原キャンプ場のようだ。広く、快適そうだ。残念ながら今はシーズンオフ。また、隣接したところにある国民宿舎えびの高原荘も改装のため営業を止めている。

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韓国岳が見えてきた

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宮崎県に入った

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快適そうなキャンプグラウンドが見える

 キャンプグラウンドを過ぎたあたりから、県道に沿って素敵に整備された歩道が出てきた。せっかくなので県道を離れてこちらの歩道を歩く。韓国岳が松の間から見えてきた。歩道のところどころから噴気が出ている。韓国岳から吹き付ける風が、ビューと唸りをあげている。

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舗装路を離れて歩道を歩く

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ところどころから噴気が流れてくる

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韓国岳がスックと立ち上がって見える

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歩道から韓国岳登山道に続く

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この先の硫黄岳は噴火により通行規制中

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硫黄岳からの噴煙は激しい

 韓国岳を眺めながら歩道をのんびりと歩き、14:43にえびのエコミュージアムセンターに到着した。エコミュージアムセンターは、霧島連山の登山の拠点のようで、登山客らしい女性3人組が、レンジャーさんを捕まえて何やら聞いている。明日の天気はどうだろうかとか、風が強くても登れるやまはないかとか。参考になりそうなので、それとなく聞いておく。えびの高原で時間に余裕があったら、北にある小さな火口湖巡りでもしようかと思っていたが、風が強くてそれどころではなかった。センターの掲示では現在の風速は20m。韓国岳から下りてきた方は、小石が飛んで顔面に当たったと言っていた。本日は、ここで行動終了とした。

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ゴールのえびのエコミュージアムセンターに到着

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内部には山岳関連の展示

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標高1700mの韓国岳は本日は風速20mを越えていた

 屋外の気温はぐっと下がってきた。エコミュージアムセンターの展示物を眺めて時間を潰し、16:00発の霧島連山周回バスに乗車して、本日宿泊予定の丸尾温泉に向かった。自分一人を乗せたバスは、えびの高原から何度も何度もヘアピンカーブを曲がって、次第に高度を下げていった。

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霧島連山周回バスで丸尾温泉に向かう

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丸尾温泉はなかなか素敵なところ

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町外れの丸尾滝にも温泉が混じる

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2021年2月27日 九州自然歩道 86日目 鹿児島県霧島市霧島神宮~宮崎県えびの市えびの高原 曇り 気温13/9℃ 行動時間4:55 距離16.3km 32347歩

往路交通:西新6:21福岡市営地下鉄-博多6:35/6:45九州新幹線さくら401号-鹿児島中央8:25/8:49日豊本線特急きりしま6号-霧島神宮駅9:36/9:51鹿児島交通バス-10:04霧島神宮