とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年3月7日 九州自然歩道 89日目 宮崎県西諸県郡高原町御池キャンプ場~西諸県郡高原町高原 美しい池を巡ろうとして自滅の巻

 今朝は美しい湖畔のキャンプ場で目を覚ました。テントの中にいても、キャンプ場のお客さんが周囲を歩いたり、炊事場に水を汲みに来たりする音が聞こえる。遠くの方からは高い声の鳥のさえずりが響き、池からは魚の跳ねる水音が空気を震わせる。6:00に目を覚ましたが、テントの外に出ずに、寝袋の中で薄目を開けて外の様子を想像するのは至福の時間。30分ほどテントの中でゴロゴロしてから、ようやく6:30にテントの外に出た。

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キャンプ場の前に拡がる御池(みいけ)

 目の前に御池の碧色の水面が広がる。日の出の時刻は6:37であるが、太陽は顔を出しそうにない。霧のように細かな雨が降っている。夜半にはテントを叩くような雨が降っていたのだが、今はほとんど止んでいるのでよしとする。四阿(あずまや)の下でお湯を沸かし、朝のコーヒーを淹れて、ゆっくりと香りを楽しむ。雨は残念だが、こんな素敵なキャンプ場で朝を迎えることができるのは幸せだ。

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お湯を沸かして朝コーヒーで始まり

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まわりもそろそろ起き始めた

 隣にテントを張った3人組の男性も起きてきて挨拶を交わした。コーヒーを終え、フライシートが乾くのを待ってから撤収を開始し、7:59に撤収作業を終了した。

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撤収を終えて雨具を装着

 スタートする前に、鹿児島からの3人組に御池一周遊歩道の状態を聞きに行った。中の一人が、昨日、釣りのために途中まで進んだが、倒木がひどくて引き返したとのこと。本来は御池遊歩道という名称だが、遊歩道とはとてもいえないと言っていた。

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御池周囲の案内図

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出だしから荒れ気味で緊張する

 8:22にキャンプ場を離れ、行動を開始した。まずは九州自然歩道の支線ではあるが、御池一周の遊歩道を歩くことにする。進み始めてすぐに、倒木と崖崩れのひどさにうんざりする。新しい踏み跡が付いている。3人組の誰かの靴だろう。ときどきとんでもない岩に向かって踏み跡が付いているところをみると、岩登りの経験者かもしれない。靴もトレッドが深い山靴のように見える。そういえば、張っていたテントはレジャー用ではなく山登りに使う軽量テントだった。ひょっとしたらかなりのエキスパートだったかも。甘く見すぎたと後悔し始めた。

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倒木上等

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崖崩れで歩道は消失

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それでも進む

 9:18に1kmほど進み、ようやく遊歩道かと思えるようなところまで出たが、すぐそのまた先は大規模な山崩れで塞がれていた。泣きたくなるぐらいひどい崩落。引き返したくなったが、対岸のキャンプ場にはまだ3人組が見える。引き返したら笑われそうだ。もう少しだけ行ってみようと、崖崩れの上まで巻いたら踏み跡があった。ただしこれはヒトの踏み跡ではなく、たぶんシカの踏み跡。周囲にはシカの匂いがプンプンする。

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大きく巻いた

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この足跡はシカだろう

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歩けるところは水辺も歩く

 その後も数カ所の難所を乗り越え、水辺を歩き、10:05にキャンプ場から2.5kmほど進んだボート乗り場に到着した。ボートの管理者と思われる男性が作業をしていた。火口湖なのに魚がいるのか尋ねると、池には魚を放流しているとのこと。コイやフナやワカサギなど、河川の魚類を多数放流しているが、近年ブラックバスが繁殖してしまって困っているそう。

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半分以上進んだボート乗り場に到着

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ここから先はほぼOK

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整備状況の良い所もある

 ここから先はそれほどひどい崩落箇所はなく、残りの1kmほどはほぼ快適に歩き、10:30に1周を終えて、キャンプ場に到着した。予定では9:00に戻るつもりだったため、すでに1時間半遅れている。御池の周遊路はよい子の皆さんには決してお勧めしない。

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キャンプ場が見えてきた

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ようやく一周

 御池キャンプ場から、霧島東神宮に向かってしばらく舗装路を歩く。10:53に舗装路から山道を下る地図上のポイントに到着した。先行者の記録では、ここは廃道となっており、ひどい藪漕ぎを強いられるコース。恐る恐る進み始めるが、いきなり巨大な倒木が目の前に立ち塞がり、げんなりした。御池の周遊路に続き、またもや試練かと舗装路に引き返したくなったが、山道の上の方に赤テープが巻いてあるのを見つけて、それを目印に上ったら迂回路がつけてある。その後は意外とすんなり通過でき、ほとんど靴を汚すこともなく100mほどの高度差を下りることができた。

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キャンプ場から舗装路を霧島東神宮に引き返す

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地図ではここから山道を進む

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いきなりの倒木にゲンナリ

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その後は意外と快適

 正面には神域と下界を隔てるような鳥居が建てられていた。階段を下りると国道233号線の舗装路に出て、ホッとした。ちょうどそこにそば屋の看板が立てられていた。御池周回で体力を使い果たしたため、とりあえずお昼をとることにした。

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山道を下りると鳥居

 住宅の並ぶ先にあった古民家風の蕎麦屋は、内装もなかなか凝っている。ちょうど開店時間の11:00に店に入ったが、まだお客さんは入っていない。天ぷら蕎麦を頂いて、ソバ茶を飲んでくつろいだ。蕎麦はキリッと冷たい水でしめてあり、喉越しがよく、香りが爽やかだった。

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蕎麦屋を発見

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庭がきれい

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調度もよい

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蕎麦も美味しかった

 11:37に再び雨具を装着して行動再開。店の前には神武天皇がお祓いをしたという祓川(はらいがわ)が流れている。国道233号線に復帰したが、交通量が多い。スピードを出して通過する自動車が多く、しぶきを浴びる。

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店の前には祓川

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国道ではさんざんしぶきをかけられた

 10分ほどで国道から左折して、山に向かって歩くコースとなってホッとした。雨は強く降っているが、自動車にしぶきをかけられるよりはまし。カーブを曲がりながら山中を進む。大型の鶏舎と思われる脇を通過し、杉の植林を歩くと、高原の町と舗装路が眼下に見えてきた。

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国道を左折して山に向かう

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ヘアピンカーブで高度を上げる

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町が下に見えてきた

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杉並木を歩く

 ゆっくりと高度を下げて、12:10に舗装路に合流した。合流地点は公園になっており、神武天皇像が据えてある。少し上がった先には皇子原温泉があったが、御池で時間を消費しすぎてしまったため時間がなく、先を急ぐ。

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皇子原公園

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神武天皇

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温泉もある

 ここからは交通量の多い県道を横切り、圃場の中を進む。地図では九州自然歩道は左右に曲がっているが、標識はないか、あっても文字が読めないか、ときには明らかに間違った方向を向いているため、コースを間違えないように地図に目を落としながら歩く。

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のどかな田園の中を進む

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標識はあまり参考にしない方が無難

 12:30に目印となる狭野(さの、さぬとも)神社に到着した。ここは神武天皇を祀った神社。素通りはできない。よく知られた神社のようで、数名の家族連れが訪れていた。

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狭野神社に到着

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立派なご神木

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社殿も厳か

 参拝を終えたところで地図を確認していたら、ストックを蕎麦屋に忘れたことに気が付いた。すでに蕎麦屋から3km歩いている。取りに戻ると、本日の目標としている霞神社まではギリギリの時間となる。しばらく考え、走って取りに戻ることにした。3km走り、12:53に蕎麦屋に到着。再び走り、13:16に狭野神社まで戻ってきた。10kgの荷物を担いで走るのは、いいトレーニングになった。途中で集落の中をショートカットしたが、チョウザメと思われる養殖池を見ることができたのがご褒美だった。キャビアを収穫できるのかどうかは分からないが、1mを超えるような個体が多数養殖されていた。

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走りながら見つけた養殖池

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 気を取り直して、狭野神社の表参道を進む。参道沿いには宮崎の巨樹百選に選ばれた樹齢400年の杉が植えられていた。表参道から先も狭野の杉並木が続くようだったが今日はスキップ。先に進む。

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狭野神社の表参道に復帰

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樹齢400年の巨木

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 ここからはのんびりとした山の麓の道を進む。ときおり西の山からゴーっと低い音が聞こえる。新燃岳の方向だ。噴火の音だろうか?それとも近くの用水路からの音だろうか。音源は分からないままだった。このあたりには九州自然歩道の道標が立ってはいるが、進行方向を示す情報はない。かろうじて正しい道の上にいることだけが分かる。

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西の方から低音が響く

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こういう状態の標識が多い

 地図を頼りに先を進み、高崎川にかかる下川原橋を渡る。橋のシンボルは神武天皇。上流に見える、県道に架けられた赤い橋は神武天皇橋。この先ものどかな田園風景の中を進む。

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下川原橋を渡る

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橋のシンボルは神武天皇

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上流の赤い橋は神武天皇

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のんびりした風景が続く

 14:10に畜産試験場の建物に突き当たり、施設に沿って東に進む。ずいぶん広い畜産試験場だ。ぐるっと畜産試験場の施設を回り込み、真っ直ぐ進むと高原(たかはる)の市街地が出てきた。

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畜産試験場に突き当たる

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グルッと正面にまで回り込む

 高原駅まで500mほどの位置で左折して、14:30に吉都線(きっとせん)の踏切を渡る。

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のんびりと街中を進む

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吉都線を横切る

 ここから、地図に従って脇道に入り、市街地の中を北上する。宮崎県立高原高校の跡地を右折して、大きな交通量の多い大きな舗装路に出る。

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地図に従って脇道を北上

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高原高校跡地で右折

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再び交通量の多い県道に出て、霧島団地を右に見ながら進む

 モダンなデザインの霧島団地を通過したところで、14:47に右折して山中の道に進む。この道は両側を高い杉の木に囲まれ、昼でもやや暗い道で少し心配になるが、ほどなく高速道路を跨いで通過して、地図と合っていることがわかりホッとした。

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団地の先で右に曲がるが、ここ?とためらうような雰囲気

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いきなり怪しい暗い道になってしまう

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高速道路が下に見えて、地図と照合OK

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でもまだ寂しい道を進む

 しばらく進むと、山中に池が現れ、池の畔にホテルのような建物が見えた。現在はこの建物は使用されていないよう。設置された看板を見ると、このあたりは湯谷湧水の郷と名付けられており、大きな池は特大池、もう一つの池はチョウザメ池となっている。

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池のほとりに出る

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リゾート風の建物も見える

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もう一つの池もある

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湯谷湧水の郷だった

 15:09に国道221号線との三叉路に出た。ここからゴールの目標の霞神社までは約8kmある。帰りの鉄道の時間を考えると16:00には霞神社に到着していないとまずい。コースを確認すると、三叉路からは1kmほど国道を進み、東に向かって非舗装路に進むはず。

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国道221号線に出た

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雨の中を走る

 雨の国道221号線を走りながら、15:19に右手にフリーウェイ工業団地の看板を見ながら、ここと思われたポイントから山中の道に入る。50mほどの小ピークを登り切ったあたりで行き止まりとなり、ここで道が違うことに気がついた。さきほどはGPSでドンピシャと思われたのにがっかりだ。

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地図で左折地点はフリーウェイ工業団地の先と確認

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上り口を見つけて迷わず進む

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急勾配の山道

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え?行き止まり?

 あわてて国道221号線までもどったのが15:30。国道を引き返しながら、九州自然歩道に曲がるポイントを探すがなかなか見つからない。15:36にようやく国道221号線からの分岐点と思われるところを見つけたが、霞神社までは間に合わないと判断してここで本日はリタイアを決断。残念無念。

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走って戻るが分岐点が分からない

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たぶん、正しい道はこれ。次回検証。

 さて、ここから福岡への帰路につくためには、4kmほど離れた高原駅まで歩かなければならない。国道221号線は交通量が多いが、歩道があるため安心。しかし、目標地に到達できないうえに、雨の中を4km歩くのはつらい。せめてもと思い、高原の市街地を目に焼き付けながら歩いて、16:11にJR高原駅に到着した。

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せっかくなので高原の町を楽しみながら歩く

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郵便局のデザインがよい

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神武天皇ここにあり、という感じの高原駅

 駅前のベンチで雨具等を片付けてザックにしまう。雨はまだ降り続いている。16:48に高原から吉都線に乗車して、都城鹿児島中央と経由する福岡への帰途に着いた。今回は御池遊歩道での苦戦やストックの置き忘れのため10kmほども歩き残してしまったので、次の行程が心配になってきた。これも旅だ。

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2021年3月7日 九州自然歩道 89日目 宮崎県西諸県郡高原町御池キャンプ場~西諸県郡高原町高原 雨 11/7℃ 行動時間7:48 24.1km 38059歩

 

復路交通:高原16:48吉都線都城17:24/18:26日豊本線鹿児島本線きりしま17号-鹿児島中央19:43/19:51九州新幹線みずほ614号-博多21:07