とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年3月21日 九州自然歩道 91日目 宮崎県西諸県郡高原町霞神社~小林市野尻町紙屋西町 たいていのことは走れば解決する

 昨夜は夕方からひどい雨だった。大粒の雨が打ち付け、屋根の下のテントにまで弾け飛んでくる。夜中まで雷鳴が何度も轟きわたり、テントから3km以内にも何度か落雷した。稲妻が光るたび、テントの外壁に雨が伝わり落ちていくのが分かる。テントの内壁には結露がビッシリと付いている。屋根の下でよかった。こんな雨に直接さらされていたら、テントの床に水が溜まるどころではなかったと思う。

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屋根の下にテントを設営したがかなりの被害

 そんな雨も、夜半から勢いが落ちてきて、明け方は霧雨に変わっていた。日の出前の6:00に起床して、お湯を沸かしてコーヒーを淹れた。一晩たってもズボンや上着は湿ったまま。コーヒーを飲んで、元気が湧き上がるのを待ってから、撤収作業を開始した。この世で何が辛いといって、ビショビショに濡れたままの靴下をそのままもう一度履いて、これまた水の滴るようなグショグショに湿気を含んだままのシューズに足を入れることほど辛いことはほとんどない。コーヒーを飲んで気合いを入れないと、そんなことはできないのだ。

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まずはコーヒーを淹れる

 歩くたびにズキュッズキュッと音の出る靴を履いて撤収作業を終え、7:00に行動を開始した。霧雨の中に浮かびあがる霞神社の満開の桜を眺めながら、南向きの参道を下り始める。7:15には参道下の鳥居に到着した。ここからは県道414号線に復帰し、200mほど東に進み、県道から左に折れて北に向かい、中尾集落に進む。集落の細い道を右左折をするが、標識はないので、地図をしっかり確認しながら進まなければならない。ようやく標識が出てきたと思っても、迷いようのない直線路に方向指示のないものが立っていたりするだけなので参考にはならない。

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雨の中に満開の桜

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参道を下る

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参道下の鳥居に出る

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中尾集落の中を進む

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標識が現れたが役に立たず

 集落を抜けると、舗装された林道のような様相に変わる。自動車は通らない。7:31に炭床川にかかる太鼓橋を越えた。ここからは川沿いの景色の良い道を進む。圃場にはシロツメグサと思われる白い花が咲いている。振り返ると霞神社を頂に据えた霞ヶ丘が見える。さらに小高い丘の上からは、牧草地の向こうに高千穂峰をはじめとした霧島連山が見えてきた。残念ながら頂は雲に隠れているが。このところ週末のたびに南九州の天気は大きく崩れているので、美しい山脈を見ることはほとんどない。

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山中に進む

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太鼓橋を越えるとのんびりした風景になる

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シロツメグサの生えた圃場

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振り向けば霞ヶ丘

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霧島連山も見えてきた

 7:55には後川内集落の北端に到達し、右折して南向きに進行方向を変える。8:20に比較的幅の広い舗装路の交差点を通過した先で、両側を牧草地に囲まれた道の向こうに針葉樹が立ち並ぶのが見えてきた。たぶんこの辺りが2001年に発刊された田嶋直樹氏の「九州自然歩道を歩く」の表紙の写真の風景ではないかと思うが、シンボリックなスックと伸びた杉の木が見当たらない。ひょっとしたら場所が違うか、伐採されてしまったのか。周辺の圃場も新たに整備されたようで、地図にない砂利道が縦横に走っている。

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後川内を東に進む

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牧草地の中を進む

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このあたりが田嶋氏の本の表紙に似ているかと思うが

 8:33に五叉路を左折して、岩瀬川に向かって北上する。ここも地図の上では三叉路となっている。1本の道はおそらく圃場整備で新しくできたもので、もう1本は山林の収穫か管理のために整備されたようなキャタピラの跡の残る林道。正しい道を選べたかどうか心配だったので、この地点ではGPSを見ながらゆっくりと200mほど歩いて確認しながら先に進んだ。

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この辺りは圃場整備で道が付け替えられている

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この先の五叉路が紛らわしい

 両側に広葉樹林が広がる舗装路をのんびりと進む。8:59に左から川の流れる音が聞こえてきた。岩瀬川だ。本日の目標地の野尻湖流入する川で、数km下流宮崎市内を流れる大淀川と合流する。林道沿いの斜面をふと見ると、マムシグサがこちらを睨んでいてドキリとする。サトイモ科の多年草で、珍しいものではない。春先から付ける花のような仏炎苞が、マムシが鎌首をもたげているように見えて恐ろしい。見かけのとおり有毒である。

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広葉樹に囲まれた道を進む

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マムシグサに睨まれてドキリとする

 9:25に椎屋大橋に近い県道との交差点に到着した。ここからしばらくは交通量の多い道路を歩かなければならない。歩道はほとんどの部分で整備されておらず、スピードを出した車が多いので、路側帯の端を歩く。集落の桜は満開だが、人の姿は見られない。

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県道との合流点に出た

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自動車の交通量が多い

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集落でも桜が満開

 道路の拡幅工事をしている先の橋から、野尻湖が見えてきた。狭い峡谷をダムで堰き止めてできたダム湖のようで、水面にはそれほどの幅はない。道路沿いにも桜が咲いているが、こちらはすでに葉が出ているところを見ると、ソメイヨシノではなくヤマザクラのようだ。

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道路の拡幅工事中のところを通過

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野尻湖が見えてきた

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この辺りの桜は葉が先に出るヤマザクラ

 9:47に椎屋集落の三叉路に到着した。交通量の多い県道は右に、九州自然歩道野尻湖畔に沿って左に折れるところであるが、県道を100mほど先に進んだところに茅葺きの気になる建物が見えた。せっかくなので立ち寄ってみたら、茅葺きの里笛水という地元農産物の販売所だった。ちょうど時間もよいので、朝食になるようなものはないかと見てみたが、ミカン以外にはすぐに食べられそうなものはない。店の女性に朝食になるようなものが何かないか尋ねると、すぐ外の蕎麦店が美味しいが11時開店だという。一緒に店まで行ってくれて、開店前にわざわざ一人前の蕎麦を作ってもらった。手打ちの素朴な十割蕎麦で、出汁の優しい味がお腹から身体全体を温めてくれた。まだズボンも靴下も濡れたままだったが、早く乾きそうな気がしてきた。

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椎屋集落の三叉路で県道と分岐

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地産物販売の藁葺きの里

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手打ちの十割蕎麦が美味しかった

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 蕎麦の朝食を終え、10:30に行動を再開した。残念ながら道路から湖は見えないが、野尻湖に沿った舗装路を進み、10:48に後平集落、11:14に笛水集落の三叉路を通過した。笛水には瀟洒な小中学校が建てられている。集落の道路には九州自然歩道の標識がところどころに立てられており、岩瀬ダム、椎屋大橋と方向指示板も残っている。

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集落の道を進む

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集落内にはところどころに九州自然歩道の標識が建てられている

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笛水の小中学校

 11:29には竹元集落から左折して、川に向かって高度を下げる。前方にダムが見えてきた。11:42に岩瀬ダムに到着。下流には発電所の施設が見える。今日はダムからの放水はないようだ。ダムの先の丘には芝生の公園がひらけている。トイレも設置されており、いざというときには野営もできそうだ。

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マメ科と思われる紫の花

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アブラナも咲き誇る

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岩瀬ダムが見えてきた

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ダムを歩いて越える

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池尻湖が広がる

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下流には発電所が見える

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本日は放水なし

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ダムの先の丘に登る

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快適そうな公園がある

 ダムからは圃場の中の舗装路を進み、12:05に境別府の集落を通過し、12:18に宮崎と小林を結ぶ国道268号線と交差する天が谷に到着した。10年ほど前に通過した先行者のブログでは、この地点にセブンイレブンがあったが、すでに閉店していた。やむなく、バス停近くのベンチに腰を下ろして小休止とした。自宅から持ってきたバナナとデコポンが残っていたため、ここでおやつに食べてお腹を満たし、喉の渇きを癒やした。

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圃場の中を進む

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国道268号線の天が谷バス停に到着

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コンビニは閉店

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この地点で九州自然歩道は国道を横切る

 12:34に行動再開し、天が谷バス停の北200mほどの野尻東麓の九州自然歩道が通行止めとなっている部分の確認のために進む。10年ほど前に通過した先行者のブログでは崖崩れで通行止めとされており、昨年FBS放送で放映されたヤマトホでも通行止めとなっていたこの地点が、どのぐらいひどい状況かこの目で確かめたかったからだ。たしかに「九州自然歩道崩落のため通行できません」という看板が転がっている。野尻町と書かれているところを見ると、町村合併をした2010年以前から通行止めのままのようだ。ならば行ってみようと竹藪をかき分け、藪漕ぎしながら進む。藪にはうっすらと踏み跡らしき不自然な地面も観察された。どうやらこんな道を行きたがる物好きは一人だけではなさそうだ。

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集落の中を200mほど進む

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情報どおり「通行できません」の看板

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ならば行ってみよう

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よく見ると踏み跡がある

 倒木を乗り越え、崩落部分を高巻きしたが、その先の林の先は崖となっており、どうやっても進むことはできそうになかった。12:49にこれ以上進めないことを確認し、怪我をする前に引き返す。いつもながら馬鹿なことをしているなとかすかに反省するが、たぶんこの性格は一生変わらない。引き返したら人家の庭に出てしまった。誰もいないようだったが、頭を下げ下げ通過させてもらう。

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倒木を乗り越え

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藪をかき分け

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巻けるところは巻く

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ここから先は進めない

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引き返したら人家の庭に出てしまった

 今回の被害は軽微で、怪我もなく、12:52に迂回路の国道268号に復帰できた。交通量の多い国道を東に進む。幸い歩道はあるが、ときどき右に左にと付け替えられる。13:02に山椒茶屋という食堂が右手に見えてきた。人気店のようで駐車場はいっぱいだ。

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国道268号線に迂回

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山椒茶屋も気になった

 13:12に石瀬戸地区で国道を左折して九州自然歩道への復帰を試みる。舗装路を300mほど進むと非舗装の林道に右折する分岐が現れた。GPSとは少しずれているが、おそらくこの林道が正規の九州自然歩道。整備状況は悪く、倒木が多い。しばらく進んだが、その先は大規模な崖崩れで塞がれていた。しばし迷ったが13:22に撤退を決意。根性がないようだが、福岡に帰るためのバスはこのあと14:30ごろと17:30ごろの2本しかないのだ。すごすごと山道を引き返して13:28に国道268号に復帰した。それでも、行かないよりも行った方が満足感が得られる。

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ここから左折して九州自然歩道復帰を試みる

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山に向かって舗装路が続く

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ここから右に山道に進むのが九州自然歩道のよう

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しばらく進む

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次第に倒木が増える

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土砂崩れで全面が塞がれ断念

 13:31に国道268号線の萩の茶屋の峠にあるすみちゃんラーメン前を通過。ここにも駐車車両が多く、人気店のようだ。この先の今別府からふたたび国道を左折し、山間を並行する九州自然歩道への復帰を試みる。今度は成功。13:43に小高い丘を登り切ったところで九州自然歩道の標識を見つけて復帰となった。

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ふたたび国道268号線に迂回する

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萩の茶屋を通過

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今別府集落から左折して九州自然歩道復帰を試みる

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この丘の上で復帰できそうだ

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ここで九州自然歩道に復帰

 ここからは舗装路で、ときおり標識も現れる。13:48に今別府の左折地点に出て、地図を見ながらしばし考える。ここで右折すればバスの通行する国道268号線まで500m足らず。左折すれば山間を3kmほど進み、次の離脱地点から1kmほどで国道に出る。バスは天が谷のバス停の時刻表から推定すると14:30ごろに国道を通過する。すなわち、残り時間40分で、500m先のバス停に行くか、4km先のバス停に行くかの二択。

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しばらく快適な桜並木の道を進む

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ここで右に進むか左に進むか

 ズバリ、後者を選択した。4kmを40分では、歩くとバスに乗り遅れる可能性があるので、走った。簡単な解決策である。14:01に八久保集落を通過し、景色のよい山間の道を進む。ただし、10kgを越える荷物を背負って走ると息が切れるのでそれほど景色を楽しむ余裕はない。14:09に次の九州自然歩道からの離脱可能地点の川内集落に至り、ここから1km先の国道268号に向かう。もう、余裕である。走ればたいていのことは解決する。大学でラグビーをやっていた頃からそうだった。

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八久保集落目指してひた走る

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山にはさまざまな広葉樹が芽吹いてアクセントとなっている

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200Vの電流の流れるところはスキップ

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ずっと先に町が見えてきた

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本日は川内集落で九州自然歩道を離脱

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紙屋集落を抜けて国道を目指す

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紙屋西町のバス停に到着し行動終了

 14:25には紙屋西町のバス停に到着し、14:31発の小林駅行きの宮崎交通バスの時間を確認して、本日の行動を終了することにした。走ったら足先まで体温が上がったのだろう。靴下がつま先まで乾いたような気がしてきた。たいていのことは走れば解決するのだ。

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小林駅に到着

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駅舎と思いきやこれはバスターミナル

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吉都線日豊本線鹿児島本線九州新幹線で福岡に帰る

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2021年3月20日 九州自然歩道 91日目 宮崎県西諸県郡高原町霞神社~小林市野尻町紙屋西町 曇り 17/9℃ 行動時間7:24 26.2km 42480歩 

復路交通 紙屋西町14:31宮崎交通バス-小林15:06/16:36吉都線-都城17:24/18:27日豊本線きりしま15号-鹿児島中央19:44/19:51九州新幹線みずほ614号-博多21:07