とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年3月28日 九州自然歩道 93日目 宮崎県東諸県郡綾町照葉大吊橋~綾町南俣 満開の桜吹雪の花道を一人歩く

 昨夜は20:00頃から雨が降り出した。今回の野営地には屋根はなく、直接テントに雨が降りつけるため、わずかな雨でも分かる。夜半までは降ったり止んだりを繰り返していたが、明け方近くからかなり強く降っていた。天気予報どおり。最近の天気予報は本当に精度が高い。

 6:00に起床したが、撤収準備をしつつ、テントの中で8:30の大吊橋営業開始まで待つこととした。コーヒーでも淹れたいところだが、ガスコンロのクッカーが昨夜のパスタソースで汚れたまま。雨は降るが、クッカーを洗う水がない。テントの外に出たら10秒で全身ずぶ濡れになりそうなぐらい降っている。

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照葉大吊橋は営業前

 8:00を少し回った頃、少しだけ小降りになったタイミングを見計らい、速攻でテントを撤収し、ずぶ濡れのままザックに詰め込んだ。濡れたザックを担いで照葉大吊橋に8:30に到着。ゲートは開いていた。

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大吊橋の営業開始

 管理の男性から、早いねと声をかけられる。一番乗りだった。入場料を支払うと、ザックを預かってくれるという。濡れたテントを休憩室でザックの一番下に詰め直して、管理人室でザックを預かってもらった。

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 楽しみにしていた照葉大吊橋を渡る。橋長は250mで高さは142m。1984年の建造当時は日本一高く、日本一長い歩行者専用橋だったが、2006年に大分の九重夢大吊橋(高さ173m、橋長390m)に抜かれ、2015年完成の三島大吊橋(高さ71m、長さ400m)が現在の長さ1位となっている。

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 吊り橋の剛性は高く、上で跳びはねても揺れを感じない。吊り橋の周囲は広葉樹の山で、景色は息をのむほど美しい。山間から霧が流れてくる様が幻想的。ここからバンジージャンプをしたらさぞかし爽快だろう。水面まで142mあるが、中間地点まで自由落下し、水面で速度0になるとすると、質量65kgで空気抵抗係数0.24kg/mのときには、水面まで8秒ほど楽しむことができそうだ。(https://keisan.casio.jp/exec/system/1238740974にて計算)

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 遙か下の方にもう一本の吊り橋が見える。こちらは旧道に架かっていた実用のための吊り橋のようだ。上から見ていたら、こちらも歩いてみたくなった。吊り橋を渡った向こう側に、遊歩道の案内があった。斜面を降りていって吊り橋を渡り、もとの位置まで1周2km、1時間程度と書いてある。ヒルに注意と書いてあるが、今日はレインコートとゲーターで足下は固めてあるので心配は要らない。

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渡りきったところ

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遊歩道の案内があるが、それよりもヒルに注意の方が目を引く

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石畳で始まる遊歩道

 石畳の道を下っていく。途中に滝があるが、冬期は水が涸れているようだ。さらに下ると切り通しが現れた。ここは幅から考えると森林鉄道の跡だ。現在、九州自然歩道に設定されているはずのコース。ここを通して歩きたかったな。

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遊歩道の整備状態は良好

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滝は水が涸れていた

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この切り通しはトロッコ鉄道のためだろう

 さらに進むと橋が架けてある。手すりは木製だが、橋脚は鉄製で、これも森林鉄道の跡のようだ。ここから先も、勾配の少ない幅1mをわずかに越える程度の道がしばらく続く。ちょうどトロッコの700mぐらいの軌間距離の線路を設置できそうな状態で、九州自然歩道の一部だと確信した。できるだけ奥まで見てみたいと思ったが、しばらく進むと通行止めとなっていた。ここからは川に向かって下りていく。

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これもトロッコ鉄道の橋脚を利用したか

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勾配の緩やかさが独特

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残念ながらここから先には行けない

 さきほど大吊橋から見えた吊り橋が木々の間から現れた。ここも橋長が50mはありそうな立派な吊り橋。上を見上げるとさらに長大な照葉大吊橋が見える。川面の眺めを楽しみながら吊り橋を渡り、斜面を登ってふたたび大吊橋のゲートまで戻った。所要は約40分。荷物がないと楽だ。

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旧道のための吊り橋

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仰ぎ見ると照葉大吊橋が見える

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水面はすぐ近く

 休憩室では吊り橋管理の男性たちが清掃作業を終えて休憩中だった。対岸の九州自然歩道の状況を尋ねると、上流方面も下流方面も路面崩落でとても進めないという。先ほど見たとおり、遊歩道の一部は森林鉄道の跡で、上流、下流部分にはいまだに枕木や橋が残るところもあるという。数年前に県が補修工事をしたものの、水害で何カ所も寸断され、その後は再開していないとのこと。

 管理人室から男性がザックを持ってきてくれた。雨は強く降っている。出発準備をしていると、男性が綾の市街地まで車で送ろうかと言ってくれる。丁寧にお断りして、10:00に雨の中を行動開始した。

 本来は対岸に九州自然歩道があるはずなのだが、いずれの情報でも通行は不能。県道26号線を迂回して、綾町の市街地の北部から九州自然歩道に復帰することにした。照葉大吊橋の下をくぐり、本庄川(綾南川)に沿って南下する。雨は強く降っており、靴の中が少しずつ湿ってきたような気がする。付近の山々には霧がかかっている。

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大吊橋の下をくぐって県道26号線を南に進む

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雨に煙る山が美しい

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 下流の川沿いに建物が見えてきた。このあたりにレストランがあることは地図で確認していたが、営業しているかどうかは不明。窓ガラス越しに厨房で働く男性が見えた。恐る恐る玄関を開けると、男性が出てきて、まだ営業前だけどいいですよと入れてくれた。入店は10:30だったが、11:00からの営業のようだ。すべて個室の造りで、窓からの景色が良い。雨具を脱いでタオルで顔を拭いていると、わざわざバスタオルをもってきてくれた。

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下流にレストランと思われる建物が見えてきた

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レストラン綾の里

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個室からの川の眺めが良い

 地鶏定食を頼んだが、これが美味。歯ごたえのしっかりした鶏肉を、醤油ベースでショウガや柑橘系の効いたタレに漬けてある。炭火で焼いてご飯と一緒に食べる。頗る美味い。量もたっぷりあった。11:00をすぎた頃には、次々にお客さんが入店してきた。どうも有名店のようだ。窓の外に船に乗った料理が流れていく。お腹いっぱいになって、11:30に店を出て行動を再開した。

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地鶏定食 おすすめ

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窓の外を料理が流れていく

 会計の際にお店の女性が、午後は雨が止むようですよと送り出してくれた。さいわい雨は小降りになっている。雨具を完全装備のまま県道を南下する。舗装状態の良好な道路であるが、交通量はごく少ない。途中に養蜂場があったが、ここは見学できないようだ。プロの養蜂を一度見てみたかった。

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レストランの隣はキャンプグラウンドのようだった

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雨は小降りになってきた

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大雨でなければこんな天気もいい

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水蒸気をたっぷり含んだ空気がきれいなのか?

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広葉樹のアクセントのある緑がきれいなのか?

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川の緑色もコラボ

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気になる養蜂場を通過

 12:36に上畑(うわはた)集落を通過する。「則天去私」の額を掲げた家があった。漱石の言葉だなと思い出す。きっと、風流人か文学好きが住んでいる家なのだろうなと思いつつ通り過ぎる。

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上畑集落を通過中

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漱石マニアか?

 12:48に上畑橋を通過。本庄川(綾南川)を越える。橋の欄干に掲げられているのは牛かと思って近づくと、カモシカの像だった。「カモシカのような」と言うように、すらりとした細い動物のようなイメージがあったが、実物は牛のような姿なのかもしれない。川沿いに桜の木が植えられているがまだ幼木のよう。10年後が楽しみだ。

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上畑橋の欄干にはカモシカ

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綾南川を越える

 橋を越えた先の四枝集落には12:50に到着。その名もズバリ「最後の酒屋」のベンチで小休止をとる。ここからは県道26号線から北東に山に向かって進む。集落の家の垣根には羽衣ジャスミンが開花を始めていた。この花は香りも良く、好きな花だ。

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最後の酒屋から左に曲がる

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羽衣ジャスミンが咲き始めている

 ここからは舗装された林道を歩いてしだいに高度を上げていく。綾の町が下の方に見えてきた。道路の脇にはウマノアシガタがつやつやした黄色い花をつけている。別に珍しい花ではないが、キンポウゲ科の花として図鑑に載っていたものが、ある図鑑ではウマノアシガタ科となっていたので記憶に残っている。有毒である。

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林道の坂を登っていく

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町は下の方に

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道路脇で咲いているウマノアシガタ

 13:37に水窪集落で分岐に出た。先の方に標識が見えた。近づいてみると、左が川中キャンプ場、右が尾立展望台となっている。この分岐は右を選んで進む。おそらく左正面に真っ直ぐ進む道が九州自然歩道の北にある川中キャンプ場から来た道で、ここでヘアピンカーブを描いて北に高度を上げていくのだろう。林道は蛇行しながらズンズン高度を上げていく。途中で九州自然歩道の標識を見つける。

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ここが水窪集落の分岐点 左がトロッコ鉄道から続いてきたと思われる道で、右に折れ曲がって進む

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さらに高度を上げる

 14:03に三叉路があり直進する。この三叉路には小さな森の美術館と看板が立てられており、ものすごく気になったが、入口から覗いても建物が見えず、諦めて先に進んだ。あとでネットで検索してみると、個人所有の現代美術の美術館のようだった。

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三叉路を直進

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三叉路に立つ美術館の看板が気になる

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心地よい圃場の中の道を進む

 14:10に尾立集落の三叉路に到着。ここでは小休止して、飲料水で喉の渇きを潤し、雨具を脱いでザックに片付けた。雨は止んだ。ここから右折して進むが、桜の並木が見事。満開の桜から吹雪のように花びらが降り落ちてきて、一人で歩くのがもったいないほど。

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尾立集落の三叉路で雨具を片付ける

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この桜吹雪の中を一人で歩くのはもったいなかった

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頂上付近の杉木立

 桜並木に続く杉木立を抜けて、14:33に尾立展望台に到着した。ここは道路の脇にあるが、道路には何の標識もなく、見落とす恐れもあるので注意がいる。40段ほどの階段を上ると、上から桜の花を観賞することができる。眺望は南にひらけている。

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尾立展望台

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桜を上から眺める

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ここには標識が立っていた

 標識が立っており、次の目標地は国民宿舎の綾川荘。標識の矢印に沿って進むと、地図の方向とは若干異なるが、コンクリート舗装された歩道が続いている。雨に濡れたコンクリート路は滑りやすい。ときおり現れる倒木を乗り越えて進むと、アスファルト舗装路に出た。九州自然歩道の標識がここにも立っており、コースに間違いがなかったことを確認した。

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コンクリート舗装路を進む

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階段のパートも

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ときおり倒木も

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最後の標識で正しいコースだったと確認

 下りの舗装路を道なりに進み、15:11に杢道集落を折り返した形で綾北側沿いの道に出た。川の反対側に見えるのが綾川荘。吊り橋を渡って15:25に綾川荘に到着した。綾南川と比較すると、綾北側は川幅が広く、ゆったりと流れている。上流にダムがないからかもしれない。

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綾北川を上流にしばらく進むと綾川荘が見えてきた

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美しい色の綾北川

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綾川荘には吊り橋が架かる

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 綾川荘には立ち寄らずに、綾北川に沿って下流に進む。桜並木が現れ、その横のサッカーフィールドで少年サッカーの試合が行われている。なかなかプレイのレベルが高い。サッカー人気で、力のある選手が集まっているようだ。

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綾北川を下流に進む

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サッカー場の桜並木

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 フィールドから先も桜並木のある道を進み、15:38に小田爪集落にある九州自然歩道の分岐点に到着して、本日はここで離脱することにした。次回はこの地点から北に、西都市に向けてトレッキングを再開する。

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小田爪集落を進む

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今回はここで離脱

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桜並木はまだ続く

 小田爪からは綾北川に架かる橋を渡り、川沿いに進む。綾城を右に見て、左手に照葉ドームをみて市街地に進み、16:25に綾待合所に到着して行動終了とした。ここからは16:30の宮崎交通バスに乗り、宮崎駅から鹿児島中央駅を経由して、博多へと帰宅の途についた。

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綾北川を渡る

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たおやかに流れる緑の川

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さらに川沿いに進み右折

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右手に見える綾城

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左には照葉ドーム

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綾待合所から帰途に着く

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2021年3月28日 九州自然歩道 93日目 宮崎県東諸県郡綾町照葉大吊橋~綾町南俣 雨のち曇り  20/10℃ 行動時間6:20 19.2km 33421歩 

復路交通 綾待合所16:30宮崎交通バス-宮崎駅17:19/17:35日豊本線特急きりしま15号-鹿児島中央19:44/19:51-九州新幹線みずほ614号-博多21:07