とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年5月16日 九州自然歩道 105日目 宮崎県西臼杵郡高千穂町三井田 高千穂ユースホステル~高千穂町竜泉寺 残念無念、嗚呼、高千穂鉄道

 明け方に高千穂ユースホステルの部屋で目を覚ました時には外は小雨に変わっていた。昨夜は一晩、音を立てて雨が降っていたが、ようやく止みそうな気配となってきた。6:00に起床し、ハンガーに掛けておいた衣類を確認したら、靴下以外は乾いていた。

 テレビをつけて天気予報を見てみると、今日は天気が回復しそう。予定どおり7:00に出発しようとパッキングをして歯磨きをした。

 7:00前にミーティングルームに行ってホストの女性に挨拶をしていると、出入りの大工さんがやってきた。大工さんと話しをしていると話題が豊富で面白い。ユースホステルの合掌造りの構造のこと、高千穂の稲作のこと、林業のことなど、なかなか聞けない話が次から次に出てくる。ホストの女性がコーヒーを淹れてくれ、3人で話しているうちにズルズル出発が遅くなった。8:20にようやくユースホステルを出発した。幸い雨はやんでいる。かなり遅くなってしまったが、先を急ぐ旅ではない。

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ようやく高千穂ユースホステルを出発

 まずは雲海橋の下を歩いて、高千穂の中心街方面に向かう。8:30に県道237号線を横切り、脇道の住宅街に入る。昨日の雨で靴下が濡れていたせいで、左足のかかとにマメができているようで痛い。道ばたのベンチに腰掛け、足にバンドエイドを巻いて手当てをした。

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雲海橋の下をくぐって市街地方向に進む

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県道を横切って脇道に進む

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 脇道を西に進み、県道237号線に合流した。8:53に市街地を流れる神代川にかかる松能橋を渡り、神代川に沿って南下して進んだ。

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県道237号線に合流

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狭い道に軒を並べる市街地

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町中を流れる神代川

 しばらく谷に沿った道を進み、9:00に谷に向かって下る脇道に進んだ。分岐点には標識が立っていなかったため心配だったが、地図に従って進んでいった。しばらく進んだところで右手に標識が現れ安心した。高千穂エリアは九州自然歩道の詳細なデータが記載されている蛸鹿さんのHPでも廃道部分が多いようだし、昨年この地を通過しているヤマトホでもエスケープしている部分が多く、どう進もうか未だ迷っている。今日はなるべく地図に忠実に進み、これ以上は危険と思われるところで引き返そうと思っている。

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しばらく谷沿いの道を南下する

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ここから谷に下る道に入る

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しばらく進んだら標識が現れて安心した

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概ね快適な道

 県道237号線から谷に下りる道は五ヶ瀬川に向かって高度を下げていく。ずいぶん下の方に水面が見えてきた。先に進むにつれ道が荒れてきたので少し心配になる。川のせせらぎが聞こえてきた。

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川に向かって高度を下げていく

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ほんの少しだけ荒れた部分がある

 倒木をいくつか乗り越え、ほんのわずかな草をかき分けるだけで、五ヶ瀬川にかかる音の谷吊橋に9:19に到着した。吊り橋のたもとにはバンガロー風の小屋が建っている。このあたりはかつてキャンプ場として使われていたのかもしれない。小屋の周囲は整地されているが、一面に雑草が茂っている。

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音の谷吊り橋に到着 脇にはバンガローのような建物

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歩くと揺れが強く、ミシミシ音がするのでスリリング

 吊り橋はかなりの年代物のようであるが、通行禁止にはなっていない。よかった。橋の真ん中で川を眺めるが、よく揺れる。五ヶ瀬川は昨日まで3日ほど降り続いた雨のために濁っている。橋の上から見上げると、空は晴れてきた。緑が眩しく光る。橋の上は立ち止まってもヒルが襲ってこない安全なところなので、ズボンをまくり上げてヒルの忌避剤を靴下と下肢にたっぷりと塗布した。雨上がりに落ち葉の上を歩く本日のコースは、ヒルの好発場所だ。恐ろしい。

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吊り橋は安全上の問題はないよう

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かつては生活道路だったのだろうなと思う

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橋から上流を眺める

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下流の断崖も迫力がある

 九州自然歩道ポータルのハイカーズマップでは、音の谷吊り橋から川に沿って1kmほど遡上するコースがあるように標記してある。吊り橋の下には上流に向かうコンクリートの歩道があるため、とりあえず進んでみた。

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コンクリートの歩道を上流に進んでみた

 200mほどでコンクリートの歩道は途切れ、石伝いに上流に進む。川の眺めは素晴らしい。しかし、この先は水に浸からないと進めないうえ、さらに先には断崖に覆い被さるように茂った雑木が見える。ここから先は完全に廃道と化している。諦めて吊り橋まで戻ることにした。

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すぐに歩道はなくなる

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上流は美しいのだが、こんな断崖沿いに1kmも遡上できる自信はない

 吊り橋からはしばらく下流に向かって舗装路を進み、スイッチバックしながら標高が130m上の県道に向かって坂を上る。上る途中で神代川から流れ込む滝が見えた。地図には滝の名前が書かれていないが、滝の落差は100m近くある素晴らしい光景だ。

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やむなく下流に向かう舗装路を進む

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スイッチバックして高度を上げる

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対岸の断崖には滝が流れる

 9:57に県道に合流した。ここからしばらく自動車が通行する県道を歩き、10:08に義雲寺橋を通過した。この橋は地図には青葉橋と書いてあるが、橋には義運寺橋との標記。

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この先で県道に合流

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義運寺橋が見えてきた

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 橋は渡らずに直進する。10:19に中山城跡キャンプ場との分岐点を通過する。折り返しを繰り返し、川沿いまで高度下げてきた。

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今度は舗装路を折り返し高度を下げていく

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道の途中からでも壮大な風景

 10:37に高千穂峡に到着した。日本の滝百選の一つの、私でも知っていた有名な真名井の滝をボートから眺める定番のアクティビティを試みようと、ボート乗り場に向かうが、本日は増水のためボートは利用できず。残念。五ヶ瀬川も写真で見るような碧色ではなく、茶色い濁りを帯びているから仕方がない。

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高千穂峡に到着

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淡水魚水族館は閉館中

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なんと増水のためボートは休止

 やむなく五ヶ瀬川に架かる御橋から真名井の滝を眺めてから、高千穂峡遊歩道を上流に進む。最初におのころ池を通過。この池は真名井の滝の水源となっている。こんなことを言うとバチが当たりそうだが、真名井の滝はおのころ池で調整されたヤラセ感がある。

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御橋から真名井の滝を眺める

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断崖に囲まれた狭い水路に注ぐ神秘的な真名井の滝

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じつはここが水源(ネタバレ注意)

 高千穂峡の絶景を眺めながら上流に進む。11:06に遊歩道の終点になる神橋(しんばし)に到り、ここから右岸に渡り谷の上に向かう九州自然歩道に復帰する。頭上には高千穂大橋と神都高千穂大橋が架かる。上流には崖から落ちてくる素敵な滝が見える。残念ながら地図には滝の名前が記されていない。高千穂峡は真名井の滝だけではなく、ここから上流も素晴らしい光景が続く。ここで谷から上に登ってしまうのがもったいない。

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真名井の滝の上流にも素晴らしい光景が続く

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鬼八(きはち)の力石

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神硯(みすずり)の岩

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神橋(しんばし)の上に高千穂大橋(手前)と神都高千穂大橋が架かる

 神橋からはよく整備された歩道を上り、11:30に高千穂神社に到着した。境内には巨木が何本も聳えている。参拝に来ている人も多い。

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神橋を渡って対岸を進む

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上流にも目を奪われるような光景が広がる

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こんな滝まである

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高千穂神社への道を進む

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高千穂神社

 参拝を済ませ、道の駅高千穂で昼食とする。残念ながらあまり魅力的なメニューが見つからず、ざる蕎麦とした。味は普通。食後にはマンゴーアイスを食べた。こちらは上等な味。

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道の駅高千穂に立ち寄る

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天細女命(あまのうずめのみこと)の像が迎えてくれる

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ざる蕎麦は普通

 昼食の後は、にわか雨が止むのを待って、12:16に行動再開。1kmほど離れた町の中心近くにある旧高千穂駅には15分ほどで到着した。スーパーカートという、旧高千穂線の線路を運行するトロッコの時間は13:00発車で30分ほどある。乗車券を購入し、駅の構内の鉄道展示の見学を行う。車庫には高千穂鉄道が動態保存されている。というか現役で走行している。ホームに立っていると踏切が鳴り出し、ディーゼル音が近づいてきた。運転しているのは私服の男子。どうやら運転体験をしているよう。運転席の隣には制服の男性が立ち、後ろには女性が座っている。子供の夢を叶えてやっているようだ。

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高千穂駅に到着

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列車が入線してきた

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車庫の見学もできる

 12:50ぐらいにピンク色のスーパーカートが戻ってきた。楽しそうな様子の家族が降りてきた。入れ替わりに13:00発のスーパーカートに乗車した。

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スーパーカートが入線

 定刻にスーパーカートは発車した。すぐにトンネルに入る。トンネルの壁にはプラネタリウムのように星が映し出される。その後も、トンネル、切り通しを抜け、天岩戸駅を通過すると、高千穂橋梁に進む。

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発車

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トンネル内では星が映し出される

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屋根がないので開放感は満点

 ここは川底から桁の上面までの高さが105mあり、日本一高い鉄道橋だった。眺めは素晴らしい。鉄橋の真ん中では5分ほど停車し、素晴らしい眺めと楽しいトーク、それから車掌さんの飛ばすシャボン玉を楽しんだ後、鉄橋の反対側のトンネル入り口まで進んだ。ここまでで約3km。この先の大平山トンネルは3kmある長大なトンネルだが、入り口は封鎖されているためここで進行方向を変えて高千穂駅に戻る。

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高千穂橋梁の真ん中で停車

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連結部からは川が真下に見える

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雲海橋が真向かいに見える

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 高千穂駅には13:33に到着した。楽しい鉄道旅だった。それにしても、この路線を現役時代に乗っておかなかったのは痛恨の極み。テツの諸兄は、絶滅危惧鉄道のことをもっと強力にアピールしてもらいたいものだ。

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天岩戸駅は保存されている

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高千穂鉄道に別れを告げる

 高千穂鉄道の名残をたっぷりと楽しんだ後、高千穂駅から再び歩き始める。国道218号線を横切り、13:41に猿渡集落を北上する。長閑な農道を進み、13:53に塩市集落を通過すると人家はなくなる。ここからは山林に入っていき、小坂峠に向かう勾配の強い林道になる。すぐに電気柵が現れた。左右を見回したがどこからも越えられそうなところがないため、電線をタオルで押さえて、恐る恐る触れないようにして通過した。

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猿渡集落から北に向かう

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しばらく長閑な田舎道を進む

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人家が途切れて山道に入る

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電気柵に行く手を阻まれる

 ところが、柵から先はすぐに道がなくなった。地図を見ると峠までの距離は200mほどで標高差は100mほど。意を決して道のない斜面の直登を始めた。倒木を乗り越え、土が崩れる急勾配の斜面を登る。20分ほどもがき上ると、峠に向かう道が現れた。

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柵の先は道がなくなる

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倒木の斜面を直登する

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なんとか道にぶつかる

 踏み跡がかすかに付いた道をたどり、14:21には小坂峠の標識にたどり着いた。峠の先は快適な道となり、ふたたび電気柵を越える。

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小坂峠にたどり着く

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快適な道を下る

 14:32に舗装林道に合流して、この先は快適な道になった。しばらくは段々畑の中の道をのんびりと進む。このあたりはかつて棚田だったところではないかと思われる。現在は稲作以外に転換されているが、ところどころに水田の痕跡が残っている。

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舗装路に進む

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棚田が広がる

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転作した圃場も見られる

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 15:00に深井野集落を通過した後、舗装路を左折して山の上の方に向かう。途中にあった自販機で飲料水の補水。15:20に下野八幡神社に到着した。ここはよく知られた八幡神社のようで、先客が参拝していた。

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下野八幡に到着

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境内には巨木

 八幡神社からはほぼ平坦な舗装路を進み、15:41に平底集落を通過し、下方に見えてきた国道に沿って家が建ち並ぶ上野集落に向けて進む。

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人家が見えてきた

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道路の下の方には上野集落

 15:50に上野集落から国道325号線に出て、国道を北上した。後で気がついたのだが、本来の九州自然歩道は上野集落の市街地の上にあったのだが、標識に気づかず国道まで降りてしまったため、しばらくこのまま国道を進むことにした。

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国道325号線を北に進む

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 上野集落からは1kmほど国道を北上し、16:13に竜泉寺バス停に到着した。ここまで高千穂町コミュニティバスがあるので、本日はバスで引き返す予定だが、バスの時間は18:08と2時間ほどある。15分ほどバス停のベンチで休んだ後、16:28に引き返し、16:40に上野集落のコンビニエンスストアに到着した。ここで食料を購入してバスを待つこととして、本日の行動を終えることとした。

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上野集落から国道325号線を1kmほど北上

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竜泉寺橋

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本日はここで折り返し

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2021年5月16日 九州自然歩道 105日目 2021年5月16日 九州自然歩道 105日目 宮崎県西臼杵郡高千穂町三井田 高千穂ユースホステル高千穂町竜泉寺 曇りときどき雨 29/18℃ 行動時間8:31 行動距離20.7km 34301歩

 復路交通:

上野18:10高千穂町ふれあいバス-高千穂バスセンター18:23

高千穂バスセンター18:40西鉄高速バスごかせ号-博多バスターミナル21:57