とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

Brooklynの人情噺

 週末にTSUTAYAに行き、DVDを借りてきた。

 レンタルしたのはWayne Wang監督の作品2本。Wayne Wangの作品は、「The Joy Luck Club」のタイトル名だけ記憶していたが、これまで彼の監督作品を見たことはなかった。The Joy Luck Clubが公開された1993年にはちょうどアメリカで暮らしており、予告編は見ていたのだが、この年の映画は豊作で、Philadelphia、The Fugitive(逃亡者)、Sleepless in Seattle(めぐり逢えたら)、Jurassic Parkなどの魅力的な作品が目白押しだったため、彼の作品に接する機会を失っていた。

 土曜日はWayne Wang作品の「Smoke」から。1990年の米国・New York のBrooklynを舞台にした物語。枝豆を茹で、トルティーヤ・チップとサルサソースを用意して、大きめのコップに冷たいオレンジジュースを注いで、部屋を暗くして、ボリュームを倍に上げて視聴開始。

 話はNYの下町ブルックリンの交差点に面したBrooklyn Cigar Co.(タバコ店)の店主オーギーを中心に展開する下町の人々の生活。まるで落語の八つぁん・熊さんのやりとりそのもののような毎日が、ブルックリンでは送られている。小さな、温かい逸話がいくつも散りばめられているが、ネタバレになるのでやめておこう。見ようと思った人は、最後はクリスマスのハッピーエンドとなるので、安心して見てもらいたい。

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1994年に訪れたNY Harlemでの一コマ。残念ながらBrooklynの写真はなかった。

 日曜の夜はSmokeの姉妹作にあたる「Blue in the Face」を視聴。今回もブルックリンのタバコ店のオーギーの周囲に起こる痴話げんかや地上げ話が、下町の温かさに包まれて展開する。

 2話ともに背景を貫くのはブルックリンという下町の人情。まるで落語のような展開で、滑稽話あり、人情噺あり。与太郎が登場し、悪党が懲らしめられ、強突く張りの大家が心を入れ替えるところは、古今亭志ん生の高座のよう。

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1995年に撮影したNYのChinatown

 Smokeの原作の一部となったのは、脚本を担当したPaul Austerがニュー・ヨーク・タイム紙に掲載した短編小説。それを目にとめたWayne Wangが、映画化権を取るためにPaul Austerの住むブルックリンを訪ねたのがそのまま映画になっているようだ。

 端役にMichael J Fox、Madonna、ギタリストのLou Reedが出てくるのも見逃せない。とくにMadonnaは意表を突いた登場の仕方をしたため、エンドロールを見るまで気が付かなかった。

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Brooklyn橋から眺めたNY Manhattan。1995年。

 これまでWayne Wang監督作品を食わず嫌いにしていたのを後悔した。これらの作品を勧めてくれたのは、私に白餡の蜂楽饅頭を推した友人。さすが審美眼が優れている。

 両作品ともレイティングは星4つ。死ぬまでに見たい映画300選の候補にエントリーした。