とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年8月7日 九州自然歩道 111日目 大分県竹田市直入町長湯温泉~竹田市久住町法華院温泉山荘 標高454mの秘湯から標高1303mの秘湯を目指して

 今回の九州自然歩道トレッキングは、大分県竹田市直入町にある長湯温泉からのスタート。ここではどうしてもやりたいことがあったため、仕事を半日休んで温泉の旅館に前泊した。

 やりたかったこととは、ガニ湯に浸かること。秘湯マニアの方はご存じかとおもう。ガニ湯のある長湯温泉には、本数は少ないもののバスがすぐ近くまで通っているし、現場まで登山装備を要するところもないので、これが秘湯か?と言われる方もいるかと思う。しかし、入りにくさの点では日本でも屈指の温泉ではないかと思う。その理由は、湯船が開放感に溢れすぎていること。囲いなどはまったくないいさぎよく全周丸見え状態で、しかもそれが温泉街のメインストリートに沿った河原にある。北には旅館の窓がずらりと並び、東にはプランターの並ぶ天満橋、南には交通量の多い道路から道行く人の声が聞こえ、西は川の上流に向かって開けた状態。衆人環視のもとで湯船に浸かるのは度胸がいる。

 決行したのは旅館での食事を終えた20:00。小雨が降っていた。正面の旅館の窓の明かりがガニ湯を煌々と照らしている。15mほど離れた橋の下の脱衣カゴに脱いだ服を投入して、足下に気を付けながら湯船に向かい、手にすくってかけ湯をしてからドボンと浸かる。湯船の底はヌルヌルして、注意しないと転倒しそうだ。旅館の窓からこちらを覗く人がいる。背後の道路からも男女のヒソヒソ声が聞こえる。気にしない。できるものならやってみろだ。湯温は39℃ぐらいか。ぬるめだが、この季節には心地よい。お湯を手にすくうと薄茶色で、鉄分の強い匂いがする。

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念願のガニ湯でくつろぐ

 翌朝は5:00に起床。外は雨。7:30に旅館の朝食を頂き、8:10に行動開始。さいわい雨は止んでいるが、今にも降りそうな空。まずは長湯温泉街のメインストリートを歩き、ガニ湯を眺めながら芹川に沿って西に向かう。芹川は河床が岩でできた板敷き川。実家の近くの川もこうだったなと思いながら歩く。

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明るい時間帯のガニ湯

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芹川に沿って西に進む

 右手にラムネ温泉。ここは日本一の炭酸泉で、前回はここで身体中にまとわりつく細かな泡を楽しませてもらった。橋を北に渡って進むと小さな温泉場が点在している。気になったのが葛淵温泉。組合員のみに入浴が許されたローカルオンリーの温泉。

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ラムネ温泉も心地よい

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葛淵温泉はローカルオンリー

 さらに橋を渡り田んぼの中の道を歩く。8:30に直入小学校の脇を通過。ここは学校に入ってはいけない感がある道だが、気にせず進むと独立した農道だと分かる。さらに進んで、円山公園の横を通り抜け、8:36に新橋でいったん2車線の舗装路に出て700mほど進んだ後、8:43に筒井集落で右折して舗装された農道を長野集落に向かう。こんな家を借りて、自分で手を入れて住んでみたいなと思うような古民家がある。その先の農道の脇に、本日はじめて目にした九州自然歩道の標識。ここも古すぎて何と書いてあるか判別不能

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こんな家を借りて住んでみたい

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美しい田んぼの中の道を進む

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大分県内の標識はビンテージ感の強いものが多い

 細い道をたどって西に向かい、8:57に長野温泉のながの湯に到着。ここはポツンと一軒家の温泉。九州自然歩道のエキスパートの蛸鹿さんが入った温泉ではないかと思う。心地よさげではあるが今日は距離が長いので先を急ぐ。自販機で飲料水のみ購入して通過する。道沿いの向日葵が美しい。

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ながの湯も気になる温泉

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夏は向日葵

 9:21に柏木集落を通過。ここで舗装路を真っ直ぐ進んだが、道を間違えた。正しい道はここから細い山道に入る。道路脇で男性が伐採した竹を燃やしている。ここから柚の木(ゆのき)に向かう道の方が涼しくて良いよと教えてくれる。

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柏木集落からは左の細い山道に進む

 両側を木に囲まれて涼しい、というか薄暗い道を歩いて、9:58に柚の木集落を通過し、10:09に県道412号線に合流した。

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ほどなく県道412号線と合流

 交通量の少ない県道を1kmほど歩き、10:22に小倉交差点を左折して県道30号線に進む。さらに1kmほど県道を歩いたところで、10:33に右に曲がって境川集落に入った。集落の中心あたりから北西に真っ直ぐ伸びる道に入る。ここを歩く人は少ないのだろう。バイクの女性がわざわざ停まって、道分かりますか?と尋ねてくれる。

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県道412号線と30号線の交差する小倉交差点を左折する

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境川集落からは北西に一直線

 境川集落から2kmほど歩いたところで舗装路を横切り、11:14に徳の尾牧場と書かれた看板の横を通過する。本来の九州自然歩道はこのあたりで右手の山林に入っていくはずだが、入口が見当たらない。蛸鹿情報でもここからしばらくはひどい藪だったということなので、廃道と化しているのだろう。牧草に囲まれた舗装路を歩く方が気持ちいい。正面には久住連山が見えてきた。3kmほどひたすら真っ直ぐの道を、牧草の匂いを楽しみながら歩く。青空まで見えてきた至福の時間。

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空まで続くような草原の道は最高!

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振り向けば竹田の町と祖母山系

 このまま1日歩いても良いかなと思うぐらい心地よい道だったが、11:41に舗装路に突き当たる。右に曲がるとガンジー牧場。お昼時だが、旅館の朝食を力いっぱい食べたためあまりお腹が空いていない。ソフトクリームとパンのみ軽く食べながら小休止とした。店内は子供連れの家族で賑わっている。大きな荷物を背負った汗臭いサングラスのおっさんは客観的に見て異質。周囲からの視線を感じて、何となく居心地が悪いので、12:13には退散することにした。

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ガンジー牧場のソフトクリームは美味しかった

 ガンジー牧場から東に200mほど進み、さらに左折して北向きに牧草地を500mほど上る。牧草地の途切れた山裾から右に折れて、広葉樹の山の中に進む。足元はぬかるんでいる。ほどなく下から伸びてきたコンクリート舗装の朽網岐れ(くたみわかれ)登山道と合流した。快適なコンクリート舗装路だが、ところどころで砂防ダムの工事が行われており、大きな土石流が起こった後のよう。

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ガンジー牧場からさらに久住山の裾野まで牧草地を進む

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牧草地の突き当たりから右に折れて山道に進む

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朽網岐れ登山道と合流

 12:44には舗装路が終わり、山中の山道に入る。すぐに道が20mほど崩落しているところに出くわしたが、こういったところには丁寧に迂回路がつけられている。この先もところどころ道が流されている。赤いテープを目印に進まないと道を見失いやすい。

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登山道には崩落した所もある

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丁寧に迂回路が設置してある

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踏み跡がついていないところもあるので赤テープの確認を

 ゴロゴロと大きな石の転がる急斜面を高度差で200mほど上り、13:25に目の前がパッと開けた。木道の敷いてあるここが佐渡窪。雨が降ると木道は沈下してしまうようで、山沿いに迂回路が設置してある。今日はさいわい木道を歩くことができる。絵になる素晴らしい光景だ。

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ゴロゴロ石の急斜面を上る

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その先は別世界の佐渡

 佐渡窪の平地を歩いた後は、150mほどの標高差の鍋割峠を登る。左手に見える白口岳には崩落の跡が見える。峠の道もところどころ土石流で流されているが、問題なく進む。14:13に鉾立峠に到着。佐渡窪で追い抜いていった男性と峠の上で一緒になり、しばらくコースの情報を教えてもらう。

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佐渡窪を過ぎると鍋割峠

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左手の白口岳には崩落箇所がいくつか見える

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でも全般的には整備状況は最上級

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鉾立峠に到着

 峠を下りはじめると先には山荘の屋根らしきものが見えてきた。ゴールは近い。ここから先は土石流に見舞われたようで、大きな石がコースを埋めている。重機で道を開いたようで、石を避けてコースを作ったところも見られる。

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下りはじめると山荘の屋根が見えてくる

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下りの道には大量の土石流が流れ込んだよう

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石を動かしたところもある

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ゴール直前には心地よい木道も

 灌木の中の木道を歩いたその先にはテントがいくつか張られており、目の前には坊ガツルの湿原がひろがっていた。テントサイトのすぐ上の法華院温泉山荘には14:55に到着。今日と明日はここにお世話になることにしている。宿泊客は少ないようで、個室を使うことができた。1303mの標高の地にある乳白色の温泉に浸かる。ここは天国か?

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こんなところにテントを張るのも良い

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法華院温泉山荘に到着

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個室が使えた

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部屋の窓からは坊ガツルが一望できた

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温泉に浸かったら、心と身体がとろけてしまいそうだった

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九州自然歩道111日目 2021年8月7日 大分県竹田市直入町長湯温泉~竹田市久住町法華院温泉山荘 曇り 29/22℃ 行動距離20.2km 行動時間6:46 33461歩

往路:博多BT12:21西鉄高速バスとよのくに号-大分駅要町14:50/大分駅4番バス乗り場15:20竹田大野コミュニティバス-道の駅ながゆ温泉17:10 長湯温泉前泊