とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

九州自然歩道 熊本県エリア総括 長く、ダイナミックな熊本県

九州自然歩道熊本県エリア

 熊本県天草市五和町鬼池港~熊本県人吉市久七峠
 2020年7月11日~2020年10月25日活動
 活動日数 28日
 距離630.6km 1056597歩 

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 北九州市八幡東区皿倉山を起点として、福岡県、佐賀県長崎県と歩き継いできたが、熊本県のエリアは歩行距離630kmと長く、踏破には28日を要した。

 大きくは、①天草の海を堪能するパート、②三角から熊本市の西部を北上して菊池川流域の歴史を味わうパート、③菊池渓谷から阿蘇カルデラ、南阿蘇外輪山、火砕流台地の沃野と大自然を満喫するパート、④落人伝説の五家荘、子守歌の五木、到達困難な球磨川源流域に到る秘境パート、⑤人吉盆地を経て鹿児島とを境する久七峠に到るパートの5つに分けることができる。今回はこれらのコースの概略と、攻略のカギをお伝えしようと思う。

            1.観海アルプスと天草五橋

 天草コースは長崎県島原半島の南端にある口之津港からフェリーで天草の鬼池港に渡るところから始まる。鬼池港のフェリーターミナルでは天草四郎像が正面でお出迎え。鬼池港周辺には宿もキャンプサイトもあるので、起点としては使いやすい。

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フェリーで鬼池港に到着

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天草四郎がお出迎え

 鬼池港から天草最大の都市である本渡市街(天草市)までのおよそ20kmは平坦な国道324号線を歩くが、交通量が多く危険。歩道のないところもある。また、この部分は意外と海の見えるところが少なく、さっそく天草の海を、と思っていたところで拍子抜けするかもしれない。

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本渡までは国道歩き

 本渡市街には多数の宿泊施設や飲食店、商業施設がある。ここである程度補給をして、現在は人道として供されている赤い瀬戸歩道橋を渡ってからは自然歩道らしい道になる。小高い山に入った後は、柑橘系の畑が続く。次の栖本までは約15kmで、ほぼ舗装路。ただし本渡~栖本間には一切の補給、水場はない。栖本には商業施設、2つの宿泊施設、温泉がある。

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本渡からは瀬戸歩道橋で水道を越えて上島に

 栖本から先は歩きがいのある景色を堪能できる素晴らしいコースが始まる。まずは倉岳(標高682m)に登る。ここは栖本からの上りも、瀬棚までの下りもアプローチが長い。下った瀬棚にはいくつかの飲食店と商店がある。この商店は、これから進む観海アルプスのコース上の最後の食料品の補給場所となる。

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倉岳頂上

 瀬棚からは龍ヶ岳(標高469m)まで一気に高度を上げる。頂上からの眺望は素晴らしい。また頂上近くには天文台と有料キャンプサイトがある。キャンプサイトには水場、シャワーがあり、天文台には自販機がある。栖本から龍ヶ岳のキャンプサイトまでは30kmを超える距離があるので、1日で歩くには少し脚力を要する。

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瀬棚集落

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龍ヶ岳頂上

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龍ヶ岳頂上に近いミューイ天文台

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龍ヶ岳キャンプ場

 龍ヶ岳からは尾根伝いのコースとなる。標高は高くはないが、不知火海から切り立った尾根を歩くこの道程は、まさに観海アルプスだと実感できるであろう。ピークだけでなく、いくつかの展望箇所からすばらしい眺めを堪能することができる。

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龍ヶ岳から白嶽に向かう観海アルプス縦走路

 次のメジャーなピークは白嶽(372m)。ここは宗教の山。コース途中の矢岳神社あたりには、ドルメンと呼ばれる、巨石を組み合わせた古代の祭祀の舞台がある。龍ヶ岳から白嶽までの行程は20km弱。白嶽頂上付近にはキャンプ場があるが、持ち込みテントは不可。

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白嶽のドルメン

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白嶽頂上

 白嶽から上天草最北端の松島温泉までは11kmほど。観海アルプスから下る前に高舞登山からの景色は楽しんでもらいたい。天草の島々が一望できる絶景スポットである。

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高舞登山から眺める天草の島々

 松島温泉には多数の宿泊施設と飲食施設、商業施設がある。ここから天草五橋を渡って三角に向かう。第5橋から4、3、2と続いて渡るが、いずれも景色は素晴らしい。ただし、この道路は国道266号線で、交通量は非常に多く、せっかくの景色は自動車の騒音で十分に楽しめない。第2橋を渡り終えたら大矢野島に入るが、ここからは国道を離れ西海岸を歩くが、この海岸線の景色はすばらしい。松島から三角まで25kmは補給には苦労することはない。1号橋を渡った三角には宿泊施設がある。

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松島から5号橋を渡る
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    2号橋

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    途中に観光施設も多い

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    最後に1号橋を渡って三角に渡る

    2. 三角から北上した後に菊池川を遡行する歴史のコース

 天草を離れた三角からは。まず三角山(406m)に登り、半島の脊梁を歩く。脊梁とはいっても200mほどの標高。柑橘畑の中を歩く道である。しかし、この柑橘畑の中を歩くコースがたまらなく良い。20kmほど進んだ石打ダムでJRの駅の横を通過するため、ここを中継点とすることもできる。

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三角のシンボル 海のピラミッド(三角港フェリーターミナル)

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三角山に登る途中では1号橋や天草の島々が一望できる

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宇土半島では柑橘系の畑の中を歩く

 石打ダムから次の中継地は23km先の宇土市街になる。ここには複数の宿泊施設、商業施設がある。宇土には城址や古い町並みが残り、見逃すのは惜しい。

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宇土の街並みも落ち着いたいいところ

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宇土からは金峰山が見えてくる

 宇土からは熊本市の名峰金峰山(665m)を目指して歩く。熊本の市街地を眼下にする金峰山から西に下り、宮本武蔵五輪の書を記した霊厳洞に到る。さらに二の岳(686m)、三の岳(682m)を越えて田原坂の戦跡に向かう。ここではJR田原坂駅を通過。さらに進むとようやく多数の宿泊施設のある温泉地の玉名となる。この間の距離は90km弱。宇土から玉名のあいだはコース上に宿泊地を得るのが困難なパートであるが、コースを外れて熊本市街に行けばいくらでも宿泊施設は見つかる。

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雲厳禅寺霊厳洞

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二の岳

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田原坂公園 西南戦争の弾痕の残る家

 玉名から菊池は、菊池川に沿った歴史を味わうことのできるパート。コースから少し外れるが、玉名市街の菊池川の水運で栄えた町の様子が残るエリアは是非見てもらいたい。玉名からは小岱山系を登り、20kmの歩行で菊水に到る。菊水には驚くほど多数の古墳群がある。素通りせずに、ぜひ古墳のいくつかは覗いてもらいたい。石室を間近で見られるものもある。菊水には宿泊施設もある。

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玉名もいい町

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小岱山からは海を隔てて雲仙が望める

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菊水 江田船山古墳

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菊水 塚坊主古墳

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菊水 トンカラリン

 菊水からはこれといって見所のない山道を20km近く歩かなければならないが、菊池川を渡った先の山鹿の市街地にはそれを補うだけの価値を感じるはずだ。金剛乗寺の山門をくぐり、巨大な木造の劇場である八千代座を覗いた後は、桜湯に浸かって身体をほぐしてもらいたい。山鹿からは日輪寺、不動岩を経て、国道325号線バイパスを通って菊池市街まで30km。バイパスの日陰のない道を延々と歩くのが最後の難所。菊池は古い町並みの残る魅力的なところで、温泉、宿泊施設ともに充実している。

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山鹿 金剛乗寺山門

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山鹿 八千代座の内部

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山鹿 さくら湯

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菊池 菊池武光公像
  1. 阿蘇カルデラを北から登り南外輪山を経て火砕流台地を下る

 菊池から東に進んで高度を上げていくと、阿蘇カルデラの領域となる。阿蘇の外輪山から流れ出る清冽な水で刻まれた菊池渓谷は、渓谷の両側に遊歩道が設置された人気の観光スポット。菊池市街から菊池渓谷は17kmほどあり、その先は外輪山の北縁(標高950mほど)を経由して、外輪山を下った先の温泉地まで合計40kmほどあるので、ここを通して歩くには覚悟がいる。ただし、その苦労を補ってあまりある光景を楽しむことができる。

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菊池渓谷

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阿蘇外輪山兜岩からカルデラ内を眺める

 阿蘇駅周辺からは、高岳(1592m)、根子岳(1433m)の間を通過する日ノ尾峠(990m)を越える23kmの経路で高森に到る。本来ここは牧草地を歩くコースとして仙酔峡経由で設定されているが、2020年の時点では仙酔峡と日ノ尾峠を繋ぐ道路が崩落しているため、東側の舗装路を歩く。また、日ノ尾峠から高岳および根子岳に向かう登山道があるが、高岳は火山活動によって、根子岳は登山道の崩落と、状態によってはいずれに進むことも難しい場合がある。

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日ノ尾峠

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高森から眺める阿蘇高岳

 高森周辺には宿泊施設が多数あり、名物の田楽を食べさせてくれる施設もあるので、是非ゆっくりしてもらいたい。高森からはグングン高度を上げて阿蘇南外輪山に登る。寄り道になるが、清栄山(1005m)は根子岳を正面に望む眺望の良い山。南外輪山に到った後は、草原や低木の中を歩くが意外とアップダウンがある。ときに素晴らしい眺望があるが、南外輪山周回路の整備状況は2020年の時点では極悪。歩き終えた後は露出した部分は傷だらけで、藪漕ぎのエキスパートになっているはずだ。

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南外輪山から見る根子岳

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南外輪山の草原

 南外輪山の駒返し峠からは南下して、カルデラ火砕流台地として形成されたなだらかな地形の森林帯をゆっくりと高度を下げていく。笹原集落で通潤橋の水路の円形分水を経由して、ほぼ水路に沿って通潤橋まで歩く。高森を出てから通潤橋まで約60kmは食糧補給なし。外輪山の清水峠に1台の自販機があるのみで、台地を下りるまでは水場もないので、このコースは補給には注意がいる。通潤橋には道の駅、宿泊施設があり、ここで息を吹き返すことになる。

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通潤水路の起点となる円形分水

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通潤水路

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通潤橋
  1. 川の流れがとろけるように美しい秘境エリア

 通潤橋から湯前までの130kmの区間は秘境エリアである。どこで九州自然歩道を離脱しても公共交通機関までの距離が長く、たどり着いたバス停からの便数は少なく、商店もなかなか見つからず、補給に難渋することこのうえない。しかし、それを上回る非日常感が得られる区間でもある。

 ここまで読んでこの区間をスキップしようと思う人が出ると困るので、最初に中継可能地を挙げておこう。

 ①通潤橋:秘境エリアのゲートウェイ。熊本から1日数本のバスがある。

 ②砥用(ともち):美里町の中心地で、スーパーがある。通潤橋から35km先。熊本から1日数便のバスがある。

 ③五木村頭地:五木村役場の所在地。九州自然歩道からは少し外れる。砥用から50km先の竹の川からコースを外れて南に8km歩いた地点。五木町の中心地で、人吉行きのバス便が1日数本ある。頭地には宿泊施設、商業施設、温泉施設などがあり、秘境のオアシスである。

 ④湯前(ゆのまえ):人吉から湯前をつなぐ湯前線(現くま川鉄道)の終点。竹の川から60km先。湯前から先の人吉盆地は開けている。湯前には商業施設、食堂、温泉施設があり、人吉行きのバスがある。

 以上のように、秘境というわりには、ほどほどの間隔で中継可能地点が存在しており、少し走る覚悟があれば週末のみでもなんとかなる状況である。逆に言うと、砥用から湯前までの110kmは公共交通機関へのアクセスが困難な区間で、携帯の電波も入りにくいエリアを歩くことができるので、下界と一切の連絡を絶つ修行としてはもってこいである。

 さて、長くなったがコースの概要を。通潤橋までは熊本市街から乗り換えなしのバスで行くことができる。通潤橋の道の駅では食料をある程度用意した方が良い。五老ヶ滝を過ぎ、通潤水路で潤った豊穣の地を歩いた後は、幾重も繰り返す山道を下って内大臣峡に下る。この地名から分かるように、平家の落人集落として知られており、すこぶる美しい自然が残る。内大臣峡には美味しい川魚を提供してくれる民宿(平家の湯 Tel.0967-72-0496)が1軒ある。

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五老ヶ滝

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通潤水路によってもたらされる豊穣

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素掘りのトンネルをくぐって内大臣峡に

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内大臣峡は遥か下に

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内大臣川が素晴らしく美しい

 内大臣峡から下流に進むと美しいアーチの内大臣橋が見えてくる。高度を上げて内大臣橋のたもとを過ぎ、さらに橋をかなり下に見下ろす山の中腹まで登ってから、素掘りのトンネルをくぐって里山エリアに出てくる。霊体橋を過ぎて砥用。砥用にはスーパーマーケットがある。ここがほぼ最後の食料調達地点となる。

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内大臣橋がはるか下に

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霊台橋

 砥用からは国道445号線を南に進む。最初は2車線の立派な道路でさすが国道と油断させておいて、人家が途絶えると1車線の離合困難な道になる。交通量はほとんどないので安心して歩くことができる。標高1107mの二本杉峠を過ぎると東山商店という土産物店兼食堂がある。ここが最後のワンチャンス。蕎麦が美味しい。この先は国道を離れて大金峰(標高1396m)に上り、栴檀轟の滝を経て、五家荘の集落となる。集落といってもポツリポツリと藁葺きの家があるだけである。民宿をしているところもあるが、水害のため営業を中止している(2019年時点)。五家荘ではやむなく野営をしたが、撤収中に通りかかった男性から菅原道真の49代目の末裔だと聞かされて、ひれ伏しようかと思うぐらいビックリした。

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砥用からは深い深い山に進む

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1107mの峠を越える

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栴檀轟の滝

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五家荘

 五家荘からは球磨川の支流の川辺川に沿って下流に進む。川に沿ってとは言っても、水面は谷のはるか下の方にあり、なかなか美しい水面には到達しない。はるか上の山の中腹で何度もスイッチバックを繰り返して高度を下げ、ようやく椎原集落に着いた後に、水面を見ながら進む。こんな水の色があっていいものだろうか。碧色のかかった乳白色の水に驚くだろう。

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川部川の水の色には驚かされる

 椎原からは国道445号線に復帰して南下する。酷道ともいわれる離合の困難な区間の多い1車線の細い道で、季節にはよると思われるが、交通量はほとんどない。椎原と宮園集落には小さな商店がある。

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進めども進めども秘境がつづく

 竹の川から九州自然歩道は東に折れ、下梶原川を上流に遡る。食糧が尽きてしまったり、仕事の都合で帰る必要がある場合には、竹の川から九州自然歩道を外れて川辺川を8km下れば、五木村頭地という秘境のオアシスに行くことができるので、地図を最大に拡大しないと見えない竹の川という地名はよく憶えておく必要がある。また、竹の川から球磨川源流にかけての区間は、九州自然歩道の消失の程度が最も著しいところでもあるので、その点からも重要な地名である。

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下梶原川沿いの天狗岩

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下梶原川も限りなく美しい

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下梶原集落から白蔵峠、水上村へと続く九州自然歩道本線は広範囲の通行止め

 先行する蛸鹿情報を参考にして、一昨年ここを通過したヤマトホのコースを見つつ、自分は竹の川から九州自然歩道のコースどおり下梶原川を遡り、下梶原集落から先の白蔵峠とその先の数kmにわたるとみられる九州自然歩道の崩落部分を回避して、下梶原からは谷の反対側の斜面に進み、日当の林道をぐるりと南に迂回して白蔵越を越えて、川辺川系の谷から球磨川本流の谷に出て、湯前まで南下した。

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う回路は標高1000mを越える林道

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う回路にもときおり崩落地点がある

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球磨川源流域にたどり着く

 次のログで、できるだけ球磨川源流に遡った湯山から再スタートしている。川辺川と球磨川を繋ぐ球磨川最源流域の道路事情については、当地の白水集落で営業していた民宿に電話をして確認したが、数年間にわたって両方の谷を結ぶ道路は通行止めになっているとのことであった。

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球磨川源流域には各所に崩落部分が残る
  1. 人吉盆地を経て鹿児島県境まで

 熊本県の最後は、球磨川の源流から湯前、多良木、人吉と、球磨川によって形成された人吉盆地の肥沃な地域を下る。道路に沿った町並みに石蔵が残っており、豊かな穀倉地帯であることがわかる。湯前(湯山温泉)から人吉までの50kmの区間は、人家が多く、舗装路を歩く部分が多いので、補給に困ることはない。交通量が多いので、自動車に気を付ける必要がある。九州自然歩道に並行する道路もあるので、無理をして県道を歩かず、川に沿ったのんびりした道を選択するのも手である。

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奥球磨ループ橋

 人吉盆地の中間地点の多良木での宿泊はコース近くにブルートレインの車両を利用した宿(ブルートレインたらぎ Tel.0966-42-1120)があるので、ぜひここを利用してもらいたい。人吉は熊本県南部の中核都市で、温泉、宿泊施設、商業施設などが多数あり、公共交通機関の拠点である。本来はJR肥薩線湯前線(現在は第3セクターくま川鉄道)のターミナルであるが、2020年7月の水害のため、両線ともに運休しているのが悲しい。人吉市内には、まだ2020年7月水害の痕跡が多数残っている。

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ブルートレインたらぎ

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球磨川源流域の秀峰 市房山

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くま川鉄道の鉄橋の向こうには人吉の市街地

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無残!肥薩線も運休中

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古くから栄えた人吉市街には見どころが多い

 人吉から鹿児島県との県境となる久七峠までは20kmほど。人吉から5kmほどの鹿目の滝は、コースから谷を下りる必要があるが必見。日本の滝百選に選ばれている壮大な滝である。赤仁田集落から鉾立山に至る5kmほどが山道で、あとは舗装路である。県境手前3kmにある田野集落には自販機がある。

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鹿目の滝 日本の滝百選

 

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久七峠 熊本-鹿児島県境


           もう一度歩きたい熊本の九州自然歩道

 ちょっと熊本県内の九州自然歩道を歩いてみようかと思った人のために、おすすめコースを選んでみた。スタート地点まで公共交通機関を利用してアクセス可能で、縦走をした後にゴールから公共交通機関で帰宅可能なコースである。反時計回りでの進行順に並べた。私家版「死ぬまでにもう一度歩きたい道」リストにエントリーしたものからピックアップした。最高は三ツ星。

  1. 観海アルプス(天草市栖本~上天草市松島)☆☆

 天草随一の山コース。標高は低いものの、八代海に真っすぐ落ち込む稜線からの眺めは最高。整備状況は良好で、標識の設置状況もまずまず。エスケープは瀬棚、二弁当峠、金比羅山手前の峠で可能。コース上の補給は貧弱だが水は得られる。通常の歩行速度で通しで歩くと2泊を要する。

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観海アルプスのゴール 高舞登山からの眺め

距離:約60km
行動時間:約60時間
補給:栖本(宿泊、食事、商店、温泉)、棚底(食事、商店)、龍ヶ岳キャンプ場(宿泊)、白嶽キャンプ場(宿泊)、松島(宿泊、食事、商店、温泉)

 

  1. 天草五橋上天草市松島~宇城市三角)☆

 天草五橋を歩いて渡り、大矢野島の西海岸を進むコース。五橋とそのアクセス道路からの眺めは非常に良いが、主要なコースが国道であるため交通量が非常に多く、歩行には快適とはいいがたいため星一つ。100%舗装路。

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天草五橋の1号橋から天空橋(自動車専用道)を望む

距離:約25km
行動時間:約8時間
補給:コース上に宿泊、食事、商店、温泉施設ともに多数

 

  1. 一の岳、二の岳、三の岳(熊本市西区島崎~熊本市北区植木町田原坂)☆☆☆

 JR熊本駅から北に1kmほどの位置を九州自然歩道は通過しているため、起点へのアクセスは容易。ここから金峰山(一の岳)、二の岳、三の岳と歩き継いで、西南戦争の激戦地の半高山を経てJR田原坂駅に至る。金峰山からの眺望が素晴らしい。金峰山の下山路から半高山に至るまで柑橘畑の中を歩くのも魅力的。

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西に金峰 東阿蘇

距離:約30km
行動時間:約13時間
補給:熊本市街(宿泊、食事、商店、温泉)、金峰山登山口(自販機)、岩戸観音(自販機)、下川床(自販機)、古閑(食事)、野出(自販機)、田原坂(自販機)

 

  1. 阿蘇カルデラの北縁を越える(菊池市菊池渓谷阿蘇市内牧温泉)☆☆

 菊池渓谷の清流を遡り、標高900mほどの阿蘇外輪山の北縁に至ると風景が一変する。東西18km、南北25kmにもわたる巨大なカルデラと、その中で噴煙を上げる高岳を眺めながら、北外輪山を降下して内牧温泉に至る。北外輪山からカルデラ内部への真っ直ぐな下降路は2020年時点では完全に流失していたので、う回路を使う必要がある。

 スタート地点の菊池渓谷までは菊池市街から乗り合いタクシーがある。カルデラの内部に下降すると内牧温泉から高速バス、その先にはJR阿蘇駅がある。

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阿蘇外輪山兜岩展望所からカルデラ内を眺める

距離:16km
行動時間:6時間
補給:菊池渓谷レストハウス(食事、自販機)、兜岩(食事、自販機)、内牧温泉(宿泊、食事、商店、温泉)

 

  1. 阿蘇カルデラ内部を縦断(JR宮地駅~高森)☆☆☆

 JR宮地駅から日ノ尾峠を越えて高森まで進むコース。すべて舗装路だが、牧草地の中を歩く美しい道のり。2020年の時点では仙酔峡と日ノ尾峠を繋ぐ道路が崩落しているため、東側の舗装路を歩くことになる。日ノ尾峠から高岳根子岳に登ることも可能。

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日ノ尾峠に向かって高度を上げる

距離:20km
行動時間:6時間
補給:宮地(食事、自販機)、高森(宿泊、食事、商店、温泉)

 

  1. 阿蘇南外輪山(高森~駒返峠)☆☆☆

 外輪山を歩くダイナミックなコース。高森から黒岩峠で南阿蘇外輪山に到達してから、外輪山の縁に沿って歩き、高森峠、中坂峠、長谷峠、高千穂野、天神峠、駒返峠まででおよそ25km。九州自然歩道は駒返峠から南下するが、外輪山はさらに西に、地蔵峠、護王峠、俵山と続き、あと15kmほど進めばJR立野駅に出ることができる。駒返峠から北に8kmほど進めば南阿蘇鉄道中松駅に出ることができるが、立野までの鉄道は運休中。このコースは駒返峠からの帰途にやや困難を伴う。

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南外輪山から高岳を眺める

距離:25km
行動時間:14時間
補給:高森(宿泊、食事、商店、温泉)、清水峠(自販機)

 

  1. 通潤橋がもたらす豊穣の沃野(通潤橋~砥用)☆☆

 通潤橋から白糸台地を歩き、緑川上流の内大臣川に沿って下り、美里町の市街の砥用に至るコース。ほとんど舗装路だが、交通量は少なく田園風景が楽しめる。白藤から内大臣川に下るつづら折りが愁眉。緑川ダム、霊台橋という観光スポットも通過するが、実りの時期の圃場や内大臣峡の自然に勝るものはない。

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秋の沃野は黄金色

距離:33km
行動時間:13時間
補給:通潤橋(宿泊、食事、商店)、笹月(自販機)、内大臣(宿泊、食事、自販機)、夏水(自販機)、緑川ダム(食事、商店)、霊台橋(食事、商店)、砥用(食事、商店)

 

  1. 熊本の秘境(砥用~五家荘~竹の川~湯前)

 砥用から国道445号線を歩き、山道に入って大金峰を上った後に栴檀轟(せんだんとどろ、轟とは滝のこと)、五家荘を経て、椎原から国道445号線に復帰し、さらに竹の川を経由して下梶原から標高1000mの林道を歩いて、白蔵越から林道を下って湯前までというのが、熊本県人もほとんど行ったことのないような最奥部の秘境コース。こんなコースを草鞋で未舗装路の状態で歩いた古の人たちは、サバイバルレースに出たら上位に入賞できると思う。通しで歩けば85kmであるが、竹の川から8kmで五木村の中心地に出ることも可能。2020年9月時点では五家荘の宿泊は休止中。竹の川と湯前の間には補給はなく、また道路の崩落のためコースは定まらない。

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球磨川流域の水の色は別格

距離:85km
行動時間:28時間
補給:砥用(食事、商店)、二本杉峠(食事、商店)、五家荘(自販機、宿泊)、椎原(商店、自販機)、宮園(商店、自販機)、竹の川(商店、食事、自販機)、湯前(食事、商店、温泉)