とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

九州自然歩道 鹿児島県エリア総括 砂、海、山、神

九州自然歩道鹿児島県エリア

鹿児島県伊佐市久七峠~鹿児島県霧島市高千穂峰

 2020年10月25日~2021年3月6日活動
 活動日数 29日
 距離664.0km 118406歩

f:id:nayutakun:20210818204228j:plain

  鹿児島県に先立つ熊本県は歩行距離630kmと長く、踏破には28日を要したが、鹿児島県はさらに長い664km、29日と九州内で最長であった。

 鹿児島のコースは①薩摩半島エリア、②大隅半島エリア、③霧島エリアの3つに分けることができる。かぎりなく続く砂浜、どこまでも青く透き通った海、鬼のようにきつい縦走路、神々を感じることができる山と、それぞれのエリアには特徴がある。今回はこれらのエリアの特徴と楽しみ方、それから何よりも縦走に重要な中継地までの公共交通機関を利用した交通事情についてお伝えしようと思う。 

  1. 薩摩半島エリア

 熊本県人吉市から久七(きゅうしち)峠を越えて鹿児島県に入る。薩摩半島エリアの交通の拠点となる主要な町は、伊佐市大口、さつま町宮之城、串木野南さつま市加世田、枕崎、指宿市山川である。これらの町にはいずれも、宿泊施設、商業施設があり、バスや鉄道などの利便性も高く、中継地として重要である。

 人吉市の最後の集落の田野から久七峠を越えて、5kmほど進むと国道267号線と合流する。久七峠は立派な舗装路であるが、交通量はほとんどない。国道267号線は2004年に久七トンネル(全長3945m)が開通して、久七峠は旧道となってしまったからである。久七トンネルを歩いて抜けるのも面白そうかと思ったが、たまたま通りかかった自転車で通行を試みた方があまりに危険だと引き返してきたところからすると、歩いて通行するのも快適ではなさそうだ。久七峠からの眺望はあまり良くないが、ところどころから見える大口盆地がひろがる様は印象的である。

f:id:nayutakun:20210818204344j:plain

久七峠から見える大口盆地

 久七峠から15kmほどで伊佐市の中心地の大口地区に着く。大口からの交通はバス。注意がいるのは、大口からの定期バス(南国交通)は熊本県水俣と鹿児島県の吉松に向かうものが主力だということ。これは、1988年に廃止となった国鉄山野線が、水俣(現肥薩おれんじ鉄道、かつてのJR鹿児島本線の駅。九州新幹線では新水俣駅)~大口~栗野(JR肥薩線の駅。一つ北の肥薩線の駅が吉松)を結ぶ路線であったことも関係しているのかもしれない。バスの時刻表を調べてみれば、大口と新水俣とをつなぐ便が便利なことに気づくだろう。

f:id:nayutakun:20210818204437j:plain

大口盆地は穀倉地帯

 大口から九州自然歩道は川内川(せんだいがわ)に沿って下流に向かっていく。まずは7kmほど先に、東洋のナイアガラと宣伝する看板を見るものの、だれもそう言うのを聞いたことがない曽木の滝。さらに下流に進むと、水位が下がると廃墟が見えたり、湖面全体が水草で覆われて水がちっとも見えなかったりする鶴田ダムによってできた大鶴湖を見ながら進む。

f:id:nayutakun:20210818204505j:plain

東洋のナイアガラ 曽木の滝

f:id:nayutakun:20210818204529j:plain

水草が繁殖する大鶴

 大口から45km先の宮之城は有力な中継地点。宮之城は、かつて川内と大口とを結んだ国鉄宮之城線の中継地であった。宮之城のバス路線は九州新幹線の駅のある出水あるいは川内との間をつなぐ路線が優勢。とくに出水~宮之城~鹿児島空港を結ぶエアポートシャトルの利用が便利。

f:id:nayutakun:20210818204806j:plain

国鉄宮之城線 宮之城駅跡

 宮之城からは南に17kmほど進み、藺牟田(いむた)池に立ち寄る。ここは火山湖で、ラムサール条約指定湿地。キャンプ場や食堂があり、心地よく過ごすことができる。1周3kmほどの池の周囲を歩いても良いし、池を取り囲む標高500mほどの山々を巡る登山路もある。

f:id:nayutakun:20210818204841j:plain

藺牟田池

 藺牟田池から5kmほど先には市比野(いちひの)温泉がある。ここには複数の温泉施設、宿泊施設、食事施設、商業施設がある。さらに22km進むと人口3万人の中核都市の串木野薩摩半島を横切って海にたどりついたこの地にはJR鹿児島本線の駅があり、北に2駅で九州新幹線の停車する川内駅と連絡する。

f:id:nayutakun:20210818204942j:plain

串木野の沖には甑島

 串木野から先は海の道。照島海岸から南は美しい白砂の海岸が続く。九州自然歩道は照島海岸の砂浜が尽きる戸崎から先は国道270号線に進むが、国道は交通量が多く、歩道のない部分もあるため、できるだけ早く国道270号線を離れて海沿いに進むことをお勧めする。とくに、天昌寺で永吉(ながよし)川を渡った後は、旧南薩線(伊集院~加世田~枕崎をむすんだ鉄道。1984年廃止)の線路跡が自転車専用道路として供されているので、こちらを進むべきで、国道270号線を歩く理由はまったくない。吹上浜ではなるべく国道歩きを避け、加世田まではでるだけ片足に波がかぶるぐらいの海辺を歩くことをお勧めする。さすがに長さ47kmの日本3大砂丘の一つだけあって、それほどまでにみごとな砂浜が続くからだ。

f:id:nayutakun:20210818205049j:plain

吹上浜

f:id:nayutakun:20210818205125j:plain

南薩鉄道の線路跡を歩くのも心地よい

 吹上浜に沿ったコースの南半分の、永吉~加世田間はバスの便がある程度充実している。コースはかつての南薩鉄道と同じく、伊集院(現JR鹿児島本線伊集院駅)~永吉~加世田とつないでいる。バスを運営するのは鹿児島交通。前身は南薩鉄道株式会社。加世田は伊集院へのバス便、鹿児島中央駅行きの直行便、これから先の目的地である野間池までのターミナルである。

f:id:nayutakun:20210818205235j:plain

伊集院のシンボルは島津義弘

 加世田からは17kmほど美しい海を眺めながら野間半島の東海岸を進み、片浦から山道を登って2時間ほどで野間岳(591m)の頂上に到る。野間岳の標高は高くないが、海から立ち上がった山のため眺望が素晴らしい人気の山。

f:id:nayutakun:20210818205329j:plain

野間半島の東岸 笠沙の海は美しい

f:id:nayutakun:20210818205414j:plain

野間岳の頂上からの眺望には息をのむ

 野間岳からはさらに西に進み、野間神社、女岳を経由して、野間半島を横切る形で西海岸に沿った国道226号線に出る。国道に出てからの公共交通機関が難しい。九州自然歩道を離れて北に3kmほど進めば、野間半島先端にある野間池という商店と食堂のある漁港で、ここからは1日数本の加世田行きのバスがある。

f:id:nayutakun:20210818205455j:plain

野間半島先端の野間池

f:id:nayutakun:20210818205528j:plain

野間半島の西海岸に出ると坊津の海

 九州自然歩道のコースに従って南に進むと、いわゆる坊津(ぼうのつ)地域。野間半島西海岸の急峻な地形のため、昭和28年に野間半島先端の野間池と枕崎との間の道路が整備されるまでは、集落間の交通は船だけだったというすさまじい交通隔絶地であったところである。坊津地域は、その隔絶された地理を生かして、江戸時代には密貿易商や海賊が跋扈していたらしい。そんな名残か、現在も野間池と坊津の南の今岳集落までの25kmほどの区間にはいまだに定期バスは営業していない。野間岳から西に下りた後、10kmほど南に歩いた坊津秋目には漁師さんが営業する素晴らしく魚が美味しい民宿(がんじん荘 Tel:0993-68-0652)があるので、そこに一晩お世話になってから枕崎に進むのがお勧め。

f:id:nayutakun:20210818205648j:plain

亀ヶ丘 亀岩から見た坊津の海

 加世田を出てから、野間岳、坊津と進んで野間半島をグルリと回って枕崎までは70kmほどあるが、なんとか生き延びて歩き続けて欲しい。枕崎までたどり着けば、宿泊施設も、商業施設も、銭湯まである。ここはJRの終着駅として有名な地である。枕崎からはJR枕崎線が利用できるが、じつは鹿児島中央までは停車駅の多い枕崎線よりもバスのほうが早かったりするので、油断しない方が良い。

f:id:nayutakun:20210818205717j:plain

枕崎はJR南端の終着駅

f:id:nayutakun:20210818205805j:plain

枕崎の海辺は鰹節を燻す煙に満たされている

 枕崎からは東に30km、海岸沿いに開聞岳(924m)を見ながら進む。開聞岳は見事な円錐形の山で、スックと海から立ち上がった姿は完璧。一日中見ながら歩いても見飽きない。朝、枕崎を出発すると逆光になるのが難。コースの一部は国道226号線で、交通量が多い。この区間では補給に困ることはない。

f:id:nayutakun:20210818205932j:plain

枕崎から開聞岳が見え始める

 開聞岳登山路は九州自然歩道の支線ではあるが、日本百名山に選定されており、登山道の整備状況も完璧で、ゆっくり上っても3時間ほどで頂上に着くことができるので、ぜひ登ってもらいたい。

f:id:nayutakun:20210818210009j:plain

開聞岳頂上からの眺望

 開聞岳から薩摩半島の終着点となる山川までは30kmほど。途中には砂蒸し温泉を含んだいくつかの温泉や、地熱発電所や奇岩の竹山などの寄り道スポットが多数ある。また、宿泊施設も点在しているので、それらを利用することも可能。山川には複数の宿泊施設、食堂がある。ここから対岸の根占(ねじめ)までフェリーで渡ることになる。

f:id:nayutakun:20210818210102j:plain

山川の砂蒸しと竹山

f:id:nayutakun:20210818210126j:plain

山川と根占を結ぶフェリー

   2. 大隅半島エリア

 山川から根占港にフェリーで渡って大隅半島のトレッキングが始まる。山川-根占間のフェリーの乗船時間は50分。鹿児島湾(錦江湾)の中を航行し、距離は10kmほどしかないのだが、しばしば天候を理由に欠航する。私自身も欠航に見舞われ、その後の大隅半島トレッキングに多大な支障を来した。やむなく夜中に走らざるをえなかったのである。大隅半島は公共交通機関に弾力性がない。

f:id:nayutakun:20210818210400j:plain

南大隅町の海岸

 鹿児島県ではどのエリアで公共交通機関の利用に難渋するかと問われたら、大隅半島すべてと回答するのが正解かもしれないが、とりあえず鹿屋以南は絶望的だとしておこう。どのぐらいヤバいか、例を挙げてみよう。本州最南端の地として知られている佐多岬に一番近いバス停は、佐多岬の先端から6kmほど北の大泊にあるが、そこからの上りのバスの便は1日1本で、8:00で終了である。なんと、8:00発が終バスなのだ。

f:id:nayutakun:20210818210448j:plain

南大隅町の極楽鳥花

 こんなふうに、大隅半島を公共交通機関利用で攻略しようとした場合には、コミュニティバスを含めたバスの時刻と路線のサーチ能力を要する。鉄路のない大隅半島からの帰宅を考えたならば、数少ないバスの時間に合わせて、ミスのないコース読みと、ある程度の時間的な余裕、いざというときの迂回経路を考えるような行動をとらなければならない。

 それでは、大隅半島の交通の拠点とその特性を挙げておこう。

 根占は山川港からのフェリーの到着地で、大隅半島南部の交通の要衝。鹿児島中央駅から指宿枕崎線山川駅まで南下して、フェリーで渡ることができる根占には宿泊施設、食堂、商業施設、温泉施設などがある。山川根占フェリーは欠航が多いのが難点。また、バスについても根占は重要な拠点で、南の佐多岬に向かうバス、北の垂水に向かうバス、わずかながら大隅半島の中央を通って鹿屋に向かう便も根占を経由する。

 鹿屋市吾平町九州自然歩道ルートからわずかに北に外れるが、公共交通機関の少ない鹿屋以南の地域では非常に助けとなる。鹿屋市の中心地までバスが1日数便あり、吾平町からの中途離脱を可能にしている。

 鹿屋は大隅半島の中心にある都市で、人口は10万人。宿泊施設や商業施設、温泉施設などすべて揃っている。鹿屋までたどり着けば、大隅半島はなんとかなる。JR鹿児島中央駅からバスで鴨池港まで20分ほど乗り、1時間に1本ほどある垂水フェリーに50分乗り、フェリーターミナルで待つバスに乗れば1時間ほどで鹿屋に着く。大隅半島攻略を終えるまでには、このルートに何度となくお世話になることだろう。

 鹿屋ゴルフ場は穴場的な交通拠点で、九州自然歩道を歩こうと思う者が忘れてはならないバス停である。鹿児島空港から鹿屋まで1日数便の鹿児島空港線バスが走るが、このバスが鹿屋ゴルフ場(バス停名 ゴルフ場前)で停車する。鹿屋ゴルフ場とはいうものの、ロケーションは鹿屋の市街地から北に20km離れた大隅湖の畔。鹿屋からたかが20kmと思ってはいけない。このロケーションは、鹿屋を出て標高1000mを超える高隈山系を縦走する40kmのトレッキング後に忽然と現れるバス停なのだ。このバス停がなかったら、鹿屋から国分までの80kmを通して歩かなければならないので、攻略には4連休を要する。ゴルフをプレイする人間が、機材を抱えてこのバスに乗るとは考えられない。運行を担っているいわさきコーポレーションの気の利いた担当の方が、九州自然歩道トレッキングのためにわざわざ停留所を設置してくれたのではないかと思えるほど、絶妙な位置にあるバス停である。

 さて、前置きが非常に長くなったが、大隅半島トレッキングの概要に移ろう。

 山川港からフェリーで根占港に着いたら、大隅半島西岸の佐多街道を南に下る。歩くのは国道269号線で、交通量は多い。多いとはいっても、それほどではないので気にすることはない。右に錦江湾に浮かぶ開聞岳。左には辻岳(773m)、野首嶽(897m)といった山々が聳え立つ。標高はそれほどではないものの、海からそそり立つ姿に威圧感を感じる。

f:id:nayutakun:20210818210650j:plain

佐多街道

 野首岳の西の炭屋(すんや)を過ぎたあたりから、岩壁が直接海に落ち込むような地形となり、海に向いた面が開放された覆道を通る部分が多くなってくる。

f:id:nayutakun:20210818210708j:plain

佐多街道の南には覆道が多くなる

 根占から20km先の伊座敷にはAコープがあり、ここ以南には商店らしい商店はない。佐多岬から折り返す60kmほどにも商店らしい商店はないので、ここが実質的な最後の補給地と思っても良い。伊座敷からは内陸の山道をしばらく歩く。山中で涅槃門なる宗教施設が現れるが、その神秘的な雰囲気にビックリするだろう。この先15kmほどで本州最南端の佐多岬に着く。ここまでの経路はすべて舗装路。ちなみに佐多岬の手前6kmの大泊で九州自然歩道は折り返すのだが、ここまできたら最南端を見ないで帰るわけにはいかない。また、佐多岬九州自然歩道を離脱しようとしても容易なことではないので、行動は計画的に行わなければならない。大泊にはホテルとキャンプ場がある。

f:id:nayutakun:20210818210753j:plain

本州最南端の佐多岬

f:id:nayutakun:20210818210816j:plain

大泊海岸

 大泊からはしばらく大隅半島東海岸の美しい海を眺めてから、内陸部を折り返す。風力発電の風車が立ち並ぶ佐多馬籠の標高500mほどの丘を超え、野尻野(のじんの)からは佐多街道から見上げた野首嶽、辻岳の稜線を歩いて、西原台のパラグライダーテイクオフグラウンドからしだいに高度を下げて、横別府で集落に出る。ここから九州自然歩道を外れて北西に5km行けば根占港となるので、ここで離脱したり補給に立ち寄ったりすることも可能。

f:id:nayutakun:20210818210851j:plain

大隅ウインドファーム

f:id:nayutakun:20210818210925j:plain

野首嶽から辻岳の稜線を歩く

 横別府から10kmほど進むと花瀬キャンプ場。ここの川は奇観。板のような岩でできた川の割れ目部分に水が流れる、水のない川なのだ。さらに7kmほど進んだ田代麓には商店がある。繰り返し言うが、佐多岬からこの小さな商店まで60kmほどは自販機以外の補給はほぼないと考えて行動した方が良い。

f:id:nayutakun:20210818210957j:plain

雄川の花瀬の奇観

 田代麓から20kmほど先には吾平山上陵という、鹿屋市民が初詣に詣でる神代の皇族陵がある。九州自然歩道はこの先の飴屋敷から西に曲がり、陣の岡、横尾岳と20kmほど進む。飴屋敷から2kmほどコースを外れて北上すれば、吾平町の商店で補給をしたり、鹿屋市街地までのバスの便を得たりすることができる。

f:id:nayutakun:20210818211040j:plain

吾平山上陵

 横尾岳からはいったん西に山を下り、海岸線に出る。松の美しい高須海岸を2kmほど北上した後、かのやばら園を経由して鹿屋までは20km。ばら園と鹿屋航空基地は必見。

f:id:nayutakun:20210818211114j:plain

かのやばら園

f:id:nayutakun:20210818211135j:plain

鹿屋航空基地

 鹿屋からの高隈山系縦走は覚悟がいる。標高100mにも満たない鹿屋の市街地から、標高1182mの御岳まで一気に登る。そこから稜線を伝って小箆柄岳(おのがらだけ、1149m)、大箆柄岳(おおのがらだけ、1236m)と歩き、垂桜、大野原集落に至る合計28kmの縦走路。しかも、集落に到着しても宿泊施設はなく、補給も垂桜集落と大野原集落の自販機のみ。冬期は積雪もあり、同時に桜島からの降灰も経験できる。

f:id:nayutakun:20210818211212j:plain

高隈山系の稜線

f:id:nayutakun:20210818211237j:plain

御岳

f:id:nayutakun:20210818211303j:plain

大箆柄岳

 高隈山系縦走でホッとできるのは、大野原集落から東に10kmほど山を下ったところにある大隅湖が見えてからかもしれない。大隅湖の北端には農村研修村という宿泊施設があり、南端近くには先ほど出てきた鹿屋ゴルフ場がある。ゴルフ場のクラブハウスで食事をしたり、鹿児島空港連絡バスで鹿屋市街や国分、鹿子島空港へのアクセスを得ることができる。

f:id:nayutakun:20210818211344j:plain

大隅

 大隅湖を出てから大隅エリアの終点となる国分までは比較的容易な道程。20kmほどで風力発電施設の建ち並ぶ上場高原のキャンプ場で身体を休め、さらに20km進めば国分キャンプ海水浴場と、ここからのコースは充実している。あまりに楽なので、九州自然歩道がこんなことでいいのだろうかと感じるほど。

f:id:nayutakun:20210818211416j:plain

上場高原の風車群

f:id:nayutakun:20210818211503j:plain

国分海岸で桜島を眺める

 

  1. 霧島エリア

 霧島エリアの交通拠点は、日豊本線国分駅霧島神宮駅霧島神宮駅霧島神宮は8kmほど離れているので注意がいる。ちなみに、JR霧島神宮駅霧島神宮との間にはバスが運行されており、10分程度かかる。

f:id:nayutakun:20210818211615j:plain

霧島は日本発祥の地

 宿泊については、霧島神宮と丸尾温泉の周囲に複数の宿泊施設がある。また、新燃岳近くには新湯という秘湯で知られる新燃荘、韓国岳への登山口のえびの高原には、ホテルやキャンプ場がある。これらの宿泊施設は、韓国岳や大浪の池、新燃岳へのアプローチのために便利な宿である。

f:id:nayutakun:20210818211647j:plain

いたるところから噴気が出ている

 それではコースの紹介を。まずは国分駅から20kmほど北上して霧島神宮に到着。国分-霧島神宮駅間は主要な県道を歩くので、交通量が多い。霧島神宮駅から先は県道を外れて快適な道となる。補給には問題はなく、温泉施設も数か所ある。

f:id:nayutakun:20210818211713j:plain

霧島神宮

 霧島神宮からは7kmほど北上した湯之野温泉が分岐点。日程が許せば、そのまま北に進んで、韓国岳、大浪の池などを巡る霧島連山を堪能する1日を設定すべきと思う。ここはで天国のように素晴らしい光景を目にすることができる。

f:id:nayutakun:20210818211750j:plain

韓国岳

f:id:nayutakun:20210818211804j:plain

大浪の池

 九州自然歩道のハイカーズマップでは湯之野温泉から北東に進んで、新燃岳、中岳というコースが記載されているが、2020年の時点では火山活動の活発化のために利用できなかった。やむなく東の高千穂河原まで進み、鹿児島県最後の山となる高千穂峰に登って宮崎県との県境を越えることとなった。

f:id:nayutakun:20210818211830j:plain

高千穂峰

f:id:nayutakun:20210818211909j:plain

高千穂峰逆鉾


           もう一度歩きたい鹿児島県の道

 鹿児島県内の九州自然歩道をつまみ食いして歩いてみようかと思った人のために、おすすめコースを選んでみた。縦走を心おきなく楽しむため、スタート地点まで公共交通機関を利用したアクセスが可能で、ゴールから再び公共交通機関で帰宅可能なコースを厳選した。ただし、ゴールに到着した同日内に帰宅できるかどうかは保証の限りではない。

 反時計回りでの進行順に並べた。私家版「死ぬまでにもう一度歩きたい道」リストにエントリーしたものから5コースをピックアップ。最高は三ツ星。 

  1. 吹上浜串木野南さつま市加世田)☆☆☆

f:id:nayutakun:20210818212102j:plain

どこまでも続く吹上浜の砂浜

 九州新幹線の停車する川内駅から鹿児島本線で2駅の串木野からのスタート。駅から西に1km歩いた長崎鼻灯台の先は東シナ海。沖には甑島が見える。1kmほども海に沿って南に向かえば白砂の美しい照島海岸。その先で八房川の河口を迂回して、湊町の大里川にかかる日の出橋を渡った先は、砂浜がどこまでも続くThe吹上浜。交通量の多い国道270号線を歩く部分もあるが、神之川を越えたらできるだけ国道を歩かずに海辺を歩いた方が良い。吉利(よしとし)よりも南は加世田を経由して小湊漁港あたりまで南薩鉄道の線路跡が快適な自転車専用道として残されているので、ここを歩かない手はない。日置-加世田間は、コースに並行してバスの便があるため離脱が容易。日本三大砂丘を踏破。

f:id:nayutakun:20210818212141j:plain

南薩鉄道の線路跡を歩くのも良し

距離:55km
行動時間:16時間
補給:串木野(宿泊、温泉、食事、商店)、加世田(宿泊、温泉、食事、商店)、コース上に食事施設が点在

 

  1. 野間岳と坊津の海(南さつま市大浦干拓~片浦~野間岳~野間神社~女岳~坊津町秋目~今岳~坊津町坊)☆

f:id:nayutakun:20210818212233j:plain

野間岳からの絶景

 南さつま市加世田から野間池行きのバスに乗り、景色が良く、交通量の少なくなる大浦干拓あたりから歩き始める。干拓地から先の国道226号線は、海沿いの切り立った崖にへばりつくような道を走っており眺望は抜群。片浦から国道を離れて野間岳の登山道に進み、2時間ほどで野間岳の頂上にたどり着く。頂上からの眺めは息をのむほどの絶景である。野間岳からは野間半島の西海岸に出て、沖秋目島を眺めながら10km進めば坊津町秋目に料理の美味しい宿がある。

 翌日も絶景を眺めながら歩くが、亀ヶ丘まではいくらか藪漕ぎを強いられる。坊津町坊までは鹿児島でも最も美しい海の眺めを堪能できる。今岳から南には並行してバス路線があるため、いつでも離脱して枕崎に向かうことができる。

f:id:nayutakun:20210818212411j:plain

坊津の海は異次元の美しさ

距離:50km
行動時間:20時間
補給:加世田(宿泊、食事、商店)、坊津秋目(宿泊、食事)、丸木浜(キャンプ場)、坊津坊(宿泊、食事)、コース上に食事施設が点在

 

  1. 開聞岳と山川温泉群(JR開聞駅開聞岳長崎鼻~竹山)☆☆☆

f:id:nayutakun:20210818212512j:plain

日本最南端の駅 西大山駅から見る開聞岳

 JR開聞駅で下車してから3時間で開聞岳の頂上。道に迷うところは一つもない。下山路からは反時計回りに開聞岳の麓を一周して海沿いに進む。開聞山麓自然公園、開聞温泉、フラワーパーク鹿児島、長崎鼻、児が水(ちょがみず)徳光温泉、山川砂蒸し温泉山川地熱発電所、奇岩の竹山など見どころが多数ある。コースのどこからでも、3~5km北に向かえばJR線路に突き当たるので中途離脱も容易。補給地点も多数。

f:id:nayutakun:20210818212557j:plain

竹山

距離:30km
行動時間:10時間
補給:開聞(宿泊、食事、商店)、川尻(食事)、長崎鼻(食事・商店)、山川砂蒸し(宿泊、食事、温泉)、山川(宿泊、食事、商店)、コース上に食事・温泉施設が点在

 

  1. 佐多街道を佐多岬へ(根占~佐多岬)☆☆☆

f:id:nayutakun:20210818212652j:plain

ゴールは佐多岬

 大隅半島の南部西海岸にある根占港をスタート。国道269号線の佐多街道をひたすら南に下る。右手には青い海、左手にはのしかかるような岩肌が迫る野首嶽。22km先の伊座敷には商業施設と宿泊施設。さらに20km進めば本州最南端の佐多岬に到着。帰りのバスは6km引き返した大泊から。

f:id:nayutakun:20210818212804j:plain

覆道歩きも面白い

距離:48km
行動時間:15時間
補給:根占(宿泊、食事、商店)、伊座敷(宿泊、食事、商店)、大泊(キャンプ場、宿泊、食事)、コース上に自販機が点在

 

  1. 霧島神宮参拝から韓国岳、締めは高千穂峰で(霧島神宮~えびの高原~韓国岳~大浪池~新湯温泉~高千穂河原~高千穂峰~高原)☆☆☆

f:id:nayutakun:20210818212855j:plain

霧島神宮

 霧島神宮周辺に宿をとり、参拝の後北に進む。いたる所から噴気が出る湯之野温泉を通過してえびの高原に到着。韓国岳、大浪池を歩いて、新湯温泉のある霧島新燃荘に宿泊。

 翌日は新燃荘から高千穂河原を経由して高千穂峰に登る。高千穂峰からは霧島東神宮に下山する。霧島東神宮近くの祓川バス停からは、平日のみだがJR小林駅行きの便が3本ある。これに乗車できなければ御池湖畔のキャンプ場に宿泊して、翌々日に5km先のJR吉都線高原駅まで歩いて帰途に着く。

f:id:nayutakun:20210818212950j:plain

高千穂峰

距離:45km
行動時間:16時間
補給:霧島神宮(宿泊、食事、商店、温泉)、えびの高原(キャンプ場、宿泊、食事)、新湯温泉(宿泊、食事)、高千穂河原(キャンプ場、食事)、御池(キャンプ場)、高原(宿泊、食事、商店、温泉)、コースの途中には自販機を含めて補給は皆無