とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2021年11月7日 中国自然歩道7日目 山口県美祢市美東町明敷峠〜東鳳翩山〜山口市宮野 東鳳翩山に愛を見た

 今朝は美祢市萩市の境界にあたる明敷峠で目を覚ました。寒かった。標高が445mということもあるが、昨夜テントの外に出てみるとオリオン座の中に星が30以上見えていたので、冷え込むだろうと覚悟していた。覚悟はしていても、寒いものは寒い。5:00に寝袋から抜け出して、コンロでお湯を沸かしてコーヒーを淹れる。

f:id:nayutakun:20211109154600j:plain

 ノートPCのスイッチを入れてから、オリガミにお湯を注ぐ。コーヒーの温もりが指先にしみこんできて、ようやく指が動き始めた。しばらくクラッカーをかじりながらコーヒーを飲み、写真の整理をした。日の出は6:17だが、山に囲まれた峠が明るくなるのは6:30ぐらいだろう。ゆっくりと写真を眺める。

 ようやく周囲が明るくなってきた6:30から撤収を開始した。まだ日が差し込んでこないが、空は真っ青。フライシートの内面はびっしょり濡れていた。

f:id:nayutakun:20211109154645j:plain

荷物は減らしに減らしてノートPC込みのベース重量8kg

 7:15から行動開始。明敷峠から県道309号線を北に進む。峠を下り始めるとすぐに萩市に入る。2車線の道路だが、自動車はほとんど通らない。

f:id:nayutakun:20211109154849j:plain

f:id:nayutakun:20211109154857j:plain

f:id:nayutakun:20211109154908j:plain

 長小野集落を通過する。頂上にいくつものアンテナの立った西鳳翩山(にしほうべんざん)が後方に見える。ここの集落に西鳳翩山の登山口の一つがある。耕作地には霜が降りている。現在の標高は381m。真冬はどんな具合だろうか。

f:id:nayutakun:20211109154943j:plain

f:id:nayutakun:20211109154953j:plain

 7:48に岩瀬戸集落の三叉路を直進し、8:08に高津集落の三叉路を右折して緑資源幹線林道鹿野豊田線に入る。10分ほどで東鳳翩山(ひがしほうべんざん)登山口の標識が現れ、それに従って右折する。

f:id:nayutakun:20211109155028j:plain

岩瀬戸集落の見事な紅葉

f:id:nayutakun:20211109155111j:plain

 紅葉のちらほら見えるアスファルト舗装の山道をのんびり歩き、9:00に地蔵峠に到着した。汗が噴き出てきた。ダウンを脱ぎ、フリースをザックの中に片付けた。

f:id:nayutakun:20211109155135j:plain

f:id:nayutakun:20211109155146j:plain

f:id:nayutakun:20211109155158j:plain

 9:15に地蔵峠登山口から登り始めた。登山道の整備状況は素晴らしい。お恥ずかしい限りだが、「翩(べん)」の字が昨日まで読めなかった。はばたくという意味なので、鳳凰がはばたく様を山の形に見たのだろう。ついでに言うと、東鳳翩山新日本百名山に選ばれていることも知らなかった。

f:id:nayutakun:20211109155236j:plain

登山道は見事に整備されている

f:id:nayutakun:20211109155312j:plain

通常の登山道の3倍ほどの幅にササが刈られている

 こんな程度の基礎知識で上り始めたのだが、草刈りはバッチリで、十分すぎるほどの道幅が確保されている。木の階段もしっかり整備されており、登山道は文句のつけようがない。これに加えて感心したのが、木の階段の真ん中の置き石。丸太が流されないように石を埋めたのかと思ったが、この石を踏むと急な段差が楽に登れる。これは、登山道の整備に関わる人たちの愛だ。意図してかどうかは分からないが、そんな細かな気配りを感じさせる登山道だった。こんなに皆から愛されている東鳳翩山は、新日本百名山に値するなと思いながら歩を進めた。

f:id:nayutakun:20211109155353j:plain

木製の階段もしっかり設置されている

f:id:nayutakun:20211109155450j:plain

段差の大きな階段を選んで踏み石が埋められている。これは、愛だ。

f:id:nayutakun:20211109155547j:plain

ほどなく頂上が見えてきた

 9:55に東鳳翩山(734m)山頂に到着。山頂では3名の登山者が眺めを楽しんでいた。山頂付近は木が生えておらず、360°の視界が得られる。山火事のために山頂付近の木が焼失したままだとのこと。眺望は素晴らしく、南には瀬戸内海から四国まで見渡せ、北は日本海が望める。ベンチが空いたのでザックを下ろし、前日にセブンイレブンで購入したサラダとオレンジの朝食とした。朝食中にも次々と登山者が登ってきた。

f:id:nayutakun:20211109155615j:plain

東鳳翩山頂上

f:id:nayutakun:20211109155818j:plain

南は山口市街から瀬戸内海まで

f:id:nayutakun:20211109155952j:plain

すぐ西に西鳳翩山

 10:20から行動再開。山口市に近い南ルートを歩く人が多いようで、東の板堂峠に向かう道は距離が長いためか、歩いている人は少ない。しかし、このルートの整備状況も最上級。中国自然歩道の道標も適度な間隔で出てくる。

f:id:nayutakun:20211109160050j:plain

板堂峠に向かう登山道も整備状況良好

f:id:nayutakun:20211109160115j:plain

ウルシも色づいている

f:id:nayutakun:20211109160134j:plain

 11:12にショウゲン山(710m)に到着。コースから250mほど外れて山頂まで行ってみたが、残念ながら眺望なし。その代わりに、山口線を走るSLの汽笛の音が聞こえてきた。

 山口市内の方向が開けたショウゲン山分かれに戻ったところで再びSLの汽笛が聞こえた。眼下にじっと目を凝らすが、SLの姿も吐き出す煙も見えなかった。

f:id:nayutakun:20211109160215j:plain

ショウゲン分れからは山口市街地を望むことができる

 しばし小休止ののち、再び快適な山道を下り、11:48に板堂峠に到着した。ここからは萩往還に合流して南に進む。萩往還とは江戸時代に毛利氏の参勤交代のために使われた、日本海側の萩から瀬戸内海に面した防府をつないだ53kmの街道。明治以降は国道262号線になったり、山口市付近は県道62号線になったり、山道の部分は廃道と化していたようだが、近年、部分的に古い街道を整備して、当時の茶屋の跡などを復元している。

f:id:nayutakun:20211109160404j:plain

板堂峠にはこんな看板も

f:id:nayutakun:20211109160434j:plain

すぐに萩往還が始まる

 この萩往還が素晴らしい。部分的に石畳が敷かれており、いつまでも歩いていたくなるような完璧な整備状況。道の両側には広葉樹があったり、杉が植えてあったりするのだが、落ち葉が積もっているようなことがない。それほど人が歩いているようにも見えないにもかかわらずだ。定期的にブロアーで枯れ葉を除去しているのではないかと思われるほどの美しさ。萩往還は「死ぬまでに歩きたい」リストに加えておいた。

f:id:nayutakun:20211109160536j:plain

美しい街道のイメージが残る萩往還

f:id:nayutakun:20211109160626j:plain

f:id:nayutakun:20211109160648j:plain

ブロアーで落ち葉を飛ばしているかと思うほどきれい

f:id:nayutakun:20211109160720j:plain

 萩往還はところどころで県道62号線と交差した後、石畳や路盤の固められた道に進む。坂を下る途中には、六軒茶屋という参勤交代の際のお休み処が部分的に復元してあった。

f:id:nayutakun:20211109160741j:plain

江戸時代の一の坂の茶屋を再現している

f:id:nayutakun:20211109160826j:plain

 12:53に上天花(かみてんげ)集落に出たところで県道62号線に合流して、この部分の萩往還は終わり。ここからは県道歩きとなる。

f:id:nayutakun:20211109160851j:plain

しばらく県道62号線を歩く

 13:17には錦鶏湖に水を貯める一の坂ダム。ここから先は県道が狭くなり、歩道がなく危険。

f:id:nayutakun:20211109160926j:plain

一の坂ダムによってできた錦鶏湖に東鳳翩山(左端)が映る

f:id:nayutakun:20211109161117j:plain

一の坂ダムからの下りは歩道がなく危険

 しばらく県道を歩き、市街地に入って、13:53に禅宗名刹瑠璃光寺に到着。ここは五重塔で有名。周囲の紅葉と五重塔とのコントラストが美しい。

f:id:nayutakun:20211109161231j:plain

瑠璃光寺五重塔

f:id:nayutakun:20211109161249j:plain

瑠璃光寺

f:id:nayutakun:20211109161308j:plain

洞春寺

 瑠璃光寺を出てからは、山口県庁、ザビエル記念聖堂、大内邸跡と、観光地を巡り、16:07にJR山口線宮野駅に到着して行動終了。

f:id:nayutakun:20211109161416j:plain

山口県庁構内にある県政資料館

f:id:nayutakun:20211109161439j:plain

f:id:nayutakun:20211109161448j:plain

f:id:nayutakun:20211109161504j:plain

f:id:nayutakun:20211109161515j:plain

亀山公園のザビエル記念聖堂

f:id:nayutakun:20211109161548j:plain

市街地の一の坂川を渡る

f:id:nayutakun:20211109161627j:plain

大内氏館跡の龍福寺

f:id:nayutakun:20211109161644j:plain

八幡宮

f:id:nayutakun:20211109161702j:plain

陸上自衛隊山口駐屯地

f:id:nayutakun:20211109161804j:plain

JR宮野駅に到着

 ちょうど山口方面から列車がやってきて、折り返しのために16:13の発車時刻を待って停車していた。クロスシートに座って車内から駅名標を撮影していたところ、ゆっくりと列車が動き始めた。発車時刻前なのにおかしいなと思ってホームを見渡すと、ワンマンのはずの運転士さんがホームの列車後方部分に立っている。駅舎の方を見ているので、列車が動いていることに気づいていないよう。

f:id:nayutakun:20211109161917j:plain

ちょうど山口方面からの列車が入線した

 列車の中には自分以外に男性2名と女性2名だけ。やむなく、前方の運転席付近に走り、非常停止ボタンでもないか探すが見当たらない。運転席に近い前方ドアはすでにホームから外れている。そのとき、前方ドアに運転士さんが飛び乗って、運転席に戻ってようやく列車は停止した。

f:id:nayutakun:20211109161958j:plain

ドアに飛び乗ることができてよかった

 列車は発車時刻になっても停車したままで、しばらくすると運転席にはスピーカーからさかんに指示が入り始めた。その後、16:26にドアがいったん閉まり、16:36に10mほど後退し、16:43に発車。山口駅では新山口駅行きの乗り継ぎの列車が待ってくれていたため、博多行きの新幹線には予定よりも遅くなったがスムーズに乗り継ぐことができた。まあ、いろいろとあるものだ。

f:id:nayutakun:20211109162043j:plain

新山口駅からは新幹線で帰宅

f:id:nayutakun:20211109162102j:plain

f:id:nayutakun:20211109162112j:plain

中国自然歩道7日目 山口県美祢市美東町明敷峠〜東鳳翩山山口市宮野 晴れ 22/7℃ 行動距離24.9km 行動時間8:53 40930歩

復路交通: 宮野16:13山口線-山口16:48/16:48山口線新山口17:13/17:27山陽新幹線さくら-博多18:02