とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

九州自然歩道 福岡県エリア(復路)総括 はるばる来たぜ、皿倉山

九州自然歩道福岡県エリア(復路)

福岡県築上郡上毛町大平山~北九州市八幡東区皿倉山

 2021年9月18日~2021年10月9日活動

 活動日数 8日

 歩行距離141.2km

 269542歩

 

 2019年8月31日に福岡県北九州市八幡東区皿倉山をスタートした九州自然歩道トレッキング。九州をグルリと反時計回りに1周するのだが、福岡県を出発して、佐賀県長崎県熊本県、鹿児島県、宮崎県、大分県と歩き、ふたたび福岡県を北上して起点の北九州市八幡東区皿倉山でゴールとなる。

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 今回の福岡県エリア(復路)は、(1)大分県との県境の大平山から犬ヶ岳を経て英彦山までの修験道の道、(2)英彦山を起点として田川郡、築上郡ののんびりとした田舎道からカルスト台地に至るまでの道、(3)福智山、尺岳、帆柱山皿倉山と続く福知山山系を歩く道の3つのパートに分けられる。

 

(1) 修験道の道(大平山~犬ヶ岳英彦山

 公共交通機関でのアプローチが容易な、奇岩で知られる大分県中津市耶馬溪の青の洞門をスタートして、舗装された林道を西に上り詰めた大平山(597m)が大分県と福岡県の県境となる。

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中津市耶馬溪町の青の洞門。ここはまだ大分県

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耶馬溪町山国川にかかる耶馬渓橋。ここから大平山への林道に進む。

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大平山の山頂から福岡県コースがスタート

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これが福岡県復路No.1の道標

 ここから県境の稜線を歩きはじめる。九州自然歩道のこのあたりは2019年前後に再整備事業が行われたようで、山道の整備状況はかなり良好で、ときおり真新しい道標が出てきてビックリする。稜線に作られた広い防火帯の道を進んで、まずは瓦岳(624m)、次いで雁股山(807m)、経読岳(992m)へと進む。大平山から経読岳までのおよそ20kmの稜線は補給地はまったくなく、水場(谷川の水)も経読岳近くの谷までないので、食料と水は十分に用意が要る。

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令和2年度に福岡県の九州自然歩道再整備事業が実施されている

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こんなピカピカの説明板

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山中にこんなきれいな山道が出てくると面食らうが、これは防火帯でもあるため。

 経読岳から犬ヶ岳(1130m)のあいだには笈吊(おいづる)峠という鎖場がある。なかなかの難所であるが、迂回路も設定してあるので心配は要らない。この峠を乗り越えた先には犬ヶ岳の頂上。眺望は非常に素晴らしい。

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笈吊峠はこの岩場を真っ直ぐ登る

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犬ヶ岳山頂の避難小屋

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犬ヶ岳山頂からの眺望は素晴らしい

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 犬ヶ岳から5kmほど山道を西に歩く。この山道が素晴らしく、厳かな霊気まで漂う。古くからの修験道の道で、多くの人に踏み固められており、道標は乏しいものの迷うことはない。時折鎖場が現れ、かつての修行の地であったことがうかがわれる。山道の終点は、国道500号線野峠となる。

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犬ヶ岳から野峠まで修験者の足で踏み固められた道が続く

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ところどころに鎖場も

 野峠からは国道を西に4.5kmほど歩くと、英彦山の登山口の1つである豊前坊に到着する。ここには高住神社があり、その駐車場には飲料水の自販機があるので補給可能。

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野峠から豊前坊までの5kmは国道500号線を歩く

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豊前坊の高住神社

 豊前坊からは望雲台という岩場を経て、ブナの森を通って、英彦山北岳英彦山上宮、英彦山南岳と歩く。そのまま英彦山神社に下ることもできるし、鬼杉、大南神社などに立ち寄ることも可能。

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豊前坊から英彦山北岳にはブナの森を通る

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途中で立ち寄り可能な望雲台は絶景スポット

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望雲台から見える鷹の巣山も登ってみたい山

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英彦山上宮

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英彦山南岳

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南岳から鬼杉方面は鎖場あり

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大南神社

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英彦山神社奉幣殿

 英彦山近辺にはキャンプ場や民宿、ホテルもある。ただし、大平山から豊前坊の間には宿泊地はなく、交通機関もないので、通して歩くならば1~2泊のテント泊は不可避。補給にも注意がいる。

(2) 英彦山からカルスト台地までの道(英彦山~源じいの森~平尾台

 英彦山神社の鳥居の下の別所交差点を起点として、のんびりとした田舎道を楽しむ。

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英彦山神社の鳥居

 道標を頼りに、坂本、宮元集落と進み、添田町の油木ダムへと進む。この先は少し道の荒れたところがあるが、迫田、田代、平山の集落を経て、残りはほぼ舗装路歩きで源じいの森に出る。源じいの森にはキャンプ場、温泉、宿泊施設、鉄道の駅がある。

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北坂本から宮元には水害の痕跡の残るところも

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宮元集落で見つけたミステリーサークル

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油木ダム

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源じいの森には温泉、宿泊、食事、商店

 源じいの森からさらに見取、田峯集落を経て大阪山に登る。大阪山にはあまり眺望はないが、300mほど西に進んだ薬師の頭の眺望が素晴らしいので、ここには進んでみるべき。筑豊の炭鉱地帯が一望できるビューポイント。

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見取、田峯集落と、のんびりとした田舎道を進む

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県道204号線から大阪山に取り付く

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大阪山の山頂にはアンテナが立つが、眺望は今ひとつ

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ほんの少し寄り道をした薬師の頭の眺望は最高

 大阪山から北に下ると呉ダム。呉からは新仲哀トンネルを通ってみやこ町に出る。みやこ町では補給が可能で、さらには内部に立ち入ることができる古墳もある。

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大阪山から下ると呉ダム

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現在のコースは新仲哀トンネルの一択

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コース途中の綾塚古墳

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ちょっと寄り道、橘塚古墳

 そして、御清水が池、入覚集落を経て、平尾台カルスト台地に上る。平尾台の南端には千仏鍾乳洞という900mほども入ることができる鍾乳洞があるので、時間があればぜひ立ち寄ってもらいたい。ただし、膝下までは水浸しになるので、それなりの覚悟がいる。

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御清水が池

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入覚集落から平尾台への山道に進む

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平尾台への山道では、採掘された石灰岩を運ぶコンベアの下を通過

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平尾台日本三大カルスト台地

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千仏鍾乳洞もお勧め

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ズボンがビショビショになるが

 日本三大カルスト台地の1つである平尾台は、とくに夕景が言葉にならないほどの美しさ。秋のススキの時期はいつまで眺めていても立ち去りがたい。夕暮れの美しさを堪能してから、吹上峠を下って、北九州市小倉南区石原町駅まで出れば、JR日豊線に乗って20分ほどで小倉。ホテルはいくらでも確保できる。

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(3) 福知山山系を歩く(平尾台~福智山~皿倉山

 JR日豊線石原町駅をスタートして、のどかな風景の道原集落を経て、鱒淵ダムに進む。ダムからは登山道に入る。

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石原町から櫨ヶ峠トンネルを越える

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道原集落は、The田園

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鱒淵ダムの自転車用の通路。これ、絶対無駄。

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鱒淵ダム

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ダムの赤い吊り橋を渡って上流に進む

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ダムの最上流から福智山登山道が始まる

 最初のピークは山系の最高峰の福智山(900m)。360°のすばらしい眺望が得られる秀峰で、いつも登山客で賑わう人気の山。頂上から北に下ったところには避難小屋と水場がある。

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福智山

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山頂からの眺めは素晴らしい

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山頂から北に下ると避難小屋と水場

 福智山からはひたすら北に進む。登山道の整備状況は良好。5kmほどで次のピークの尺岳(808m)。頂上のすぐ南の尺岳平には大きな屋根の四阿がある。

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福知山山系の縦走路は整備状況がいい

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尺岳頂上

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尺岳平の四阿

 尺岳から音滝山(416m)、白畑山(449m)、建郷山(451m)といった小ピークを経て市ノ瀬峠(299m)へと進む。

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尺岳から北も快適な道が続く

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小さなピークをいくつも超える

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市ノ瀬

 ここからは急な勾配をひと踏ん張りして権現山(617m)のアンテナを通過して、九州自然歩道の起点の碑の建つ皿倉山(622m)の山頂に至る。

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市ノ瀬峠からは急勾配

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権現山のアンテナ

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皿倉山

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皿倉山頂上

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九州自然歩道起点

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頂上からは北九州市全体を見渡せる

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皿倉山山頂近くまでケーブルカーがある

 JR石原町駅から皿倉山までは30kmを越える。頑張れば1日で歩くこともできるが、眺望を楽しみながら、福智山、尺岳あたりで野営しつつ進むのも楽しい。

 

もう一度歩きたい福岡県の道

 

 スタート地点、ゴール地点のいずれも公共交通機関を利用したアクセスが可能で、縦走を楽しむことができるコースを厳選した。

 英彦山平尾台は非常に有名で、山登りには適するが、縦走路としてではなく、単独のループとして歩くことができるため、今回のリストからは除外している。

 

  1. 大平山~犬ヶ岳野峠 ☆☆

 このコースは大分県と福岡県の県境の稜線をたどる道。このコースの難点は、両端の取り付きまでの交通が貧弱なこと。県境の特性として、同部に至る公共交通機関はないか、あってもかなり本数が少ない。

 どういうことかというと、地方公共交通機関の大部分は、県、あるいは市区町村という地方自治体単位で運営されており、その境界を越える交通はなかなか存在しない。免許制度の問題かもしれないし、人口が自治体の中心に重心を置いて存在し、周辺部にいくに従って人家が少なくなるため、公共交通機関の利用が少なくなるからかもしれない。この地区ならば、わずか数キロメートルの峠の道を越えれば、隣の市のショッピングモールがあるのにというような状況でも、頑なにバスが市境の峠を越えないケースが多い。

 それはさておき、このコースの東端の大平山に公共交通機関を利用して向かうには、大分県中津市耶馬溪町にある青の洞門から8kmの山道を登るのが唯一の方法。

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大分県中津市耶馬溪町の青の洞門バス停からスタート

 いったん稜線に到達したならば、そこからの道は概ね快適。大平山以西の福岡県内の九州自然歩道は令和2年前後に再整備事業の対象になっているようで、ハイウエイ並みの美しさ。道標も真新しいものを数カ所で目にすることができる。

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 大平山からは瓦岳(624m)、雁股山(807m)、経読岳(992m)、犬ヶ岳(1130m)へと、稜線をいっさい下りることなく進む。

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稜線の快適な道を進む

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瓦岳山頂

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古峠から眺める経読岳

 経読岳から犬ヶ岳までの7kmほどと、犬ヶ岳から野峠までの5kmほどは、古の修験者が数百年にわたって延べ何万回も歩いた道であろう。路盤が人の足でしっかりと踏み固められており、道標がなくとも正しい方向に導かれるように歩いてしまうような山道が続いている。

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犬ヶ岳頂上に至る笈吊峠が山場となる

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犬ヶ岳頂上からの眺め

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神の世界の光景としか思えない

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 野峠からは公共交通機関がないため、添田町の運営するバスの走る英彦山登山口の1つの豊前坊まで、5kmほど国道500号線を歩かなければならない。これも県境に近い地域の悲哀。

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国道500号線の交通量は少ないので安心

 なお、稜線を伝い歩く40kmほどの行程を進み始めると、中途には補給や宿泊はない。沢水と野営のみとなる。

 

距離:40km程度(青の洞門~太平山、野峠豊前坊を含む)

行動時間:20時間程度(犬ヶ岳の前後での1泊以上を推奨)

補給:青の洞門(食事、商店)、経読岳(沢水)、野峠(沢水)、豊前坊(自販機)