今朝は広島県福山市山野町岩屋権現の近くの山中で目を覚ました。一晩中雪が降っていたようだが、権現様のお力添えで無事に朝を迎えることができた。まだ周囲の暗い6:00に撤収を開始し、足元の見えるようになった7:00に行動を開始した。
まずは雪の積もった木製の階段を慎重に登り、中国自然歩道まで復帰。夜のうちにくるぶしぐらいまで積もった雪の中を歩き、7:38に中原谷集落を通過。雪の中に見える集落は美しい。
7:51に県道104号線に合流して右折して進む。雪の中で世間話に興じているおばあさんたちに挨拶したが、返事はなかった。人形だった。7:54に下原谷集落を通過して、矢川に架かる権現橋を渡る。いよいよ雪は強くなってきた。橋のたもとで熊ノ湯温泉の道標を見かけたが、温泉らしきものは見当たらない。昨晩はかなり冷え込んだので、身体を温めたいのだが。
8:07に県道418号線の分岐を通過。こちらは中国自然歩道の支線で、龍頭滝に向かう。今回は県道104号線をそのまま直進する。自動車の通らない県道は、白いベールに覆われている。左手に龍頭滝駐車場が出てきた。夏や紅葉の季節には人を集めるのだろうな。
8:17に龍頭山荘の前を通過。前方から自動車がやってきて、路肩に停まるとカメラ機材を降ろしている。挨拶を交わす。龍頭滝の雪景色を撮りに来たのだという。昨年は-10°以下になった日に来たら氷瀑になっており綺麗だったとのこと。今日はたぶん、雪の滝だとのこと。
8:30に県道104号線が突き当たる田原集落に到着。矢川はここで小田川に合流する。交差点付近に案内地図と地産品の販売所があったので、屋根の下に荷物を降ろす。ただし、販売所は開店していない。コンロで沸かしたお湯でカフェオレを淹れて小休止。
8:45に行動再開。県道104号線から左に分かれる県道21号線を進む。田原集落を抜けて小田川に架かる聖橋を渡り、猿鳴峡に進む。橋のすぐ先にキャンプ場らしき施設があるが、現在は閉鎖中。その先の正面には聖嶽の岩山が聳える。
県道21号線の勾配が急になってきた。雪も強くなる。9:32にキャンプ場の表示が出てきたところで岡山県に向かって分岐を右に進む。路面は凍って滑りやすい。
しばらく林道を上ると、自動車の轍が出てきて、島串集落が現れた。さらに山道をスイッチバックしながら高度を上げる。
9:55に標高390mほどの峠を通過してからは、舗装されたなだらかな林道が続く。雪は深く、くるぶしが隠れるほど。右手に中国自然歩道の説明板が現れ、その先が県境だった。10:18に県境を越えた。
岡山県側はさらに雪が深い。靴が完全に隠れてしまう。中国自然歩道の説明板が建てられているが、これまでのものとはトーンが異なり、明るい色使い。
県境からはゆっくりと下り、10:30に隠地集落を通過する。正面の山には石灰岩の採石場と思われる露天掘りの露頭が見える。
10:47に林道を下り終えたところで、鴫(しぎ)川に架かる大平橋を渡って県道9号線の蛇の穴(じゃのあな)バス停に到着した。ここは帰りのバスの通過するバス停。時刻表をチェック。最終バスは15:40分に通過。
1kmほど県道を北に進む。左手にも大きな露天掘りの採石場が見えてきた。ベルトコンベアと思われる装置が頭上を走る。
妙福寺の看板を目印に、県道から右折して急坂を上る。視界が開けた高台が高原集落。なんとなく明るい雰囲気のある集落だ。町の南にある妙福寺に立ち寄ってみたが、門は閉ざされているため中には入れなかった。
葡萄畑の中の道を進み、農村型リゾートだという高原荘の前のベンチで小休止。カフェオレを飲みながらビスケットを食べて、本日の残りの行程を考える。
現在は11:30。3kmほど進むと、さきほどの県道9号線に出て、バス停があるはず。そこからは北に向かって山中に進むため、さらに8.2km先に進まないとバス停はない。蛇の穴バス停で確認したように、最終バスが11km先の弥高山バス停から出発する時刻は15:15。11kmは通常の舗装路ならば3時間で歩けるが、この先の地図を見ると、等高線が幾重にも重なり、標高600mほどの峠を越える。雪で峠が越せなかったら心配だ。
とりあえず11:45に行動再開。麓の集落を目指して歩き始める。雪道は下りのほうがこわい。凍った斜面ではおずおずと足を出しながら12:15に県道9号線への合流地点に到着した。
ちょうどそこにバスが待機していた。日中は、ここ共和バス停から終点の井原までの便があるようだ。運転手さんに挨拶をして、乗車予定の弥高山入口バス停の位置を教えてもらう。とても気の良い運転手さんで、「弥高山でお待ちしています」と送り出してくれた。ちょうど3時間で8.2kmだ。なんとしても間に合わないと。元気が出てきた。
県道を左折して北に進む。ここにも四つ堂があるが、のんびりしているヒマはない。大内谷の林道を先に先に進むが、空は晴れてきた。道路の雪は少ない。快調に歩を進める。
ところがこの先で林道の傾斜が強くなってきたあたりから、再び路面に雪が残りはじめた。スイッチバックして高度を上げると、さらに雪は深くなり、くるぶしを越えるところまできた。
数軒の家が見えたあたりで、ようやく林道の傾斜が少なくなった。地図を見ると、かつての街道だった千峯坂との分岐点だ。標高は400mを少し越えたほど。大体このあたりからは稜線のなだらかな道となりそうだ。
残りの距離は3kmもない。現在の時間は13:25で、バスの時間までは2時間近くある。ホッとして道路脇にあった四つ堂に腰掛けて、温かいカフェオレとビスケットで休憩とした。四つ堂の裏手の方から、建て付けの悪い玄関か雨戸をガタピシさせて開けているような音が3回ほどした。住民の方が出てきたのだろうか。
四つ堂はきれいに掃除がしてある。きっと、さきほど玄関を出てきた人が掃除してくれたのだろう。出発するときにはお礼の挨拶をしないといけないなと、ザックを担いで四つ堂の前に立ったところで、裏手には家など何もないことに気がついた。あのガタピシした音は何だったのだろうか?不思議だ。
周囲が明るかったこともあり、あまり怖さは感じなかった。廃村になってしまったこの集落のかつての住民が、立ち寄った旅人に会ってみようかと、わざわざ玄関を出てきてくれたのかもしれないが。
13:40に四つ堂から歩き始めた。雪はあるが、傾斜はあまりないので、歩きにくくはない。道路脇にはお地蔵さんがいくつも立っている。
14:00に千峯集落を通過した。集落の近くが千峯坂の最高地点で、587mあった。
14:15に千峯坂の入口にたどりついた。目の前には弥高屋商店。バス停の看板も見えた。時刻を確認すると、最終バスの出発時刻は15:15で間違いはない。ホッとした。
コーヒーを淹れて香りを楽しんでいると、バスが目の前に停まり、運転手さんがドアを開けて「寒いから中に入ってください」と声をかけてくれる。共和のバス停で挨拶を交わした運転手さんだ。コーヒーを飲み終えてからバスに乗せてもらう。
出発時刻まで40分ほどは運転手さんとの会話が盛り上がる。このあたりの出身の運転手さん、ふるさとが寂れていくこと、学校の統廃合が進んでいること、かつて遊んだ山に産廃ができていることなどなど、考えることが多いよう。
定刻どおりにバスは出発し、雪道を慎重に井原駅まで運んでくれた。1時間あまりの車窓風景は素晴らしかった。乗客は私だけ。がんばれ北振バス。
井原駅からは今回初めて乗車する井原鉄道。幸運なことに、図らずも夢やすらぎ号という特別イベント車両に乗れてしまった。ありがとう井原鉄道。おかげでいい一日だった。
2022年2月6日 中国自然歩道30日目 広島県福山市山野町岩屋権現~岡山県井原市芳井町弥高山入口 雪 3/-3℃ 行動距離21.1km 行動時間6:58 獲得高度1248m 34004歩
復路交通:弥高山入口15:15北振バス-井原16:20/16:23-神辺16:41/16:45-福山16:58/17:40-博多19:06