とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2022年8月27日 中国自然歩道62日目(通算205日) 島根県江津市川戸駅~邑南町断魚渓 圧巻!千丈渓&断魚渓

 今回の自然歩道トレッキングは島根県江津市のさらに山中からの再開。江津市のHPには、「地理A」の教科書で「東京から一番遠いまち」として取り上げられたことがあると自虐ネタが載っている。福岡からもずいぶん遠い。ということで、今回も金曜午後は年休を取得して江津市内に前泊とした。

 午前中はきっちりと働いた後、15:43の福岡市営地下鉄に乗車して、博多から新幹線のぞみ48号、新山口からスーパーおき6号に乗り継ぐ。おき6号はいつもながらエアコンが効きすぎて寒い。津和野峠を越えるころには、雨がパラついていた。

博多からはのぞみ48号

新山口からはスーパーおき6号

 19:40の定刻に江津に到着。1日5便ほどのバスの最終便が19:45だったので、山陰本線の遅延が心配だったが、ここはクリアしてホッとする。石見交通バスも駅前ロータリーに時間どおりに到着し、乗客2名を乗せたバスは2018年まで走っていた三江線の路線をなぞるように暗闇の中を走って行く。

東京から一番遠い江津に到着。列車に遅れがなくてよかった!

バスも時間どおりにやってきた

 20:15の定刻に三江線の駅舎の残る川戸に到着し、目の前の美川旅館にチェックイン。ここは居心地のよい旅館だった。夕食にはノドグロの煮付け、タイとハマチの刺身、ナスの煮浸し、石見ポークの豚カツ、アオサ入りのすりおろし山芋、モズクのすまし汁に漬物、オレンジと、この料金でいいんですかと言いたくなるほどの料理。白米は近隣の農家から仕入れているとのことで、新米直前のこの時期としては驚異的な食味。あまりの美味しさにご飯のお代わりをしたら、食後によろけるようにしてたどり着いた部屋から立ち上がれなくなり、女将さんから早くお風呂に入りなさいと呼ばれてしまった。

駅前の旅館にチェックイン

2食付きの夕食は豪華

 トレッキングの本日は5:30に起床。部屋の窓を開けて川戸駅の駅舎を見る。三江線はすでに4年前に廃線。当たり前のことだが、列車は停車していない。駅舎はそのまま保存されているので、余計にもの悲しい気分がする。

窓を開けると川戸駅

 6:30に朝食。定番の朝ご飯。シジミの味噌汁が美味い。サーモスにお湯を詰めてもらって、出かけようとするとおにぎりを2個用意してくれていた。ありがたい。この旅館は細かいところまで心配りをしてくれるよい旅館だった。かつては地区に5つほどあった旅館が最後の一つになってしまっているという。跡継ぎもいない。何年か後にこの地をふたたび歩く機会があったとき、元気に営業しているか心配になる。

この旅館にはもう一度訪れたい

南の山にガスがかかる

 6:51に旅館の玄関を出る。南の山々にはガスがかかっている。女将さんが玄関までお見送りに来てくれて、「山にこういうふうにガスがかかっている日は、これから晴れるんです」と送り出してくれる。まずは前回中国自然歩道を離脱した江尾橋に向かい、県道41号線を南に進む。

川戸駅に立ち寄り、乗ることのできなかった三江線の匂いを味わう

町の中には線路が残る

 川戸橋を渡って江の川(ごうのかわ)の支流の八戸川(やとがわ)を越える。小中学校を左に見ながら進み、7:12に小田集落を通過。

八戸川を越えたところに今井美術館

その先には中学校

 その先の峠で母抱(ははがかえ)トンネルを抜ける。「むかしむかし、この峠を母を抱えて上り下りした孝行息子がいたんだそうじゃ」と市原悦子のナレーションが頭の中に流れる。前回もこのトンネルを通過したが、このトンネルの名板を見ると、親孝行などしたことがない自分の身を振り返って胸が痛んだ。とくに今日は、ちょうど1週間前に急に母が天国に旅立ってしまったため、こんな自分でごめんなさいと悲しくなってしまった。

 トンネルを抜けると前が開ける。鮎観橋のたもとに立つ今田水神の大クスノキを左に見ながら通過し、7:38に江尾橋に到着。県道297号線の中国自然歩道に復帰。ここから先は自販機がないため、気温を考えてPETボトルの飲料水を2本購入。

峠を抜けるとガスが晴れ上がってきた

鮎観橋の袂に大クスノキ

夏は、フヨウ(アオイ科

江尾橋で中国自然歩道に復帰

ここが日和まで最後の自販機

 江尾橋を渡り、人家が点在する県道をしばらく進む。7:49に千丈渓の立派な看板を目印に、県道297号線から分かれて左折し、日和川に沿って1kmほど進む。

江尾橋を渡る

八戸川上流には持越山(356m)

県道297号線を進み

千丈渓の看板で左折

日和川に沿って進む

右手には水力発電

 8:07に千丈渓入口に到着。入口には自動車十数台分の駐車スペースとトイレがある。ここからは自動車の通行はできない。草が伸び放題になっているようなので、DEETを露出皮膚に丹念に塗布。

千丈渓入口

 遊歩道は2年前の豪雨、豪雪のために少し荒れているが、歩行には問題なし。道端の小さな三三の滝を通過して、次に現れたのは岩を流れが豪快に切り刻んだかのような魚切。そして、相生滝と続く。コースには立派な歩道が設えてあり、歩きやすく、眺めが素晴らしい。

遊歩道は少し荒れている

土砂崩れか所もあり

三三の滝

岩場にボルト固定した遊歩道が続く

魚切

幽玄な道が続く

相生滝

相生滝

 8:40に千畳敷に到着し。ここで荷物を下ろしてしばらく休憩。素晴らしい景色が続くので、早足で歩くのはもったいない。

千畳敷で一休み

 この先は川沿いの道を進み、橋の下で行き止まりかと思ったらくぐり岩をザックを擦りながら抜けて、獅子岩橋を渡る。

獅子岩

行き止まりかと思ったら

橋の下のクグリ岩を抜ける

 この先は岩にへばりつくようなスリリングな歩道を歩く。その先に橋が架かっていたが、行人偏のみで読ませる「たたずみ橋」。読めない。

スリリングな歩道が続く

これで「たたずみ橋」とは

 9:13に豪快な流れの大淵、おしどり滝を眺めながら小休止。冷たい飲料水で喉を潤す。

大淵

おしどり滝

 9:31に白藤橋から白藤滝とその奥の紅葉滝を眺めて遊歩道は終点となる。ここで階段を上って9:36に林道に合流。

まだ奇観は続く

白藤橋

紅葉滝

奥にチラリと白藤滝

階段を上って林道に出る

 しばらくダート道を歩き、9:55に舗装路に変わる。10:10に千丈渓の南の入口に到着。ここにも駐車場がある。

舗装路に変わる

 この先は自動車の通らない良好な舗装路をのんびり歩く。一の滝を右手に眺め、10:21に山の内集会所前から左に入る。そのまま集落の中を進み、10:40に下郷集落で県道112号線に合流して道なりに南に進む。

右手には一の滝

まだまだ美しい渓谷が続いている

山ノ内集落。石州瓦の赤い屋根が映える。

下郷で県道112号線に合流

 10:55に中国自然歩道が左の県道295号線と県道112号線を真っ直ぐ進む分岐点に到着。本日はこの交差点から西に500mほどの蕎麦屋が営業しているので、立ち寄ることとした。

日和上郷で自然歩道を離れて昼食に向かう

 こんな山の中に、と思うようなところに蕎麦屋が一軒。古民家を改造した店で、風情がある。10割そばの店で、有名店らしい。11:05に千蓼庵(せんりょうあん)に到着。11時の開店直後だが、すでに先客が5組ほど。蕎麦も美味しかったが、豆腐も美味しかった。

 昼食を済ませて11:32に行動再開。11:45に県道112号線に復帰し、右手に京太郎山(827m)を眺めながら明泉谷川に沿って高度を上げていく。

県道112号線に復帰

キバナコスモス(キク科)

ザクロ(ミソハギ科)

明泉谷を上っていく

大利

 大分汗が流れた12:41に大利峠の洞門を通過。洞門の出口を左折すると萩原山に向かう道となる。ここでしばらく小休止。

大利峠洞門を出てすぐ左の林道に進む

 県道112号線から左折した先は、舗装路ながらややワイルドな状態。半藪漕ぎの道を進む。萩原山の頂上に建つ電波塔のサービスのための舗装路のようだが、通行量はあまりなさそう。高低差はあまりなく、13:24に萩原山登山口に到着。

林道は荒れている

ハギ(マメ科

ミズヒキ(タデ科

萩原山の頂上の電波塔群が見えてきた

EADASの地図上ではここから直登登山道が始まる

 EADASではここから真っ直ぐ東に直登路があるように登山路を表示するが、そんなものは痕跡もなかった。おそらく数年は誰も歩いていないのであろう。やむなく舗装路を歩き始めるが、十分に傾斜はきつい。頂上間近で中国自然歩道の道標を発見したが、100%薮を指し示していた。

直登路が見つからないので舗装路に進む

頂上付近でこんな道標が出ていたが、その先は完藪状態

 13:43に萩原山(783m)頂上に到着。付近には電波塔が5、6基建てられている。残念ながら三角点は発見できず。眺望はなし。

萩原山頂上の電波塔

 頂上から東に荒れた山道を進む。比較的新しい中国自然歩道の説明板が出てきた。木枠は古いが、説明板だけ新しい。ここから先は半藪漕ぎ状態で、先に進めるか心配になり始めた頃に、木の階段を足元に感じ、中国自然歩道の整備歴があるコースだと確信した。

電波塔から東に向かう道が続く

中国自然歩道の案内板も出てくる

しかし、その先は藪状態

足下に定番の丸太が出てきて安心する

 木の階段と踏み跡らしきものを頼りに東に進む。萩原山の次の目標は向歯無山(675m)。萩原山頂上からは直線で1.2kmほど。とぼしい踏み跡とGPSを頼りに南東に進む。

踏み跡とGPSを頼りに進む

 14:14に向歯無山の登山口かもしれない地点に到着。ここには中国自然歩道定番のベンチが設置してあった。ここから300mほど進んだところに、中国電力の杭があり、自然歩道は左の北に折れている。

自然歩道定番のベンチ発見

向歯無山頂上に真っ直ぐ向かう道も付いている

頂上まで200m付近の中国電力の杭から先は道が無い

 向歯無山の頂上までは直線で200mほど。道はない。薮もそれほどひどくないので、GPSを頼りに山頂を目指す。14:31に向歯無山頂上の三角点に到着。眺望はまったくなし。

軽い藪漕ぎで頂上に向かう

三角点を発見

 虫に刺される前に下山開始。14:38に中国電力の杭まで戻り、しばらくは北に真っ直ぐ下山路を進んだ。EADASにはこの杭の位置から600mほど直登路が伸びているが、100mほど高度を下げたところで直登路は消失した。残された道は中国電力の道。頭上に高圧線が走行しているところから、高圧鉄塔を建設するために作られた歩行路の痕跡がある。

中国電力の杭まで戻る

直登路はほどなく消失

 踏み跡を辿って14:49に鉄塔下に出た。この先も高圧線を探しながら、ときに藪漕ぎをしつつ、高圧鉄塔の配列に従って進み、15:19に舗装された林道に出ることができた。本来の位置より500mは東に出てしまったようだが、怪我がなくて済んだだけでもましだ。これだけ等高線の目の詰まったところを藪漕ぎで抜けるのは大変だ。

直登路が見つからないので、送電線の下にあると思われる道を探して進む

中国電力ありがとう

ときおり強烈な藪漕ぎ

電気の恩恵にあずかることができるのは、こんな山中に鉄塔を建ててくれた人がいるからだなと実感。

藪を抜けて林道に復帰。後に続く人はこのコースはとらずに、直登路を探してください。

 ここからは林道をのんびり歩いて15:35に中国自然歩道の道標を発見。まさに直登路の到達点と思われる道標。たぶん、上には道標はなかった。

直登路の上り口発見

こっちが正規コース。探せばあるはず。

 ここからは舗装された林道が続くものと思っていたら再び大波乱。15:54にGPSでなにげなく位置を確認したら、現在の山道が中国自然歩道と離れていることに気がついた。途中に完全に崩壊した中国自然歩道の道標の杭だけ残っているのを確認したので、この道で間違いはないはずだと思ったのだが。

鼻歌気分で林道を歩いていた

道標もあったし

地図の通り、分岐を右にとった

その先で少し右に進んでいるが

中国自然歩道の朽ちた道標があったので正しいコースと思い込んでいた

 やむなく300mほど戻って、くだんの中国自然歩道の道標まで行って、正しい道がないかどうか探索した。丹念に道を探してみたが、一本左の北北東の稜線に続く自然歩道の道は見つからなかった。やむなく北東に続く谷を隔てた林道を下る。この道は良道で文句はない。16:27に舗装路に復帰し、中国自然歩道のコースに戻ることができた。ここは正解が分からないまま。

植林管理のために新しく付けられた林道のよう

ここの植林は素晴らしく手入れがよい

正しいコースよりも300mほど東で中国自然歩道に復帰

 舗装路に合流してからは東に進み、2回のヘアピンカーブを経て、16:53に断魚集落に出て、濁川を野口橋で渡る。

集落に近づいてきた

野口橋で濁川を渡る

 17:03に断魚橋を渡り、濁川に沿って上流に進むと、目の前に大きな一枚岩の聳えた断魚渓公園に到着した。

断魚橋

濁川に沿って上流に進む

断魚公園

 川に沿った道を進み、神楽淵を通過。その先の千畳敷が圧巻。奇観である。大きな一枚の岩でできた川底を、激しい水流が一筋のノミで削ったような。説明できる語彙力がないのが残念。最後に嫁ケ淵を経て、17:33に舗装路に戻る。

神楽淵

千畳敷

岩に爪痕が残るような荒々しい風景

中央には岩樋川が岩を刻む

嫁ヶ淵

 17:36に断魚トンネルで国道261号線に合流し、300mほど進んだところにある深篠川キャンプ場にて本日は行動終了。晩ご飯には美川旅館の女将さんに握ってもらったおにぎり2つ。

キャンプ場には広い駐車場あり

広島行きの高速バスも停まる

2022年8月27日 中国自然歩道62日目(通算205日) 島根県江津市桜江町川戸~邑智郡邑南町井原 断魚渓 曇り 28/23℃ 行動距離33.4km 行動時間10:51 獲得高度1498m 53401歩 行動中飲水量2000ml

往路交通:西新15:43福岡市営地下鉄-博多15:56/16:15新幹線のぞみ48号-新山口1649/17:12スーパーおき6号-江津19:40/19:45石見交通バス-川戸駅20:15