とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

人のセンベイを割るな

 東海自然歩道トレッキングの中継地での出来事。三重県御在所ロープウェイ麓駅に到着し、福岡への帰途につくためのバスを待つ1時間ほどの間、ターミナルに立ち並んだお土産店や軽食を売る店をのぞいていた。

 気になったのが、湯の山温泉名物「大石焼」と書かれた店舗。大石とは、この地に縁のある大石内蔵助に因んだものだろう。やわらかい煎餅とは面白そう。

 しばらく観察していると、ロープウェイで御在所岳の山頂から降りてきた観光客がときおり買い求めている。中にはリピーターなのか、「温かい焼きたてを頂戴!」と店主に声を掛けている人もいる。

 店舗前をそ知らぬ顔をして通過しながら、横目で値段を確認すると、1枚150円とお手頃価格。試しに1枚買ってみようと、思い切って店主に声を掛けると、「焼きたてですよ」と言いながら作業台の上の紙の包みの中から1枚の煎餅を取り出した。

 そのまま渡されるのかと、小銭入れから取り出した150円を握りしめて待っていると、店主はこちらに背を向けて作業台の上でなにやら煎餅に処理を施してから、ビニール袋に入れて手渡してきた。

 その大石焼がこれ。焼きたてのやわらかい煎餅を、はさみで半分に切ってある。

 袋を渡された瞬間、思わず店主に聞いた。「なんで切ったの!?」。

 「食べやすいように!」と答えが返ってきた。こちらの怒気を感じたのかどうか、「どうせ食べるんでしょ?」と強めの口調で重ねてきた。

 納得がいかない。煎餅は切らずともビニール袋に入る大きさ。半分に切られた煎餅を突っ返そうかとも思ったが大人げない。

 渋々と口に入れた煎餅そのものは、やわらかい食感が面白く、生地にたっぷり入ったゴマの香ばしさと、真ん中に乗せられた山椒の葉のアクセントも効いていて美味しかっただけに残念。硬さはナポリタイプのピザクラストとかわらない。はっきり言おう。丸ごとでも食べにくいとは思えない。もう一度聞きたい。なぜ切った?

 湯の山温泉は、1970年に公開された「男はつらいよ」第3作のロケ地。柴又帝釈天参道の手焼き煎餅の店で、店主が「ハイヨ」と言いながら、煎餅を目の前で割って寅さんに手渡しする場面が頭に浮かんだ。「このトンチンカンのベラボーめ。いったい何だったってセンベイを割って渡しやがるコンコンチキがいやがんでー。。。。。。」