注文していた本がようやく手元に届いた。8月9日に新聞の書評を見てすぐに注文したのだが、1週間後には到着予定だったものが、途中で配達予定日の変更があり、3週間ほどかかっている。きっと、注文が殺到したのではないだろうか。
書評を書いていたのは病理学者の仲野徹先生。「こわいもの知らずの病理学講義」という飄逸な文章で読みやすい一般向けの病理学の啓発書を書いている大阪大学医学部の教授。免疫チェックポイント阻害因子の発見で2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶祐先生のお弟子さんだが、久坂部羊の同級生といった方が通りやすい。
著名な作家なので説明するまでもないかと思うが、久坂部羊は大阪大学医学部出身の小説家・医師。医療系の小説ではグイグイ読ませてくれる。お勧めは、「悪医」、「破裂」、「廃用身」などなど。どちらかというと医療者の方に視点を置いたシニカルな目で医療を眺めているのが分かる。彼の作品はどれも題材が重要でシリアスなものが多く、そのわりにエンターテインメント性が高いため、読み始めると止まらなくなる。
さて、ようやく手元に届いた本の話に戻るが、書評で仲野先生の選んだ本というのが、ワールド・トレイルズという世界の代表的なロングトレイルを選び抜いた写真を主体とした本である。最初のトレイルであるドイツのMalerwegというドイツで一番美しいトレイル「画家の道」というページを開いて目が釘付けになった。死ぬまでにここを歩かないと。
次の、イタリアのドロミーティという山岳地帯の縦走路のAlta Via 1。ここを歩くまでは死ぬわけにはいかないなと確信した。
次も然り。日本の代表として選ばれた熊野古道すら、まだ踏破していない。まずい。この本に載っている32のトレイルのどれも、まだ歩いたことがないのだ。このままでは成仏できそうにないので、早々に旅に出なければならないなと思わせる1冊だった。原題の”Wanderlust”は旅行熱の意味。
それにしても仲野徹先生がトレッキング好きとは知らなかった。どうみても、バックパックよりも上方落語の演台の方が似合いそうなんだから。