トウモロコシと聞いて思い出すのは、今から40年ほど前、大学1年生の時に、高校2年生の弟と一緒に行った北海道東部の自転車の旅。
名古屋港から苫小牧港までフェリーで渡り、海岸線に沿って襟裳岬、釧路へと進み、摩周湖まで北上した。摩周湖を見下ろす位置の山上のレストハウスで焼きたてのトウモロコシと茹でたてのジャガイモを売っており、迷いに迷って二人でジャガイモを食べたが、あのときの焼きトウモロコシはすばらしく美味しそうに見えた。今でも焦げた醤油の匂いを思い出すことができるほど。
あのときのトウモロコシの品種は何だったのだろう。時代的にはハニーバンタムだったのかもしれない。黄色を主体とした粒の中に、いくらか白い粒が混じっていたような気がする。トウモロコシを選ばなかった理由は、ジャガイモの数倍の値段だったから。このときの北海道自転車旅行は、15泊すべてをテントで過ごし、食費もかなり切り詰めていた。でも、とても楽しかった。
先日、福岡県内の農家の方からトウモロコシを頂いた。頂いた品種は、ゴールドラッシュ、ピクニックコーン、ピュアホワイト、しあわせコーンの4種。1日1本ずつ、食べ比べをしてみた。
まずはゴールドラッシュから。この品種は数年前から青果店の店頭で見かけて、気になっていた。包葉(皮)を2、3枚残した状態で皿の上に載せ、ラップを掛けずに500Wの電子レンジで3分30秒加熱した。包葉を剥いたら、中から出てきたのは濃い黄色の粒。実がやや柔らかく、すばらしく甘い。夕食前のおやつとして完食した。
翌日はピュアホワイト。これも3分30秒の加熱で食べてみた。包葉を剥ぐと中の粒は真っ白。実はプリプリとした食感で、ゴールドラッシュ以上に甘い。果実といって良いほどの甘さだった。
次はピクニックコーン。やや小ぶりで、電子レンジで同様に調理した。粒はゴールドラッシュのような濃い黄色一色。これも非常に甘く、ピュアホワイトよりも甘いほど。驚異の甘さだった。
最後はしあわせコーン。3分30秒加熱して包葉を剥ぐと、黄色の粒に白色の粒が三分の一ほど混じる。これまた甘くて、すこぶる美味い。
1日1種ずつ食べ比べてみたが、いずれも素晴らしく甘くて、文句なしに美味い。これ以上の言葉が出てこず、食レポは失格。目隠しをされたら、品種を当てられる自信はまったくない。
せっかくなのでトウモロコシについて調べてみた。トウモロコシZea maysはイネ科トウモロコシ属の1年草。原産地は中南米あたりとされている。
日本では北海道で50%近くが生産され、千葉、茨城と続く。世界的にはイメージどおりアメリカが40%近い最大の生産国で、中国が20%ほどで2位となっている。
トウモロコシには青果店に並ぶスイートコーン(甘味種)の他にも、ポップコーンの原料となるポップコーン(爆裂種)、デンプンや飼料に使われるデントコーン(馬歯種)、トルティーヤの材料のような粉末にするフリントコーン(硬粒種)、もち質のデンプンを多く含むワキシーコーン(糯種)、軟質デンプンで形成されて崩れやすいソフトコーン(軟粒種)などがある。
一般にトウモロコシとして身近に見ることができるのは、茹でたりバーベキューの網で焼いて食べるスイートコーンであろう。これはさらに、すべての粒が濃い黄色となるゴールデンコーン(甘味黄粒種)、白い粒からなるシルバーコーン(甘味白粒種)、黄色と白の粒が3対1で形成されるバイカラーコーン(甘味バイカラー粒種)と、色調で分けることができる。
また、スイートコーンはその甘さで、スイート種、スーパースイート種(糖度17度以上でスイート種の2倍ほどの甘さ)、ウルトラスーパースイート種(スーパースイート種の1.5倍ほどの甘さ)と分類することもある。
今回食べた4種のトウモロコシはいずれも糖度17度以上のスーパースイート種。感動するほど甘いと感じたときのメロンの糖度が16度程度であることを考えると、最近のトウモロコシの甘さがどれほどのレベルなのかよくわかる。