とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2022年9月19日 自然歩道ウォーカーの休日 京都満足稲荷

 本日は3連休の最終日。東海自然歩道トレッキングを継続すべく、7:30に京都駅前のホテルを出た。京都からは8:00発のJR琵琶湖線に乗り、8:14に石山駅に到着。ここまでは予定どおり。

京都からJR琵琶湖線石山駅に到着

 石山駅の改札を出たところに掲示が出されている。これも想定内。

台風で午後から運休になるのも想定内だったが、、、

 しかしその内容は想定外だった。それは、琵琶湖線の本日の最終便が13時台だということ。昨夜にJR西日本のHPを確認したときには、台風直撃のために「夕方には運行を終了します」と書いてあった。13時はまだ夕方じゃないだろ?

 現在、大型の台風14号が本州を直撃。九州では風速50mを記録している。台風の進路予測はトレッキングコースのまさに真上。しかし、しかし、まだ早いだろ?琵琶湖線よりも間違いなく線路の貧弱な信楽高原鐵道でさえ18時まで運行すると言っているのに。

 こんな愚痴をこぼしても鉄道は動かない。駅のベンチに腰を下ろして善後策を検討する。

 今日の行程は、石山駅から8:25のバスに乗ってアルプス登山口に8:52に到着。そこから20km強のコースを紫香楽宮跡まで進み、16:13の信楽高原鐵道紫香楽宮跡から貴生川(きぶかわ)、16:34のJR草津線に乗り換え、草津からは17:06の琵琶湖線に乗り換えて、京都からはリムジンバスに乗って大阪伊丹空港に18:45に到着。たこ焼きと551でも食べてから、20:10の飛行機で福岡に戻る予定だった。夕方には行程を終了できる予定だったのに。

 グズグズ言っても始まらない。もし、当初予定していた8:21に石山駅前を出発するバスに乗って終点のアルプス登山口まで行き、その後は休まず20kmを走ったらどうなるか考えてみた。行程の大部分は非舗装の登山路で、死ぬ気でがんばっても5km/hだろう。紫香楽宮跡到着は甘く見積もっても14:00。紫香楽宮跡14:03発の列車があるが、貴生川には14:17に到着、草津到着は14:47。ハイ、終了。

 その前の紫香楽宮跡発の列車は13:03。草津到着は13:47。これでも間に合わない。

 今日の行程は、トレイルランの選手クラスが空荷で走っても間に合わない行程。こんな日もあるさと諦める。そのかわりに、残った時間を楽しくする方法を考えてみる。

 思いついたのが、現在ベンチに座っているJR琵琶湖線石山駅からすぐ近くの、京阪石山駅まで行き、京阪電車に乗って京都まで行ってみること。大津や石山から京都まで戻るにはJRが便利。京阪電車はJRと比較して圧倒的に遅く、高く、駅も中心地から少しずつズレていて不便。しかし、JRが逢坂山トンネルで一気に京都-大津間を走り抜ける比較して、京阪は東国からやってきた旅人が京に向かってエッチラオッチラと逢坂の関の跡と考えられる場所を登っていくかのようなコースを通過する。これがいい。

 まずは8:50にJR石山駅に隣接した京阪石山駅を発車する2両編成のワンマンカーに乗り、浜大津で京都行きに乗り換える。京阪電車浜大津の駅を出ると自動車が頻繁に行き交う道路を電車が突っ切るのだが、坂本行きと京都行きの線路が敷設されているため、交差点上のポイントの錯綜具合がすごい。

京阪石山から京都に向かう

浜大津の交差点(2022年7月10日撮影)

 浜大津の次の上栄町の手前では、逢坂(大阪)と書いた石碑が右手にチラリと見える。この辺りが逢坂の関だったのかなと考えを巡らせる。

 さらに高度を上げていくと、右手に国道1号線のトラックが走るのが見える。いまは関所がないのでスイスイ走っているが、かつては荷を積んだ馬車は通行料を徴収されていたのかななどと妄想する。

 峠の近くでトンネルに入る。トンネルを出ると大谷駅。このあたりで地図を開いて見てみると、東山駅の近くには京都市美術館京都市京セラ美術館)がある。たしか、アンディ・ウォーホール展をやっていたなと思いだし、下車することとした。

 東山駅からは古都の風情の残る落ち着いた町並みを眺めながら北に進む。京都市美術館の開館時間まで時間があったため、まずは平安神宮にお参り。巨大な朱色の鳥居がシンボル。台風直撃のため人は少ない。

東山界隈は雰囲気がよい

平安神宮の鳥居をくぐる

左近の桜

右近の橘

 京都市京セラ美術館は、前田健二郎が大正末から昭和の初め頃に流行していた帝冠様式という築地本願寺のようなゴテッとして時代がかったスタイルに設計したもの。コンペ当選案をもとに京都市土木局営繕課が設計して1933年に竣工した。2020年に青木淳・西澤徹夫設計共同体のコンペ案でリニューアル・オープンしたが、費用の捻出のためにネーミングライツを京セラに50年50億円で売ったが、賛否両論ものすごかった。いや、稲盛さん50億ってすごいわ。

 アンディ・ウォーホール展はいま一歩じゃないでしょうか?じつはもともとカメラやコピー機でできてしまうタイプの芸術は苦手。福岡市美術館にも「エルビス」が所蔵されているが、何億円もしただろうこのコピーが何版あるのかと考えると、もうダメ。

今回はすべて撮影OKでした

 今回の展示は、アンディ・ウォーホールが京都のどこを旅行して、なんて感じのまとめ方をしていたけど、カリスマ性のあるアーティストが立ち寄った場所を追憶しつつ、彼の作品を並べただけ。ジャポネスクの習作を追加して展示しただけかな。インパクトは小さい。

 京都市京セラ美術館を出ると、仁王門通りに沿って流れる川が気になった。これは琵琶湖疎水の豊富な水だ。疎水の水を辿って300mほど東に進むと蹴上(けあげ)インクライン。ここは琵琶湖疎水を水運に使っていた頃、京都寄りの南禅寺船溜りと大津側の蹴上船溜りの間の高低差を越えることができない船を軌道上の台車に乗せてケーブルで上下させていた施設。現在も600mを越える軌道が復元・保存されている。軌道上を歩くこともできる。インクラインの上部には蹴上発電所も残されている。インクラインが現役だった頃は、船を引き上げるケーブルは、ここで発電される電気で牽引されていたという。

仁王門通り沿いに琵琶湖疎水が流れる

東に300m進むとかつての船溜り

その先のインクラインを歩くことができる

この台車で船を上げ下ろししていた

発電所の送水管も

 インクラインからは琵琶湖疎水の分線を辿って山中を進み、南禅寺に到着。まずは境内にある琵琶湖疎水の水路である水路閣を見物。美しいレンガ造りの水路。水路閣はいまなお現役の水路として機能している。

琵琶湖疎水の分線沿いに南禅寺に向かう

いまなお現役として働く水道橋の水路閣

 さらに有名な庭園を見物して、ついでに三門にも登ってみる。南禅寺の三門は石川五右衛門が満開の桜を眺めて、「絶景かな、絶景かな」と決めるところ。歌舞伎だけの話かもしれないが。

南禅寺の庭園にも寄らないわけにはいかない

三門にも登楼する

絶景かな

 南禅寺の水は美味しいらしく、門前の湯豆腐が有名。今日は残念ながら購入した食料を消費しなければならないため、湯豆腐は涙をのんでパスした。

 ここまで歩いたところで、帰りの飛行機が飛ぶのか心配になってきた。そこで京都市国際交流会館のロビーに入り、冷房でよく冷えた室内で航空便の運行状況を検索。昨夜の段階では、飛べるかも、みたいな状況だったが、、、欠航!!!嫌な予感は的中するもの。

京都市国際交流会館

 まずしなくてはならないのは、福岡までの交通の確保。新幹線は昨夜の段階で山陽新幹線は全日運休だった。航空会社のHPにあるアドレスに宛ててメールをするが3日以内に返事をするとか、自動返信の悠長な反応。やむなくオペレーターに電話を掛けるがまったくつながらない。たぶん、いまは1万人以上が必死になって電話を掛けているはず。

 打ちひしがれて京都市国際交流会館を出る。近くのお稲荷さんにお参りしてみた。その名も「満足稲荷」。太閤さんの願いを叶えてくれたという。お賽銭を投入して願を掛ける。境内から、もういちど航空会社に電話を掛ける。なんと一回で繋がった。

満足稲荷

 やさしいオペレーターが、明日の福岡便はすべて満席だということ、払い戻しには応じてくれるということ、欠航証明を発行してくれることなど、丁寧に説明してくれる。新幹線で帰ろうかと諦め掛けたその時、「ちょっとお待ちください。ただいま伊丹空港17:10発の便が1席空きました」。満足稲荷最強である。

 次いで、神社の境内から明日の仕事関係のメールを打ちまくる。1件を除いて処理できた。所詮、自分なんぞいなくても地球は回る。残る1つの案件も、慈悲深いスタッフが処理してくれるはず。

 これですべきことは、本日の宿探しのみ。スマホに保存してある京都のお値頃ホテルリストの上から電話を掛け始めたら1番目でヒット。満足稲荷またもや効力発揮。

 毎週山歩きをしていると、さまざまなことが起きる。台風直撃はこれで3回目。イノシシ、シカ、タヌキは当たり前。緊急時に慌てず騒がず焦らずに対応できる度胸が身についてきた。しかしさらに問題は、次のトレッキングは、すぐ3日後の木曜日に福岡発大阪伊丹空港インで、日曜の夜に中部国際空港発福岡の便に乗らなければならないこと。予定では概算で80kmを3日で歩く予定だったが、さらに20km以上延びてしまった。こういう事態に対応することも修行の一つである。

 

2022年9月18日 東海自然歩道8日目(通算209日) 滋賀県大津市~湖南アルプス登山口 これやこの行くも帰るも別れては

 今回は東海自然歩道トレッキングの再開。前泊した京都駅前のホテルを出て7:33の琵琶湖線に乗り、7:42に大津駅に到着して行動開始。

 西に300mほど進み、京阪の線路を越えて長等公園で8:07に東海自然歩道に復帰。8:16に不動明王の先から逢坂の関に向かう山道に入る。人気のあるコースのようで、踏み跡はしっかり付いており、整備状況もよい。台風が近づいているためか、次第に雲が厚くなってくる。

京阪電鉄を越える

この辺りに逢坂の関があったらしい

滋賀県神社庁から左折して長等公園に進む

不動明王を通過

その先で右手の山道に入る

 木々の間から大津の街が見えてきた。このころ雨が降り始めた。木に囲まれているため雨は直接降り込まないが、シャツは湿ってきた。道が下り始めたところで蝉丸神社への分岐。せっかくなので立ち寄ってみた。蝉丸と言えば、「これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関」。

整備状況のよい山道を進む

大津の街並みと琵琶湖が見えてきた

勾配は緩い

蝉丸神社の標識を見て寄り道

 蝉丸神社に到着する前後から本格的に降り始めた。お参りしてから軒下を借りて雨具とゲーターを装着。あまりに強く降っているため10分ほど小休止。すこし雨が弱くなった9:10にようやく行動を再開した。

蝉丸神社

 9:15に陸橋で国道1号線を越える。ここからは音羽山に向かう登山道となる。長い木柵階段が続く。前方からトレランの2人が駆け下りてきた。こんな雨の日にと、お互いにビックリしていた。

東海自然歩道の陸橋で東海道国道1号線を越える

東国からの自動車が逢坂を越える

音羽山の登山道を進む

雨が山道を濡らし始めた

 10:20に音羽山山頂(593m)に到着。先行者が一名。雨は小降りになっていたが、ガスのために眺望はない。すぐに行動を再開。

残念ながら眺望は得られず

 音羽山からは石山寺(いしやまでら)に向かう分岐を進む。山道の整備状況は良好。10:59に分岐を左折して谷川沿いの山道を快適に進む。両側は植林されたスギ。

石山寺に向かう

スギに囲まれた道を下る

 11:15に第5橋を越えたところで、山道から非舗装路の幅の広い林道に進む。11:22に西山休憩地を通過し、この先からは舗装路になったが、すぐに左折してふたたび山道に進む。

西山休憩所

 この先は左手に貯水池を見ながら進み、国分集落の第1橋から先は舗装路となり自動車も通行し始める。天気もほぼ回復した。12:00に国分団地バス停前で雨具を脱いで小休止。

第1橋からは舗装路

 集落の中の道を進むと、左手に幻住庵の案内が見えた。階段と山道を少し登って、晩年に4か月ほど松尾芭蕉が住んだという幻住庵に到着。管理人の男性としばらく談笑。近隣の芭蕉の句碑を何か所か教えてもらう。

近津尾神社の裏手に幻住庵

幻住庵

 12:34に行動を再開し、しばらく道幅の狭い県道を進む。県道を右に折れ、この先は住宅街の中の狭い道を進む。13:00に京阪の石山寺駅に出て、国道422号線を瀬田川に沿って進む。途中で瀬田川を眺めながらおにぎりの昼食。

近津尾神社の鳥居から県道に左折

住宅地の中の心配になるほど狭い道を進む

京阪の石山寺駅を通過

国道422号線を南に進む

道路の向こうには瀬田川が流れる

 行動再開後は石山寺の山門を潜り、参道を進む。石山寺紫式部源氏物語を書いたところと伝えられている。中庭の正面に、石山寺の由来となった天然記念物の凹凸のある石山寺硅灰石が鎮座している。

石山寺

天然記念物の石山寺硅灰石

 13:50に石山寺を出て、門前の道路を南に一直線に進む。13:58に東海自然歩道の宇治方面への分岐点を直進し、さらに南に進む。このあたりは自販機、コンビニなど補給は豊富。

門の前の道を進む

ここで東海自然歩道は分岐する

さらに住宅地を進む

 14:20に南郷で国道442号線に合流。取水口を越えたところで市街地に入り、14:28に南郷公園で小休止。

取水口を通過

水路が黒いネットで覆われているのは何故?

 この先で、琵琶湖から瀬田川への流出量を調整する南郷洗堰(あらいぜき)を渡る。

南郷洗堰

 交通量の多い道を黒津橋方向に進む。ここは県道のコースを離れて大戸川沿いの緑地を進む。14:59に稲津橋で大戸川を越え、歩道のない県道を大戸川に沿って東に進む。

稲津橋で大戸川を渡る

渡った先の道は歩道がないので注意

 15:08に下天神橋を渡ってから大戸川を離れ、天神川に沿って東に進む。ここからは天神川を右手に見ながら枝集落を進む。中天神橋を通過して15:36にアルプス登山口バス停に到着して行動終了。明日はこのバス停から湖南アルプスを越えて紫香楽宮跡まで20kmを越える山道を歩く予定。大型の台風14号が接近中で、明日の天気が気に掛かる。

天神川に沿って東に進む

天神川に吊り橋が架かる

天神川沿いにキャンプ場があったようだが未確認

アルプス登山口が石山駅からのバスの終点

2022年9月18日 東海自然歩道8日目(通算209日) 滋賀県大津市大津駅大津市枝湖南アルプス登山口 曇りときどき雨 31/24℃ 行動距離:21.3km 行動時間7:44 獲得高度870m 38521歩 行動中飲水量1500ml

往路交通: 西新6:08福岡市営地下鉄福岡空港6:27/7:05ANA420-大阪伊丹空港8:10/8:50空港リムジンバス-京都駅八条口9:15(京都前泊)

京都7:33JR琵琶湖線-大津7:42

復路交通:アルプス登山口15:55帝産湖南交通バス-石山16:20/16:28JR琵琶湖線-京都16:42

2022年9月11日 中国自然歩道65日目(通算208日) 島根県大田市温泉津~大田市石見銀山 さすがに世界遺産

 本日は大田市のホテルで5:00に起床。シャワーを浴びて6:00に出発。大田市駅までの途中のコンビニで朝食のおにぎりと飲料水を購入。大田市駅から6:39の山陰本線に乗車して7:07に温泉津に到着。すぐに行動開始。

山陰線で温泉津に到着

すぐに行動開始

 昨日も通過した温泉津港、温泉津温泉街を見学しながら進む。銀山街道への曲がり口を探すが見つからない。うろうろしていると、散歩途中の地元の男性から、「銀を運んどった小さな道はこっち」と駐車場の裏手の細い路地を教えてもらう。

温泉津温泉街は風情がある

下駄職人をしながら鉋屑に信心を書いたという浅原才一は温泉津の出身

この道が銀山街道に続く

 路地を上った先には、やきもの館の立派な登り窯が2基、道路脇に設置してあった。

立派な登り窯

 7:49に中国自然歩道の標識とともに銀山街道の標識。ここから2車線の舗装路を右折して進む。このあたりには窯元が多い。途中でEADASの表示に従って旧道に入ったが行き止まり。やむなく階段を降りて舗装路に復帰した。しばらくすると道路の右手に旧道の出口がある。不思議だが、ここが迷いどころ。2車線の舗装路は右にカーブを描いて下っていくが、銀山街道は左の細い舗装路に進む。ここは標識が微妙な位置にあり、迷いやすい。

ここから左に折れる

道標が90°ずれているので少し分かりにくい

 8:11から未舗装の銀山街道に進む。ここは足元が悪く、飛翔昆虫も多いのでまずはDEETを丹念に露出皮膚に噴霧する。昨日の雨のせいか、滑りやすい。蚊も多数襲撃してくるが、DEETのおかげで被害は軽微。このあたりの銀山街道は、道は泥濘んではいるものの、幅は広く、踏み跡は確か。やはり数百年もの間、銀やその他の物資の輸送で踏まれただけのことはある。

道はぬかるんでいた

整備状態はよく、歴史を感じる

中国自然歩道とともに石見銀山街道の道標も掲げられている

 8:24に草の伸びた狭い舗装路に合流。ここを左折して8:29に瀧光寺に到着。犬に吠えられながらお参りしていると、住職と思われる男性が出てきた。「銀山はこちらですよ、道中気をつけて」とやさしく送り出してくれる。

ほどなく舗装路に合流

オミナエシオミナエシ科)は秋の七草の一つ

瀧光寺

瀧光寺の先が少し分かりにくい

 この先は再び未舗装の山道となる。整備状況は良好。8:56に県道201号線に合流して東に進む。郷集落を進むと、正面に矢滝城山が聳えてきた。ここは銀山の守りとして城が築かれ、大内氏、尼子氏、毛利氏らが血を流した場所。矢滝城山の傾斜は厳しい。

未舗装の街道になる

県道201号線に合流

正面に石見銀山を守る砦のあった矢滝城山

 9:22に西田集落の瑞泉寺にお参り。参道の脇にヨズクハデという様式の稲のハザ掛けがある。この独特なハザ掛けは、昨日、高野山寺の住職さんから教わっていた。4本足のハザ掛けで、強風にも倒れにくい工夫だとか。ハザ掛けを見ながら小休止。朝食のおにぎりを頂く。

銀山への往来で賑わった西田集落

瑞泉寺に立ち寄る

西田地区に独特なヨズクハデ

高野寺の住職さんから是非見て欲しいと言われた

 9:45に行動再開。西田集落を抜けると七曲がりの急登が始まる。矢滝城山が正面に聳える。10:02に五老橋を過ぎると、県道201号線から山道に進む。

急坂が始まる

五老橋からは県道を離れて山道に進む

 ここからは降路坂と呼ばれる戦国時代に攻防が行われた急坂。勾配はきつい。整備状況はよいが、急登のためところどころ山道は痛んでいる。汗が噴き出てきた。

階段が付けてあるが、それでもきつい

 10:45に峠を越える。その先には眺望のよいところがあり、日本海まで見渡すことができる。下り坂も急。滑らないように気をつけながら進む。途中で3カ所ほどの徒渉があるが、ほとんど靴を濡らさずに石伝いに進むことができた。

峠にはベンチ

峠の先では日本海まで視界が広がる

下りも急

わずかな徒渉か所あり

 11:22に坂根口番所跡を通過。ここから舗装路となる。左右を山に囲まれた深い谷で、ここから逃げ出すことはできなさそう。11:30に一般公開されている銀鉱山の坑道である龍源寺間歩(まぶ)に到着。入場料を支払って中に進む。

番所を越えた先は、かつて柵に囲まれていたという

 坑道の中は13℃。涼しくて心地よい。長さは274m。ほぼ水平な坑道から、横に向かって狭く掘り進んだ跡がある。閉所が苦手な自分はとてもこんな仕事はできそうもない。

龍源寺間歩は坑道が一般公開されている

 龍源寺間歩の出口は入口からずいぶん離れている。そのまま見所を歩き、佐毘売山(さひめやま)神社に参拝。銀山川に沿って進み、新切間歩、清水寺(せいすいじ)と見学する。

佐毘売山神社

銀山町年寄山組頭高橋家跡

福神山間歩

新切間歩

清水寺

 その先の清水谷製錬所跡の看板で、寄り道しようか迷う。かなりの上りのようで、行ってみてたいしたことがなかったらダメージが大きくなりそうだ。ちょうど自転車で下ってきた男性に尋ねてみると、よかったですよと写真を見せてもらう。これをみて迷わず進んでみた。かなりの規模の精錬所で、保存状態もよい。行ってみてよかった。

この標識を見て行こうか迷った

清水谷製錬所跡

 ここからは川沿いの道を離れて、安養寺、豊栄神社と見学しつつ、12:56に銀山橋に到着。

安養寺

豊栄神社

 この先は古い町並みの保存された通りを歩く。通りの菓子舗をチラリと覗いたら目が合ってしまった。さっそく試食品を渡され、冷たいお茶を頂いたら買わないわけには行かない。名物だという「げたのは」という焼き菓子と飴を購入。

銀山橋から先は古い大森の町並みが残されている

 岩山の上にある観世音寺にお参りして、大森の町並みを眺める。石州瓦の赤い色が美しい。13:42に町並みの尽きる大森代官所跡に到着して昼食とした。

岩の上の観世音寺

観世音寺から町並みを眺める

代官所で町並みは尽きる

ここで昼食

 14:10に行動を再開し、来た道の銀山川の対岸の道を歩いて南東に進む。途中で舗装路から山道に進み、最後に急登の階段を上って14:47に石見銀山世界遺産センターに到着して行動終了。高速バスで帰途についた。

羅漢寺

世界遺産センターへの徒歩道

最後に急坂

2022年9月11日 中国自然歩道65日目(通算208日) 島根県大田市温泉津~大田市大森町石見銀山 曇り 28/23℃ 行動距離19.9km 行動時間7:371 獲得高度913m 33886歩 行動中飲水量1500ml

復路交通:世界遺産センター16:27高速バス石見銀山号-広島19:07/19:48新幹線さくら569号-博多20:55

2022年9月10日 中国自然歩道64日目(通算207日) 島根県川本町石見川本駅~大田市温泉津 薬師の湯が沁みる

 今回のトレッキングは、島根県邑智郡川本町石見川本駅からのスタート。2018年にJR三江線が廃止となり、いよいよアクセスが困難になってきた。土曜日の朝に福岡を発つと、当日に歩くことのできる時間は限られてしまう。やむなく金曜夜から前泊。宿泊地は、前回もお世話になったJR三江線川戸駅跡のすぐ目の前の旅館。ここは料理が美味しく、女将さんの気配りが素晴らしい。

今回もお世話になった美川旅館。居心地がよい。

三江線川戸駅

廃線後もきれいに手入れされているが、近くの青年がボランティアで草を刈っていた。

駅舎の中には石見神楽の絵が展示されていた

 さて、川戸の旅館で5:00に目を覚まし、7:00から朝食。川戸駅前から7:40の石見交通バスに乗り、8:20に石見川本駅前に到着。飲料水を購入して、8:27に行動開始。川本大橋を渡って江の川を越える。対岸の川本の町の中心には悠邑ふるさと館が鎮座している。

三江線石見川本駅跡に到着

川本大橋で江の川を越える

川本の町の中心にはドーンとふるさと館

 県道187号線を西に進む。交通量は比較的多い。歩道はないので注意がいる。三谷川に沿って進み、下谷戸(しもたんど)集落を過ぎたあたりの道端に「ささゆりの水」という名水販売所があった。ちょうど男性が給水中で、一口飲んで行けという。うまい。蕎麦の花も咲いている。

三谷川に沿って県道187号線を西に

ささゆりの水

美味い

ソバが白い花を付けていた

 9:30に三俣から県道187号線に従って谷間の道を左折して進む。湯谷(ゆだに)でも187号線に従って右折。ほどなく左手に湯谷温泉が見えてきた。温泉施設に立ち寄り、椅子を借りて小休止。

湯谷温泉の標示に従って進む

湯谷温泉

 湯谷集落をさらに進むと、刈り取った稲をハザ掛けしている男性がいる。挨拶をして、写真を撮らせてもらった。コンバインで一気に脱穀まで行わずにハザ掛けをするのは、藁を肥育している牛の飼料にするためだという。米の銘柄はコシヒカリ。天日干しのコシヒカリはさぞ美味しいでしょうねと尋ねたら、これしか食べたことありませんからと、至極まっとうな答え。

ハザ掛けはコンバインによる収穫の3倍以上の手間がかかるという

 さらに進むと、畑にはエゴマが花を付けている。写真では見たことがあるが、実物を見るのは初めて。

エゴマ

 11:00に大元集落、その先で突き当たる県道46号線を右折し、11:14に太田市境に入る。道路の下の方に温泉マークのある人家があるが、すでに人は住んでいなさそう。

県道46号線に進む

大田市に入る

谷間には温泉。すでに廃業しているよう。

 11:39に大家集落で県道177号線との交差点を直進し、集落の中に進む。集落の高台にある浄土寺にお参りし、階段に腰を下ろして昼食のおにぎりを頂く。集落の家の多くは石州瓦の赤い屋根。

県道177号線を渡ると大家集落

高台にある浄土寺で昼食休憩

石州瓦の町

 12:07に行動を再開し、大家集落を抜けて県道177号線に合流。12:32に太田で県道177号線を離れて左折して進むと、コンバインで稲の刈り取りをしている。挨拶を交わして作業を見学させてもらう。コンバインで4条ぐらいずつ刈り取り、田んぼ1枚を収穫すると、トラックに乗せたネットに脱穀したばかりの籾を一気に排出する。すごい機械だ。

県道177号線を進む

コンバインの収穫作業を見学

一気に脱穀まで済ませてしまう

 12:54に井田集落の交差点を左折して県道32号線に進む。ほどなく地図に従って殿村から細い道に右折して高野山に進む。13:45に高野山寺に到着し、山門を潜ったところで住職さんがわざわざ挨拶に来られた。お盆に草を刈ったばかりだが、もうこんなに伸びてしまって申し訳ないと謝ってくれる。とてもよい人そう。ほとんど一人で、この大きな寺領の管理をしているよう。大変だ。

井田集落には商店がある

突き当たりの県道32号線を左折

高野寺の看板が出てくる

県道を離れて狭い道を進む

山門が迎えてくれる

立派な仁王が構える

広い庭

寺社も立派な構え

西の高野山だった

 高野山からさらに山中を進み、14:13に県道32号線を横断して、14:23に山の中腹にある龍蔵寺にお参り。ここは高野山の住職さんからお勧めされたところ。とても手入れがよい美しい寺。

龍蔵寺

龍蔵寺の山から見える石州瓦の集落も美しい

 寺から山を下って歩いていると、またコシヒカリのハザ掛け現場に出会った。写真を撮らせてもらおうと声を掛けてみると、ハザ掛けは今回が初めてとのこと。先輩から連れられて、実家の手伝いをしに来たとのこと。その隣の田んぼではコンバインでつや姫を収穫中。このコンバインは兼業農家用の小型のものだけど、500万円もしたと教えてくれる。

この方はハザ掛け初心者

この男性がオーナーさん

隣の田ではコンバインでつや姫を収穫中

作業は早い

 14:52に県道32号線に合流して、そのまま北に真っ直ぐ進む。交通量は少なく快適。

県道32号線を北に進む

秋の七草のハギが咲き誇る

石央セラミックスは残り少なくなった石州瓦の生産拠点

 15:42に石州福光石の採掘場を通過。花崗岩のようだ。このあたりから雨が降り始めた。

 16:01に温泉津変電所を通過し、16:04に国道9号線に入ると、雨が強くなってきた。荷物が心配だが、暑さしのぎにはちょうどよい。そのまま雨具を着けずに歩き続ける。10分ほどで国道から県道203号線に右折して、福光川沿いの静かな道に進んだ。

温泉津変電所を通過

国道9号線をしばらく歩く

国道9号線から県道203号線に進む

雨が強くなってきた

 16:21に温泉津中学校を通過し、16:39に石見福光駅を通過。雨は強い。

海沿いを走る山陰本線

石見福光駅を通過

踏切を渡ると海が拡がる

 この先は山陰の海を見ながら進んだ後、山中の道に入る。標高100mほどの峠を越え、港に出た。

山陰の海は美しい

集落を抜けてしばらく山中の道に

再び家が見えてくると港

 美しい港の岬を過ぎると、正面に矢滝城山が見えてきた。温泉津港だ。

温泉津港の向こうには矢滝城山

 海を見ながら進み、標識に従って温泉津温泉街に進む。温泉津と書いて「ゆのつ」。昔の町並みが保存された美しい温泉だ。温泉街を600mほど進み、名湯と聞いている薬師の湯に17:47に到着。ここで行動終了とし、温泉に浸かって筋肉をほぐすこととした。46℃の源泉から無加工で掛け流しの生の温泉。熱いお湯が身体に沁みてきた。

港の先には温泉津温泉の古い町並みが保存されている

2022年9月10日 中国自然歩道64日目(通算207日) 島根県邑智郡川本町石見川本駅大田市温泉津町温泉津温泉 曇り時々雨 29/21℃ 行動距離35.1km 行動時間9:17 獲得高度1038m 54175歩 行動中飲水量2400ml

川本町悠邑ふるさと会館

 島根県の山深い里にある邑智郡川本町。人口は3000人ほどのごく小さな町である。東京から一番遠い市と言われている島根県江津市広島県三次市との間をつなぐJR三江線が2018年まではこの町を通っていたのだが、すでに廃線から4年が経過し、町はずいぶんと寂しくなってきている。中国自然歩道トレッキングの際に、ここを訪れている。

山陰の山深い地にある川本町

町の真ん中を江の川(ごうのかわ)が流れる

 その川本町の中心の小高い丘の上に聳えるのが悠邑(ゆうゆう)ふるさと会館。千人を収容できる立派な音楽ホールと図書館、会議室を備えた複合文化施設に加え、隣接した敷地にはホテルのかわもと音戯館(おとぎかん)が建つ。

南から坂を上って川本町の中心に進むと宮殿のような建物が見えてくる

悠邑ふるさと会館

 川本町が音楽にこだわるのは、町にある県立川本高校(現在は邑智高校と統合して島根中央高校)の吹奏楽部が全国大会優勝5回の実績を持つことにある。町は1985年に「音楽の町」宣言を行い、町を挙げての「音楽の里」構想を策定している。

 中国自然歩道トレッキングで川本町にたどり着いたときには、町に入る坂を上った先の悠邑ふるさと会館を見て、アテネの丘の上に聳えるパルテノン神殿ように感じた。もっとも、アテネの方には行ったことはないけれども。失礼ながら、こんな小さな町にこんな立派な建物があるのが不釣り合いに感じたほど。

かわもと音戯館

 廃線になる直前まで、JR三江線が江津と三好との間をつないだ便は1日5便あったそうだが、現在川本町と広島とを結ぶ高速バスは1日2便のみ。福岡への帰途につくためのバスの時間まで5時間あったため、悠邑ふるさと会館の中にある図書館でゆっくりさせてもらった。

三江線石見川本駅跡は銀行が入居している

 親切な図書館司書さんに建物のことを尋ねてみたら、資料を出してくれた。それによると、総工費は32億8千万円、鉄筋コンクリート地下1階地上3階建、1995年着工1996年10月竣工。設計は新居千秋都市建築設計。

 新居千秋と聞いて思い当たったのが新潟市秋葉区文化会館と新潟市江南区文化会館。いつかの出張の折りに、新潟駅から自転車を借りて行ってきたあそこだ。片道20kmほどあって、しかも帰りに自転車がパンクしてひどい目に遭ったのでしっかり憶えている。

新潟市秋葉区文化会館 新居千秋設計

新潟市江南区文化会館 新居千秋設計

 この機会に新居千秋氏の作品を調べてみると、業界の賞をたくさん取っている。よく知られたものには、横浜赤れんが倉庫のリニューアルを手がけている。

横浜赤れんが倉庫

 その他にも有名作品があり、日本建築大賞とBCS賞をとっている大船渡市民文化会館・市立図書館(リアスホール)、SDReviewと吉田五十八賞を獲得した水戸市立西部図書館が気になる。また、日本建築学会賞、日本計画行政学会計画賞、アルカシア賞と3つも栄誉をうけている黒部市国際文化センターコラーレは、アクセスがとても大変そうなところにあるが、いちど訪問してみたい。

 すでに見学した新潟市秋葉区文化会館は村野藤吾賞、そして悠邑ふるさと会館・かわもと音戯館は島根県景観賞を受賞している逸品だった。

 建築業界のことはあまり詳しくはないのだが、1点で数億円から数百億円もの建設費の投じられた芸術作品を鑑賞するのは楽しいものだ。たぶん、設計も施工も大変な苦労の連続だろうが、その作品が数十年も数百年も残されることを、建設に関わった方達は誇りに思っているだろうなといつも感じている。

2022年8月28日 中国自然歩道63日目(通算206日) 島根県邑南町断魚渓~石見川本駅 できることなら三江線で家路につきたかった

 本日は島根県邑南町断魚渓にある深篠川キャンプ場で6:00に起床。このキャンプ場は地域のボランティアが運営するキャンプ場で、なんと無料。設備は水道、炊事場、トイレのみという簡素なキャンプ場だが、それで十分。ゆっくりさせて頂いた。

 テントの外にはガスが漂っている。お湯を沸かしてコーヒーを淹れ、ビスケットの朝食とした。集落が近いからか、携帯電話の電波も入る。昨日頂上まで到達した向歯無山(むかばなしやま)の山名の由来を検索してみたが、見つからなかった。気になる名前だ。

洗浄トイレまである

 歯磨きをして、冷たい水で顔を洗ってから、7:40に行動開始。今日の行程は11kmほどしかないためのんびりとしている。

 キャンプ場の前を走る国道261号線を300mほど北に進み、断魚トンネルの手前で左の旧道に進む。舗装路の遙か下には断魚渓が見える。素晴らしい風景だ。何年か前まではこの道が国道261号線だったのだろう。楯巌(たてかがら)という大きな一枚岩の上にあたる峠の部分からは千畳敷全体が見える。うっとりとするほど素晴らしい光景。

国道をしばらく引き返す

断魚トンネルから旧道に進む

はるか下に断魚渓の千畳敷が見える

 峠を越えて、断魚渓の駐車場を経て、8:06に旧道の断魚トンネルを通過。旧道ながら立派なトンネル。この先は真っ赤に錆びたガードレールの道を進み、8:13に現在の国道261号線の断魚トンネルの出口で国道261号線に合流。しばらくは濁川に沿って、歩道のない国道を歩く。

旧断魚トンネルを通過

濁川がずいぶん下に見える

新断魚トンネルで国道261号線に合流

この国道には歩道がない

 国道の長い直線の先の渡トンネルの入口に8:33に到着。短いトンネルで、中国自然歩道はトンネルを通過するのだが、これ以上国道歩きはしたくない。川沿いの旧道を歩くために、まずは虫除けのDEETを露出皮膚にまんべんなく塗布し、薮状態の旧道に進む。

まだ断魚渓は続く

渡トンネルの手前から旧道に進む

藪状態

眺めはよく、なにより自動車が通らない

 渡橋の手前で国道を横切ってさらに旧道に進む。ただしここからの旧道は中国自然歩道のコースとなっている。

さらに旧道に進む

国道は挽谷トンネルから新挽谷橋を進む

鮎釣りの男性と挨拶を交わす

ここで国道と再合流

 旧道歩きで進んでいたが、9:00にやむなく国道261号線に復帰。歩道はない。交通量が少ないのが救いだが、どの車も80km/hぐらいで飛ばしている。中田橋、第二松瀬橋、第一松瀬橋と渡ったところで、国道から左折して川沿いの旧道にようやく進む。

第2松瀬橋から国道を離れる

 川の先に家々が並ぶのが見えてきた。因原(いんばら)の町だ。石州瓦の赤い屋根が特徴的。9:20に八面橋を通過して、因原トンネルから再び国道に合流。

因原は石州瓦の赤い町

因原トンネル出口で国道に合流。ここに鉄橋の遺構。

 合流した直後に、国道の左右に奇妙なコンクリートの構造があるのに気がついた。よく見ると三江線の鉄橋跡だ。もう一度階段を上って構造物のあたりを確認する。前後にはレールが残されていた。西の鹿賀から来た三江線は、ここで国道を越えて因原の町に入っていたのだ。

三江線が国道を跨ぐ鉄橋の橋脚か

この先には1200Rぐらいの線路が敷設してあるよう

 国道に戻り北に進む。江川漁協の建物が大きいのが気になった。海がないのに。玄関を入り係の方に尋ねると、今は鮎の時期だという。また、ちょうどモクズガニ漁が始まったばかりとのこと。カニの入った籠を見せてくれた。美味しそうだ。

国道沿いに立派な漁協の建物。海はないのに。

藻屑ガニの漁期が始まったばかりと見せてくれた

 9:40に道の駅かわもとに到着。軽食と飲み物で小休止。裏手にある因原駅も見学してきた。廃線から4年で、すでに線路は草で覆い隠されている。

道の駅で小休止

道の駅の裏手には三江線因原駅

すでに線路は草で埋め尽くされている

 10:11に行動再開。県道291号線を江の川に沿って北に進む。左には三江線の線路跡が残る。いつのまにか左の線路が消えた。さらに進むと右に三江線のトンネル出口が現れた。入口には気がつかなかった。

県道291号線の左には線路

気がついたら線路が右に

 江の川を眺めながら進んでいると、対岸の下三島の山手にホールのような建物が見える。正体は不明(後ほどかわもと図書館の司書さんからスペランツァという野外音楽堂の跡だと教えてもらった)。

江の川

対岸に野外音楽ホール跡

クズ(マメ科

 向かい側から来た軽トラックが目の前で止まる。川を眺めて「鮎が湧いちょる」。今年は鮎の遡行が多いようだ。

軽トラのおじさんが川を指して「鮎が湧いちょる」

 谷川橋を渡って11:03に県道31号線を左折して町中に進む。川本中心部の交差点を左折して11:18に石見川本駅に到着して行動終了。三江線に乗って博多まで帰ることができたら最高だったなと、しみじみ思う。

谷川橋を渡ったら川本

悠邑ふるさと館

三江線石見川本駅

2022年8月27日 中国自然歩道63日目(通算206日) 島根県邑智郡邑南町井原 断魚渓~邑智郡川本町石見川本駅 曇り時々晴れ 27/22℃ 行動距離11.2km 行動時間3:40 獲得高度239m 18890歩 行動時飲水量 700ml

復路交通:石見川本16:58石見銀山号高速バス-広島19:04/19:07のぞみ173号-博多20:19

2022年8月27日 中国自然歩道62日目(通算205日) 島根県江津市川戸駅~邑南町断魚渓 圧巻!千丈渓&断魚渓

 今回の自然歩道トレッキングは島根県江津市のさらに山中からの再開。江津市のHPには、「地理A」の教科書で「東京から一番遠いまち」として取り上げられたことがあると自虐ネタが載っている。福岡からもずいぶん遠い。ということで、今回も金曜午後は年休を取得して江津市内に前泊とした。

 午前中はきっちりと働いた後、15:43の福岡市営地下鉄に乗車して、博多から新幹線のぞみ48号、新山口からスーパーおき6号に乗り継ぐ。おき6号はいつもながらエアコンが効きすぎて寒い。津和野峠を越えるころには、雨がパラついていた。

博多からはのぞみ48号

新山口からはスーパーおき6号

 19:40の定刻に江津に到着。1日5便ほどのバスの最終便が19:45だったので、山陰本線の遅延が心配だったが、ここはクリアしてホッとする。石見交通バスも駅前ロータリーに時間どおりに到着し、乗客2名を乗せたバスは2018年まで走っていた三江線の路線をなぞるように暗闇の中を走って行く。

東京から一番遠い江津に到着。列車に遅れがなくてよかった!

バスも時間どおりにやってきた

 20:15の定刻に三江線の駅舎の残る川戸に到着し、目の前の美川旅館にチェックイン。ここは居心地のよい旅館だった。夕食にはノドグロの煮付け、タイとハマチの刺身、ナスの煮浸し、石見ポークの豚カツ、アオサ入りのすりおろし山芋、モズクのすまし汁に漬物、オレンジと、この料金でいいんですかと言いたくなるほどの料理。白米は近隣の農家から仕入れているとのことで、新米直前のこの時期としては驚異的な食味。あまりの美味しさにご飯のお代わりをしたら、食後によろけるようにしてたどり着いた部屋から立ち上がれなくなり、女将さんから早くお風呂に入りなさいと呼ばれてしまった。

駅前の旅館にチェックイン

2食付きの夕食は豪華

 トレッキングの本日は5:30に起床。部屋の窓を開けて川戸駅の駅舎を見る。三江線はすでに4年前に廃線。当たり前のことだが、列車は停車していない。駅舎はそのまま保存されているので、余計にもの悲しい気分がする。

窓を開けると川戸駅

 6:30に朝食。定番の朝ご飯。シジミの味噌汁が美味い。サーモスにお湯を詰めてもらって、出かけようとするとおにぎりを2個用意してくれていた。ありがたい。この旅館は細かいところまで心配りをしてくれるよい旅館だった。かつては地区に5つほどあった旅館が最後の一つになってしまっているという。跡継ぎもいない。何年か後にこの地をふたたび歩く機会があったとき、元気に営業しているか心配になる。

この旅館にはもう一度訪れたい

南の山にガスがかかる

 6:51に旅館の玄関を出る。南の山々にはガスがかかっている。女将さんが玄関までお見送りに来てくれて、「山にこういうふうにガスがかかっている日は、これから晴れるんです」と送り出してくれる。まずは前回中国自然歩道を離脱した江尾橋に向かい、県道41号線を南に進む。

川戸駅に立ち寄り、乗ることのできなかった三江線の匂いを味わう

町の中には線路が残る

 川戸橋を渡って江の川(ごうのかわ)の支流の八戸川(やとがわ)を越える。小中学校を左に見ながら進み、7:12に小田集落を通過。

八戸川を越えたところに今井美術館

その先には中学校

 その先の峠で母抱(ははがかえ)トンネルを抜ける。「むかしむかし、この峠を母を抱えて上り下りした孝行息子がいたんだそうじゃ」と市原悦子のナレーションが頭の中に流れる。前回もこのトンネルを通過したが、このトンネルの名板を見ると、親孝行などしたことがない自分の身を振り返って胸が痛んだ。とくに今日は、ちょうど1週間前に急に母が天国に旅立ってしまったため、こんな自分でごめんなさいと悲しくなってしまった。

 トンネルを抜けると前が開ける。鮎観橋のたもとに立つ今田水神の大クスノキを左に見ながら通過し、7:38に江尾橋に到着。県道297号線の中国自然歩道に復帰。ここから先は自販機がないため、気温を考えてPETボトルの飲料水を2本購入。

峠を抜けるとガスが晴れ上がってきた

鮎観橋の袂に大クスノキ

夏は、フヨウ(アオイ科

江尾橋で中国自然歩道に復帰

ここが日和まで最後の自販機

 江尾橋を渡り、人家が点在する県道をしばらく進む。7:49に千丈渓の立派な看板を目印に、県道297号線から分かれて左折し、日和川に沿って1kmほど進む。

江尾橋を渡る

八戸川上流には持越山(356m)

県道297号線を進み

千丈渓の看板で左折

日和川に沿って進む

右手には水力発電

 8:07に千丈渓入口に到着。入口には自動車十数台分の駐車スペースとトイレがある。ここからは自動車の通行はできない。草が伸び放題になっているようなので、DEETを露出皮膚に丹念に塗布。

千丈渓入口

 遊歩道は2年前の豪雨、豪雪のために少し荒れているが、歩行には問題なし。道端の小さな三三の滝を通過して、次に現れたのは岩を流れが豪快に切り刻んだかのような魚切。そして、相生滝と続く。コースには立派な歩道が設えてあり、歩きやすく、眺めが素晴らしい。

遊歩道は少し荒れている

土砂崩れか所もあり

三三の滝

岩場にボルト固定した遊歩道が続く

魚切

幽玄な道が続く

相生滝

相生滝

 8:40に千畳敷に到着し。ここで荷物を下ろしてしばらく休憩。素晴らしい景色が続くので、早足で歩くのはもったいない。

千畳敷で一休み

 この先は川沿いの道を進み、橋の下で行き止まりかと思ったらくぐり岩をザックを擦りながら抜けて、獅子岩橋を渡る。

獅子岩

行き止まりかと思ったら

橋の下のクグリ岩を抜ける

 この先は岩にへばりつくようなスリリングな歩道を歩く。その先に橋が架かっていたが、行人偏のみで読ませる「たたずみ橋」。読めない。

スリリングな歩道が続く

これで「たたずみ橋」とは

 9:13に豪快な流れの大淵、おしどり滝を眺めながら小休止。冷たい飲料水で喉を潤す。

大淵

おしどり滝

 9:31に白藤橋から白藤滝とその奥の紅葉滝を眺めて遊歩道は終点となる。ここで階段を上って9:36に林道に合流。

まだ奇観は続く

白藤橋

紅葉滝

奥にチラリと白藤滝

階段を上って林道に出る

 しばらくダート道を歩き、9:55に舗装路に変わる。10:10に千丈渓の南の入口に到着。ここにも駐車場がある。

舗装路に変わる

 この先は自動車の通らない良好な舗装路をのんびり歩く。一の滝を右手に眺め、10:21に山の内集会所前から左に入る。そのまま集落の中を進み、10:40に下郷集落で県道112号線に合流して道なりに南に進む。

右手には一の滝

まだまだ美しい渓谷が続いている

山ノ内集落。石州瓦の赤い屋根が映える。

下郷で県道112号線に合流

 10:55に中国自然歩道が左の県道295号線と県道112号線を真っ直ぐ進む分岐点に到着。本日はこの交差点から西に500mほどの蕎麦屋が営業しているので、立ち寄ることとした。

日和上郷で自然歩道を離れて昼食に向かう

 こんな山の中に、と思うようなところに蕎麦屋が一軒。古民家を改造した店で、風情がある。10割そばの店で、有名店らしい。11:05に千蓼庵(せんりょうあん)に到着。11時の開店直後だが、すでに先客が5組ほど。蕎麦も美味しかったが、豆腐も美味しかった。

 昼食を済ませて11:32に行動再開。11:45に県道112号線に復帰し、右手に京太郎山(827m)を眺めながら明泉谷川に沿って高度を上げていく。

県道112号線に復帰

キバナコスモス(キク科)

ザクロ(ミソハギ科)

明泉谷を上っていく

大利

 大分汗が流れた12:41に大利峠の洞門を通過。洞門の出口を左折すると萩原山に向かう道となる。ここでしばらく小休止。

大利峠洞門を出てすぐ左の林道に進む

 県道112号線から左折した先は、舗装路ながらややワイルドな状態。半藪漕ぎの道を進む。萩原山の頂上に建つ電波塔のサービスのための舗装路のようだが、通行量はあまりなさそう。高低差はあまりなく、13:24に萩原山登山口に到着。

林道は荒れている

ハギ(マメ科

ミズヒキ(タデ科

萩原山の頂上の電波塔群が見えてきた

EADASの地図上ではここから直登登山道が始まる

 EADASではここから真っ直ぐ東に直登路があるように登山路を表示するが、そんなものは痕跡もなかった。おそらく数年は誰も歩いていないのであろう。やむなく舗装路を歩き始めるが、十分に傾斜はきつい。頂上間近で中国自然歩道の道標を発見したが、100%薮を指し示していた。

直登路が見つからないので舗装路に進む

頂上付近でこんな道標が出ていたが、その先は完藪状態

 13:43に萩原山(783m)頂上に到着。付近には電波塔が5、6基建てられている。残念ながら三角点は発見できず。眺望はなし。

萩原山頂上の電波塔

 頂上から東に荒れた山道を進む。比較的新しい中国自然歩道の説明板が出てきた。木枠は古いが、説明板だけ新しい。ここから先は半藪漕ぎ状態で、先に進めるか心配になり始めた頃に、木の階段を足元に感じ、中国自然歩道の整備歴があるコースだと確信した。

電波塔から東に向かう道が続く

中国自然歩道の案内板も出てくる

しかし、その先は藪状態

足下に定番の丸太が出てきて安心する

 木の階段と踏み跡らしきものを頼りに東に進む。萩原山の次の目標は向歯無山(675m)。萩原山頂上からは直線で1.2kmほど。とぼしい踏み跡とGPSを頼りに南東に進む。

踏み跡とGPSを頼りに進む

 14:14に向歯無山の登山口かもしれない地点に到着。ここには中国自然歩道定番のベンチが設置してあった。ここから300mほど進んだところに、中国電力の杭があり、自然歩道は左の北に折れている。

自然歩道定番のベンチ発見

向歯無山頂上に真っ直ぐ向かう道も付いている

頂上まで200m付近の中国電力の杭から先は道が無い

 向歯無山の頂上までは直線で200mほど。道はない。薮もそれほどひどくないので、GPSを頼りに山頂を目指す。14:31に向歯無山頂上の三角点に到着。眺望はまったくなし。

軽い藪漕ぎで頂上に向かう

三角点を発見

 虫に刺される前に下山開始。14:38に中国電力の杭まで戻り、しばらくは北に真っ直ぐ下山路を進んだ。EADASにはこの杭の位置から600mほど直登路が伸びているが、100mほど高度を下げたところで直登路は消失した。残された道は中国電力の道。頭上に高圧線が走行しているところから、高圧鉄塔を建設するために作られた歩行路の痕跡がある。

中国電力の杭まで戻る

直登路はほどなく消失

 踏み跡を辿って14:49に鉄塔下に出た。この先も高圧線を探しながら、ときに藪漕ぎをしつつ、高圧鉄塔の配列に従って進み、15:19に舗装された林道に出ることができた。本来の位置より500mは東に出てしまったようだが、怪我がなくて済んだだけでもましだ。これだけ等高線の目の詰まったところを藪漕ぎで抜けるのは大変だ。

直登路が見つからないので、送電線の下にあると思われる道を探して進む

中国電力ありがとう

ときおり強烈な藪漕ぎ

電気の恩恵にあずかることができるのは、こんな山中に鉄塔を建ててくれた人がいるからだなと実感。

藪を抜けて林道に復帰。後に続く人はこのコースはとらずに、直登路を探してください。

 ここからは林道をのんびり歩いて15:35に中国自然歩道の道標を発見。まさに直登路の到達点と思われる道標。たぶん、上には道標はなかった。

直登路の上り口発見

こっちが正規コース。探せばあるはず。

 ここからは舗装された林道が続くものと思っていたら再び大波乱。15:54にGPSでなにげなく位置を確認したら、現在の山道が中国自然歩道と離れていることに気がついた。途中に完全に崩壊した中国自然歩道の道標の杭だけ残っているのを確認したので、この道で間違いはないはずだと思ったのだが。

鼻歌気分で林道を歩いていた

道標もあったし

地図の通り、分岐を右にとった

その先で少し右に進んでいるが

中国自然歩道の朽ちた道標があったので正しいコースと思い込んでいた

 やむなく300mほど戻って、くだんの中国自然歩道の道標まで行って、正しい道がないかどうか探索した。丹念に道を探してみたが、一本左の北北東の稜線に続く自然歩道の道は見つからなかった。やむなく北東に続く谷を隔てた林道を下る。この道は良道で文句はない。16:27に舗装路に復帰し、中国自然歩道のコースに戻ることができた。ここは正解が分からないまま。

植林管理のために新しく付けられた林道のよう

ここの植林は素晴らしく手入れがよい

正しいコースよりも300mほど東で中国自然歩道に復帰

 舗装路に合流してからは東に進み、2回のヘアピンカーブを経て、16:53に断魚集落に出て、濁川を野口橋で渡る。

集落に近づいてきた

野口橋で濁川を渡る

 17:03に断魚橋を渡り、濁川に沿って上流に進むと、目の前に大きな一枚岩の聳えた断魚渓公園に到着した。

断魚橋

濁川に沿って上流に進む

断魚公園

 川に沿った道を進み、神楽淵を通過。その先の千畳敷が圧巻。奇観である。大きな一枚の岩でできた川底を、激しい水流が一筋のノミで削ったような。説明できる語彙力がないのが残念。最後に嫁ケ淵を経て、17:33に舗装路に戻る。

神楽淵

千畳敷

岩に爪痕が残るような荒々しい風景

中央には岩樋川が岩を刻む

嫁ヶ淵

 17:36に断魚トンネルで国道261号線に合流し、300mほど進んだところにある深篠川キャンプ場にて本日は行動終了。晩ご飯には美川旅館の女将さんに握ってもらったおにぎり2つ。

キャンプ場には広い駐車場あり

広島行きの高速バスも停まる

2022年8月27日 中国自然歩道62日目(通算205日) 島根県江津市桜江町川戸~邑智郡邑南町井原 断魚渓 曇り 28/23℃ 行動距離33.4km 行動時間10:51 獲得高度1498m 53401歩 行動中飲水量2000ml

往路交通:西新15:43福岡市営地下鉄-博多15:56/16:15新幹線のぞみ48号-新山口1649/17:12スーパーおき6号-江津19:40/19:45石見交通バス-川戸駅20:15