古湯温泉からの九州自然歩道トレッキングの際、八幡岳の山頂でマルタイ棒ラーメンの残りの1食分を食べようと思って食料パックを探したけれども見つからなかった件について。
トレッキングでは、パッキングはしっかり行う。持ち運ぶほとんどすべてのものは、それがなくなると後の行程に支障がでるものがほとんどであるからだ。居住、衣類、食料、デジタル、衛生等と分けて、すべて透明なパックに入れてからバックパックに詰め込んでいる。ルーチンに従っていれば、マルタイ棒ラーメンは1食分使用したあとで、残りは食料のパックに詰め込む。八幡岳の山頂で取り出そうとした前に、棒ラーメンに触れたのは天山の山頂だけ。ということは、天山の山頂に置き忘れたか、他のパッケージに誤って入れてしまったか、なにかルーチンが実施されなかった可能性がある。置き忘れに関しては、移動開始の際には留置物がないかどうか指差呼称を行うので、まず発生することはない。
ということで、八幡岳の山頂で食料パッケージをはじめ、他のパッケージの内容確認をしてみたが、棒ラーメンは見つからない。そこでやむなく食料パッケージから、パスタとパスタソースを取り出して、昼食の準備に取りかかった。パスタソースのパッケージにピンホールが空いており、食料パッケージの内面に漏れ出している。ひょっとしたらバックパックの荷室内で、何か尖ったものがパッケージにあたって破れたのかと、その時は気にも留めていなかった。
しかし、パスタが茹であがるのを待つ間、パスタソースに空けられた穴と、無くなったマルタイ棒ラーメンが一つの線で結ばれた。カラスだ。
天山の山頂にはかなり人擦れしたカラスが2羽いた。ほんのすぐのところまで近づいても逃げない。ピョンピョンと跳ねながら歩くところと、盛り上がったおでこ、カーカーという鳴き声からハシブトガラスだ。カラスは貝や木の実を高いところから落として割ったり、水道の蛇口をひねったりと、なかなか高度な知能を持つ。
天山の山頂でのラーメンの昼食を終え、食後のコーヒーを片手に荷物を離れて四方の風景を撮影している時、カラスが荷物のあたりを彷徨いていた。おそらくマルタイ棒ラーメンを持ち去ったあと、さらに透明なパックの美味しそうなソースに狙いを定めて、あの鋭い嘴で突いたのだろう。
八幡岳の山頂でこう思った。いまごろ天山のカラスは、お湯が欲しくて悔しがっているだろなと。