とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

脊振山系全山縦走 3日間西向き踏破モデルコース

 2020年5月23日から5月31日に、週末2回に分けて背振山系を縦走してみた。コースの状況は概ね良好で、水場も適度にあり、快適そうな平坦地もところどころに見つけることができた。ロングトレイルというほどではないが、自然を楽しみながら山歩きを楽しむにはほどよいコースかと思われた。連続した3日の休みがあれば、公共交通機関を利用して登山口までたどり着き、それほど無理をせずに背振山系を縦走し、再び公共交通機関を利用して福岡市内に戻ってくることができそうだ。しかも、最終日にはさっぱりお湯に浸かってから帰ることができる。

 とりあえず、縦走の記憶が新鮮なうちにモデルコースを考えてみた。

 某月某日(金)

 6:30 福岡市早良区西新 西新1丁目バス停(コンビニ)
 7:06 福岡市早良区脇山 城の原バス停(飲料水自販機)
 10:00 板屋峠
 10:30 板屋(飲料水自販機)
 12:00 背振山山頂(昼食・大休止)(飲料水自販機)
 14:00 福岡管区気象台レーダーサイト
 15:00 椎原峠(水場)
 15:30 鬼が鼻岩
 16:00 小爪峠(野営地)
  行動時間 9:30 行動距離 23km

 6:00ごろに家を出て、福岡市営地下鉄西新駅に向かう。5番出口から出ると目の前に西鉄のバス停があるが、これが西新1丁目バス停。6:30発の西鉄バス3番、早良高校行きの始発バスに乗り込む。

 7:06に城の原バス停で下車する。ここが背振山の入口にあたる板屋に向かう道路の分岐点で、南の正面には背振山系が連なり、最も奥の山の頂上には球形のレーダー施設が設置されているのが見える。この山が福岡県内最高峰の背振山(1055m)となる。

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 城の原バス停の前の信号のある交差点から南に向かって舗装路を進む。交通量は少ない。信号から1kmほど直線路が続くが、直線の突き当たり付近に集落のコンビニ(いわゆるよろず屋)がある。ここには飲料水の自販機がある。この先10km、板屋集落の先まで自販機はなくなる。休憩を挟み、曲がりくねった舗装路をゆっくり歩いて10:00に板屋峠(653m)に到達する。バス停から峠までの標高差は600m以上ある。

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 板屋峠から2km弱、10:30ごろには板屋集落に到着する。ここが背振山頂への道路の分岐点。集落の500m先の福岡市立背振少年自然の家とその向かいの飲食店には飲料水の自販機がある。

 板屋集落からは、背振山の山頂に続く防衛省進入道路に右折する。

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板屋から背振山に向かう道路との分岐

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 よく整備された舗装路を4.5kmほど進むと、12:00には背振山山頂(1055m)に到着する。頂上には神社とベンチがある。眺望も良好だが、レーダーなどの防衛庁の施設に阻まれ、60度ぐらいは眺望がなく、フェンスの映り込みがあるのが残念。風が弱い日には、眺望の良いこのあたりでゆっくり昼食をとるのがお勧め。ただし、日光を遮るものは何もない。

 山頂のレーダーは三菱電機製のJ/FPS-3で、遠距離用と近距離用の2種類の電子走査方式の回転式アンテナが内蔵されているはずである。残念ながらというか当然というか、諸元はあまり詳しく広報されてはいないようである。

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 山頂から少し下ったところに駐車場があり、飲料水自販機が設置されている。これが今回の行程の最後の自販機となる。さらに少し下ったところにはキャンプ場がある。

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背振山頂付近のキャンプ場

 背振山山頂から稜線に沿って西に進む。稜線の先にはもう一つの白いレーダーが見える。これが福岡管区気象台の管轄の気象レーダー。ここまでは舗装路が続く。14:00には到達できるだろう。

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 気象レーダーの付近からは舗装路を離れ、稜線の山道に入る。このあたりは低木で直射日光が遮られ、笹に囲まれて歩きやすくよく整備された山道。何度歩いても心地よさが味わえる。ゆっくり山道を楽しみながら15:00ごろには椎原峠に到着する。ここには野営のできる平坦地がある。また、ここから椎原に少し下りたところに水場があるとの情報がある。残念ながら水場の状態は未確認。

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 体力に余裕があればさらに先に進む。15:30ごろには鬼が鼻岩(802m)に到着する。ここは眺めの良い所なので、ぜひ先端まで行って福岡市内を眺望して欲しい。

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 さらに30分ほど先に進み、16:00ごろに小爪峠に到着する。

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小爪峠の平坦地

 ここには野営可能な平坦地があるので、ここで行動を終了しても良い。この日の行動距離は23kmとなるので、ほどよい運動量となる。小爪峠には携帯の電波は届かないことには注意がいる。

 某月某+1日(土)

 7:00 小爪峠 行動開始
 8:00 金山山頂
 9:00 山中分岐(水場、ただし水量は期待できない)
 10:00 三瀨峠
 13:00 井原山(昼食・大休止)
 15:00 雷山
 16:30 長野峠
 18:00 白糸の滝分岐(野営地、水場)
  行動時間 11:00 行動距離21km

 6:00に小爪峠で目を覚ます。朝食と撤収を終え、7:00には小爪峠から行動を開始する。

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 眺望の良い稜線のコースを登り、8:00に金山山頂(967m)に到着する。金山の頂上は、南北に眺望がひらけている。ここまでは少し岩の多い斜面となるが、それほど危険なところはない。金山の頂上やその付近には平坦なところがあるので、ここまで進んで野営することも可能であるが、経験的にはこの山にはイノシシが多い。

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 金山からは南面の急斜面を下りて先に進み、9:00に山中地蔵との分岐に至る。ここには水場があるが、時期にはよるものの、水量はやや少なく、飲用にするには濾過器を使用するか煮沸するほうが安心だろう。

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 ここから先はアゴ坂峠を通過して、1時間ほどアップダウンが続く。10:00ごろにバイクや車の交通量の多い三瀨峠に到着する。ここは木陰はあるが、交通量が多く野営には不適である。残念ながら、飲料水の自動販売機や水場はない。ここから福岡に向かって4kmほど下ったところには、曲淵という西鉄バスのバス停がある。1日7本ほど便がある。佐賀に向かって2kmほど下ったところには三瀨宿というバス停があるが、1日1便しかないため利用は現実的ではない。

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 三瀬峠からは、距離はあるもののなかなか快適な山道を進み、13:00ごろに井原山(933m)に到着する。井原山はグルリと360度の眺望が得られる眺めのよい山である。山頂には野営可能な平坦地があるが、山頂がひらけているため、風には注意する必要がある。

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 ここからは景色の良い歩きやすい稜線伝いに、50mほどのアップダウンを繰り返して進むと、15:00ごろに雷山山頂(955m)に到着する。山頂には野営可能な平坦地がある。ここは登山客が多いので、早い時間にテントを設営すると目立ってしまうだろう。

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 雷山山頂からは西に向かい、草原のような層々岐野を経て山中の道を1時間半ほど歩くと長野峠という舗装路と交差する地点に到達する。ここは車の交通があるため、がんばって羽金山登山口から稜線を少し進むことにする。

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野峠

 1時間半ほど頑張って進むと、稜線が少し落ちくぼんだ地点になり、白糸の滝の集落への分岐点(644m)になる。ここに水場まで5分の標識があり、それに従って進むと野営可能な平坦地が見つかる。

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 水場は平坦地から2分ほど下ったところで、山道から藪をかき分けたところで谷川から水を掬うことができる。水量は十分にある。この日はここにテントを設営することにする。ここも携帯の電波は届かない。行動距離は21km。

 某月某+2日(日)

 7:00 白糸の滝分岐 行動開始
 8:00 はがね山標準電波送信所
 10:30 荒川峠
 12:00 女岳(昼食・大休止)
 13:00 荒谷峠
 13:30 浮嶽東登山口
 14:00 浮嶽
 15:30 白木峠
 16:00 十坊山
 17:00 まむしの湯(食事)
 19:00 JR筑肥線福吉駅(コンビニ)
  行動時間 12:00 行動距離 20km

 野営地は谷間のため、明け方は少し肌寒いかもしれない。朝食と撤収を済ませ、7:00に行動を開始する。

 白糸の滝分岐からは250mほどの高度差のある直登ルートで、ずいぶん汗をかくが、7:30には羽金山山頂付近のフェンス、8:00にははがね山標準電波送信所の正門前に到着する。フェンスに囲まれた山頂に行くことができるのは9:30~16:30の間だけなので、残念ながら今回は山頂到達を諦めて先に進むことにする。

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 羽金山からのコースは、標準電波送信所の前のガードレールの切れ目から始まる。最初はひどい藪漕ぎで、大変な目に遭いそうな予感がするが、すぐに快適な山道に変わるので心配は要らない。景色の良い稜線を歩き、8:30に河童山(874m)に到着する。

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 そこからさらに緩いアップダウンの続く道を延々と進むと、10:30ごろに舗装路と交差する荒川峠に到着する。少し先には人家が見えるが、店舗などはない。

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荒川峠の女岳登山口

 ここからも緩いアップダウンを繰り返しながら先に進み、最後に100mほどの直登路を上がりきったところが女岳(748m)である。12:00ごろには到着する。ここには、野営可能な平坦地がある。女岳の直登路に入るところに真名子との分岐がある。この分岐から少し真名子に下ったところに水場があるのだが、確認はしていない。また、真名子には木の香ランドというキャンプ場がある。木の香ランドは素敵なキャンプ場で、バンガローなどもあるが、いったん下りてしまったら登る気がおきなくなるぐらいのきつい直登ルートであるので、縦走を完結したい場合にはそちらに向かわない方がよい。

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真名子への分岐

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真名子にある木の香ランドキャンプ場

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 女岳からは30分ほどで荒谷峠(540m)に至る。13:00頃であろう。荒谷峠からは、忠実に稜線をたどる道と、舗装路で浮嶽東登山口に向かう選択肢があるが、現時点では後者をお勧めする。昨年、前者を選択したところ、踏み跡のない藪漕ぎの連続で、かなり体力を消耗してしまった。

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 舗装路を使えば、きれいな景色を楽しみながら13:30に浮嶽東登山口に到着する。ここには20台近く自動車が駐車できる草地があり、野営可能な平坦地となっている。

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浮嶽東登山口の駐車場

 浮嶽東登山口から登りはじめれば、大岩展望台を経由して14:00ごろに浮嶽(805m)に到着する。大岩展望台からの眺めは素晴らしいので、ぜひ立ち寄ってもらいたい。山頂には浮嶽神社の上宮があり、野営可能な平坦地があるが、バチが当たるかもしれない。

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大岩展望台からの眺め

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 浮嶽からは長い下りを経て、15:30ごろに白木峠に到着する。ここは交通量の多い県道との交差部分。木陰で一休みしてから最後の十坊山に向かう。

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白木峠

 白木峠からは30分ほどで十坊山(535m)の山頂になる。距離は短いが、傾斜はきつい。十分に汗をかいてしまう。山頂の眺望は最高に良い。また、頂上には野営可能な平坦地があるが、眺望の良いこの山には地元の方がわりと遅い時間まで登ってくるので、明るいうちにテントを設営すると目立つ可能性が高い。

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十坊山頂上のシンボルの巨石

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 十坊山からの下山には1時間もかからない。集落が近くなってくると夏みかんの植えられた畑の間の道を歩く。目的地のまむしの湯は、麓近くになると煙突が目立つのですぐ分かるはずだ。17:00にはまむしの湯に浸かって、食事をとり、その後に休憩室でゆっくりできる。

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 まむしの湯でさっぱりして腹もくちくなったら、ここから2kmあるがJR筑肥線福吉駅まで歩き、19:00ごろの電車に乗って福岡への帰途につく。海に面した福吉から筑前深江までの車窓からの夕日は素晴らしく美しいので、乗車する際にはぜひ窓の外にも気をつけて欲しい。

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 本日の行動距離は20km。3日間で背振山系を踏破した満足感に浸りながら、電車に揺られて自宅に戻ることができる。

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 こんな行程で3日間を歩けば、背振山系を堪能できると思うのだが、いかがだろうか?