とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2020年12月26日 九州自然歩道 72日目 鹿児島県指宿市開聞~指宿市山川 眺望絶佳の開聞岳 眺めて良し、登って良し、頂からの景色はさらに良し

 今回は2020年最後の九州自然歩道トレッキングとなる、開聞から山川までのレグ。前回のトレッキングでは開聞岳への登山口のある指宿枕崎線開聞駅まで歩を進めた。ところが、福岡から開聞までの公共交通機関によるアクセスはなかなか難易度が高く、福岡を始発で出発しても正午を過ぎてしまう。日曜日はめずらしく用事が入ってしまったため、土曜一日で薩摩半島最後の残り40km近いレグを歩き終えてしまいたい。やむなく、金曜に福岡を発ち、開聞に近い指宿枕崎線の山川のホテルに前泊することにした。

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指宿枕崎線山川駅に到着

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山川港からは大隅半島の根占に行くフェリーが発着する

 当日は、山川駅から6:11に出発する指宿枕崎線に乗車して6:32に開聞駅に到着した。乗客は3人。下車したのは自分一人だけ。まだ暗い。東の空をみると少し紫がかってきている。ジャケットのジッパーを少し上げて行動を開始した。

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始発の指宿枕崎線で開聞に到着

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 駅から200mほど東に進むと、かいもん山麓ふれあい公園のゲートが見える。ここから正面に見える開聞岳を目指して舗装路を歩き始める。だんだん周囲が明るくなり、公園のテント場が見えてきた。ここから見える限りでは、テントを張っている人はいないようだ。

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 登山口には7:00に到着した。さすが百名山の1つだけあって、登山路はよく整備されており、踏み跡がしっかりついている。砂礫の山道で、誰もいない山中にサクサクと足音が聞こえる。次第に周囲が明るくなってきた。

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2合目で舗装路は終わり登山道になる

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 砂礫の山道は少し滑りやすい。7:30に3合目を通過した。少し汗ばんできたため、上着を脱いでザックに詰め込んだ。7:32にはあっという間に4合目を通過。7:47に5合目に到着し、ちょうど対岸の大隅半島のむこうから上り始めた太陽を木製のデッキで眺めながら、サーモスのお湯で喉を湿らせた。

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快適な山道が続く

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5合目のデッキからの眺望も良い

 その後も状態のよい山道が続き、8:04に6合目を通過し、次いで8:18に7合目を通過した。開聞岳の登山道は、北に位置する開聞駅から南にある頂上に向かってほぼ360°のらせん状に右回りとなっており、いちどもスイッチバックがない。数字の6の鏡像のように進んでいく。7合目からは大隅半島が南端の佐多岬まで一望できる。南の海上には硫黄島が浮かび、目を凝らすとうっすらと屋久島と思われる島影が見える。振り返れば頂上はもうすぐだ。日の出を見るために登ったという方が下山するのとすれ違った。

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6合目ぐらいからゴロゴロの岩となる

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7合目からの眺望が素晴らしい

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頂上もすぐそこに見えてきた

 この先はすこし大ぶりの岩を乗り越えるところが出てくるが、難易度の高いところはない。8:32にらせん状の登山路が270°ほどまで進んだ位置になる8合目を通過した。前回のレグのスタート地点であった枕崎がズーッと先に見える。9合目は8:50に通過。はしごやコンクリートで固められた階段があり、歩きやすい。

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8合目付近ではさらに岩のサイズが大きくなる

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8合目では西の方向の眺望が目の前に拡がる

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最後にはしごが1か所

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ステップもつけてある

 9:04に開聞岳山頂(924m)に到着した。油断していると吸い込まれそうなぐらい美しい眺望が眼下に拡がる。北に見えるのは池田湖。西には頴娃、枕崎へと連なる海岸線が続く。東には大隅半島が南端の佐多岬まで伸びる。頂上の岩の上に立って南を眺めると、山上から噴煙を上げる硫黄岳を有した硫黄島が見える。風はなく、雲もほとんどない絶好の登山日和。こんな日に百名山の一つに登ることができて感謝しかない。

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開聞岳山頂に到着 北には池田湖

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西には枕崎まで続く海岸線

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東には佐多岬まで続く大隅半島

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南には硫黄島とうっすらと屋久島が

 頂上の岩の上に腰掛けて、素晴らしい眺望を楽しみながらおにぎりの朝ご飯を食べていると、同年代の登山者がやってきた。北九州からお越しの方で、九州百名山全山踏破を目指し、現在30座ほどを終えたところという。これまで登った山やこれから登る山の談義に話が弾む。

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 九州百名山氏とお互いの安全を祈念した後、9:40に下山開始。そろそろ登ってきた登山者とすれ違い始める。上りの登山者に道を譲りながらゆっくりと下山したが、10:36には5合目に到着した。5分ほどの小休止の後、下山を再開し、11:10には2合目の登山口に到着した。ここからは西にコースを変え、開聞岳山麓の周回路に向かう。ふれあい公園のテントサイトを横に見ながら進むと、手打ち蕎麦ののぼりがはためくのが見えた。時間は少し早いが、ここから先の10km以上の区間には店舗はない。早めの昼食にしようと、ザックを下ろすことにした。

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ふれあい公園を先に進む

 蕎麦は美味しかった。手打ちと思われる、やや平たく、太めで断面の不揃いな蕎麦。喉ごしがよく、香りも良かった。冷たい水でシャキッと締められてコシもあり、甘めのつゆとよく合った。定食を頼んだら、おでんとおにぎりと小鉢も付き、とてもリーズナブルだった。その一方で、表記はなかったが、何から何まで徹底したセルフサービス。席の案内はなく、お茶は自分でいれ、番号で呼び出されて、蕎麦をカウンターに受け取りに行った。とどめには、食べ終わって店を出ようとすると食器をカウンターに戻せと言われた。厨房内では5名ほどの女性がさっきからおしゃべりに興じている。どうやら、調理する係とテーブルのアルコール消毒をする係と客に指示を出す係に明確に分かれており、他の業務はしない方針のようだ。せっかく蕎麦が美味しかったのに残念だ。洗い物係がいないので食器を洗ってから帰れと言われたら困るので、さっさと店を出た。

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蕎麦は美味しく値段も良心的

 12:10には塩屋集落を通過して、枕崎まで見渡せる海岸に出た。ここからは開聞岳山麓の周回路に入る。周回路は舗装されており、ときおり山麓の圃場に向かう軽トラックが通過するのみ。畑の向こうの開聞岳が美しい。開聞岳は、近くで見ても、遠くから見ても美しい。

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塩屋集落を通過

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南国ではネコものんびりしている

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塩屋集落の先は海

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振り返ると開聞岳

 30分ほど周回路を進むと、白い慰霊塔が海に向かって立ち並んでいるのが見えてきた。ここは花瀬望比公園というフィリピン戦没者追悼施設だった。説明書きを見て分かった。望比とは、フィリピンを望むという意味だったのだ。この公園は戦没者の魂を慰めるためのもの。悲しいほど海が美しい。

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海まで続く慰霊塔

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その先にはフィリピンでの戦没者を悼む記念碑が

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この海が美しすぎる

 海に浮かぶ開聞岳の南端にあたる開聞崎を13:35に通過した。しばらく進むと舗装状態が悪くなり、前方にトンネルが現れた。内部には照明はなく真っ暗で、進むのを逡巡した。トンネルは幅が3mにも満たず、自動車が1台ようやく通れるほど。サングラスをつけたまま内部に進むと何も見えない。サングラスを外してしばらくしたら、ようやく暗順応して前方が見えてきた。しばらく我慢して進んだら、トンネルには上部に明かり取りの窓が開いていた。トンネルは200mほどで出口にたどり着いたが、その先にもまたトンネルが控えていた。

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開聞岳を眺めながら周回路を進む

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どこから見ても美しい

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いくら見ても見飽きない

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開聞崎からは大隅半島が近い

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いきなり真っ暗なトンネルが現れた

 次のトンネルは長い。しばらく進むと、前方から飛行機のエンジンのような音がかすかに聞こえてきた。音はだんだん近づいてきて、自分を捕獲しに来た宇宙人が搭乗するホバークラフトのような乗り物が向かってきたような気がする。カーブを曲がったところで、左右に2つのライトが見えて自動車だとわかってホッとした。避けるスペースもないので真ん中を歩いていたら、ようやくドライバーが気がついたようで、ずいぶん先で止まって待っていた。たぶん、出た!と思ったようだ。ゆっくりと自動車の横を歩いて通過したら、こちらには目を合わせずに、逃げるように走り去った。地図で確認したら、2つめのトンネルは500mほどの長さがある。気の小さな人や霊感の強い人は、一人で歩いて通過するのは無理かもしれない。

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ようやくトンネルを抜けたと思ったら2つ目のトンネルが現れた

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2つめのトンネルは長いのでライトの準備があった方がよい

 2つめのトンネルを抜けると道路は急に広くなり、14:13には開聞山麓自然公園の入り口に到着した。フェニックスの並ぶ道路を歩き、14:18に周回路を歩き終え、薩摩川尻の集落の中を進み始めた。

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開聞山麓自然公園からガラッと明るくなる

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川尻集落のどこからでも開聞岳が見える

 家の建ち並んだ細い道を歩いて集落を抜けると、10分ほどで県道242号線に合流した。道路の左側にはキャベツやレタスの畑が拡がる。右手には海が拡がっているはずだが、防風林のために海は見えない。残念だ。潮騒だけが聞こえてくる。振り返ると開聞岳がすっくと聳える。

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キャベツ畑がひろがる

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レタス畑も

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どこに行っても開聞岳に見守られている

 14:56に県道243号線に突き当たり、長崎鼻に向けて右折する。ここからは1kmほどで薩摩半島の最南端になる。観光客が多いのか、県道243号線は交通量が多い。地図を見ると海沿いに道路があるので、せっかくなので県道を外れて海沿いに進むことにする。海辺の畑にはアロエが栽培されていた。ところが、もう少しで長崎鼻というところで突然道が途切れ、先は藪、右手が崖、左手も崖という状態になった。地図ではまっすぐ50mほどで舗装路に出るはず。藪漕ぎで先に進むが、どうしても道が見つからず撤退。やむなく左手の崖を登って県道243号線への復帰を試みたが滑落して出血。意気消沈して元の道に引き返して、正規ルート長崎鼻に進むことにした。

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アロエの花が咲いているのに気をよくして進むが

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激藪に阻まれて撤退

 ようやく長崎鼻に着いたのは、30分以上回り道をした15:50。ここは浦島太郎伝説の地とのことで、竜宮城の形をした神社がある。先端には灯台。ここからの開聞岳も素晴らしい。まったく惚れ惚れする姿だ。

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長崎鼻の竜宮城

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灯台の先には東シナ海がひろがる

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ここから眺める開聞岳も完璧

 長崎鼻からは同じ道を県道243号線まで引き返して、フラワーパークかごしまの横を通過。16:54に山川岡児ケ水(ちょがみず)、山川浜児ケ水の住宅地を抜ける。町の中には温泉がある。美肌の湯と書いてある。浸かってみたかったが、長崎鼻での回り道のため時間が厳しくなってきたので先に進む。

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児ヶ水の集落にも石垣に囲まれた家が多い

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美肌の湯 徳光温泉

 児ケ水の住宅地を抜けると、両側に圃場の拡がる立派な県道に合流した。右に曲がると砂蒸し温泉の看板。左には地熱発電所が蒸気を出すのが見える。このあたりはどこを掘っても温泉が出そうだ。砂蒸しもしてみたい。ここにはいつか再来したい。

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山川地熱発電所

 正面には奇岩の竹山が近づいてきた。時間があったら竹山にも登ってみたかったが、ここは山頂までの道はついていないようだ。時間は17:37で、日没を過ぎており、すでに辺りは暗い。

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竹山の奇岩が目の前にドーン

 竹山から、本日の目標の山川港まではおよそ6km。すでに辺りは暗く、ときおり通過する自動車は、歩行者に気がつくとびっくりしたように大きく避けていく。

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 景色がよく見えないまま先を急ぎ、山川港には18:25に到着した。ここは次のコースの大隅半島の根占までのフェリーの発着するところ。ここでトレッキングを終えたいところだが、山川駅までのバスはすでになく、タクシーも停まっていない。やむなく山川駅まで、あと2km歩くことにした。

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ようやく目標地の山川港に到着

 交通量が多く、歩道のない国道269号線を歩いて山川駅に到着したのは18:48。開聞岳に登り、37km超を歩いた、長い一日がようやく終わった。19:56に出発する列車の時間まで、駅前の食堂で鰹のタタキでも食べてゆっくり過ごすことにした。

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鰹のタタキが美味い

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2020年12月26日 九州自然歩道 72日目 鹿児島県指宿市開聞駅指宿市山川港 晴れ 気温13/8℃ 行動時間12:19 距離37.4km 59109歩

往路交通:西新13:06福岡市営地下鉄-博多13:19/13:36九州新幹線みずほ607号-鹿児島中央14:55/15:02指宿枕崎線-山川16:22 山川前泊 山川6:11-開聞6:32

復路交通:山川19:56指宿枕崎線鹿児島中央駅21:10/21:36九州新幹線つばめ350号-博多23:23