TJARをご存じだろうか?
TJARとはTrans Japan Alps Raceの略称で、日本アルプス縦断レースのこと。日本海側の富山湾をスタートし、北アルプス、中央アルプス、南アルプスを縦断して太平洋側の駿河湾まで走り切るというスパルタンな山岳レースである。最近、テレビでも放映されているようなので、ご存じの方も多いのではないだろうか。
全行程415kmのこのコースの標準コースタイムを合計すると33日ほどとなる。ところがTJARのタイムリミットは8日間。合計30か所あるチェックポイントのいくつかには通過制限時間が決められており、かなりの参加者がチェックポイントで制限時間オーバーを宣言されることになる。
完走できる人間がこの世にいるだろうかと思うような設定のレースなのだが、ちゃんと完走者がいる。しかも最近では4日台の記録で走破した超人まで現れた。
2002年から2年ごとに実施されているTJARは、エントリーのための資格すら厳しく、自分にはとても出場はかなわない。でもどんなコースで行われているのか、この目で見たくなった。
ということで、本日は都内で6:15に起床。
本来は富山市内のホテルに宿泊する予定だったが、なんと昨晩の羽田ー富山便が線状降水帯に伴う雷雲発生の影響を受けて、富山空港上空で旋回を繰り返したのちに羽田に戻ってしまったのだ。それで昨夜はやむなく都内宿泊。早速の試練に暗雲が立ちこめる。
さて、ここで選択肢は2つ。今朝、東京から始発の北陸新幹線に乗れば午前8時過ぎに富山駅に着く。スタート地点には9時頃に立てるだろう。これだと時間的なダメージは小さい。
もう一つの選択肢は、すでに便の振替が行われた本日の羽田10:05発の富山行きの始発の航空便に乗ること。空港バスや電車の時間も合わせると、スタート地点到着は昼をゆうに過ぎてしまう。
朝まで迷ったが、後者の選択肢の振替便に搭乗することにした。新たに発生する新幹線代の費用はなく、30kmほどの本日の行程はギリギリ歩けそうだからだ。
9:10に羽田空港に到着。62番ゲートで10:05発のANA富山行き315便便の搭乗案内を待つ。出発は定刻より20分ほど遅れた。
11:30ごろに富山空港に到着した。現地は曇り。昨日の荒天が嘘のように路面が乾いている。
空港バスに搭乗し、富山駅近くのホテルにあらかじめ送付しておいた荷物を受け取って、パッキングし直す。最後にヘルメットをザックにバンジーコードで固定すると、これからの行程が頭の中に浮かび、グッと身が引き締まる。
富山駅から12:47発のあいの風富山鉄道に乗車して、13:07に東滑川に到着。緊張感が高まってきた。
県道1号富山魚津線を東に進み、早月(はやつき)川を越える。早月橋を渡って川のそばを歩き始めた時から、スターマイン花火のような音しきりに聞こえる。こんな昼間から富山湾花火大会でもやっているかと辺りを見るが、煙はのぼっていない。
花火の音源を注意深く確かめると、どうも早月川の水中から発している音のようだ。折りからの雨によって濁流となった早月川で、上流から流れてきた巨大な石同士がぶつかる音に違いない。恐ろしい川の流れだ。
早月川の濁った河口に近い富山湾の海に手を差し入れる。そっと舐めてみると、まったくの淡水。さあ、13:31に選手と同じくミラージュランドで行動開始。観覧車がゆっくり回っている。
ミラージュランドの中を通り抜け、早月川の右岸の舗装路を上流に向かって進む。天気はなんとか持ち堪えている。
両側を公園に囲まれた道を進む。14:02に国道8号線の延槻(はいつき)大橋の下をくぐる。
14:13に北陸新幹線の高架下を通過した先は圃場の中の通路をうまく選んで上流に向かって進む。
14:30に月形橋を渡って早月川左岸を進む。この辺りも行き止まりの道があって迷いやすい。圃場の中の道を先行者のGPSデータを参考に進む。
15:12に県道141号線に合流して左折。ここには自販機があるので、小休止。雨が強くなってきた。
早月川は氾濫を繰り返していたようで、五厘堤という特殊な形態の堤防が築かれていたとの解説がある。ちょうどここで、コミュニティバスが集落中から出てきて通過。この先の、みのわ温泉までバスがあるようだ。
15:32に入会橋で右岸に戻る。トラックの通行が多いが、狭い通路を徐行して気を使ってくれる。ありがたい。この辺りは県道67号線。
16:04に豊隆橋を渡って再び左岸に戻る。渡った先の200mほど下流には、みのわ温泉。時間があったらつかりたい。
ここから上流部分はさらに道路が狭くなる。16:38に上市町境を通過。県道333号線に変わる。
17:35に剱橋、18:08に井折橋と渡って、今日の目的地の馬場島荘まで8kmと近づいてきた。
ところがこの辺りからかなり強い雨が降ってきた。谷間の道は少しずつ暗くなっていく。19:44に白萩発電所、19:47に馬場島発電所を通過した先の覆道ではまったく前が見えない。雨の中でザックの中を探ることもできず、iPhoneの懐中電灯機能を利用。落ちてくる水滴でときどき誤動作する。
最後の直線の上りが緩やかになったあたりで人家の明かりが見えてきた。玄関を覗くと、男性が雨の中をお疲れ様とお出迎えしてくれた。馬場島荘の管理人さんだった。
20:10に行動終了。まずは濡れた機材を乾燥室に入れる。
夕食には手打ちのおろしそば。山菜のアマナ、ウド、コゴミ。イカ墨の塩辛などなど。今日は他の予約客はすべてキャンセルだったとのことで、剱岳のガイドを長年されていたという管理人さんと楽しい夕食だった。
雨の音を聞きながらお風呂にゆっくり浸かると、1日の疲れが少しずつほぐれていった。
2023年7月13日 TJAR歩いてみた 1日目 富山県魚津市ミラージュランド〜中新川郡上市町馬場島荘 曇りのち雨 30/22℃ 行動距離28.4km 行動時間6:37 獲得高度964m 48667歩 行動中飲水量1500ml