とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

TJAR歩いてみた 3日目 早月小屋〜剱岳〜剣山荘 最大難所の剱岳を通過

 本日は剱岳頂上の北にある早月小屋で3:00に起床。窓の外はまだ暗い。小屋に打ち付ける雨の音が聞こえる。昨日は自分が早月小屋に着いた後しばらくして、福岡からのマラソンランナー4人が早月小屋にチェックインしている。いずれもサブ3ということなので、相当な実力の持ち主のよう。

外は雨が降る。剱岳が見えてきた。

 さて、その隣の部屋のマラソン4人衆はそろそろゴソゴソと出発準備のよう。まだ正規の小屋開けの前なので朝食はない。いつでも出発可能なのだが、いま出発するとずぶ濡れだ。

 ここは幸いインターネットが繋がる。天気予報の雨雲レーダーを見てみると、西の方には雲はない。5:00ぐらいから雨は上がるはず。

西の富山湾が見えてきた

 4:00の山小屋の点灯時間に一気に部屋が明るくなった。外も少しずつ明るくなって来たが、風雨はいまだ強いが、雨雲レーダーでは西の方は良さそう。しばらく様子を見ていると、マラソン組は時間制限があるようで、すでに出発準備を整えて、走り出す準備を終えている。

 雨はまだシトシトと降っているが、4人組に続いて5:00に早月小屋を出た。

早月小屋を出発

小雨に変わってきた

 登山道を雷鳥の雛がヨチヨチと歩いている。人を怖がる様子もない。雛を観察していたらマラソン組はすごいスピードで山頂に向かって消えていった。

階段を上れず戸惑っている雷鳥の雛

ラソンランナー達は消えてしまった

ときおりハシゴや鎖場

森林限界は超えたよう

早月小屋も小さくなってきた

剱岳の頂上らしき所も見えてきた

 しばらく樹林帯ののんびりした道を進んでいたが、5:40に稜線に出てから様子が変わった。西から強風が吹きつけてくる。油断すると身体が浮いてしまいそう。

稜線に出ると風が吹き付ける

頂上まで半分

 6:26に標高2600m表示を通過すると、周囲に雪渓が現れた。さいわい雪渓は縮小していて、その脇に登山道が設置してある。

雪渓の上を巻いて通過

 ここから先は風が強くなり、ときおり吹き飛ばされそうになる。雨が降り出した。

霧の大きな粒が雨そのもの

晴れていたら綺麗だろうな

雪渓の脇を通り抜ける

 7:36に標高2800m地点を歩いているときに、マラソン組が下山してきた。山頂はガスで何も見えなかったとのこと。

ラソンランナー早し

山頂方向はよく見えない

もうすぐ山頂だ

 この先は何ヶ所かの鎖場を通過して、8:46に剱岳(2999m)山頂に到着した。山頂には祠。少し北に進むと、映画「点の記」で見た2等三角点が設置してある。ここに三角点を建てた人たちは本当にご苦労だったはずだ。まだ鎖も階段も設置されていなかっただろう。

剱岳山頂に到着

その先に二等三角点

北方尾根はステゴザウルスの背中のようなところだな

 なんとかして頂上からの光景を見てみたい。西の空が少し明るいので、ガスが晴れるのを待つ。油断すると吹き飛ばされそうな風にときおり見舞われる。15分耐えたが、ガスが晴れそうな兆しがないため9:00に下山を開始した。

頂上からの眺望はガスのためにこんな感じ

 山頂からは前剱に向かって下り始める。下山路も油断ができない。別山尾根と呼ばれる難所コースとして知られている。

下山開始

 大きな尖った石のがれ場を下った先はカニの横バイと言われる長い鎖場。ほぼ垂直な岩を進むのであるが、鎖があり、またステップも切ってあるため意外と楽に通過。雨で鎖が滑るのには閉口したが。

次いでハシゴを下りる

避難小屋か

 その先にも20段ぐらいの垂直な金属の階段が設置してあり、なかなかスリリング。ザックが風で揺さぶられる。

 ハシゴを下り切った先で、上の方から異常に早いペースの4人組が迫ってきた。広い所で先を譲ると、最後のランナーがヘルメットにTJARのシールを貼っている。声を掛けるとやっぱり4人ともTJARの選手。グループで練習をしているようだ。「今朝、馬場島から早月尾根を登り始めた」とこともなげにいう。

 「どこまで行くんですか?」と尋ねると、「槍ヶ岳から常念岳に進む」とのこと。1日で、ということだろうか。それとも山中1泊か?背中のザックはRush 20で小さなテントと食料1日分ぐらいは入りそう。どちらにしても人間離れしている。会話を終えると、数秒で霧の中に消えていった。

TJARの選手には先に進んでもらった

 その先の平蔵のコルという尾根の窪んだ所では風が集中して吹き付けてくる。風が止むのを待たないと、とても進めない。普通の人はこうだろう。

ここは強烈な風が吹いた

 10:27には前剣の門という鎖場を越える。もうこのぐらいの鎖場では刺激が足らない。ついでに前剱(2813m)の山頂にも寄り道。

 前剱では北斜面に10名ほどの黄色い服を着た頑強そうな人たちが、ロープを延ばしたり、斜面を駆け下りたりしている。尋ねると、富山県警の救助訓練だという。大変な仕事だ。

こんな荒天の中で救助訓練。「こんな日だからやるんですよ」と言われた。

 前劔を下ると武蔵谷コル。武蔵谷の東の斜面にはズーッと下まで雪渓が続いている。見事だ。これは氷河だろうか?

武蔵谷コル

武蔵谷コルからずっと先まで雪渓が続く

 その先の小さなピークの一服剱(2618m)を越えると、剣山荘の山小屋が見えてきた。12:23に剣山荘に到着。ランチ営業があるとのことで、コーラとおでんの昼食。うまい。いま気が付いたが、朝、クラッカーを4枚食べただけだった。

一服剱

遙か下に山小屋が見える

コーラとおでんの昼食

 外は暴風が吹き荒れる。谷を挟んだ向かい側の剱沢キャンプ場にテントを設営する予定だったが、こんな強風下でテントを張れる自信がない。テントの生地が破れるかもしれない。

剱沢の反対側には剱沢小屋とキャンプ場。この時点では1張りもテントが見えなかった。

 剣山荘のきれいな食堂でおでんをつつきながらご主人に尋ねてみると、今晩は宿泊可能とのこと。外は暴風が吹き荒れ、今日の天候でテント泊は心許ない。軟弱の謗りを受けるかもしれないが、本日も山小屋泊とした。

剱沢

晩ご飯も美味し

2023年7月15日 TJAR歩いてみた 3日目 富山県中新川郡上市町早月小屋~中新川郡立山町芦峅寺 剣山荘 雨のち曇り 16/10℃ 行動距離3.9km 行動時間 7:14 獲得高度838m 行動中飲水量1000ml 11606歩