本日は剱岳頂上の北にある早月小屋で3:00に起床。窓の外はまだ暗い。小屋に打ち付ける雨の音が聞こえる。昨日は自分が早月小屋に着いた後しばらくして、福岡からのマラソンランナー4人が早月小屋にチェックインしている。いずれもサブ3ということなので、相当な実力の持ち主のよう。
さて、その隣の部屋のマラソン4人衆はそろそろゴソゴソと出発準備のよう。まだ正規の小屋開けの前なので朝食はない。いつでも出発可能なのだが、いま出発するとずぶ濡れだ。
ここは幸いインターネットが繋がる。天気予報の雨雲レーダーを見てみると、西の方には雲はない。5:00ぐらいから雨は上がるはず。
4:00の山小屋の点灯時間に一気に部屋が明るくなった。外も少しずつ明るくなって来たが、風雨はいまだ強いが、雨雲レーダーでは西の方は良さそう。しばらく様子を見ていると、マラソン組は時間制限があるようで、すでに出発準備を整えて、走り出す準備を終えている。
雨はまだシトシトと降っているが、4人組に続いて5:00に早月小屋を出た。
登山道を雷鳥の雛がヨチヨチと歩いている。人を怖がる様子もない。雛を観察していたらマラソン組はすごいスピードで山頂に向かって消えていった。
しばらく樹林帯ののんびりした道を進んでいたが、5:40に稜線に出てから様子が変わった。西から強風が吹きつけてくる。油断すると身体が浮いてしまいそう。
6:26に標高2600m表示を通過すると、周囲に雪渓が現れた。さいわい雪渓は縮小していて、その脇に登山道が設置してある。
ここから先は風が強くなり、ときおり吹き飛ばされそうになる。雨が降り出した。
7:36に標高2800m地点を歩いているときに、マラソン組が下山してきた。山頂はガスで何も見えなかったとのこと。
この先は何ヶ所かの鎖場を通過して、8:46に剱岳(2999m)山頂に到着した。山頂には祠。少し北に進むと、映画「点の記」で見た2等三角点が設置してある。ここに三角点を建てた人たちは本当にご苦労だったはずだ。まだ鎖も階段も設置されていなかっただろう。
なんとかして頂上からの光景を見てみたい。西の空が少し明るいので、ガスが晴れるのを待つ。油断すると吹き飛ばされそうな風にときおり見舞われる。15分耐えたが、ガスが晴れそうな兆しがないため9:00に下山を開始した。
山頂からは前剱に向かって下り始める。下山路も油断ができない。別山尾根と呼ばれる難所コースとして知られている。
大きな尖った石のがれ場を下った先はカニの横バイと言われる長い鎖場。ほぼ垂直な岩を進むのであるが、鎖があり、またステップも切ってあるため意外と楽に通過。雨で鎖が滑るのには閉口したが。
その先にも20段ぐらいの垂直な金属の階段が設置してあり、なかなかスリリング。ザックが風で揺さぶられる。
ハシゴを下り切った先で、上の方から異常に早いペースの4人組が迫ってきた。広い所で先を譲ると、最後のランナーがヘルメットにTJARのシールを貼っている。声を掛けるとやっぱり4人ともTJARの選手。グループで練習をしているようだ。「今朝、馬場島から早月尾根を登り始めた」とこともなげにいう。
「どこまで行くんですか?」と尋ねると、「槍ヶ岳から常念岳に進む」とのこと。1日で、ということだろうか。それとも山中1泊か?背中のザックはRush 20で小さなテントと食料1日分ぐらいは入りそう。どちらにしても人間離れしている。会話を終えると、数秒で霧の中に消えていった。
その先の平蔵のコルという尾根の窪んだ所では風が集中して吹き付けてくる。風が止むのを待たないと、とても進めない。普通の人はこうだろう。
10:27には前剣の門という鎖場を越える。もうこのぐらいの鎖場では刺激が足らない。ついでに前剱(2813m)の山頂にも寄り道。
前剱では北斜面に10名ほどの黄色い服を着た頑強そうな人たちが、ロープを延ばしたり、斜面を駆け下りたりしている。尋ねると、富山県警の救助訓練だという。大変な仕事だ。
前劔を下ると武蔵谷コル。武蔵谷の東の斜面にはズーッと下まで雪渓が続いている。見事だ。これは氷河だろうか?
その先の小さなピークの一服剱(2618m)を越えると、剣山荘の山小屋が見えてきた。12:23に剣山荘に到着。ランチ営業があるとのことで、コーラとおでんの昼食。うまい。いま気が付いたが、朝、クラッカーを4枚食べただけだった。
外は暴風が吹き荒れる。谷を挟んだ向かい側の剱沢キャンプ場にテントを設営する予定だったが、こんな強風下でテントを張れる自信がない。テントの生地が破れるかもしれない。
剣山荘のきれいな食堂でおでんをつつきながらご主人に尋ねてみると、今晩は宿泊可能とのこと。外は暴風が吹き荒れ、今日の天候でテント泊は心許ない。軟弱の謗りを受けるかもしれないが、本日も山小屋泊とした。
2023年7月15日 TJAR歩いてみた 3日目 富山県中新川郡上市町早月小屋~中新川郡立山町芦峅寺 剣山荘 雨のち曇り 16/10℃ 行動距離3.9km 行動時間 7:14 獲得高度838m 行動中飲水量1000ml 11606歩