本日は太郎平小屋の布団の中で3:00ごろに目が覚めた。大きな山小屋だがシーズンにはまだ早いのか、宿泊客は30名程度。ありがたいことに4人用の蚕棚ベッドを2人で使える状態。それにしてもご高齢の方が多い。自分は今回の宿泊客の中で5番目ぐらいに若い。失礼ながら、全体として高齢化率は80%を越えそう。
周囲がそろそろ動き始めた。ザックに荷物を詰める音、ファスナーを閉める音、ボトルに水を移す音。色々な音が混じり、ヘッドライトの光線が交錯し始めた4:30に小屋に灯りが灯ると、すぐに数人の方はザックを担いで玄関に向かい始めた。
自分はこの小屋は1泊2食弁当付きで申し込んであったので、5:00から朝食。おかわりまで平らげて、5:50に行動開始。
天気は曇り。風が強く、寒い。天気予報では午後からは雨。太郎平小屋から10kmほど先の黒部五郎小屋か、できれば16kmほど先の双六小屋まで進んでおきたい。まずは小屋からすぐ先の太郎山(2371m)に6:01に到着。
なだらかな草原の道が続く。次いでガレ場の上りとなる。長い上りに疲れた男性が先を譲ってくれた。
7:00に標高2576mのなだらかな丘を通過。ここから先は高山植物の花畑が広がる。薄くガスがかかっていてより幻想的。緩やかな上りで、左は雪渓のようだがガスのためによく見えない。
7:26に神岡新道との分岐を通過。植生を破壊しないようにと思われるが、ところどころに木道が設置してある。これといった上りもないまま、7:35に北ノ股岳(2662m)に到着。
頂上から先もなだらかな草原が続き、風が強い。Tシャツ1枚ではあまりに寒いので、ハイマツの木陰に隠れるようにしてジャケットを着ていたら、女性に抜かれてしまった。
8:10に赤木岳を通過。ピークがどこなのかよくわからない。このあたりではライチョウを何羽も見かけた。子供を連れたライチョウで、ほとんど人を恐れない。
ここで先ほど抜かれた女性がガスのために行き先を見失っているところに追いついた。尋ねてみると、初めて日本を訪れた外国の女性。地図には日本語の記載しかなかったので、スキャンして翻訳したとのこと。勇気がある。自分にはできるだろうか?
岩のごろごろした道を下って、8:46に中俣乗越を通過。正面には黒部五郎岳がドーンと聳える。長い上り道が見える。
ドイツの森のトレッキングで鍛えたという女性はかなり早い。強い風の中を先行してハイペースで登っていく。つられてハイペースで休まずに進む。風が強くて吹き飛ばされそうになるため、、ときどき立ち止まって風をやり過ごさなければならない。
10:07に黒部五郎の肩に到着した。ここは風が入らず安心。ザックをここに置き、黒部五郎岳の山頂まで往復した。頂上は風が凄まじく強かった。
そそくさと頂上から下り、黒部五郎の肩まで戻った。ふたたびザックを担いで、カールを右手に見ながら下っていく。美しい光景だ。黒部五郎小屋も見えてきた。
無事に小屋までたどり着けそうかと思ったが、甘かった。ここで大粒の雨が降ってきた。急いでザックからレインウェアを取り出して装着したが、かなり濡れてしまった。
しかし、下りの道中に現れる庭園のような光景は見事だった。巨大な庭石が絶妙に配置され、イネ科の緑の植物の中に高山植物が彩りを添える。正面の奥には後立山連峰の山並みが雄大な借景として絵を作っている。見とれてしまったが、足元には川のように水が流れている。
12:26にずぶ濡れの状態で黒部五郎小舎に着いた。この時点で先に進む勇気は喪失し、テントを張る気力も失っていた。バンダナの口数の少ない管理人さんに空き部屋を尋ねてみると、素泊まりならOKとのこと。よかった。この冷たい雨の中にテントを張ったら、低体温症を起こしてしまいそうだ。本日はここで行動終了としよう。
小屋の玄関のストーブで身体を温めながら、太郎平小屋で用意してもらった弁当をひろげる。バンダナの管理人さんがお湯の入ったポットを出してくれる。強面で無口なのだが、やさしい。この小屋に泊まることができて良かったなとしみじみ思った。
2023年7月19日 TJAR歩いてみた 7日目 富山県富山市有峰 太郎平小屋〜黒部五郎岳~富山市有峰 黒部五郎小舎 曇りのち雨 16/12℃ 行動距離11.6km 行動時間6:25 行動中飲水量700ml 25564歩