とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

阪急電鉄 ちょっとファンになりました

 20年来の友人と神戸で待ち合わせをしてランチに行った。ランチとはいっても、二人ともアラ還のオヤジである。柔らかい秋の日差しがシマトネリコの影を透かした白いテーブルの置かれたテラスで、運ばれてきたキッシュにフォークで切れ目を入れると、焼きたての香りが、、、といったようなおしゃれなものではない。しかも、今回はランチそのものではなく、ランチの現場までの交通機関阪急電鉄の話。

 毎朝、果物を大量に摂取しているため常にカリウムが高い私であるが、鉄分が少ないためか、あまり鉄道のことは知らない。また、さして興味もなかった。とくに大阪の鉄道については、出張の機会が東京に比べて格段に少ないことから、あまり乗車する機会もないため知識がほとんどない。阪急、阪神、京阪、南海など、名前は聞いたことはあるが、どんな路線があるのか、どんな列車が走っているのか、皆目見当がつかない。

f:id:nayutakun:20191125210610j:plain

大阪梅田から新開地(神戸)行きの阪急神戸本線に乗る

 今回は友人との待ち合わせが阪急の沿線で、ランチの現場まで阪急を使って移動した。この友人、鉄分がやや多いようで、しかも阪急愛がある。現場までの道すがら、阪急の特徴についていろいろ教授してもらった。教えてもらったことを要約すると、だいたい4点にまとめられた。このあたりを、少しずつ調べながら、得られた知識を復習してみたいと思う。

1.阪急は山手を切り開いて路線を敷設したため直線が多い。

 梅田から神戸に向かって阪急に乗って気がついたのは、結構飛ばすなー、ということ。それでも揺れないのだ。先頭車両で運転台のスピードメーターを見ると110km。これが踏切ありの在来線のスピードか、というぐらい飛ばす。しかし、保線状態がよいのか、ほとんど揺れない。直線が多いのだ。友人曰く、阪急が宝塚線の次に開発を進めた阪急神戸本線は、1920年頃の当時、人家のほとんどなかった山手沿いを直線で突き抜けるように敷設されたため、カーブが少ないとのこと。唯一の例外が岡本-御影間。この地域では、地元住民とここに邸宅を構えていた朝日新聞創業者の村山龍平によって、住宅地の真ん中に鉄道が敷設されることに対する強硬な反対運動が起こった。迂回か地中化かの二択を迫られた阪急は、村山の旧邸宅だった香雪美術館の北を迂回することを選択したため、S字のカーブが生じることとなった。今ではここは「村山カーブ」と呼ばれるようになり、減速してもなおレールを軋ませながら走る名物ポイントとなった。

f:id:nayutakun:20191125210710j:plain

阪急神戸本線は基本、直線オンリー 飛ばす飛ばす

2.阪急の機材はけっこう上等。

 阪急の車体はあずき色。これは知っていた。でも、あずき色というと阪急ファンはやや機嫌が悪くなる。通はこの塗装色を阪急マルーンと呼ぶのだそうだ。マルーンは栗のマロンが語源。

 そして、阪急の車体には艶がある。専用の塗料を使用して、4層の重ね塗りをするといった工程を経ており、独特な光沢を生み出しているとのこと。なるほど、阪急の車体は他社と比べるとピカピカ光って見える。

f:id:nayutakun:20191125210810j:plain

阪急マルーンの車体が上品な色に思えてきた

 これだけではない。内装が木目調で、落ち着く。それにシートが深緑色で、これも落ち着く色調。友人曰く、このシートのモケット(絨毯やソファなどに使用されるふわふわ系の織物の種類で、編地の面に下地から繊維を織り出して肌触りを滑らかにした布地のこと。添毛織り(てんもうおり)の別名も)は他社よりパイル(立毛)が長く、アンゴラ山羊の毛を使用しているとか。アンゴラですよ。確か私の唯一のマフラーもアンゴラだったなー。ひょっとしたらアルパカだったかも。この緑のシートの色も、ゴールデンオリーブと呼ぶこだわりがあるのだそうだ。ゴールドなのかオリーブなのかはっきりしてほしいが、最近はキウイにもゴールデンが登場してきたから、これもよしとしておこう。

f:id:nayutakun:20191125210848j:plain

木目調の内装とゴールデンオリーブのモケットのシート

 阪急はまた、車体の本体もかなり凝った造りとのこと。台車のサスペンションの空気バネが、、、などと、これも友人が解説してくれたが、これは理解不能だったので割愛。もう少し勉強してから、再度、解説してもらう必要がある。

 ただ、車齢50年を超えるような車両に乗る機会も時々あるとのこと。これは、車体が古いよと卑下しているわけではなく、古くなっても使えるような良質な車体を使用しているんだよというニュアンス。もともとの車体が良質なのに加え、丹念にメインテナンスをしているので、長く耐用できるとのこと。JRのように、都市部で使った車体が古びてきたら、さっさとローカル線に転用というわけにはならないこともあるのかなと思う。

3.阪急には品がある。

 これも、友人から言われてすぐに気がついた。中吊り広告が少ないのだ。そもそも天井側面には広告が皆無。中吊り広告に週刊誌の広告がないのも特徴だ。山手線の車内ではもっぱら文春などの週刊誌の広告を読んで情報収集に努めている私としては、ちょっと物足りない感があるが、これはこれで上品な車両だと納得。

4.創立当初の阪急は現在のベンチャー企業みたいな成り立ちだった。

 阪急の創業者が小林一三という実業家であることは知っていた。線路を敷設する前に、周辺の宅地開発を行い、利を得るとともに、沿線人口を増やすことで乗客を増やすというよく練られた戦略を用いたことも、かろうじて知っていた。しかし、その開発した宅地に分譲住宅を建て、さらにサラリーマンでも購入しやすいローンでの販売を着想したというのは、明治の時代としては驚くべきことだと思う。

 さらには、鉄道沿線に動物園や温泉、宝塚歌劇団と作り上げたり、ターミナルデパートを作ったりと、現在でもこれほどの実業家は少ないだろう。とどめが、プロ野球球団の設立。いまはなくなってしまったが、阪急ブレーブスがそれだ。現在のベンチャーもいつかは球団経営へと進んでいるのをみると、これはまさに明治のベンチャー

 鉄道は経済との結びつきが強く、いろいろな側面から見てみると面白い。あまり知識はないが、乗り物としても面白そうだな。ときには車窓から海を眺める旅にでも出てみようか。それから、今回、阪急電鉄を調べて分かったのが、阪神電気鉄道との強烈なライバル意識。次回の大阪出張では、阪神にも乗車してみて、阪急との違いを肌で感じてみたい。