職場の旅行で熊本県小国町の黒川温泉に行ってきた。職場のある福岡から高速道路を使って2時間。福岡からは手頃な距離だ。黒川温泉は2009年のミシュランで二つ星が付けられて一躍メジャーになってしまったが、ミシュランの星付きの奢りを感じさせない素晴らしい温泉郷だった。
大分自動車道の玖珠インターを降りて、山道を南に1時間ほど自動車で走ったところに黒川温泉がある。大分から熊本にかけては温泉地が数多あるが、黒川温泉はそのなかでもかなり奥にあたる。田の原川の渓谷の両側にこぢんまりとした和風旅館が数十軒建ち並ぶ小さな温泉街だ。道幅は狭く、離合困難なところも多い。旅館によっては敷地に駐車場が確保できず、共同の駐車場を利用するところもあるようだ。でも、そこがかえって魅力的だ。拡張性のない渓谷にあるため、それぞれの旅館の規模が小さい。湯治場の雰囲気が残されている。しかも、戦略なのだろうが、コンビニや派手な看板がなく、落ち着いた雰囲気の町並みが残っている。
旅館にチェックインすると、杉の木でできた「手形」を渡された。この手形で3か所の温泉に入浴できる。日本酒のサービスを受けられる手形もある。小さな温泉街なので、移動は徒歩のみ。そもそも駐車場は期待できない。観光客は皆、浴衣に着替えて手形をぶら下げて歩いている。この温泉場、やはりただ者ではないなと思い、調べてみた。
黒川温泉には素晴らしいアイディアマンがいた。新明館を経営する後藤哲也さんだ。彼は、自分の旅館に魅力のある風呂を作ろうと奥行き30mの洞窟風呂を作り、裏山から雑木を移植して自然感を出した露天風呂を作り、他の旅館にも露天風呂を作るよう積極的に支援した。さらに、黒川温泉のセールスポイントを、露天風呂と田舎情緒に定め、すべての旅館に露天風呂を設置するように進め、町中の看板を撤去し、町全体の植栽を雑木林を感じさせるように植え替えてしまった。また、露天風呂を設置できない旅館のために、入湯手形を発行して、すべての旅館に露天風呂を開放するという奇策も考えた。
すごいアイディアマンであるとともに、自分の旅館だけでなく、温泉郷全体の繁栄を考えているところが素晴らしいね。「街全体が一つの宿 通りは廊下 旅館は客室」という言葉が黒川温泉のキャッチフレーズとなっているそうだから、後藤哲学が浸透しているようだ。
ということで、宿泊した旅館も、4部屋のみのとてもこぢんまりした旅館だったが、部屋の造りにも余裕があり、内湯からは川が眺められるいい部屋だった。
この旅館には露天風呂はなかったため、150mほど離れた姉妹旅館まで露天風呂に入りに行ったが、ここの温泉も風情があってよかった。檜の香りがプーンと香る気持ちのよい温泉だった。
また、夕食の食堂も旅館になかったため、姉妹旅館まで食べに行ったが、ここの夕食も最高だった。
さて、黒川温泉のおすすめジョギングコースの紹介を。黒川温泉の温泉街の東の端の川沿いのまるばのぼり登り口から田の原川の左岸を上っていく。紅葉が美しいルート。
分譲の別荘地が見えたあたりの1kmほどで出会いの辻に到着。
ここからさらに、急な山道を直進して2km地点の親水公園に到着。
さらに舗装路を1kmほど進むと小さな展望台のある平野台高原展望台に到着。ここに着いたのは7時過ぎだったが、九重高原に雲海がかかっていて、とてもきれいだった。
正面には1423mの猟師山が見える。そのまた向こうには九重連山が連なっている。ちょうど紅葉の季節で、山がカラフルに染められている。
ここから先は未舗装の山道だが、朝露に靴を濡らしながら、牧草地の山を走る。しばらくすると舗装路に出て、展望台から1.5kmで1083mのピークに到着。
山頂には三角点が設置されている。このあたりは、トラクターで牧草が刈り込まれていて、とても日本とは思えないような風景が広がる。
ピークから先は急な下りとなり、正面に九重高原を見ながらゆっくりと下る。
ふたたび出会いの辻に戻ったところで、こんどは右折をして杉木立の道を走る。20分ほどで黒川温泉郷に戻り、スタート地点までで8km。アップダウンはきついコースだが、ゆーっくり走って1時間半、阿蘇の大自然を感じられるコースだ。