JRには大都市近郊区間が設定されている。いくつかの都市では、JRに乗車して移動する際に経路が複数あるため、一定のエリア内では乗車する列車や経路を自由に選択できるようにした制度である。現在は東京、大阪、福岡、新潟、仙台の都市圏に大都市近郊区間が設定されており、大雑把にいうと、その区間内ならば実際に乗車した経路にかかわらず最も安くなる経路で計算した運賃で乗車できる。ただしいくつか制約があり、片道の利用で重複区間があってはならず(一筆書きの原則。特例がある)、途中下車ができず(特例もあり)、有効期間は当日のみ(これにも大晦日から元日にかけての特例がある)、といった条件が付与されている。鉄道マニアの間では「大回り乗車」として知られており、たとえば東京近郊ならば160円切符で房総半島をグルッと一周300km以上も乗ることができたり、140円の隣接駅への最安切符で東京駅から川崎駅、高崎駅まで北関東を中心にグルッと6、7時間もかけて回るプランを考えることができる。さらには大晦日から元日にかけては切符の有効期限が2日間になる特例が適用されることから、140円切符で1035.4km、35時間なんていう年越し最長大回りなどという大回りも紹介されている。これらはテレビ番組などでも放映されたことがあり、ああ面白そうだな、とは思うものの、乗り換えが煩雑で、とても旅程を楽しむことなんてできないだろうなと、実行しようと思ったたことすらなかった。そこまで鉄道には思い入れがないからだ。しかも、最安の乗車券で乗車することに後ろめたさも感じる。JRさんに悪いでしょ?ズルい。気が進まなかった。
福岡にも近郊区間が設定されており、大回りを実行することはできる。大回りを実施することを想定すると、行き止まりとなる盲腸部分はコースとして活用できないため除外して、ループを形成した部分について旅程を考えることとなる。博多を起点として考えると、小倉、筑豊地域をグルッと一周するルートがつくれそうだ。半日使った小旅行ぐらいの楽しみ方ができそうだが、それほどそそられるものはない。
しかし、地元JR九州のICカードであるSUGOCAを使った大回りの情報に触れたときにはビビッときた。これは、福岡近郊区間と同一の制度ではないが、ICカード取扱エリア内の乗車であればどの経路を使用しても最も安い運賃が適用になるというルールに基づく乗車方法である。乗車可能エリアを見たときはびっくりした。大分、熊本までエリア内に含まれており、たとえば、大分から久留米までの九州横断が可能なのだ。これまで久大本線を使って九州横断を果たしたことがない。やってみたいという好奇心がムクムクと頭をもたげてきた。
ところが、普通列車の乗り継ぎを想定して博多から小倉を経由して大分、久留米から福岡近郊まで戻るルートを探索してみたが、現在のダイヤでは普通列車の本数が少なすぎて1日では完結しない。これではSUGOCAを使っても魅力的な大回りルートはないのだなと諦めかけたときに、なんとSUGOCAでは特急券を別途購入すれば大回りの乗車が可能との記載を見つけた。ソニックに乗車して鹿児島本線、日豊本線を経由して大分まで行き、大分からは久大本線を利用して特急で博多近郊まで戻れるかも。時刻表を調べてみたら、可能な方法が見つかった。しかも、西小倉―小倉間は特急などの場合に限り、一筆書きルールの特例となり、西小倉~小倉の往復の乗車ができることも発見!
ということで、2014年8月9日にやっちまいましたSUGOCA大回り。白状してしまいます。ここに懺悔をかねて、ご報告させていただきます。
博多駅でゆふ4号を下車して大回り乗車を終えた。改札でSUICAをタッチして出場しようとしたところ、「時間経過」で止められたが、改札で大回りと伝えたところ、ハハンという顔をされてゲートを開いてくれた。乗車距離は373.9 km、運賃は160円。これとは別にソニックとゆふ号の指定席特急券は合計3780円。背徳感は大。
2014年8月9日(土)SUGOCA大回り行程
9:44 吉塚 鹿児島本線(福間行) 9:53 香椎 6.6 km
10:25 香椎 ソニック15号(大分行) 12:35 大分 190.1 km(指定席特急券1890円)
乗り換え50分 (大分駅 構内売店1軒のみ)
13:25 大分 ゆふ4号(博多行) 16:33 博多 177.2 km(指定席特急券1890円)
合計 373.9 km