とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

2022年11月6日 東海自然歩道17日目(通算220日) 岐阜県養老町桜井〜関ヶ原 舞台は関ヶ原

 昨夜に続き、午前2時に目が覚める。寒さのためだ。サーモスのお湯でお茶を淹れ、チョコレートを食べる。これで食料はなくなった。周囲ではシカが啼いている。身体が温まってふたたび眠りについた。

 次に目を覚ましたのは5:00。まだ外は暗いが、コーヒーを淹れて起きることにした。周囲の鳴き声はサルに主役が交代。

 撤収を済ませて、6:04に行動開始とした。日の出時刻は6:19で、まだ薄暗い。

 スギ林の中を北に進む。この辺りは道標は少なく、踏み跡も見えない。GPSを頼りに害獣防御柵の外を進む。養老町に入ってから、一貫して集落の辺縁を歩いている。自然感はたっぷりで、ズボン裾もすでにひっつき虫だらけ。

 6:20にようやく集落に抜けることができた。電気ではあるが、本当に点灯された常夜灯が迎えてくれた。

 6:28に集落の外れの真泉寺にお参り。住職さんが掃除をされている。菊が見事ですね、と褒めると、門徒さんがしてくれるんですと。

 さらに幾重もの害獣防御柵を抜ける。山を下ると前が開け、左手に伊吹山雄大な姿が現れてきた。

伊吹山

 県道227号線を左折してしばらく進み、7:00に広瀬橋を渡って牧田川を越える。

広瀬橋

牧田川

 圃場の中を真っ直ぐ進み、その後、牧田川沿いの桜並木を歩く。見事な桜並木が牧田川沿いに2kmほども続く。逢瀬の桜という呼び名も小粋だ。

牧田川沿いには見事な桜並木

 桜並木は国道365号線を横断した先もさらに続く。何故か藤古川堤防の桜並木と名を変える。

 刈り取りを終えた水田の中を通って、7:53に国道沿いのローソンに寄り道。朝食にサンドイッチとホットミルク、昼食用におにぎりとチキンを購入。レジで「ファミチキ」と注文しても何度も聞き返される。そうだ、ここはローソンだった。そこは譲れないところだったのか。すまない。

ここでは白いソバの花が咲く

 8:23にコースに復帰。EADASでは県道229号線の萩原橋を渡るようになっているところを、東海自然歩道の道標に従って通過して、8:36にその先で藤古川橋を渡る。

萩原橋

藤古川橋を渡る

 しばらく狭い道を歩いて県道に合流。2車線の美道で、交通量は少ない。真っ青な空と黄葉の混じる山を楽しみながら少しずつ高度を上げていく。

県道229号線に合流

 平井集落の中をウネウネと進んで、県道に復帰して500mほど進んだところで、9:25からEADASの示す進路に従って登山道に進む。ただしここには東海自然歩道の標識はなく、もう少し先にも登山口があるのかもしれない。

平井集落の中を進む

松尾山登山道の入口

 松尾山に向かう登山路はスギ林に囲まれた快適な林道。間伐、下草刈りとも完璧に実施されており、スギの香りが清々しい。

 10:00に松尾山の山頂に到着。ここは関ヶ原の戦いの際には小早川秀秋が陣を張った場所。先着の登山者は3名。地元の単独登山の方が、頂上から見える西軍、東軍の陣地の位置を教えてくれる。ついでに、これから東海自然歩道の進む揖斐川上流部でクマに遭遇したことなどを話してくれた。

松尾山山頂

正面には伊吹山

関ヶ原の古戦場のあたり

 山頂のベンチで早目の昼食を済ませて10:30に行動再開。よく整備された道を下り、11:09に名神高速道路、11:18に新幹線の高架の下を通り過ぎ、11:36に不破の関に到着。

 不破の関資料館にしばらく滞在した後、西の首塚、東の首塚などを経て13:00に関ヶ原古戦場記念館に到着。あまりに見物客が多いため、入場は断念して13:19に関ヶ原駅にて行動終了とした。

不破の関資料館

福島正則陣地跡

藤堂髙虎陣地跡

西首塚

首塚

関ヶ原古戦場記念館

徳川家康の具足

関が原町役場も気になる

関ヶ原駅から帰途につく

東海道本線

名古屋で4日ぶりのお風呂

早めに夕食

2022年11月6日 東海自然歩道17日目(通算220日) 岐阜県養老郡養老町桜井〜岐阜県不破郡関ヶ原町大字関ヶ原 晴れ 18/6℃ 行動距離17.7km 行動時間713 獲得高度511m 28070歩 行動中飲水量500ml

往路交通: 関ヶ原13:22東海道線-大垣13:35/13:41東海道線快速-名古屋14:22/大須観音15:35名古屋地下鉄鶴舞線上前津15:36/1541名古屋地下鉄名城線左回り-金山15:45/17:05名鉄空港特急-中部国際空港17:38/19:00ANA447-福岡空港20:30

2022年11月5日 東海自然歩道16日目(通算219日) 三重県いなべ市北勢町川原〜岐阜県養老町桜井 養老山系は赤黄緑のモザイクに

 昨夜の野営地は三重と岐阜の県境が近い標高700mの山中。夜中にあまりの寒さに目が覚めた。4日連続のトレッキングの今回は、できるだけ荷重を減らすために寝袋を持たず、SOLのエスケープViviのみ。断熱仕様のペラペラのシュラフカバーのようなものである。自分で決めたことではあるが、これだけでこの寒さの山中泊を乗り切るのは無謀だった。

 3時半ごろにふたたび目が醒める。横になると下半身が冷たくなって寝ていられないが、座っていれば大丈夫。外が明るくなるのを待って、5:30に撤収を開始し、6:20に行動開始。

 歩き始めから道を間違えた。四阿の前の林道をそのまま東に進んだが、GPSの現在位置は90°ずれた方向に進んでいる。元の位置に戻ってよく見直すと、四阿前には道標が立っており、左下の谷に向かう木段がしつらえてあった。先行するジョンさんのGPS航跡を確認して軌道修正。急な木段を飛び跳ねるようにして下り、標高700mから一気に550mまで降下する。

よく見れば木段の道が林道を横切るように続いていた

 6:49に橋を渡って林道を右に進む。四輪の轍のついた幅4mの非舗装路。道標の指す先に川原越の表記が出てきた。周囲はスギとヒノキが優勢で、間伐がされていて見通しが良く、下草が丁寧に刈ってある。スギの植林地の道は日当たりが悪く、陰鬱な雰囲気のところも多いのだが、手入れがよいと気持ちが良い。

一気に下って谷川を越える

赤い印は収穫予定か?

 二手に分かれる林道を右に進み、悟入谷国有林を登っていく。これといった急坂の山場を迎えることもなく、7:09に三重県岐阜県の県境になる川原越に到着。

川原腰の手前で右に分かれるポイントは見落としやすい

川原越の峠

 先週歩いたばかりのジョンさんからの事前の情報通り、川原越から東の美濃津屋に下っていく東海自然歩道は崩落のため廃止となっている。そこでEDASの示す自然歩道でつなげようと、北の養老山系に進むことにした。

養老山系に進む

 養老山系の稜線を繋ぐ登山道はよく整備されている。スギの植林はされているのだが、登山路の周囲には低木の広葉樹が残されており、木々の間から漏れてくる日差しが心地よい。ときおり麓の町の様子が見えるポイントもある。なぜか東海自然歩道の標識も出てきた。

養老山系の道が東海自然歩道の支線に組み入れられたか?

 7:54に津屋避難所に到着して小屋の前で小休止。今回は使わなかったが、中をのぞかせてもらった。きれいに手入れされた避難所だった。地元の山岳会の方達が篤志で建てたものだろうか。頭が下がる。

登山道に沿って建てられた津屋避難所

掃除も行き届いている

 8:05に行動を再開し、8:32に多芸の台に到着。ここは御嶽山、恵那山が正面に見える素晴らしい眺望。この先は登山路脇にマツが増える。

多芸の台

眺望は最高。正面は恵那山。

アカマツが増えてくる

 9:13に養老山(859m)の山頂に到着。すぐに他の2名も到着。人気の山のようだ。ただし山頂からの眺望はない。

主峰の養老山山頂

頂上の木々には養老のシンボルの瓢箪が括り付けられている

 次に9:43に小倉山(842m)に到着。ここは足元から海まで続く眺望が見渡せる最高の眺望。多くの登山者が展望を楽しんでいた。

小倉山頂上

正面の山は御嶽山

 10:09に三方山(722m)を経て、10:53に養老山登山口に到着した。

いいコースだ

 舗装路をのんびりと下って11:09に養老の滝を見物したのち、清水という店で梅うどんと炊き込みご飯の昼食とした。梅肉に使われている梅干しは自家製で美味しかった。

日本の滝百選の養老の滝

 11:58に行動再開。東海自然歩道本線への復帰点を探してしばらく迷った後に、12:15に妙見橋から本線に合流。養老神社にお参りして、養老を象徴する日本百名水の菊水泉をサーモスに詰めて再出発とした。

養老孝子源丞内の墓

養老神社

菊水泉

 12:39に正慶寺を経由して、西の山に進む。いつものように害獣防御柵をくぐるが、この辺りは柵が頑丈で、町全地を取り囲んでいる。

 柵に沿って進み、砂防ダムを渡り、さらにスギ林の中を害獣防御柵に沿ってひたすら進む。

養老町柏尾ではビックリするほどきれいなトイレが整備されていた

 東海自然歩道は柏尾廃寺跡と千体仏、勢至南谷、日吉神社と、山道をつないで進み、市街地には下りていかない。

千体仏

勢至南谷

日吉神社

 ここまでは害獣防御柵の外側の道ではあるものの、それほど荒廃した部分はなかったが、14:02に少し高度を上げて山の中腹にあった龍泉寺跡に進んだ先は、自然歩道の状態が急に悪くなる。道が消失したところがしばらく続き、踏み跡が見えない。標識もまばらで、ときおり進路を失う。最後は藪を抜けて、コンクリートで固められた法面を滑り落ちるようにして集落の舗装路にたどり着いたが、東海自然歩道歩行者への案内があったので、正しいコースだったのだろう。住民の女性に挨拶をしたが、不審者と思われたのかそっぽを向かれてしまった。

 その先も、住宅の間の細い道を通過したり、荒れたスギ林や軽度の藪を通過しつつ、14:50に白鳥神社、15:22に桜井白鳥神社を経て、15:57に久久美雄彦神社に到着。ズボンにはひっつき虫が大量に付着。ここで本日は行動終了とした。

白鳥神社

桜井白鳥神社

2022年11月5日 東海自然歩道16日目(通算219日) 三重県いなべ市北勢町川原越〜岐阜県養老郡養老町桜井 晴れ 18/8℃ 行動距離19.7km 行動時間9:42 獲得高度2293m 38355歩 行動中飲水量700ml

2022年11月4日 東海自然歩道15日目(通算218日) 三重県いなべ市宇賀渓キャンプ場〜いなべ市川原 いなべの赤い蕎麦の花

 本日は三重県いなべ市の山間にある宇賀渓キャンプ場で起床。ここは市が運営するキャンプ場で1泊1名1000円と格安。ただし、ただの川原。トイレも水場もなく、直火で調理している。石をどかして平らなところを作り、砂地にテントを張った。すぐそばを川が流れる。明け方のあまりの寒さに目が覚めた。

 日の出は6:17でまだ薄暗い。コーヒーとビスケットの朝食をとって、静かに撤収を開始した。テントはぐっしょりと湿っている。

 川の水で顔を洗う。冷たくて気持ちがいい。隣のテントからも物音が聞こえてきた。

 6:25に行動を開始した。300mほど下流部にある、昨日にキャンプ場のチェックインをした竜のコバという名の観光案内所に行き、飲料水を手に入れる。

竜のコバ。自販機あり。

 6:47に国道421号線から右折して、東海自然歩道に復帰した。しばらくは国道と並行した山道を歩いていたが、ほどなく山道は途切れ、6:54に国道に合流した。

国道から自然歩道に復帰

宇賀川

しばらくは国道を並行して歩く

 国道は交通量が多いが、幸い幅の広い歩道がある。この道路はトラックが多く、轟音を立てて走り抜けていく。右に宇賀川を眺めながら東に進む。道沿いにある雨ごいつめ引き地蔵にお参り。雨は降って欲しくないと思いながら。

国道にはガードレールで分離された歩道があって安心

 7:12に道路を挟んだ反対側に石部神社の鳥居が見える。長い参道が続いているのが見えたため、ここも気になってお参り。

道路から見える長い参道が気になった

石部神社

 7:32に石榑(いしぐれ)集落に入る。知らなかったが、お茶の有名産地のよう。そういえば昨日の竜のコバで食べたソフトクリームにも石榑茶の粉末がかけてあったと思い出す。

石榑はお茶の町

そんなに働かなくても

 石榑集落で国道から左折して山道に進む。まずはヒルの忌避剤を靴と靴下、ズボンの裾にたっぷり噴霧する。

シカの多い山の道を歩くときはヒルに注意

マダニにも注意がいるよう

 山道を歩いていると踏切の音が聞こえてきた。三岐鉄道だろう。

踏切の音が聞こえてきた

 8:21に浄水場に到着し、ここから先は舗装路となる。8:25に黄金橋で青川を越えると大きな山体の藤原岳が見えてきた。南斜面は採石場となっているためすぐにわかる。

メタリックな浄水場

青川を黄金橋で越える

藤原岳が見えてきた

 8:30に北勢町新村を通過し、しばらくは道標に従って進み、8:57に三岐鉄道の下をくぐる。ちょうど踏切の音が聞こえてきたため、立ち止まって三岐鉄道が通過するのを眺めた。

新町に入る

自販機あり

三岐線をくぐる

ちょうどいいタイミングで列車が通過してくれた

 9:04に藤原町境を越え、グッと東に曲がった後は田んぼの畦道をあみだくじのように北に曲がりながら進む。藤原岳が正面に大きく見えてきた。右手の森にサルが群れているのが見える。

モザイクのような畑

藤原町に入る

藤原岳

 9:31に東藤原駅に到着。最近立て替えられたのかモダンな建物。しかも有人駅だった。

三岐線東藤原駅

駅前に貨物車が展示されている

 東藤原からは県道615号線を太平洋セメントの大きな工場に沿って進む。セメント工場からはときおり大きな音が響いてくる。

太平洋セメントの工場に沿って北進

 9:45に県道から右に曲がり、下野尻の集落を通過。妙福寺、妙宗寺の2つのお寺にお参りした。

右折して下野尻集落に

妙福寺

妙宗寺

 10:13に西野尻の集落の中を通り、10:45に三岐線の終点の西藤原駅に到着。ここは列車の形の特徴的な駅。有人で、待合室があったためしばし休憩。

三岐線終点の西藤原駅

 10:54に行動を再開し、11:04に藤原岳の登山口を通過したのち、鳴谷神社にお参りしてから11:30に聖宝寺に参拝。ここは紅葉で有名だとのこと。境内に入る前に自販機が目に付いた。

藤原岳登山口

鳴谷神社

石段を登った先に聖宝寺

 ついでに鳴谷の滝を見学して、急な道を下って集落を通過する。舗装路に合流してしばらく進むと、東海自然歩道の迂回路の指示があり、屋根のない学校という公園のようなところを進む。

鳴谷の滝

坂本集落

 12:07に国道306号線に合流し、国道沿いの蕎麦屋「はな」で昼食とした。天ぷらぶっかけ蕎麦は美味だった。障害者の支援施設で、開業してからまだそれほど経っていないよう。注文や給仕には手間がかかっていたが、なんとなくすがすがしい気持ちになる。本当は隣に建っていたウッドテラスのカフェで食事をとろうと、Google Streetの画像で目星を付けていたのだが、蕎麦屋に入って正解だった。

麺どころ「はな」で昼食

隣のカフェも気になったが

 昼食を終えて12:33に行動再開。国道306号線を北に進む。1kmも進まないうちに国道から右折して狭い道に進む。員弁川を小さな橋で越えた。員弁と書いていなべ。市のもとになった名のようだ。

国道306号線

員弁川

 13:00に県道614号線に出て、東に進む。藤原工業団地の南をしばらく進む。道は良いが、幸い交通量は少ない。

藤原工業団地の南を進む

 13:36に長尾集落に向けて左折する。集落の中にピンク色のソバの花が満開。

集落に点在するソバ畑には赤い花が満開

 県道107号線を横断し、13:59に相場川を渡って日内集落に入る。

相場川を渡る

日内集落

 ここから山道に取り付き、14:27に山中の巨大な変電所、中電西部変電所を通過。

山道を登り始める

山中には巨大な変電施設

 変電所から先は舗装路になる。坂道を下っていくと鶏舎の臭いがしてきた。この臭いが強烈。

 しばらくは圃場の中を歩いて、県道167号線に合流してから川原の集落の中を進む。

 15:07に東林寺への分岐に到着したのだが、これからしばらく1000mほどの標高の稜線歩きとなるのに水が500mlほどしか残っていない。やむなく川原バス停まで進んでみると、運よく自販機があった。1500mlの水を持って分岐に戻る。

東林寺への分岐点。この先は標高700mほどの養老山系を1日かけて歩く。

川原集落の中心近いバス停まで行ってみた

自販機で飲料水補給。助かった。

 東林寺にお参りして、白滝を眺めてからはきつい階段がどこまでも続く。

仕切り直しして東林寺に進む

白滝

東林寺から山道に進む

木段が続く

標高差500mほどを一気に登る

 16:51に713mの小ピークに達するまでは上りの連続。日没時間まであとわずかだが、山中はすでに暗い。16:55に道端に四阿を見つけた。平らな草地もある。ホッとした。今日はここで行動終了。

山は暗くなるのが早い

713mのピークを過ぎて傾斜がなだらかになる

四阿を見つけてホッとする

2022年11月4日 東海自然歩道15日目(通算218日) 三重県いなべ市大安町宇賀渓キャンプ場〜いなべ市北勢町川原 晴れ 19/9℃ 行動距離33.1km 行動時間10:28 52079歩 行動中飲水量1200ml

2022年11月3日 東海自然歩道14日目(通算217日) 三重県菰野町湯の山温泉〜いなべ市宇賀渓キャンプ場 滑って転びませんように

 今週末からは通常業務の自然歩道トレッキングに復帰。いまだに下ノ廊下の残像を引きずってはいるが、あんなことばかりしていたら命がいくつあっても足りなくなる。

 今回は水曜の仕事をきっちり終えてから、最終の飛行機で中部国際空港に飛び、名古屋駅近くに前泊。

名古屋のナナちゃん

 今朝は5:00に起床してシャワーを浴びて7:00にホテルを出発。ホテルでもらった地域振興券3000円分で弁当類を買い込んで、名古屋バスセンターから7:55出発のバスに乗車。

名古屋駅前のスパイラルタワーズ

名鉄バスセンターから出発

 紅葉の季節だからか、御在所ロープウェイ行の高速バスはほぼ満席状態。定刻よりわずかに遅れた9:11に終点の御在所ロープウェイ駅に到着。ロープウェイ乗り場には長蛇の列ができていた。

御在所岳ロープウェイには長蛇の列

 飛行機に積むことができないため、デポしておいたガス缶を回収して9:21に行動開始。正面には御在所岳の岩の頂上が見える。空は真っ青。

御在所岳は奇岩の山で知られるが今回はパス

 まずはかもしか橋の手前から左手に下る。橋の真下にある駐車場の先から舗装路を離れて山道に進む。よく整備された道だが、わりとアップダウンがある。何人かの方とすれ違う。山登りや自然歩道歩きというわけではなく、ロープウェイ乗り場の近くに駐車できないため仕方なく歩いているよう。御在所岳は登山客だけでなく、一般の観光客にも大人気のよう。

カモシカ橋の手前から下っていく

橋の下からは山道歩き

 10:15に道路下をくぐるトンネルを抜けると、その先はアスファルト舗装路。10:20に三重県勤労者福祉センターの希望荘に到着。国民宿舎のような施設か。

御在所ハイウェイの下をくぐる

その先に希望荘

 さらに進むとコメダの森という看板が出てきた。ロゴは珈琲のコメダ。何だろうかと思いながら歩くと、コメダ珈琲が社員研修でここに植林しているようだった。自分も行ったことのある店も研修しているような気がする。

コメダ珈琲の研修が行われているよう

 ここからしばらくは山道が続く。ところどころ道に土砂が流れ込んだところがあるが、道標は頻繁に設置されており、迷うところはない。10:51に笠岳分岐、11:03に風越峠を通過。

整備された山道を歩く

風越峠を越える

 峠からは谷川に沿った道を下る。道は崩落気味。浮石が多く、歩きにくい。11:45に朝明渓に到着。朝明と書いて「あさけ」と読ませる。透き通った水の美しい流れ。谷洗越という渡渉ポイントを飛び石伝いに渡る。

峠から先は荒れ気味になる

明朝渓

徒渉ポイントの谷洗越をピョンピョンと

 川から上の道路に向かって進み、県道762号線と合流。合流地点には立派なトイレが整備されており、登山口として使われているよう。

県道沿いには立派なトイレが整備されている

 ここからは県道を東に進む。山には針葉樹だけでなく、広葉樹も多い。ちょうどいい具合にモザイク模様を呈している。谷向かいに赤い橋脚の山道が走行しているのが気になる。景色が良さそうだ。

しばらく県道762号線を歩く

向かいの山の道が気になる

 12:08に県道から左折して林道鹿の谷線に進む。左折してすぐグリーンランドあさけキャンプ場の管理棟の前を通過する。

林道鹿の谷線に左折

グリーンランドあさけキャンプ場

 この先は三重県民の森に入る。12:24に三重県民の森展望台から海側の街を眺める。四日市だろうか。コンビナートから煙がたなびいている。

三重県民の森

展望所からは町が一望できる

 県民の森の散策路を通過して、12:45に焼合川を高原橋で越える。オリバーコーヒーというオシャレなカフェを通過。

オリバーコーヒー

 尾高高原キャンプ場の方に左折してわずかに進んで、すぐに右折して山道を進む。着いたところが尾高山観音堂。立派な六角堂の観音様。参拝の方も多い。

尾高高原キャンプ場の手前で右折

尾高観音の六角堂

 参道を出た先の芝生の上で昼食とした。地域振興券で購入した赤魚の弁当と豚汁。いつもは買わないようなレベルの弁当を買ってしまった。お腹いっぱいになった。

ちょっと豪華な昼食

 13:43に行動再開。まず、尾高観音入口の自販機で飲料水を購入。その先の尾高口で左折して、右に太陽光発電施設を眺めながら進む。この辺りは右左折があるが、先行するジョンさんのGPS航跡があるので助かる。

尾高観音の入口には自販機

 14:24に八風(はっぷう)草競馬場スポーツ公園、八風嶺鎮神社と通過して、14:40に切畑集落。ここは頑丈な害獣防御柵を越えて畦道を進む。畑の真ん中から町が一望できる。

八風草競馬

八風嶺鎮神社

切畑からの眺めがよい

 その先は福王山の南を回り込むような山道が長い。不思議な縁石付きの山道が出てきて、16:12に宇賀渓水晶吊橋を渡る。地面がじっとりと湿っていて、ヒルが這い上がってきそうで怖い。そそくさと先に進む。

切畑から頑丈な害獣防御柵を越えて山道に入る

福王山の南を回る長い山道

宇賀渓水晶吊橋

川は美しい

吊橋を渡った先は廃キャンプ場

現在のキャンプ場に向かう

 16:23に国道421号線に合流。この先で東海自然歩道を離脱して16:35に宇賀渓観光施設の竜のコバに到着。キャンプ場チェックインして、煎茶のソフトクリームを食べて行動終了。宇賀渓の河原にテントの設営をする。

国道421号線に合流

竜のコバでキャンプ場のチェックイン

カフェも

食堂もある

竜のコバのソフトクリームはお勧め

宇賀渓キャンプ場は潔いただの河原

晩ご飯には天むす

2022年11月3日 東海自然歩道14日目(通算217日) 三重県三重郡菰野町湯の山温泉三重県いなべ市大安町宇賀渓キャンプ場 晴れ 24/9℃ 行動距離18.9km 行動時間7:13 獲得高度1055m 38800歩 行動中飲水量1300ml

往路交通: 西新19:08福岡市営地下鉄福岡空港19:26/20:25ANA3868便-中部国際空港21:40/21:47名鉄空港特急-名鉄名古屋22:24(名古屋前泊)

名古屋バスセンター7:55三重交通御在所ロープウェイ行高速バス-御在所ロープウェイ9:11

自然歩道ウォーカーの休日 下ノ廊下

 今週末の自然歩道歩きはお休み。かわりに少し長めの休みをとって、弟と一緒に下ノ廊下(しものろうか)に行こうということになった。

 下ノ廊下とは、黒部川の上流域にある黒部ダムと黒部第4発電所のある仙人谷ダムの間の17kmほどのトレッキングコースのこと。いや、トレッキングコースという言い方では語弊があるかもしれない。もともとは1920年代に、当時の日本電力水力発電所の調査と建設のために付けられた道で、旧日電歩道とも呼ばれるチャレンジングなコース。

 仙人谷ダムからトロッコ列車の終着駅のある欅平までの13kmは水平歩道と呼ばれるルートで、こちらも1920年代に富山で設立された東洋アルミニウム水力発電用ダムの調査のために付けられた道である。

 なぜ道を建設することをここで「道を付けた」と、わざわざ言うかというと、岩山の岸壁を一人がようやく歩ける程度削り取って、まさに道を付けたから。これは後段で写真を見てもらったらわかるはず。

 下ノ廊下は西を剱岳立山、東を唐松岳鹿島槍ヶ岳といった北アルプスの主稜線に挟まれた黒部渓谷の切り立った崖に付けられたかつての資材運搬のための道をたどるコースで、旧日電歩道、水平歩道ともにエスケープルートが事実上ないことから、黒部ダム欅平の間を歩くことを下ノ廊下に行ってくると言うことが多いようだ。

 今回は10月24日の午前2時前に長野県にある弟の山小屋を自動車で出発。150kmほどの道のりを順調に進み、午前4時に信濃大町駅前に到着。朝食と昼食を近隣のコンビニで購入し、駅前駐車場に自動車を停めてしばらく仮眠。天気予報を見ると黒部は雨。うーむ、心配だ。

JR大糸線信濃大町駅

 あたりがようやく明るくなりかけた6:15に大町駅前からアルピコ交通扇沢線の始発バスに乗車して6:50に扇沢駅に到着。駅の1階で電気バスの乗車券をWEB発券して、駅の2階にある出発ロビーで発車時間を待つ。出発ロビーには登山の装備を背負った人たちがぞくぞくと集まってきた。ロビーには黒部ダムのリアルタイム映像が流れているが、雨が降っている。ダムの向こうの山にはすでに雪が積もっている。不安な気持ちが高まってきた。始発の電気バスに乗車したのは30名ほどだったろうか。

大町駅からアルピコ交通扇沢線バスに乗車

発車時刻の10分ほど前に改札が始まる

 7:30に扇沢を出発したバスは7:46に黒部ダムに到着した。数名の観光客らしき人たちはダムに向かうが、大多数のザックを担いだ人たちは真っ直ぐ奥に進んでいく。その先の登山者出口と矢印のあるドアからザック組は外に出て行く。外はみぞれ交じりの雨。寒い。ほとんどの人はザックにレインカバーを装着し、レインジャケットを着けてから外に進んでいる。

黒部ダム駅に到着

登山者出口はトンネルの先

外に出ると荘厳な風景

 自分は雨がすぐに止みそうな予感がして、ドアから出ると7:51に雨具を着けずに歩き始めた。黒部ダムの周囲の山は雪で白く変わっている。木々は見事な黄葉。上部には雪を頂いた山が雨に煙り、荘厳な雰囲気を醸し出している。BGMにはワーグナーが合いそうな。

ダム直下に向かって下る

 よく整備された砂利道を、スイッチバックを繰り返して黒部川の水面に向かって進む。歩き始めたときからすでに黒部川の水音が聞こえていた。8:14に黒部川の水面近くまで来たときには運良く雨は止んでいた。

ほどなく黒部川が見えてくる

 ダムの直下を木橋で渡河した。黒部川の水量は多かった。黒部ダムの方を振り返ると、10月15日には観光放水が終わっているはずなのに、なぜか豪快に放水していた。これからの2日間を祝ってくれたような気がして嬉しかった。

運良く黒部ダムが放水中

 すっかり秋の景色に変わった黒部川の左岸を進む。最初は広葉樹の中を黒部川沿いに進んでいたが、ところどころに木道が出てきた。さらに両岸の岩がせり出してきて、歩行路が水面から離れてきた。黒部川は渦巻きながらすごい勢いで下流に流れていく。9:05に内蔵助谷との出合に到着した。

黒部川左岸を進む。正面には大タテガビン。

内蔵助谷出合

 この辺りから峡谷は一気に幅が狭くなる。対岸に見える沢が鳴沢小沢か。立派な滝となっている。

鳴沢小沢

 9:30ぐらいから狭い谷の間から青空が見えてきた。再び黒部川近くを歩く。対岸には巨大な雪渓が残っているのが見える。雪渓と黄葉と青空のコントラストが素晴らしい。

 別山谷が近づくにつれて、歩道横の残雪が増えてきた。黒部川の両岸にも雪が残っている。このあたりが最後まで開通しなかった部分だろうか。

残雪が増えてきた

 別山南峰の足元の岩壁を削った歩道にとりつく。油断すると飛び出た岩壁にヘルメットをぶつけてしまう。ところどころ木道が架けてあるが、宙に浮いている。黒部川までの高度はないので怖さは感じないが、振り向くとザックが岩壁に当たって身体が前につんのめる。

 岩壁に固定された太い番線を左手に感じながら先に進む。前方の黒部川本流の上には大きな残雪の塊が見えてきた。残雪には水流で開けられたトンネルが開口している。ラフトで下ったらどんな気分がするだろうかと想像するが、実行しない方が身のためだろう。

黒部川が残雪で覆われている

 本流が完全に雪に埋まっている。夏を越した雪がこんなに大量に残っているとは。今晩にはすでに雪の天気予報となっている。来年の春にはどんな具合になっているのか想像も付かない。

 10:45にイチロー沢のスノーブリッジが見えてきた。コースの上にトンネル状に残った残雪の高さは10mを越える。トンネルの上の壁からは雨のように水がしたたり落ちている。危険を感じたら上に巻くようにロープがつけてあるが、あと数日は崩れることもなさそう。冷気のトンネルの中を無事に通過した。

 岩に沿って黒部川を眺めながら進むと、大ヘツリの岩壁に到着。ここは4段ほどの木製の階段で30mほどの高さに巻く。もともとは岩壁に木道を掛けているようなのだが、雪で落ちてしまうのだろう。頑張れば越せそうな距離だが、しっかりと固定された階段を使わせてもらうことにした。それにしてもこんな大変な整備をよくしてくれたものだ。感謝しかない。

 そのまま岩壁に付けられた道を残雪を眺めながら歩き、11:14に別山谷出合に到着。少し時間は早いが、この先には広い平らな場所はなさそうな気がする。サーモスに入れたお湯を使って、カップヌードルとおにぎりの昼食とした。

別山谷出合

 11:28に昼食を終えて行動再開。岩壁を穿った歩道だが、番線がしっかり固定されているため不安はない。切り立った岩壁に囲まれた川の水は美しい碧。岩の下流部分の水面には、イワナと思われる20~30cmぐらいの影が数匹ゆらりゆらりと揺れている。

ルートには番線(針金)が設置されているので危険は感じない

流れの緩やかなところにはイワナの黒い背中が動くのが見える

 この辺りの谷は両側ともに急峻で、川幅は狭い。水流は激しく、落ちたらあっという間に流されそうだ。ただし足元の歩道はしっかりしており、恐怖感はない。濡れた石に足を滑らせなければ大丈夫だ。

 12:01に白竜峡を進む。このあたりは川幅の最も狭い部分。水の音は激しい。対岸から岩壁を伝わって流れてくる水流も見事な情景。

白竜峡

 この辺りから少しずつ高度を上げながら進む。依然として右手は切り立っているはずだが、草や低木が生えているため、高所を歩いている気分がしない。両側の谷の植物は美しく黄葉している。

 白竜峡から1時間ほど歩き、歩道から少し高度を下げたところの分岐点で休憩中の4人組の男性と行き会う。男性の一人は右手の茂みから空荷で登ってきた。十字峡のビューポイントがこの下にあるという。滑るから気をつけてとのアドバイスをもらい、ザックを下ろして50mほどの高度差を下りて石の上に登ると目の前に十字峡。黒部川の本流に西の剱沢と東の棒小屋沢からの流れが十字を描くように交わるところ。こういう地形は珍しいのだそうだ。

十字峡

 満足して上まで戻り、ザックを担いで先に進む。13:06に十字峡の上に架かる吊り橋の上を通過。さきほど50mの高度差を下りて見たものとあまり変わらない光景を橋の上から眺めることができた。体力を温存しておいた方がよかったかと若干後悔した。

十字峡を吊橋で渡る

 この先はいったん樹林の中を高度を上げながら進む。ところどころ岩壁の歩道が出てくるが、整備状況は非常に良好。ところどころで木々の間から黒部川の美しい流れを堪能することができる。

十字峡からは高度を上げる

 この後は、14:09に半月峡、14:11にS字峡あたりを通過。どこもかしこも美しすぎて、先に進みたくなくなるぐらい。ただし、岩には何度も頭を打ち付けてしまうので、ヘルメットのベルトはしっかり締めておく必要がある。

半月峡

S字峡

 S字峡あたりは黒部川までの高低差はずいぶんあり、川面はずいぶん下に見える。黒部川と山々の黄葉を楽しみながら進んでいると、岩壁の上部から大雨のように水が落下してくる部分があった。後ろから同行している弟が呼び止める。ザックから折りたたみ傘を取り出して渡された。快適に通過することができた。ネタのために持ってきたそうだ。

岩壁から落ちてくる滝のような水を傘で受け止めて通過

 対岸の前方の山腹に白い一対の人工物が見えてきた。捕食中のクリオネのような顔の口の部分から電線が伸びている。近づいてみてみると、黒四発電所と書いてある。ダムの水流をここまで送って発電しているのだろう。

 そこから高度を下げて黒部川が近づいてくる。長い吊り橋で、東谷吊り橋。これを渡って右岸の覆道を進む。

東谷吊橋

 覆道の先は林道となっており、自動車の轍が付いている。川の色が青緑に変わり、仙人谷ダムが現れた。このあたりから雨が強くなってきた。

仙人谷ダム

ダム直下には黒四発電所の排水が滝のように流れる

 15:10ごろに指示標に従ってダムの上部を進んで左岸に渡り、仙人谷ダム管理所のドアを開けて内部に進む。かまぼこ状の通路を進んだ先にはトロッコのレールの敷設してある幅2.5mほどのトンネルになるが、ここが熱く、湿気がものすごい。ここでの作業は大変だろう。

関電人見平宿舎を通過させてもらう

ロッコの通過する高熱隧道

 高熱隧道もかくあったのかと思いながら先に進むと、その先は金網で覆われた覆道となる。

 関電人見平宿舎の外に出ると、その先は標高差150mほどのきつい上りが待っていた。これが権現峠。さらに1kmほど水平な道を歩く。右矢印の指示に従って進むと、今度は一気に150mほどの下り。これが阿曽原峠。木々の間から小屋の屋根が見えてきた。本日宿泊の阿曽原温泉小屋には16:08に到着して行動終了とした。

権現峠の上り

阿曽原峠を下る

阿曽原温泉小屋

12畳ほどの部屋が4つあり、各部屋に12人ほどが宿泊。

天気の悪い本日はテント場も空いている

夕食はスタッフの大仏さんの手になる名物のカレー

 翌10月25日は5:00ごろに目を覚ました。昨夜から4:30に出発するといっていた同部屋のグループはすでに布団の中にはいない。

 6:00から朝食時間。朝食を摂る人は少ないようで、60人ほど宿泊していた昨夜の夕食は2交代だったが、朝食は1回で、しかも全部で10人ほど。昨夜から弁当を作ってもらっていた方もいたようだ。

 朝食を摂りながら天気を確認。昨日と打って変わって、本日は晴れ。気温は-1/7℃。部屋に戻って歯磨きを済ませ、出発の準備を整える。

 7:08に小屋のスタッフと挨拶を交わして行動開始。宿泊客の中ではほとんど最後だった。テントサイトに昨日は20張ぐらいあったテントは、すでにすべて撤収されている。阿曽原温泉小屋とずいぶん下を流れる温泉の湯煙をみながら、ゴールの欅平方面に出発した。

2日目は青空が拡がる

テントサイトはすべて撤収後

 見上げると山の上の方にようやく日が差してきた。空は真っ青。いい一日になりそうだ。

阿曽原温泉小屋を出発。かなり下方に見える煙のあたりが温泉で、小屋からは10分近く下る。

 まずは100mほど高度を上げて水平な歩道に入る。道沿いの木々の根元がUの字に曲がっているのが特徴的。冬期の雪の重みでこうなるのだろう。広葉樹の中の心地よい道をのんびりと進む。

まずは坂道を登ってウォーミングアップ

木々は根元からU字に曲がる

 しばらくは危ないところはなく、ところどころ石を穿った歩道に番線が張ってある程度。木々の間から先のコースが見えてきた。山腹をまっすぐ一本の線が走る。まさに水平歩道だ。

この番線が心強い

 カーブを曲がった先は、右手が垂直に落ちた崖になった。ただし、この辺りは崖の面にも植物が着いているため危険な感じはしない。滑ったり、転んだりしなければ大丈夫だ。日差しは谷の真ん中あたりまで差し込んできて、黄葉と空の色のコントラストが美しい。

コースに植物が見えると恐怖感がなくなる

向かい側の谷には真一文字に削られた水平歩道が見える

 水平歩道の途中に水量の多い滝が流れ落ちている。ここがオリオ谷かと思ったが、まだトンネルがない。さらに番線をつかみながら先に進むと、砂防ダムが見えてきた。幅10mぐらいの水流が砂防ダムの上を流れている。

折尾谷

折尾谷は砂防ダムの下の短いトンネルをくぐる

 9:13に砂防ダムの脇からトンネルに入り、反対側に抜ける。ヘッドライトを出すまでもなく反対側からの明かりが見える。トンネルを抜けたところで来た道を振り返ると、ほぼ垂直な岩に一直線に付けられた歩道だったことが分かる。歩いていたときには危険な香りはまったくしなかったが。

 わずかに上り、水平な道を進む。谷を挟んだ反対側の歩道の軌跡は見事な一直線。1920年代にこんな見事な作業をしたとは驚き。

水平歩道

 この先は、アップダウンはないものの、岩をくりぬいた見事な歩道が続く。ヘッドクリアランスが低く、何度かヘルメットをぶつけてしまった。右手は100mほども垂直落ちた崖のはずだが、植物でカバーされているため不思議と恐怖感は湧かない。ときおり顔を覗かせる黒部川はずいぶん下を流れている。正面には標高1543mの奥鐘山が厳然と聳えている。

頭上注意

 この辺りは花崗岩をくり抜いた歩道で、非常に美しい。ただし頭上注意である。岩壁には水平に、ズーッと向こうまで道が続いている。足下100mは垂直に落ちているだろう。川の音もほとんど聞こえなくなってきている。頭上でなく小鳥の囀りの方が大きく聞こえる。

 10:54には太太鼓と呼ばれる白い花崗岩の水平歩道を通過。ここからの景色は素晴らしい。前を遮るものは何もない。青い空と、黄葉の山だけが見える。

大太鼓

 大太鼓を通過した先の志合(しあい)谷には雪がずいぶんと残っている。残雪の多いこの谷はトンネルで通過する。ここは長いトンネル。100mはあろうか。照明はなく、ライトは必須。くるぶしを越えるほどの水も溜まっている。トンネルの中で2回ほど思い切り頭をぶつけながら11:07に志合谷トンネルを通過した。

志合谷には雪が残る

トンネルは100m以上あり、くるぶしほどの水が溜まっている

 この先も石を水平に穿った歩道が続く。谷底は依然としてずいぶん下に見える。

 12:07に蜆谷トンネルを通過。奥鐘山の垂直な壁が眼前に迫ってくる。さらに1kmほど水平歩道を歩き、高圧線の鉄塔を過ぎたあたりから下りに変わる。振り返ると白馬岳などの北アルプスの山々が頂に雪を乗せて輝いている。

クマの糞を発見

 最後に標高差200mほどを下り、14:10に黒部峡谷鉄道欅平駅に到着して行動終了。今年は10月半ばまで残雪のために開通せず、無理かと諦めかけていた下ノ廊下だったが、夢が叶って大満足だった。幸運を与えてくれた神様と仕事仲間に感謝。

欅平への最後の下り

欅平登山口

ビジターセンター

2022年10月24~25日 下ノ廊下(富山県中新川郡立山町黒部ダム富山県黒部市欅平) 曇りときどき雨、晴れ 6/0℃、-1/7℃ 行動距離18.4+12.2km 行動時間8:02+6:42 獲得高度3910m 39145+25946歩 行動中飲水量700+200ml

往路交通:10月21日福岡空港18:30ANA3866-中部国際空港19:50~自動車~10月24日信濃大町駅6:15アルピコ交通バス扇沢線-扇沢駅6:50/7:30電気バス-黒部ダム7:46

復路交通:10月25日欅平14:53黒部峡谷鉄道普通車-宇奈月15:10/宇奈月温泉15:46富山地鉄本線-新黒部16:09/黒部宇奈月温泉16:46新幹線はくたか570号-長野17:33/18:11しなの24号-松本19:06/19:11大糸線信濃大町20:06~自動車~10月28日中部国際空港18:00-福岡空港19:25

2022年10月16日 中国自然歩道67日目(通算216日) 島根県美郷町湯抱温泉〜三瓶山北の原 日本昔ばなしに出てくるあの山に登った気分

 本日は島根県大田市のホテルで5:30に起床。シャワーと朝食を済ませて7:24のバスに乗る。30分ほどバスに揺られて7:59の定刻に湯抱(ゆがかい)温泉口に到着して行動開始。

大田の市街地から路線バスに乗車

定刻きっちりに湯抱温泉口に到着

この地点から中国自然歩道トレッキング再開

 斉藤茂吉記念館前から町道湯抱線を北に進む。右から湯抱川の川音が聴こえてくる。

町道湯抱線を上っていく

 8:10に湯抱温泉の中心地を通過。現在営業しているのは中村旅館だけのよう。この旅館は評判が良いので泊まってみたかったが、一日一客のみ。今回は予約できなかった。

中村旅館。泊まってみたかった。

他にも数軒の看板が掲げられているが、営業している雰囲気はない

 湯抱温泉の先も山に向かって傾斜のきつい舗装路が続く。8:30に湯抱川に架かる木の橋を渡って山中の道に進む。かなり急な木の階段がどこまでも続く。

さらに町道を上っていく

湯抱川を右手に見ながら

この橋を渡って一気に上る

 8:50に標高333mのピークに至ったあとは、少し下りがあり、舗装路を横断してすぐに向かい側から再び山道に進む。道幅は1.5mほどあるが、両側はスギ林で少し暗い。

333mピークの先で舗装路を横断

すぐに山中に入る

道標は次々に現れるので安心

 しばらく山道を進み、9:47に砂利敷きの林道と交差する。この林道には進まず、横断してすぐ右の山道を下っていく。

林道と交差

すぐに下りの道に入る

 山道を下った先が小田集落。数軒の家が建っている。9:57に着いたが人が生活している気配がない。集落を横切って、つい最近刈られたばかりと思われる笹の道を進んで、10:10に浮布池(うきぬのいけ)の西岸を南北に走る舗装路に出た。

集落に出るが生活感はない

セイタカアワダチソウの伸びた圃場の中を進む

ササの藪に突入かと構えたところで、道の部分が刈ってあって歓喜する

浮布池の西岸の道に出る

 池の端を北に進み、10:15に浮布広場で小休止。池の向こう正面に三瓶山が聳えるこの公園の眺望は素晴らしい。息をのむばかり。

浮布広場

正面には三瓶山。うっとり。

柿本人麻呂の歌碑も

池には漁具が設置してある。ターゲットは何だ?

 10:30に行動再開。池の原集落を通過して、右に曲がって坂を上り、10:50に県道30号線と合流。

浮布池の北端に邇幣姫(にべひめ)神社の鳥居

自販機あり

ペンションもあり

池の原集落から右折して三瓶山に向かう

県道30号線に合流

 県道を右折して200mほど進んだあたりにあるのが史跡の定めの松。1601年に一里塚として道路の左右に植えられたとされている。現在はそのうちの一本の松のみが残る。

定めの松

 県道を挟んだ反対側には山の駅さんべ。ここから、草原の中の西の原登山道を進む。

山の駅さんべ

西之原登山口から草原の中を進む

 11:08に三瓶山の主峰となる男三瓶山の登山口まで来たところでふと考えた。中国自然歩道はこのまま三瓶山には登らずに麓の自然観察路を北に進む。それはそれでよいのだが、せっかくここまで来て、この日本昔ばなしに出てくるような三瓶山の山頂に立たないのはもったいない。ここまでのアクセスの困難さを考えると、今回登らなかったら、もう一生チャンスがやって来ないかも知れない。

三瓶山登山口で考えた

 そう考えながら中国自然歩道の説明板を仔細に眺める。YAMAPの地図でコースタイムを計算する。すこし急げば北の原から14:50に出発する最終バスに間に合いそうだ。

中国自然歩道はピークに立ち寄らずに姫逃池に進む

 男三瓶山山頂を目指して登山道を歩き始めた。勾配はきついが、道はしっかり踏み固められている。何度もスイッチバックして高度を上げていく。コースは灌木に囲まれており、直射日光は当たらない。涼しく、歩きやすい、快適な登山道だ。

回り道をしてでも登る価値ありと判断

 標高1000mに近づくと、周囲の灌木はなくなり、麓まで見えてきた。この眺望も素晴らしい。ときおり下山中の方とすれ違う。皆道を開けてくれる。

 最後はなだらかなススキの原を歩いて12:19に男三瓶山山頂(1126m)に到着した。雄大で懐の深いいい山だ。頂上は数十名の登山客で賑わっていた。

 山頂からは360°の眺望がある。北に日本海が見える。島根半島の付け根にあたる北東の砂浜の海岸の先が出雲大社。次はあの辺りまで歩くのだろうと覚悟ができた。土日だけで歩けるような交通手段が見つかるだろうかということが心配の種。

北の島根半島の付け根あたりに出雲大社

 一休みして、12:30から下山開始。山頂の北側の姫逃池(ひめのがいけ)登山道を下る。こちらは西の原登山道よりも傾斜が急。標高950mあたりで犬を連れた女性が登山路脇に座り込んでいた。無事に頂上まで登れただろうか。

ススキの原を眺めながら下山路に進む

姫逃コースのほうが勾配が急に感じる

 西から麓をグルリと回ってきた中国自然歩道と13:01に合流。標高は800mほど。ここからはブナ林の中の快適な道を進む。

中国自然歩道に合流

標高800mほどのこのあたりはブナ林

 13:20に名号(みょうごう)登山道に合流し、左折して下山路に進む。このあたりもブナ林が優勢。13:30に名号登山口にたどりつき、青少年交流の家臨時バス停に到着して行動終了。

名号登山道から下山

ゴール地点の青少年交流の家は大賑わい

青少年の家前のバス停が移動していて、探すのに手間取った

本来は青少年交流の家前にバス停

 駐車場が満車で警備員さんまで出ていたため、何事かと思った。今日はたまたま、さんべ祭りが開催されていた。メインは三瓶蕎麦の出店だったようだが、すでに完売の様子。物欲しそうに屋台のあたりをうろついていたら、賄いの蕎麦を食べている店を発見。店の人と視線が合った。目を逸らさずじっと見つめると、根負けしたのか「一杯用意しますよ」と言ってくれた。ありがとう。美味しかった。

さんべ祭だった

石見神楽も上演されていた

この蕎麦が美味しかった

2022年10月16日 中国自然歩道67日目(通算216日) 島根県邑智郡美郷町湯抱温泉大田市山口三瓶山北の原青少年交流の家 晴れ 25/14℃ 行動距離14.2km 行動時間5:36 獲得高度1319m 28590歩

往路交通:大田市八幡宮前バス停7:24石見交通バス粕渕線-湯抱温泉口7:59

復路交通:青少年交流の家臨時バス停14:50-大田市駅15:48/16:03高速バス石見銀山号-広島19:05/19:17のぞみ173号(臨時)-博多20:19

2022年10月15日 中国自然歩道66日目(通算215日) 島根県大田市石見銀山〜美郷町湯抱温泉 やなしお道を歩く

 今週末は、土日の2日間しか休みがとれないため、東海自然歩道はお休みして、中国自然歩道の山陰コースのトレッキング。とはいえ福岡からは、山陰も島根県になるとずいぶん遠い。

 博多駅から8:39発の新幹線のぞみ14号に乗車して9:41に広島に到着。広島からは10:00発の高速バス石見銀山号に乗って定刻ピッタリの12:40に石見銀山世界遺産センターに到着。センターの中をチラッと見学して、12:46に行動開始。

博多駅から新幹線

広島から石見銀山世界遺産センターまでは石見交通石見銀山

世界遺産センター

 駐車場の端から竹藪の中の道を下り、大森との分岐を右折して、12:57に県道31号線との分岐。県道を右折してしばらく進む。ここは2車線の道路で交通量は多いが歩道があるのは幸い。

世界遺産センターから歩行者専用路に進む

大森に通じる道を右折

県道31号線を右折

県道31号線の交通量は多いが歩道あり

 13:08に三瓶山の標識から福原農道に左折して進む。農道という名前だが、立派な舗装路。丘の上からは三瓶山(さんべさん)の6つの山のうちの3つが見えてきた。左から、主峰の男三瓶(1126m)、子三瓶(961m)、孫三瓶(907m)となる。思わず頬が緩むような親しみを感じる山の姿。日本昔ばなしのタイトルバックに出てくるような。

この看板の先から左折

福原農道

東の方角に三瓶山が見えてきた

 13:39に萩原集落の交差点を通過。かつては家が立ち並んでいたのか、萩原千軒という地名が残る。

萩原集落

 13:57に荻原橋を越えた先は両側に広い圃場。代掻きをした表土に現れた虫でも啄ばんでいるのか、圃場にはたくさんのカラスが群れている。ヒッチコックの「鳥」のように。大田原農場の建物が見えてきた。

広い圃場にカラスが集まる

 14:19に越えた小さな峠には、箱茂の松(はこものまつ)という史跡があった。しかし、肝心の松がない。峠の小屋の中を覗いてみると、伝説では呪われて枯れたとされている松の輪切りがディスプレイされていた。

これが、箱茂の松

 道沿いの花が美しい。この辺りの集落の方が一生懸命手入れをしているようだ。今日も一人で草刈り機のエンジンを響かせている男性が、一人作業をしている。このあたりから町道小松地箱茂線に変わる。

アスター(友禅菊)かな

アメジストセージ

チョウセンアサガオかな?

コキア

熱心に草刈りをされている

 14:32に小松地集落に到着。ここから左折して300mほど真っ直ぐな道を進み、県道291に右折して100mほども進んだところで左手の山のやなしお道にとりつく。やなしお道は石見銀山の中心地の大森から広島県尾道まで続く銀山街道の一部で、小松地から湯抱(ゆがかい)の先までの部分。やな(たくさんの)塩を運んだ道が由来と言われている。

小松地で農地の中を真っ直ぐに進む

県道291号線をわずかに進む

すぐにやなしお道の道標が現れる

左に説明板が建っている

やなしお道の取り付き部分が少しわかりにくい

 取り付きは泥濘んだ道だったが、その後は道幅1.5mから広い部分は3mほどのよく踏まれてしっかり固められた街道らしい道になる。中国自然歩道の道標に加え、銀山街道の標識も多数設置されている。アップダウンはそれほどなく、ときおり眺望もある。両側には針葉樹ではなく、広葉樹が優勢。

少しぬかるんだ道を上がっていく

上部に出れば比較的広い道となる

ところどころに眺望もある

道標は頻繁に出てくるので迷うことはない

 15:20に七本槇(しちほんまき)を通過。ここにはトイレあり。

 15:44からは少し勾配のあるポウポウ坂を上り始める。ポウポウ坂の由来は、修験道者の法螺貝の音とも、湯抱(ゆがかい)温泉の湧き出る音とも。このあたりは道の両側には笹が生えているが、きちんと刈って手入れしてある。

 15:58にやなしお道から北の湯抱温泉への道が分岐する湯抱別れに到着。やなしお道は東のやなしお坂に向かって進む。やなしお道の方の整備状況が良さそうだが、ここで別れて北に進む。ここからは幾重にものつづら折りで高度を下げていく。少し先の木の枝で2匹のサルがこちらを見ている。目が合った瞬間に、隣の枝に飛び移って逃げていった。その後もスイッチバックを繰り返して下っていく先の木々の間でサルが叫び声を上げる。

ここから左に進めば湯抱温泉、真っ直ぐ行けばやなしお坂となる

湯抱温泉への道は急な下り

 16:25に湯抱温泉に到着。橋を渡った先は集落になる。かつては温泉旅館だったかなと思われる建物がいくつかあるが、残念ながら今は営業していない模様。16:39に湯抱温泉入口バス停に到着して行動終了。

湯抱温泉

かつては旅館だったかという建物が残る

2022年10月15日 中国自然歩道56日目(通算215日) 島根県大田市大森町石見銀山〜邑智郡美郷町湯抱温泉 晴れ 24/12℃ 行動距離14.9km 行動時間3:49 獲得高度553m 26146歩 行動中飲水量600ml

往路交通:西新7:45-博多7:55/8:39新幹線のぞみ17号-広島9:41/10:00高速バス石見銀山号-世界遺産センター12:40

復路交通:湯抱温泉口17:39石見交通バス-大田市駅18:16