とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

ヤドリギ 一生を木の上で暮らす

 南信州の山を歩いているとき、弟が木の枝の先にぶら下がった鳥の巣のような物を指さして、あれがヤドリギだよ、と教えてくれた。弟はアウトドアの達人である。

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 それから山を歩いているときに気を付けて見ていると、落葉した広葉樹の枝に繁殖したこの不思議な植物をときどき見かける。緑色の肉厚の葉からなる部分は、モジャモジャのドレッドヘアーのような姿ではあるが、普通の植物の様態。ところが、普通の植物が持っている地下部分がなく、茎から下の部分が宿主の樹皮に吸着するように結合しているところが大きく異なる。

 ヤドリギ(宿り木、Viscum album L.)は、ヨーロッパおよび西部・南部アジア原産のビャクダン科の寄生植物で、他の樹木の枝の上に生育する常緑の多年生植物。ビャクダンは甘い香りの香木として知られている。

 ヤドリギの宿主樹木はエノキ、クリ、アカシデ、ヤナギ、ブナ、ミズナラ、クワ、サクラなど幅広い。寄生植物ではあるものの、光合成能力を持った葉を有しており、エネルギー産生を宿主に完全に依存しているわけではない。土壌の代わりに、他の木の樹皮を利用させてもらっているという程度の寄生。まあ、自分の食い扶持ぐらいはコンビニバイトで稼いでいるパラサイト生活のような。

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 繁殖は非常に巧妙で、冬季に結実した果実を鳥が食べ、果実の粘液成分に含まれた種子が糞として木の上に落ちると、粘液によって種子が樹皮に張り付いて発芽して寄生が始まる。冬鳥のヒレンジャクキレンジャクヤドリギの実を好んで食べることが知られており、種子散布に貢献している。ヤドリギは地上では繁殖できず、一生を木の上で暮らす不思議な植物なのである。