とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

クズ

 2回しか会ったことがない女性からいきなりこう言われた。彼女に対して思い当たるようなことはしていないが、傷ついた。そのクズとは別の話。

 クズ(葛、Pueraria montana var. lobata)はマメ科クズ属の多年草。つる性の植物で、道路の脇や日当たりの良い斜面など、イヤでも目につくほど生えている。

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 秋の七草の一つで、根からは葛きりや葛餅などの材料となる葛粉を作ったり、ツルの内皮を葛布の材料としたり、根を乾燥させたものは葛根(かっこん)、花を葛花(かっか)、葉を葛葉(かつよう)として漢方薬の原料とする有用植物として広く栽培されてきた。日本では吉野川の上流の国栖(くず)が有名な産地で、クズの名の由来とされる1)

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 しかし、戦後に食糧事情が改善してデンプンの原料としてのクズは需要がなくなり、クズが栽培されていた里山は放置されるようになり、雑草とみなされるようになってしまった。非常に繁殖力が強く、市街地や造成地で繁茂して、電線に絡みついたり、フェンスを覆ったり、樹木にとり付いて枯らしたりと、嫌われものの植物に成り果ててしまっている。

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 米国では、1876年のフィラデルフィア万国博覧会の際に日本から持ち込まれたクズが急激に繁殖して「グリーンモンスター」と呼ばれて、法的に駆除の対象となっている。世界の侵略的外来種ワースト100 (IUCN, 2000) 陸上植物の選定種32種のうちの一つである2)

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 なぜクズが気になったのかというと、職場で栗きんとんが話題になったとき、栗というのは山に落ちているもので、栽培をするなんて思いもよらなかったという人がいたから。シティボーイの彼は、彼岸のお墓参りの時に、道端に落ちている栗のイガをよく見かけていたため、よもや栗を栽培するものだとは思っていなかったという。実際はもちろん、食用の栗は栗林で栽培されている。

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 そこで、いたるところで目につくクズはどうだろうかと思ったわけだ。調べてみると、クズはいまだに山に自生しているものを、デンプンが根に集まる冬に掘り子と呼ばれる職人が掘り出して収穫している3)。大変な作業のようで、国産の本葛粉はかなり高価になる。

 奈良県農業総合センターのホームページを見たら圃場(畑)でのクズ栽培の方法が紹介されている4)。平成18年の段階では、国内の圃場でクズを生産した例はないようで、栽培方法を開発して特許出願を行っている。しかも、野生ではモリモリ繁殖しているクズが、畑では雑草に負けてしまって生育しないのでマルチシートで保護する必要があるというのは意外である。

 

参考文献

  1. 1. https://ja.wikipedia.org/wiki/クズ
  2. 100 of the World's Worst Invasive Alien Species:http://www.iucngisd.org/gisd/100_worst.php
  3. 松村光重、御影雅幸:葛根の研究 (I) 採集時期に関する史的考察、日本東洋医学雑誌、52,4,493-499, 2002.
  4. 奈良県農業総合センター高原農業振興センター:茎葉収穫を目的としたクズの栽培法. https://www.naro.affrc.go.jp/org/warc/research_results/h19/05_yasai/p185/index.html