建築物を見るのは好きで、出張の際などに時間ができると有名な建築を見に行ったりする。福岡にも知られた建造物が多数あり、自宅の近所のものはジョギングのついでに写真に収めている。
今回は、福岡で半日の時間ができた時に歩いて巡る建築物のコースを教えて欲しいというリクエストがあったので、考えてみた。目安とする時間は3時間、徒歩でという条件で、福岡建築散歩 その1 百道浜エリア版を考えてみた。
福岡の中心街である天神から3つ目の駅である、福岡市営地下鉄空港線の唐人町駅で下車すると、いずれの出口から出ても、明治通りという片側3車線の広い道路に出ることになる。明治通りに沿って西に200mほど進むと、片側2車線の道路との交差点である比較的大きな地行(じぎょう)交差点に出る。ここから右折して北に向かうと、300mで地行3丁目の交差点に出るが、その交差点の向こう側に見える鯨のように巨大な建物が、おしゃれな店舗が多数入居した商業施設のマークイズ福岡ももちである。
(1)マークイズ福岡ももち
福岡市中央区地行浜2丁目2-1
設計監理:三菱地所設計・竹中工務店共同企業体
施工:竹中・錢高・小林・松本・坂下共同企業体
竣工:2018年
地行3丁目交差点を渡り、マークイズ福岡ももちの横をさらに北に向かうと、右手に福岡PayPayドームの金色に輝く屋根が見えてくる。ここは、福岡ソフトバンクホークスの本拠地。ホークス優勝の瞬間に立ち会ったこともある思い入れのある場所であるが、PayPayの名称はまだしっくりきていない。
(2)福岡ドーム(福岡PayPayドーム)
福岡市中央区地行浜2丁目2番2号
設計:竹中工務店、前田建設工業、共同企業体
施工:竹中工務店、前田建設工業、共同企業体
竣工:1993年
福岡ドームの隣に聳える、エッジの立ったデザインのホテルがヒルトン福岡シーホーク。1995年の開業時はダイエーを母体とするシーホークホテル&リゾートとして開業したが、その後はJALリゾートシーホークホテル福岡、ヒルトン福岡シーホークと運営母体とともに名称が変更され、盛者必衰のことわりを感じさせる。ここに宿泊したことはないのだが、この尖った建物の最上階の最先端部分がどんな風になっているのか確かめたかったので、35階のバーに入店したことがある。とても眺めが良かった。窓を開けて飛びたくなる衝動を抑制するのが大変だったが、幸い窓は開かなかった。
(3) ヒルトン福岡シーホーク
福岡市中央区地行浜2丁目2-3
設計:シーザー・ベリ
施工:竹中工務店、前田建設工業、イチケンJV
竣工:1995年
ヒルトン福岡シーホークを出たら、川(樋井川)に沿って海に向かって進む。すぐに松林と砂浜が見えてくるはずだ。ここはシーサイドももち海浜公園。砂浜にはビーチバレーのコートなどが設えてある。潮風を浴びながら砂浜沿いの舗装路を西に300mほど進むと、海の上に浮かぶ結婚式場、商業施設などの複合施設であるマリゾンが見えてくる。番地がすごい番号になっているが、海の上だからだろうか?
(4) マリゾン
福岡市早良区百道浜2丁目902-1
設計:三島設計事務所
施工:福岡ウォーターフロントプロムナード建設工事JV
竣工:1990年
そこから陸の方を振り返ると、高さ234mの福岡タワーが聳え立つ。福岡の地上波TV放送はここから送信されている。エレベーターで地上123mの展望室まで上がることができる。高いところが好きな私としては不思議なことに、まだ上がったことがない。ゴールデンウイークと体育の日前後には非常階段を一般開放し、1階から展望室までの577段を登るというイベントが開催されるが、これもまだ私は参加したことがない。イルミネーションが美しく、季節やイベントによって美しくライトアップされる。照明は松下美紀照明設計事務所が担当しており、このエリアに事務所を構えている。
(5)福岡タワー
福岡市早良区百道浜2丁目3-26
設計:日建設計
施工:大成建設・竹中工務店・清水建設・鹿島建設・大林組JV
照明設計:松下美紀照明設計事務所
竣工:1989年
福岡タワーから西に100mの位置に立つ、タワーと高さを競うかのようなマンションがネクサス百道レジデンシャルタワー。高さは97mの27階建てのマンションである。今ではこれぐらいの高さのマンションは珍しくもないが、20年以上前はとても人目を引いていた。意匠設計は著名なマイケル・グレイブス。
(6)ネクサス百道レジデンシャルタワー
福岡市早良区百道浜4丁目31-1
設計:前田建設工業(デザイン:マイケルグレイブス)
施工:前田建設工業
竣工:1996年3月
ネクサスを見ながら通りに沿って南に進むと「世界の建築家通り」という名称で呼ばれる百道浜3丁目に入っていく。ここには、マイケル・グレイブス、スタンリー・タイガーマン、黒川紀章、木島安史、葉祥栄、出江寛、美川淳而といった世界的にも著名な建築家の設計になる集合住宅や店舗ビルが建ち並ぶ。ビルにはとくに設計者の名が刻んであるわけではないので、少し予習が必要。現在、改修中の建造物もある。
(7)シーサイドももち 世界の建築家通り
福岡市早良区百道浜3丁目
設計:マイケル・グレイブス/スタンリー・タイガーマン/黒川紀章/木島安史/葉祥栄/出江寛/美川淳而
竣工:1990年
世界の建築家通りの南端の交差点に建つ黒川紀章設計のビルは、現在は福岡インターナショナルスクールが使用している。ここをしっかり鑑賞してから、片側2車線のよかトピア通りに沿って左折して東に向きを変える。300m進むと、アーチの向こうの水面に壮大な姿を映す福岡市博物館が現れる。ここには志賀島で出土した「漢委奴国王」と刻印された金印が展示されている。
(8) 福岡市博物館
福岡市早良区百道浜3丁目1-1
設計:佐藤総合計画
竣工:1989年
福岡市博物館の隣には福岡市総合図書館が並ぶ。図書館の前にはヤップ島の石の貨幣が置かれているが、さすがにこれを盗もうとするものはいないようである。
(9) 福岡市総合図書館
福岡市早良区百道浜3丁目7-1
設計:山下設計
竣工:1995年
図書館と博物館の間の通りの名称はサザエさん通り。漫画「サザエさん」の作者の長谷川町子が百道の海岸を散歩しながら構想を練ったことにちなんで付けられたとか。長谷川町子は佐賀県生まれの福岡育ち。「サザエさん」は西日本新聞の僚紙である夕刊フクニチに1946年から連載が始まった。
サザエさん通りを福岡タワーに向かって100mほど進むと、片側2車線の道路に出る。右手に高層ビルが建ち並ぶが、これらの多くはIT関連の企業が入居する。その中でもとくに目を引くのが急患診療センター交差点の向こう側に見えるSRPセンタービル。ソフトリサーチパークのビルであるが、立方体を複雑に組み合わせたような形態で、ももちキューブの愛称を持つ。
(10) 福岡SRPセンタービル(ももちキューブ)
福岡市早良区百道浜2丁目1-22
設計:日建設計
施工:佐藤工業、安藤建設、昭栄建設
竣工:1996年1月10日
急患診療センター交差点の向こう側のSRPセンタービルを眺めたあとは、信号から南に細い道路に入り、100mほど進むと白黒の色調の円筒形のタワー群が見えてくる。これがレジデンシャルスィート福岡。かつてはハイアットの系列であったが、いまは離れているよう。マンスリーなどの長期利用を主としているが、1泊での利用も可能。自分では宿泊したことはないが、お客さんを泊めたことがある。部屋は快適そうだった。
(11) ザ・レジデンシャルスイート福岡
福岡市早良区百道浜1丁目3-70
設計:三浦紀之建築工房
竣工:1992年
レジデンシャルスィート福岡から道路に沿って南に進むと、100mほどでふたたびよかトピア通りに出る。今回はよかトピア通りを横断し、さらに南に進む。この通りも、サザエさん通りである。200mほど進むと、左手に煉瓦色の落ち着いた建物が見えてくるが、これが西南コミュニティーセンターである。西南学院大学の施設である。コミュニティーと伸ばすのが正式名称である。2008年の日本建築家協会優秀建築に選ばれている。
福岡市早良区西新6丁目2−92
設計:日建設計 (川島克也・田中公康)
竣工:2016年
西南コミュニティーセンターのすぐ右に見えるのが西南学院大学図書館。ここも煉瓦色の建物が美しい。
(13) 西南学院大学図書館
福岡市早良区西新6丁目2-92
設計:佐藤総合計画
施工:松尾建設
竣工:2016年9月
西南学院大学図書館の前のサザエさん通りをさらに100m進むと片側3車線の広い道路に出る。これが地下鉄唐人町駅を出たあとで歩き始めた明治通りである。脇山口交差点で左を向けば、地下鉄西新駅の1番出口が見える。
これで唐人町駅から西新駅まで百道浜地区の13の建築物を巡る旅が終点となる。歩行距離は6kmほど。福岡出張の際に半日の時間ができた時に、ぜひ自分の足で歩いてみて欲しい。