東京駅を起点として新橋駅に至るまで、丸の内、銀座、築地、新橋界隈の著名な建築物を歩いて巡る一筆書きの旅も14番目のこの建造物で新橋駅に到着し、終わりとなる。逢来橋の陸橋から汐留再開発地区の巨大なビル群を眺めたあとは、ビル群に背中を向けて陸橋を渡り終え、そのまま首都高速道路の高架の下を新橋駅方向に進む。250mほど進むと、JRのガードが正面に見えたあたりから、右手に不穏な形のコンクリート建造物が現れてくる。
(14) 静岡新聞・静岡放送東京支社ビル 中央区銀座8丁目3-7 設計:丹下健三
新橋駅の銀座口にほど近い、外堀通りと首都高速道路に挟まれた3角形のやや狭い敷地に、この有名なメタボリズム建築が鎮座する。1967年竣工、設計は丹下健三の静岡新聞・静岡放送東京支社ビルだ。周囲の街とややミスマッチな濃い茶色の色調は許容範囲内だが、打ち出の小槌を置き忘れていったかのようなその外観は異形。敷地面積は187m2と狭く、ハンマーの部分を強く押したらひっくり返ってしまうかのよう。構造設計はさぞや大変だったのではないかと思われる。
この建造物は、同じく丹下健三設計の電通築地ビルを中核に据えた築地再開発計画に関連して設計されており、将来的には複数の建造物で空中を渡した床で連結する構想があった。いま、地図上で静岡新聞社東京支社ビルと電通築地ビルとの間の距離を測ってみたら1050mある。もし築地再開発計画が実行され、丹下の構想どおりのメタボリズムが展開されていたならば、この街並みはどんな風に変わっていたかと考えると、すこし恐ろしいような気もする。
これで東京駅を出発してから、14の建造物を眺めながら新橋駅に至る散歩が終わる。だいたい3時間あればゆっくり鑑賞できるはずである。