知り合いの、もうすぐ百名山氏。以前登場したすでに全山踏破を終えた百名山氏とはまた別の方だが、彼は学生の頃に地元九州の山々や北アルプスなどは登り終えており、銀行を定年退職する前後から一つ一つ登り潰しを始めている。昨年末は四国の剣山と石鎚山も登り終え、残すは北海道と東北の十数座という。百名山全山踏破は目前だが、北海道にもなかなか体力を必要とする山があるようなので、日々鍛錬を怠らないようにしているとのこと。
そんな彼がいま、福岡近郊の山で推しているのが立石山。福岡の西方の糸島半島にある標高200mほどの山だが、景色が素晴らしく、登っていないのはもったいないという。そんな彼の勧めもあって、油断していたら気がつかないうちに全国的に休みとなっていた2021年2月23日(火・祝)に登ってみた。
福岡市内の自宅を自動車で8:30ごろに出発し、糸島半島を周回する道路を、景色を楽しみながらゆっくりと走る。天候は晴れ。現在の気温は12℃。博多湾に浮かぶ能古島(のこのしま)の沖に、ヨットの白いセイルがいくつもはためくのが見る。
道路の左手に、離陸しようとする宇宙船のような銀色の建物が現れた。ここは建築家の葉祥栄さん設計のクリニック。何回見ても魅力的な建物だ。もし自分がこの辺りの子供だったら、母親にせがんで、熱がなくてもこのクリニックに行きたがったと思う。自分の地元にはこんな魅力的な病院はなかったので、今でも病院嫌いのまま。
9:30には糸島半島北端の二見浦に着いた。夫婦岩と白い鳥居が青い海に映えていたので、自動車を駐車場に停めて写真を撮りに行く。ここは定番の観光名所なので、30台ほど停められる駐車場はすでに8割ほどの自動車で占められている。
二見浦から自動車で15分ほど、芥屋の大門(けやのおおと)という観光名所を目印に数回右左折を行って、玄海国定公園の第1駐車場に着いたのが9:50ごろだった。ここは自動車が50台ほど停められる整備された駐車場で、トイレもある。トレッキングシューズに履き替えて、地図を確認して、9:55に行動を開始した。
駐車場からすぐに青い海が見えてきた。ここにも自動車が停められる第2駐車場があり、その山手には芥屋キャンプ場が設置されていた。芝生のグラウンドとトイレがある快適そうなキャンプ場であるが、現在はシーズンオフのためか閉鎖中。
キャンプ場のすぐ先から登山道を10:05から登り始めた。丸太で補強された階段が整備してあり、とても歩きやすい。山道の両側は広葉樹で覆われており、木陰が心地よい。気温を見ると15℃。上着は脱いで、半袖のTシャツ1枚となった。すでに登り終えた家族連れが下りてきた。挨拶を交わして道を空ける。快適な山道をのんびりと登り、20分ほどで白い砂とゴロゴロの岩の目立つ尾根道に入った。振り向くと真っ青な海が見えてくる。
尾根にはステゴサウルスの背中のように白い岩がところどころに立ち上がっている。10:33に最初の岩に到達したため、岩の上によじ登って糸島の全景の景色を楽しんだ。頂上の方を見てみると、山頂近くにも白い岩が立ち上がっているのが見える。
尾根の道は白い砂で覆われており、歩きやすい。ところどころに岩があり、乗り越えなければならないところもあるが、ステップがつけられており、難易度はそれほど高くはない。この尾根道は快適。あと3時間ぐらい続いても文句が出ないほど心地よく美しい。
景色を楽しみながらゆっくり登ったが、10:50には頂上近くの白い直方体の岩に到達してしまった。北の玄界灘方面には糸島半島をぐるっと見渡すことができる。東に目を移すと糸島半島の中心に鎮座する糸島富士(可也山、365m)が聳え、西には姫島の浮かぶ青い海が映える。南を振り返ると浮嶽や二丈岳などの背振山系が一望できる。うーーん、360°完璧な眺望。山は高さだけではないという好例。もうすぐ100名山氏の推しに1票入れたくなった。
近くの岩場に腰掛けて、サーモスをザックから取り出してコーヒーを淹れる。本日1杯目のコーヒーを山頂で頂く。風はなく、コーヒーの香りが鼻腔に心地よい。
岩場からほんの少しだけ進み、10:51に立石山の山頂(209.5m)に到着。全周が開けた先ほどの岩場と比べると、山頂周囲には低木が茂っており、西方向のみの眺望が開けている。ただし、山頂からは姫島がもっともよく見える。
山頂からは南に向けて下山を開始。南の山道もよく整備されている。こちらのルートの方が山頂までの距離が短いからか、家族連れが何組も上がってきた。そのたびに脇に避けて先に登ってもらう。小さな子供でも十分登ることができる。
11:18に南の登山口に到着した。登山口には一帯の地図が掲示されており、自動車が4台ほど停められるスペースがある。ここまでのルート上にはゴミも見当たらず、いい山だった。
登山口からは舗装された林道を歩く。スギの植林の間に広葉樹も交じり、直射日光は遮られているため、心地よく歩くことができる。交通量は少なく、登山者が乗ったと思われる車しか通らない。
左に緑色の大きな貯水池が見えてきた。貯水池の向こうには立石山の全景が見える。ここからは、圃場を右に見ながらのんびりと歩き、11:49に第一駐車場に戻った。景色をゆっくりと楽しみながら、まったく汗をかかずに2時間の行動を終えた。
ザックを助手席に置いて時計を見るとちょうど昼ご飯の時間だった。ザックの中に入っている棒ラーメンという手もあるが、ここから自動車で20分ほどの商業施設の敷地にある漁協が運営する直販施設の志摩の四季では、安くて美味しいと知られている海鮮丼が数量限定で販売されている。昨年、午後1時過ぎに来店したときは、3組ほど前で売り切れとなり悔し涙を流している。今日は食べることができるか、神様にお願いしながらエンジンをかけた。
2021年2月23日 福岡県糸島市芥屋 立石山 晴れ 15℃ 行動時間1:54 距離4.1km