とりあえず、歩くか。晴れた日は星空の下で寝るのもいい。

週末の九州自然歩道のトレッキングや日常の雑感です。英語版のトレッキングログもこちら https://nayutakun.hatenadiary.com/  で公開しています。

4色問題 生活の中の数学の難問

 ピクルス氏から再び問い合わせがあった。ピクルスの保存瓶に野菜を並べる際に、隣り合う野菜の色を異なるものを並べるというところで、4色問題という言葉が出てくるが、あれは何のことかというお尋ねである。

 

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 4色問題(4色定理)というのは、ロンドン生まれの南アフリカの数学者・植物学者のFrancis Guthrie(フランシス・ガスリー)が1852年に提案した問題。彼が英国(England)の地図を塗り分けているときに、隣り合う国同士が異なる色になるように塗り分けるためには最低4色あれば足りることに気が付いた。それで、彼は「いかなる地図においても、隣り合う国が異なる色になるように塗るためには4色あれば足りる」という仮説を提案し、これが4色問題として知られるようになった。簡単そうに見えるこの問題は、実は証明するのは極めて困難で、100年以上にわたって証明されることのないトポロジー(位相数学)の難問として有名であった。最終的にこの問題は、1976年にKenneth AppelとWolfgang Hakenによって、大型コンピュータを使った力業のような方法で証明されることとなった。

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地図の隣り合う地域は4色あれば異なった色で塗り分けられる。

 実際に白地図をプリントアウトして塗り分けてみると、4色で足りそうなことは直感的にはわかる。なお、境界線ではなく、点のみを共有する領域は隣り合っているものとはみなされず、互いに同色で塗ってもよいところにも注意が要る。ところが、こんな直感的にわかるような問題でも、なかなか証明は難しい。ガスリーの問題を正確に表すと、「境界線によって囲まれたいくつかの領域からなる平面図形があり、境界線の一部を共有する(隣り合った)領域は異なった色で塗らなければならない、としたとき、4色あれば十分である」となる。これを数学の中のグラフ理論でとらえると、「平面グラフは4彩色可能である」という定理になる。

 ここでピクルスに戻ると、ピクルスを漬けるために保存瓶に野菜を配置する際、隣り合う野菜の色が必ず異なるようにするためには、キュウリ、ダイコン、ニンジンだけでは足らず、パプリカが1色必要だということになる。

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果物屋の店先でよく見かけるリンゴの積み方

 じつは生活にはあまり関係がないと思われがちな数学には、このような生活に密着したような難問がある。たとえば、リンゴを重ねるて並べるときに、一番たくさん詰め込むことができるのはどんな積み方か、みたいな問題もつい最近まで証明されていなかった。直感的には、果物屋の店先で見られるリンゴの並べ方が最密な並べ方であろうと思われる。ところが、この問題はケプラー予想として1611年に天文学者のJohannes Keplerから提案されていたが、ようやく1998年に米国の数学者Thomas Callister Halesによってやはり大型コンピュータを使って、あまり美しくない方法で証明されている。