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【症例報告】朝食に比重をおいて過重な労作負荷をかけたにも関わらずBMIの著しい上昇を呈した症例

              はじめに

 BMI(Body Mass Index)は肥満度の目安として頻用される指標で、体重(kg)/(身長(m)×身長(m))で求められる数値である。これが25以上の場合は体内の脂肪組織が過剰に増加したと考えられ、一般には肥満と呼称される状態を示している。

 BMIの急激な上昇は、副腎や甲状腺などの内分泌腺の機能異常や薬剤の副作用などが原因になる場合もあるが、多くはエネルギー過剰摂取、いわゆる食べ過ぎ、がその原因となることが多い。

 令和元年国民健康・栄養調査1)の結果によると、BMI≧25の割合は男性31.8%、女性21.6%である。男女とも30代から増加し始めるが、男性では40歳代が39.7%とピークで以後減少し、70歳以上で28.5%となるが、女性では30代の15.0%から徐々に増加し60代の28.1%がピークであり、60歳を越えた者にとってはとくに注意すべき健康指標と考えられる。

 成人期におけるBMIの適切な維持は注目を集めており、これまでにも多様な方法が提案されている。近年においても、Billy's Boot Camp Method、Grated Apple Diet Methodなどをはじめとした数百にも及ぶ方法を見ることができるが、基本的には、摂取エネルギーを減らすか、消費エネルギーを増やすことによって、BMIの減少を試みるものに大別できる。

 消費エネルギーを増加させるBMIコントロールの代表的なものが、一般的に運動系ダイエットと称されるものである2)。これは、筋肉量の増加に伴う基礎代謝の向上により脂肪燃焼効果が期待できる無酸素運動と、糖質・脂質をエネルギー源とするため余分な脂肪を減らせる有酸素運動を順に取り組むことによって効果が上がるとされている。とくに有酸素運動開始後20分以上経過してから脂肪燃焼が増大することから、運動負荷は長時間与えることで減量効果は高まるとされている。

 運動系ダイエットの特徴としては、適切なエネルギー摂取も重要であることが知られている。とくに朝食摂取の重要性が強調されており、起床後の飢餓状態を持続して長時間の生活行動を始めてしまうと、次回の栄養摂取の際の吸収が促進され、体脂肪としての蓄積が増加するとされている。

 このため、飢餓状態の時間を短くするためにも、栄養バランスのよい朝食摂取の重要性が強調されており、

(1) 朝であればその後の活動で容易に消費できるため積極的に摂取すべき。

(2) 朝食摂取に伴う消化管運動の活発化によって体温が上昇し、基礎代謝が高まる。

(3) 朝食の摂取によって食事制限に伴うストレスから解放される。

といった面から、朝食の有効な側面が支持されている。

 今回は、長時間の運動負荷と朝食主体のエネルギー摂取によるBMI維持効果の検討を行うことを目的として、被験者に対して4日間の積極的な朝食摂取と長時間の歩行をさせた後、BMIの変動を観測したところ、消費エネルギーの増大にもかかわらずBMIの著しい増大を招いた症例を経験したので報告する。

 

              症例と経過

 症例は60歳代の男性。非喫煙者で、特記すべき基礎疾患はない。これまでに糖尿病や脂質代謝異常症などの、食物摂取や代謝に問題の生じるような疾患の既往はない。症例報告に際しては、研究報告の趣旨を説明し、文書によるインフォームドコンセントを得ている。

 今回は一般的に運動ダイエットと称される、消費エネルギーを増加させるBMIコントロールを実施した際の食事の影響を検討することを目的とした。すなわち、被験者には1日数時間にわたる運動負荷を行わせ、栄養摂取についても朝食には自由に内容、量ともに選択させるものの、昼食、夕食については規定の食物を摂取させるもとのした(Fig. 1)。

 BMIの測定に関しては、毎日、起床後に何も摂取する前に測定を行った。摂取エネルギーの算出については、写真法および思い出し法により、管理栄養士の指導の下に実施している。

 

              結果

 Table. 1に観察期間中の被験者のBMIおよび負荷活動量、摂取エネルギーを示す。

 また、観察期間中の摂取エネルギー量を、朝食、昼食、夕食ごとにFig. 2に示す。研究の目的どおり、朝食については摂取制限を設けなかったため、1ラウンド1800kcal相当の栄養摂取(Fig. 3)を毎日2ラウンドずつ行い、研究期間を通じて連日3600kcalを朝食時に摂取していたことがわかる。基礎代謝エネルギーについては、被験者の年齢、性別、体格指標から1400kcal程度と推定されている。

 研究期間中に毎日、起床後に体重測定を行って算出したBMIの推移をFig. 4に示す。研究開始前には23.0で安定していたBMIは、強度な運動負荷と朝食重視の栄養摂取を試みたにもかかわらず、研究終了時点では24.8と肥満にほぼ分類される水準にまで至っている。

              考察

 今回は、BMI維持のための手法として、長時間の運動負荷と朝食主体のエネルギー摂取という理想的な手法を組み合わせてその効果の検討を行ってみた。4日間という限定的な期間ではあるが、被験者に対して積極的な朝食摂取と長時間の運動後のBMIの推移については、消費エネルギーの増大にもかかわらず、予想に反してBMIの著しい増大を招いている。

 このような結果に至った理由については、運動負荷が軽すぎたことも一因と考えられる。今回被験者に与えた運動負荷による消費エネルギーは、1日あたり1272~2573kcalと比較的軽度であった。付与した運動は歩行である。1日6時間程度、25kmほどの歩行で消費するエネルギーはおよそ2000kcal程度であり、それほど代謝を増加させるものではなかったことに留意する必要がある。

 また、朝食に比重を置く食生活ということは、さほど重要ではなかった可能性もある。BMIの維持に最も重要なことは、あくまでも摂取エネルギーと消費エネルギーの差であり、エネルギーの摂取タイミングについては付加的な要素にしか過ぎないのではないかと思われる。

 それにも増して重要だと思われたのは、過大な摂取エネルギーである。今回の研究においては、朝食については摂取制限を設けず、被験者の望むがままの食事摂取を行っている。その結果、研究期間を通じて連日3600kcalという成人男性の必要エネルギー量を優に越すエネルギーを朝食のみで摂取したことが最大の問題点と思われる。(Fig. 5~Fig.17

 また、研究計画においては夕食後のおやつに制限を設けていなかったため、被験者がad hocにポテトチップスやコーヒー牛乳といったカロリーの高い食品を大量に摂取していたことも、研究期間を通じてBMIが著しい上昇を呈した要因と推察される。

 結論として、どんなに高い運動負荷をかけたとしても、運動によって消費されるエネルギーは期待されたよりも常に低く、歯止めをかけなかった際の一般成人の食事は過大なエネルギー摂取につながりやすいことが考えられる。生活習慣病の予防のためにも、年齢相応の適切な栄養摂取を心がけることの重要性が示唆された。

 

              教訓

  1. 食事はほどほどに、運動は貪欲に。
  2. 朝食ならば大丈夫と暴食は害。
  3. 夕食後にテレビを見ながらのコーヒー牛乳とポテチは禁止。

 

  1. 厚生労働省:令和元年国民健康・栄養調査、https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html(2023年3月9日最終閲覧)
  2. 厚生労働省:e-ヘルスネット 肥満と健康、https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-001.html(2023年3月9日最終閲覧)